点字ジャーナル 2026年9月号

2026.08.25

目次

  • 巻頭コラム:雲の上の日経平均
  • (インタビュー)盲B盲Gを知っていますか?
      ―― 澤田智洋さんに聞く――
  • ヘレン・ケラー誕生日の記念イベントを開催
  • (寄稿)誘導ブロック敷設に思う
  • 高めよう、視力を超えたネクストパワー!(7)
      回復力 丈夫になるより上手になろう
  • 弱さを隠すことが“強さ”だった私へ(9)
      すごいねって何が?
  • ネパールに愛の灯を ―― わが国際協力の軌跡 (25)
      「文は人なり」ではないのか?
  • 長崎盲125年と盲教育(41)盲教育創始100年記念大会・長崎大会
  • 自分が変わること(206)「戦争状態」と内戦
  • リレーエッセイ:心のお守り(上)
  • アフターセブン(138)忘れるための試行錯誤の顛末
  • 大相撲、記録の裏側・ホントはどうなの!?(289)
      大関復帰を決め、頂点を見据える安青錦
  • 時代の風プラス:第24回チャレンジ賞・サフラン賞受賞者、
      名取事務所公演「追熟しない果実」、
      ネットショップ横断検索サービス「よむぽち」、
      さすると痛みが和らぐ仕組み
  • 編集後記

巻頭コラム:雲の上の日経平均

2026年6月、日経平均株価は取引時間中に7万2831円という史上最高値を記録した。バブル経済期の1989年に記録した3万8915円の壁を2024年に突破して以来、日本の市場は驚くべきスピードで高値を更新してきたのである。
ところが、実生活が豊かになったと感じるかといえば、そうでもない。日経平均急騰のニュースを見て、これはどこの国の話だろうかと思ったのは私だけではないはずだ。このギャップは一体どこから生まれるのだろうか。
現在の株高を力強くけん引しているのは、世界中で急速に普及が進んでいる生成AIである。
AIが高度な処理を行うためには、高性能なAI用半導体が欠かせない。現在、米国の巨大IT企業群を中心にAIインフラへの巨額投資が続いており、世界中で半導体の需要が供給を遥かに上回る状況が生まれている。
日本には半導体を製造するための精密装置や検査機器の分野で、世界トップクラスの技術を誇る企業が複数存在する。これらの企業はAI開発を支える重要な存在として注目を集め、将来への期待も織り込みつつ株価が急騰しているのだ。
こうした状況に加えて、現在の日経平均上昇には指数の仕組みが大きく関係している。日経平均は日本を代表する225社の株価を集計して算出されるが、その算出方法は1株あたりの株価が高い、いわゆる値がさ株の影響を受けやすい仕組みである。つまり、日本経済が一律に底上げされなくても、一部の半導体関連株の価格が突出して高くなることで、指数全体が押し上げられているのである。
8月に入り、日経平均は最高値から1割ほど下げた価格帯を推移しているが、これまでと比べれば依然として高い水準を保っている。しかし、株価と実生活の乖離が埋まることは当面なさそうだ。私たちは日々淡々と節約をして、物価高に対応するしかないのだろう。(宮内亜依)

(インタビュー)
盲B盲Gを知っていますか?
―― 澤田智洋さんに聞く ――

【6月24日(水)、ウェブサイト「盲B盲G盲学校OB・OGの今をつなぐ」を立ち上げた澤田智洋さんに、そこに込めた思いを聞くとともに、盲重複児童・生徒の仕事づくりについてもうかがった。聞き手・構成は本誌編集長・戸塚辰永。以下、敬称略】

