(バリアフリー映画鑑賞推進団体「シティ・ライツ」代表)
平塚さんは、早稲田松竹という名画座に勤務していた頃、チャップリンのサイレント映画「街の灯」を、視覚障害者に向けて上映するバリアフリー上映会の企画に出合った。そこで、映画にふれたいと思いながら諦めている視覚障害者の現状を垣間見た平塚さんは、映画の音声ガイドを一人で試行錯誤しながら作り始める。その後、音声ガイド研究会を立ち上げるが、これが現在のバリアフリー映画鑑賞推進団体シティ・ライツの原点である。
その後、仲間を集めてシティ・ライツを組織し、2008年からシティ・ライツ映画祭を開催するが、上映会をやるにしても、一介のボランティアグループと映画館主ではやれることが違う。自由にいろいろチャレンジするためにも、映画館を作ることはその時からの夢となった。
だが、常設シアター開設までには問題が多く、必要な設備を整えると最低1,000万円規模の資金が必要であった。最終的に、クラウドファンディングで募金目標額の1,500万円が集まり、2016年9月1日、ユニバーサル・シアター「シネマ・チュプキ・タバタ」が東京・田端にオープンした。「チュプキ」とはアイヌ語で自然の光の意である。「一時は募金が集まらなかったらどうしようと怖くて仕方がなかったが、本当にたくさんの方にご支援いただき、今は夢を見ているみたいです」と平塚さんは喜ぶ。そして、障害など関係なく、同じ映画を観て感想をシェアし、心の会話ができる。気を遣うこともなく、ありのままそこにいるということが自然にできて、安心して過ごせるユニバーサル・シアターにしたいと、平塚さんは決意を新たにする。