執筆にあたって

執筆にあたって

 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所から『点字のレッスン』が発行されて、はや3年余が経過しました。『点字のレッスン』はテキストブックとして各方面から高い評価をいただき、おかげさまで完売となりました。その間、解説をもう少し詳しくしてもらえないか、練習問題がもっとあった方がいいのだがなどの要望が、多数寄せられていました。そこで、増刷や改定の作業を検討する過程で、今後とも点字文化の発展および点字の普及の一翼を担っていきたいとの見地から、当点字出版所においてまったく新しいテキストブックとして編集・発行すべきであるとの方針が、打ち出されました。これを受けて、『点字のレッスン』の編集にも携わった私が新たに書き下ろして、本書『点字練習帳』にこのたび結実したしだいです。

本書は、『日本点字表記法2001年版』(日本点字委員会、2001年)に全面的に依拠し、『点字のレッスン』のスタイルを継承しております。点字を初めて学ぶ入門者にとって、わかりやすい解説書であると同時に実用性の高い学習書となるよう、編集に力点を置きました。したがって、専門学校や大学あるいはボランティア講習会などの授業において、テキストとしてご使用いただけると思いますし、『点字練習帳練習問題解答』(点字版、別売)と併読していただければ、独学も可能です。さらに、「点字技能検定試験」の対策として活用されても、十分それに堪えられると自負しております。

本書の特徴は、次のとおりです。

  1. 本書の中心は、25のレッスンです。各レッスンは、点字の基本原則とその用例、練習問題から構成されています。
  2. 点字の基本原則の説明は入門者にとってわかりやすい説明を心がけ、できるかぎり簡略化を図りました。
  3. 練習問題は既習の知識で取り組めるように配慮し、ステップ・バイ・ステップで力がつくように工夫してあります。とくに本書では、内容の構造化を図り、レッスン相互の有機的連関を向上させました。
  4. 本書では、「お便りしましょう」というレッスンを新たに設けて、手紙やはがきを書く練習をとりいれました。
  5. 慣習に負うところがきわめて大である「書き方の形式」および「点訳書の体裁」に関しては、(参考1)、(参考2)という章を立てて、項目を掲げて簡単に説明するにとどめました。
  6. 巻末の(付録)は、これまで私が時間をかけて集めた文章の中から、おもしろくてしかも鍛錬になる実際的な文章を精選して掲載しました。言葉を十分かみしめて、ぜひトライしてみてください。

 この書を世に送ることにより、一人でも多くの方が点字に親しみ点字を書いたり読んだりすることで、視覚障害者とよりよいコミュニケーションを図ることができるようになり、そうしたすてきな人間関係の積み重ねで社会が少しでも進歩していくのであれば、私にとって望外の幸せであります。今後、点字表記の進展に合わせて本書もさらに“進化”させていきたいと思っております。本書に対するご意見ご要望等ございましたら、著者まで遠慮なくお寄せください。

なお、本書の編集において、福山博、藤森昭、山内厚子、山本令子、塩谷万季、小川百合子の同僚諸氏の多大な協力が得られたことに、改めて感謝します。また、これまで私の勉学や読書を支えてくださった多くのボランティアの方々にも、この場を借りて御礼申し上げます。最後に、長年にわたり点字文化の発展および点字の普及に貢献してこられた先達とその優れた功績に対して敬意を表して、ここに筆を置きます。

2001月12月10日

田辺 淳也

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