   盲B盲Gとは?
戸塚:盲B盲Gのサイトを作ったきっかけを教えてください。
澤田:私には息子がいます。彼は13歳です。中学部2年生で、都立の盲学校に通っています。私は、2024年度と2025年度の2年間PTA会長を務めました。そこで初めて知ったのですが、盲学校や特別支援学校では、都道府県内やエリア内のPTA同士の交流が盛んです。たとえば、都立盲学校PTA連合会という組織があり、盲学校4校が連携して東京都に要望を伝えています。東京だけではなく、関東甲信越地区盲学校PTA連合会があり、年に1度総会を開いています。このような地区単位のPTA連合会が全国に7つあります。たしか今日、全国盲学校PTA連合会の総会が東京で開催されていると思います。そこでは、情報交換をしたり、意見を述べあったり、国への要望を取りまとめたりしています。総会での意見交換を通じて様々な課題が浮き彫りになりました。そのうちの一つは、卒業生の就職先などの情報が不足していることです。これは、北海道から沖縄まで全国的に共通しています。その要因の一つに教員の異動があります。たとえば、都立盲学校も都立校ですから先生の異動も頻繁にあり、盲学校間だけでなく、他の障害種別の学校に異動することがあります。視覚障害教育を実践してきたのに、聾学校勤務になることも少なくありません。そうすると先生の間で卒業生の情報が蓄積されない、学校にもたまらないという状況になります。ただ、これは学校間で異なり、学校によっては意識してためているところもあります。そうした状況を改善したいと、1年前の全国盲学校PTA連合会総会で、盲学校卒業生の情報を提供する、盲B盲Gをやりませんかと皆さんに提案しました。その時お伝えしたのは、盲学校1校1校は非常に小さな規模でも、全国の盲学校の児童・生徒数を合わせれば2000人以上になるということです。盲学校という一つの学校があるという概念を作りましょうと呼びかけました。児童・生徒が2000人以上いればマンモス校ですよね。盲学校というマンモス校があると仮定して、卒業生の情報を一元的に集約するようなウェブサイトを作りましょうと提案しました。
戸塚:澤田さんの取り組みは、情報を可視化し、伝えるというものですね。ウェブサイト作成にあたり心掛けていることはありますか?
澤田:ウェブサイトを作るうえで一番意識している点は、筑波大附属だけに出身者が偏らないことです。でも、高校から筑波大附属に行きましたという人も多くいます。こういったインタビューをやっていくとどうしても筑波大附属出身の人が多くなるので、その辺のバランスを取るように心がけています。また、個人的にはパラリンピック選手とのつながりなど飛びぬけて活躍している方の知り合いが多いんですけど、そういう方ばかりではなくて、事務職として働いている方など現実的なロールモデルを載せようとしています。あとあはきの方は多くもなく少なくもなくというように意識しています。実際あはきだとヘルスキーパーも開業も、そのほかの形もあるという多様性をウェブサイトでは示そうとしています。
戸塚:ウェブサイトを作る中で見えてきた課題はありますか?
澤田:編集方針としてバランスをキープするよう意識していますが、唯一バランスが悪いのは、盲重複の人が相対的に少ないことです。今重点的に探しています。盲重複の家族であればなおさら、卒業後のことを心配されています。情報がもっと集まるといいなと思っています。インタビューに当たって本人が難しい場合は親御さんに話を聞いています。まだまだ掲載数が少ないので、自薦他薦問わず、インタビューを受けていただける盲重複の方を広く募集しています。
戸塚:実行委員会がウェブサイトを作っていますが、メンバーは何人くらいですか?
澤田:10人くらいいますが、正直言いますと、僕一人でサイト制作、発信、インタビュー、記事作成を行っています。メンバーからは、この人に話を聞いてみてはと人を紹介してもらうことがあります。現状はワンオペで行っているので、仕事の空き時間に作業をしています。ですから、インタビューは1週間に一人しかできない状況です。
戸塚:ウェブサイトを作ったことでどんな反響がありましたか?
澤田:一番情報を届けたい盲学校にはかなり広がっています。特に先生方から感謝の言葉をいっぱいいただいています。今盲学校で子供たちに教えているけれど、子供たちが将来どういう仕事をするのか具体的なイメージが持てないという先生もいます。そういった先生に盲B盲Gを見ていただきたいです。今、時代はものすごいスピードで動いています。全盲の方でもシステムエンジニアになっています。実際に盲B盲Gでも全盲のシステムエンジニアの方を紹介しています。子供がシステムエンジニアになりたいといったときに盲学校の先生にその視点がないと、夢を否定してしまうことがあるんですね。実はこれが実際に起こっていて、ある高校生の男の子が先生に相談したら無理と言われてしまった。結果、その子は学校に通えていないんです。先生が実情を把握していないがゆえにそういうことが起こっていると思います。先生方からは、ウェブサイトを見てこういう働き方がある、可能性があるんだと知ったことで、生徒への指導の仕方が変わったという感想をいただきました。また、夢を頭ごなしに否定しない姿勢が生まれましたといった感謝の言葉ももらいました。それから、視覚障害当事者の大人の方も読んでくださっています。自分と同じような障害を持つ方がどのように働いているのか、意外とそうした情報が不足しているようです。ウェブサイトを見て自分のキャリアを振り返ることができましたという感想が多く寄せられています。
戸塚:盲B盲Gに関連して将来的に何か取り組みたいことはありますか?
澤田:これからやっていきたいことがあります。就職活動をする際は一般的にOBOG訪問を行います。それと同様に、盲B盲G訪問という企画を始めようとしています。これまで20人以上にインタビューをしてきましたが、実は僕が一番驚いたのは、皆さんが一様にもっと盲学校の力になりたい、もっと盲学校とつながりたいとおっしゃっていることです。自分の経験を伝えたい、子供たちにアドバイスをしたい、と。そういう意欲のある卒業生と盲学校がつながっていないという課題が見えてきました。なので、この盲B盲G訪問を通して盲学校の生徒と卒業生をつなげたいと考えています。ちょうど1週間前にさきほどお話しした、システムエンジニアの夢を先生から否定された男の子が、ウェブサイトに掲載されている方に盲B盲G訪問をしました。実際に2時間くらい話していただいて、男の子の夢の解像度がぐんと上がりました。システムエンジニアにもいろいろな役割がありますが、その男の子は裏方みたいなエンジニアリングを担うのがいいのかなと思っていました。それが先輩エンジニアに盲B盲G訪問したときに、いや裏方どころか全体の構成や企画を立てるところからできるよと言われてモチベーションが上がりました。要は、公園を作ると仮定して、遊具の一部を作るのではなくて、公園を丸ごと企画設計することを君もできるよと言われたんですね。訪問を終えた後、男の子からは人生が変わるようなすごく良い時間でしたというお礼のメッセージをもらいました。これには手ごたえを感じましたね。早ければ7月から始めていきます(訪問の内容は現在公開中)。そういうことを通じて今まで出会えそうで出会えなかった、子供を含めた盲学校側と卒業生が最短距離でつながることが増えればすごくいい結果が生まれると予感しています。

