ヘレンケラー・サリバン賞

2023.09.25

 「ヘレンケラー・サリバン賞」は、視覚障害者の福祉・教育・文化・スポーツなど各分野において、視覚障害者を支援している「晴眼者」にお贈りする賞です。これは、「視覚障害者は、何らかの形で健常者からのサポートを受けて生活している。その支援に視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が1993年(平成5年)に創設しました。なお、同賞の名称は、ヘレン・ケラー女史と同女史を生涯支え続けたアン・サリバン女史の両氏の名に由来します。
選考は、視覚障害者によって推薦された候補者の中から、当協会が委嘱する視覚障害者の選考委員によって、検討・決定しています。第1回の社会福祉法人全国盲ろう者協会理事長の小島純郎千葉大教授に始まり、毎年1回、選ばれた個人・団体の献身的な行為と精神に対し、感謝を込めてお贈りしています。

第31回(2023年度)ヘレンケラー・サリバン賞決定

(写真)日本盲人福祉委員会評議員・災害担当の加藤俊和さん
 本年度の「ヘレンケラー・サリバン賞」(当協会主催)は、社会福祉法人日本盲人福祉委員会評議員・災害担当の加藤俊和(かとう・としかず)氏(78歳)に決定しました。加藤氏は、他にも視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブルックの会代表、点字楽譜利用連絡会副代表なども務め、点字、移動、災害など視覚障害者に関わる多くの面で支援活動を続けています。
 第31回を迎えた本賞は、「視覚障害者は、何らかの形で外部からサポートを受けて生活している。それに対して視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が委嘱した視覚障害の選考委員によって選ばれます。
 贈賞式は、加藤氏を招いて10月4日に当協会3階ホールで開催を予定し、本賞(賞状)と、副賞としてヘレン・ケラー女史直筆のサインを刻印したクリスタルトロフィーが贈られます。主な授賞理由は下記の通りです。

授賞理由

 加藤氏は1945年3月、京都市生まれ。高校生の頃にボランティア活動の一環として点字を学ぶ中、日本盲人連合会会長で京都ライトハウス創設者の鳥居篤治郎氏(故人)と出会い、様々な影響を受けたそうです。そして現在も点訳のボランティア活動を続けています。
 1968年に京都工芸繊維大学卒業後、立石電機(現オムロン)に入社し研究職に就きましたが、1980年、福祉の世界に進むことを決心し、日本ライトハウスへ転職。後に常務理事を務めました。2002年に退職後、2003~2010年は京都ライトハウスにも所属しました。
一方、教科書の点訳については、専門性の高い数学・理科や情報処理関連の点字表記をまとめる作業に関わり、音楽点字楽譜では教科書レイアウトの統一に尽力。現在も普及活動や触図への取り組みなど、第一人者として活動しています。
また、視覚障害者の生活支援についても、ホーム転落や踏切内事故に対して、点字ブロックの内方線の提案、駅ホームや踏切の事故現場の検証を行うなど、安全な移動手段について改善と提案に取り組んでいます。東日本大震災の被災視覚障害者支援時には、行政及び関連団体と連携した支援を日盲委の災害対策本部事務局長として担い、団体や点字図書館などともつながりのない中途失明者をできるだけ取り残すことのないよう、個人情報でもある被災者情報をどうやって得るか、の課題に直面しながらも、その壁を乗り越えて支援を推し進めるなど、視覚障害者に関わる多方面の分野で比類ない数々の活動に精力的に取り組んでいます。
 中央省庁との関係では、文部省(現・文部科学省)の中学部点字教科書編集協力者を、経済産業省では高齢者障害者支援技術専門委員会委員、福祉用具技術専門委員を、国土交通省ではJIS企画原案作成委員会委員などをそれぞれ務め、国の施策に対しても、現場の実情を踏まえた示唆的な発言・提言をし、今もなお現役で支援活動を続けておられます。

過去の受賞者

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