点字ジャーナル 2023年2月号

2023.01.25

目次

  • 巻頭コラム:リスクとベネフィット
  • 長谷川貞夫先生の逝去を悼む
  • 理療の未来はどうなる?
      ―― 理教連創立70周年記念式典より
  • 第2回点字考案200年記念事業「講演会&シンポジウム」
  • (寄稿)パリを占う視覚障害者柔道の国際大会が初めて日本で開催!
      ――その結果と展望
  • ポストコロナのネパールを行く 荒れた街の不条理(2)
  • (寄稿)見えない水色の小さなカード
  • ネパールの盲教育と私の半生(20)統合教育の課題
  • 西洋医学採用のあゆみ(23)脚気原因の究明その3
  • 自分が変わること(163)空手バカの肋骨2本
  • リレーエッセイ:ブラインドラグビーと私(下)
  • アフターセブン(95)失敗は取り返せ!
  • 大相撲、記録の裏側・ホントはどうなの!?
      (246)悔しさを乗り越えて― 今年は元大関の逆襲が始まる
  • 時代の風:加齢黄斑変性痩せても悪化リスク、
      薬の電子処方せん全国で運用開始、
      低糖質・高タンパク質食と記憶能の低下、眼底画像から年齢推定
  • 伝言板:劇団民藝公演、かわさき冬のコンサート、
      横浜能楽堂施設見学会・バリアフリー能、
      第11回企画展「石を感じる」
  • 編集ログ

巻頭コラム:リスクとベネフィット

 今からちょうど30年前、バスツアー中に車酔いで苦しむ乗客がいた。車外であまりに激しく嘔吐を繰り返すので、添乗員がトラベルミンの服用を勧めた。ところがその乗客は「強い薬だから飲みたくない」と、特にアレルギーなど体質に問題がないにも関わらず頑強に言い張った。このためバスはなかなか再出発できず、他の乗客は巻き添えをくって予定より1時間も遅れて目的地に到着した。
 そんなことを思い出したのは、米FDA(食品医薬品局)が、「65歳以上の米国人1740万人を対象にした調査で、ファイザー製ワクチンを接種する前と後で、肺塞栓症<ハイソクセンショウ>になる頻度が統計的に有意に高い」と公表したため、5回もコロナワクチンを打った私は動揺したからだ。
 肺塞栓症の代表例はエコノミークラス症候群である。飛行機の狭いシートに同じ姿勢で長時間座ったままでいると、足の血液循環が悪くなって、静脈に血の塊(静脈血栓)ができる。その後、飛行機を降りて歩き始めると、静脈血栓は足の血管壁から離れ、血流に乗って肺に移動し、肺動脈を詰まらせる。同様に、大震災の避難所や車中で生活する被災者やトラックの長距離運転手なども肺塞栓症を発症しやすいことが知られるようになった。
 薬やワクチンにはベネフィット(利得)がある反面、副作用や副反応としてのリスクもつきものだ。一切のリスクを認めたくなければ、すべての薬を拒否し、飛行機にも車にも乗ることはできない。
 リスクとベネフィットを考える際の指標の一つは情報公開だろう。ワクチンを承認したFDAが、そのワクチンの問題点をもあえて指摘するのは、潔い科学的な態度で信頼に足ると考えられる。
 コロナワクチンが次々に開発された頃、中国製やロシア製のそれに対するデータ不足が、効果以前に疑惑の目で見られた。そして今に至ってかなり問題があることがわかってきている。FDAや米CDC(疾病予防管理センター)は間違いもアッケラカンと公表するので、少なくともわが国政府より信頼していいように思う。(福山博)    