   ホワイトレター
戸塚:澤田さん、盲B盲Gのほかに新たに立ち上げた企画をご紹介ください。
澤田:僕の息子が盲重複で、彼が小学部6年生の時に盲学校の進路相談会があったんです。妻が参加したところ、開口一番に先生が、「お母さんたちあきらめてください、現実を見てください」と言いました。つまり、盲重複は働けないです、生活介護です、と。まあそうなのかもしれませんが、果たしてすべてをやりつくしてそう言っているのかというと疑問です。あと、時代もどんどん変化しています。ほんとかなって思ったんですね。僕は人の話をうのみにしませんから。実は盲重複の3家族で協力し合っていて、去年の4月に一般社団法人フルワンダーを立ち上げました。盲重複の中学部2年生から高等部2年生の男の子がいるんですけど、彼らがどんな働き方だったら可能性があるのか、やるだけやってみようというのが前提にあります。去年はホワイトレターという事業を立ち上げました。これは手紙の代筆サービスで、晴眼の人から晴眼の人へ手紙を送りたいと思ったときに、子供たちに依頼してわざわざ手紙を点字にしてもらうというものなんです。手紙には点字表も添えられていて、受け取った側は点字のリテラシーがなくても点字表を見ながらゆっくり手紙を読むことができます。なぜこれをやっているのか。今は情報量が多すぎて、言葉が届かない、すぐに忘れ去られてしまう時代です。右から左に言葉が流れていく中で、このホワイトレターはゆっくりしか読めません。たとえば10分かけて手紙を読みます。10分かけて読んだ手紙は忘れないですね。それは言葉を読むというより言葉を味わうという感覚です。なので、言葉がきちんと届く手紙として機能しているんですね。子供たちは盲重複で、できることは限られています。みんな盲学校で頑張って6年くらいかけてパーキンスで50音を打てるようになりました。数は少ないかもしれないですが、それは彼らが丁寧に習得してきたスキルとも言えます。なので、彼らが今持っている手札は何かと観察した結果、点字を打てるということが出てきました。それが現代社会のどんな課題を解決できるかと考える中で、今はコミュニケーションが速い時代ですが、その対極の遅いコミュニケーションが不足していると感じました。そこで不便なコミュニケーションと言える点字の手紙を思い付いたのです。人間社会では、進化し便利になればなるほど、必ずその裏側で不便とか遅いとか使いづらいというものが残ってきました。ホワイトレターにもそれと共通する価値があると考えています。
戸塚:澤田さん、今日はお忙しい中、貴重な話を聞かせていただきありがとうございました。

