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協会概要

ヘレンケラー・サリバン賞

 「ヘレンケラー・サリバン賞」は、視覚障害者の福祉・教育・文化・スポーツなど各分野において、視覚障害者を支援している「晴眼者」にお贈りする賞です。これは、「視覚障害者は、何らかの形で健常者からのサポートを受けて生活している。その支援に視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が1993年(平成5年)に創設しました。なお、同賞の名称は、ヘレン・ケラー女史と同女史を生涯支え続けたアン・サリバン女史の両氏の名に由来します。
 選考は、視覚障害者によって推薦された候補者の中から、当協会が委嘱する視覚障害者の選考委員によって、検討・決定しています。第1回の社会福祉法人全国盲ろう者協会理事長の小島純郎千葉大教授に始まり、毎年1回、選ばれた個人・団体の献身的な行為と精神に対し、感謝を込めてお贈りしています。

第30回(2022年度)ヘレンケラー・サリバン賞に藤野克己さん

(写真)受賞者の川藤野克己氏

藤野克己

 本年度の「ヘレンケラー・サリバン賞」は、全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情)の元事務局長で、日本点字委員会(日点委)副会長、日本点字普及協会理事長の藤野克己(ふじの・かつよし)さん(78)に決定した。
 第30回を迎えた本賞は、「視覚障害者は、何らかの形で外部からサポートを受けて生活している。それに対して視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が委嘱した視覚障害委員によって選考される。
 贈賞式は10月7日、協会と藤野さんの自宅をオンライン(Zoom)で結び開催され、藤野さんに本賞の賞状と、副賞のヘレン・ケラー女史直筆のサインを刻印したクリスタルトロフィーが贈られた。以下、敬称略。

授賞理由

 日本赤十字社神奈川県支部の青年赤十字奉仕団で点訳等のボランティア活動を行っていた藤野克己は、1965年に新設された神奈川県点字図書館(現・神奈川県ライトセンター)に就職する。
 当時、全国の点字図書館は点字書籍を相互に貸借していたが、点字表記が施設によって違っていたので視覚障害者が戸惑うことも多かった。また、北海道の施設が点字に詳しい視覚障害者を職員として採用しようとしたが、点字に関する資格がそもそも存在しなかったので道庁の承認が得られないという悲劇も起きた。
 そこで日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)点字図書館部会(現・情報サービス部会)は、資格認定講習会を実施することに決め、ついてはそのテキストとして『点訳のてびき』をまず作成することにした。そのための編集委員に藤野も志願し、若手職員7人が泊まり込みで、短期間に『点訳のてびき』第1版を編集し、1981年3月に日盲社協点字図書館部会から発行された。そして同年夏に東京で第1回点字指導員資格認定講習会を開催した。その後も藤野は『点訳のてびき』の発行に継続して携わり、初版発行から38年後の2019年2月に刊行された第4版まで関わった。
 また、1978年から日本点字委員会の委員として、同委員会が発行する『日本点字表記法』の編纂にも関わり、現在も日点委の副会長を務めている。藤野が編集委員として携わった点字に関する書籍は、他にも『点字表記事典』や『点字を必要とする人びと』など多数に及ぶ。
 1984年藤野は岐阜訓盲協会(現・岐阜アソシア)に転職し、1990年から2004年の退職時まで図書館長と常務理事を兼任した。そのかたわら藤野は、まったくのボランティアでITによる点訳ネットワーク構築にも心血を注ぐ。
 日本IBMは、社会貢献事業として「IBMてんやく広場」を1988年に開始した。そして1993年に「てんやく広場」に改称し、日盲社協点字図書館部会特別委員会の事務局(岐阜訓盲協会)が運営を引き継いだ。そして、1998年に「てんやく広場」は発展的に解消して、全視情協に受け継がれて「ないーぶネット」が発足。このオンライン視覚障害図書館の黎明期から発展期の1990年から1998年まで藤野は運営委員長として点字データの共有化からデータを利用者に開放して24時間・365日いつでも自由にデータのダウンロードができるシステムを構築した。
 2004年に藤野は60歳で岐阜アソシア(元・岐阜訓盲協会)を退職し、地元神奈川県に戻り、2019年まで大和市の自宅に全視情協事務局を置いた。この間の2010年に「ないーぶネット」は、視覚障害者情報総合システム「サピエ」へと発展し、藤野はその運営を行う全視情協事務局長を2007年から2019年まで務めた。
 また、2013年には、自宅を事務所に日本点字普及協会を立ち上げた。活動の柱は、中途視覚障害者へのラージサイズ点字を用いた点字触読指導の普及と、一般への点字普及活動だ。「中途視覚障害者に対する点字学習指導法研修会」は、過去に、名古屋市・仙台市・札幌市・北九州市・東京都新宿区の5か所で開催し、今年は岐阜市と堺市で計画している。日本点字普及協会では、点字を読む側から書ける凸面点字器「トツテンくん」を開発し、中途視覚障害者の点字習得や小学生の点字体験学習に役立てている。
 このように藤野は、点字表記法や点字資格認定講習会の整備。点訳ネットワークの構築と運営。そして一般への点字の普及等、視覚障害者の文字である点字に関するたゆまぬ研鑽と手弁当による尽力を通じて、視覚障害者の福祉に貢献してきた。

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