理療の未来はどうなる?
――理教連創立70周年記念式典より――

 昨年(2022年)12月18日(日)、日本理療科教員連盟(理教連・工藤滋会長)は、東京都千代田区のアルカディア市谷(私学会館)に会員、関係者、来賓が参集し、日本理療科教員連盟創立70周年記念式典を開催した。式典の模様は記念祝賀会を除いてズームで配信されたが、音声が鮮明でなかったため十分な取材ができなかったことをはじめに申し上げる。
 第1部の記念講演会では、まず「視覚障害者の理療を未来につなぐために」をテーマに栗原勝美理教連前会長が詳細なデータを示しながら基調講演を行った。講演にあたり栗原氏は、「視覚障害者の理療教育・理療業は厳しい実態にさらされて久しく、このまま手をこまねいていると、近い将来視覚障害者の理療教育・理療業は衰退し、消滅しかねない」と危機感をあらわにした。
 理療教育課程の在籍生徒数は2004年度が1666人であったのに対し、2022年度は559人にまで激減している。このため、入学定員を満たしていないので、基本的に入学希望者全員を入学させる学校がほとんどである。
 学級構成を見ると、生徒数ゼロの欠学級が本科保健理療科で目立っていたが、近年専攻科理療科でも欠学級が見られるようになった。1学級当たりの生徒数は、2020年度で専攻科理療科が2.6人、専攻科保健理療科が2.2人、本科保健理療科が1.4人となり、生徒同士が切磋琢磨してあはきを学ぶ状況になく、学習意欲に乏しい生徒も増えている。
 また、生徒は、学齢の生徒から70歳以上の生徒まで幅広く、40歳以上が中心である。そのうち弱視が8割以上を占めている。生徒の中には愛の手帳保持者や発達障害があると思われる人、うつ病や基礎疾患を有する人もおり実に多様な生徒が学んでいる。基礎疾患のある生徒は定期的に通院する必要があるため、1学級に1人しかいない場合授業が進まないという問題もあるという。
 学習面では、点字も墨字も使えない、パソコンやデイジーなどの機器操作が未熟で学習に支障をきたしていたり、歩行訓練がままならず生活スキルに課題がある生徒もいる。
 2018年に実施された調査によると、大学等高等教育機関に在籍する視覚障害者は868人で理療科の生徒数を遥かに凌いでおり、理療によほどの魅力がない限り入学者を増やすことは難しいのではと栗原氏は考えている。
 2019年度に248人が理療教育課程に入学し、そのうち退学や留年せずに3年生まで進んだ生徒は175人。そして、第30回あまし師国家試験に159人が受験し、130人が合格した。これは、入学者248人のうちあまし師合格者は130人(52.4%)であり、入学者の2人に1人しかあまし師試験に合格できないという現実を示している。国家試験に現役で合格できず再受験し合格した人の割合は、1割に過ぎない。
 理療教育課程に入学してあん摩はできるようになった国家試験不合格者を救うためには「卒業をもって開業権のない、就労だけができるあまし師を認める。これは2枚免許につながる問題なので反対意見も多いと承知しているが、大胆にこうした問題を検討していくことが望ましい」と栗原氏は問題提起した。
 ハローワークを通じた視覚障害者への職業紹介統計によると、事務職への就職が割合としては増えているが、年に300人前後で推移している。今後AI技術の進歩により、事務職への就職・就労は厳しくなると予想される。
 一方、あはき関係への就職は33%まで低下したものの、あはき業は人と人との関係性を大切にする職業であり、国民から親しまれており、視覚障害者の職業として生き残る可能性があるという。そうしたことから、あはき師免許、特にあまし師免許が今後も役に立つと語った。
 盲学校の児童・生徒数は1967年をピークに減少に転じている。10年毎の減少率は13.7%から32.9%である。今後10年毎の減少率を15%と見積もると、2032年には1945人、2042年には1653人と予想される。同様に2022年の理療教育課程在籍生徒数を基準に計算すると、2042年には404人となる。しかし、総人口の減少、高齢者の増加、眼科医療の進歩により、理療教育課程在籍生徒数は300人程度になると栗原氏は考えている。
 最後に、厳しい状況を打開する方策として、①現状の盲学校入学資格基準を守りながら、理療、教育を未来につなぐためには、大胆な盲学校の再編が必要である。その上で、入学者選考を適切に行うことが必須である。②盲学校の入学基準について、視覚障害者に関する米国の基準を導入し、0.5以下の視力として盲学校理療教育課程の活性化を図る。③魅力ある進路を提供できるよう、自立支援施策の改善・充実を求める活動が必要である、と提言し講演を締めくくった。
 続いて、「今後の理療教育を考える――各支部の取り組みと全国的な連携を中心に」をテーマに、茨城県立盲学校鈴木章氏、愛知県立名古屋盲学校寺西昭氏、山口県立下関南総合支援学校小溝健靖氏が各支部の状況について報告した。大分県立盲学校末永多香光氏が情報部の取り組みとして、ICTの活用による理療の魅力や理教連ユーチューブチャンネルによる研修内容の発信等に取り組んでいることなどを発表。
 また、神戸市立盲学校森岡健一氏は、生徒減少にあたりひとりでも多くの生徒をといった単に数を増やすという発想から、理療を通じて社会に貢献したいという生徒を増やすという発想の転換が必要だと訴えた。
 シンポジウム終了後、来賓が祝辞を述べた後、藤井亮輔第12代理教連会長、栗原勝美第13代理教連会長が功労者表彰を受けた。
 そして、東京点字出版所肥後正幸理事長に感謝状が贈られ、その後記念祝賀会が開かれた。(戸塚辰永)
  

編集ログ

12月7日に中国政府は、医療資源や高齢層のワクチン接種などの準備が整わないまま「ゼロコロナ」政策緩和を発表しました。英経済紙『フィナンシャル・タイムズ』は12月の20日間に、中国で2億5000万人が新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したと報じました。
 ロイター通信によると、世界保健機関(WHO)マイク・ライアン保健緊急事態事業事務局長は「中国が政策転換したら急にコロナが制御不能になったという解釈があるが、感染が急拡大したのは、そもそも既存のゼロコロナ政策の手法ではオミクロン株の広がりを制御できなかったからだ。ゼロコロナ政策の転換を発表する前から、中国では感染拡大は集中的に進んでいた」との見方を示しました。
 私たちが中国に厳しい目を向けるのは、2020年1月、湖北省武漢市はコロナ患者であふれていたにも関わらず、それを隠蔽し初動対応を遅らせたため、感染爆発が起きたことを覚えているからです。そして中国はコロナ禍が情報公開を怠ったために起きた人災であるという教訓を忘れ、同じ轍を再び踏もうとしています。
 昨年11月下旬、中国政府は民間企業や研究機関に対してCOVID-19のゲノム(遺伝情報)配列の解析を当分の間行わないよう通知しました。これは感染爆発に直面する中国政府が、情報を厳格に管理することで、新たな変異株が見つかった場合などに、国内外の世論に与える影響を最小限に抑える狙いがあるとみられます。
 中国で目下起こっているCOVID-19の感染爆発は、新たな変異株や派生型を生む可能性が強いので、WHOは中国政府に対し、他の国々が広く公開している感染者数や重症患者数、入院者数などの保健統計の透明性を高めるよう要請しました。それに対して中国外務省報道官は、「中国は一貫して法に照らして適時、オープンかつ透明性をもって感染状況に関する情報を発表してきた」と開き直っています。(福山博)

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