(寄稿)誘導ブロック敷設に思う

浜松ロービジョンの会会長/赤堀奈津子

 普段、私ども視覚障害者は、浜松市福祉交流センターを頻繁に利用しています。そこには、会議室、卓球・STTができる練習室、調理室があります。
 同センターは4年前に大規模改修工事をしました。改修工事が始まる2年前、唐突に改修工事を行う旨を伝えられ、使用団体に意見の問い合わせがありました。その際、まさか歩道から正面玄関に向かう誘導ブロックが変更されるとは思いもしませんでした。
 新しくなったセンターに出かけた私は、改修された誘導ブロックに白杖と足を踏み入れたとたん、驚いたのです。以前、歩道からまっすぐ伸びていた誘導ブロックが、3歩歩くと右に曲がり、また3歩歩くと左に曲がり、結局、くねくねと5回曲がって、やっとの思いで会館に入ることができました。これを皆さんにも体験してもらうと、誘導ブロック上を歩いているうちに、どこを歩いているかわからなくなってしまうという感想が口をそろえて出てきました。
 そこで、私ども、福祉を考える会、浜松ロービジョンの会、浜松市視覚障害者福祉協会は、浜松市に要望書を提出しました。しかし、市からの回答はありませんでした。これで3回目。私どもは、浜松市のホームページにある「市長へのご意見箱」に質問状の形でメールを出しました。ところが、市からの回答は差しさわりのないものでしかありません。つまり、要望した誘導ブロックの再改修はできないということです。
 見えない、見えにくい当事者が、安全に歩くための誘導ブロックと思っていたのに、そこにはキッチンカーなどの車両が入るために隅に寄せられて敷設されています。これは見掛け倒しであり、誇らしげに見せつけているようにしか思えません。
 一般の方々は、誘導ブロックが敷設されているだけで、バリアフリーが整っていると勘違いしてしまいます。
 ほかの道路でも歩きにくい誘導ブロックが敷設されていますが、まずは、福祉の名前を冠した浜松市福祉交流センターを見直していただきますよう祈るばかりです。

編集後記

 7月28日に令和8年熊本地震が発生しました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 現地では35℃を超える猛暑の中、8月9日時点6183人が避難所で生活しています。
 日本盲人福祉委員会(日盲委)では、8月1日より歩行訓練士や生活指導員などが被災地に入り、被災視覚障害者を訪問しています。また、日盲委は、現地での支援活動及び被災した視覚障害者の生活立て直しのために義援金を募っています。
 ゆうちょ銀行義援金受付口座:
郵便振替口座 00100-8-729004
口座名義 被災視覚障害者義援金
 他の金融機関から振り込む場合の受付口座:
ゆうちょ銀行店名(店番) 〇一九(ゼロイチキュウ)店
預金種目 当座
口座番号 0729004
口座名義 被災視覚障害者義援金
 なお、振込手数料は自己負担です。(戸塚辰永)

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