東京ヘレン・ケラー協会会報『青い鳥(L'Oiseau bleu)』 第47号 2026年2月20日発行 発行人:奥村博史 編集人:大木俊治 製作:広報委員会 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会(Established in 1950) 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 ヘレン・ケラー治療院 鍼灸・あん摩マッサージ指圧 電話 03 (3200) 0585 FAX 03 (3200) 0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、  〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 ●第75回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール  「第75回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」(東京へレン・ケラー協会主催、参天製薬株式会社・名古屋宗次ホール協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社など後援)が昨年11月16日、東京都文京区のトッパンホールで開かれた。審査は、ピアニストで国立音楽大学元教授の花岡千春先生、桐朋学園大学特命教授の梅津時比古(うめづ・ときひこ)先生、声楽家の淡野弓子(たんの・ゆみこ)先生、ヴァイオリニストの和波(わなみ)たかよし先生。全国から27人が参加し、最も感銘を与えた演奏に贈られるヘレン・ケラー賞は、ピアノ1部で1位を受賞した近江(おうみ)あさひさんが獲得した(=写真)。 出場者演奏のあと、菅谷茉友(すがや・まゆ)さん(ソプラノ)、安井英樹(やすい・ひでき)さん(ピアノ)による特別演奏が行われ、2曲を披露し、会場を魅了した。 ●第75回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールに入賞された方々は次の皆さん。 (敬称略、学年は開催時。該当なしの順位もあります) 【ピアノ1部】 1位=近江あさひ(筑波大附視覚特別支援・小2) 奨励賞=小林玲次郎(東京都立葛飾盲・小2)、鹿野藍時(筑波大附視覚特別支援・小2) 【ピアノ2部】 1位=小沼峻稀(さいたま市立中島小・4年) 奨励賞=南部開(東京都立久我山青光学園・小5)、加藤詩温(筑波大附視覚特別支援・小6)、奥本駿(福岡県立北九州視覚特別支援・小6)、川田陽大(筑波大附視覚特別支援・小6)、浅田晴(栃木県立盲・小6) 【ピアノ3部】 2位=有水さやか(千葉県立千葉盲・中1) 3位=志村夏歩(筑波大附視覚特別支援・中1) 奨励賞=山本祐樹(大阪府立大阪北視覚支援・中2) 【ピアノ4部】 1位=北村咲希(三重県立盲・高3) 3位=宮悠樹(横浜訓盲学院・専3) 奨励賞=長縄美波(筑波大附視覚特別支援・高2)、井上奏人(筑波大附視覚特別支援・高3) 【弦楽器の部】 2位=新倉将希(クラシックギター、神奈川県立平塚盲・中2) 【その他の楽器の部】 2位=黒宮大貴(リコーダー、三重県立盲・高1)、安岡大騎(桶太鼓、広島県立広島中央特別支援・中3) 【創作編曲の部】 2位=新倉将希(創作、神奈川県立平塚盲・中2) 【独唱1部】出場者なし 【独唱2部】 2位=田中雄大(茨城県立盲・高2) 【重唱・合唱の部】 奨励賞=志村夏歩 牧嶋柚月(筑波大附視覚特別支援・中1) ●第33回ヘレンケラー・サリバン賞にCWAJ  視覚障害者への支援に功績のあった人や団体を表彰する「第33回(2025年度)ヘレンケラー・サリバン賞」(東京ヘレン・ケラー協会主催)の贈賞式が昨年10月10日、当協会3階ホールで行われた。今年度の受賞者は一般社団法人 College Women’s Association of Japan(CWAJ、カレッジ・ウイメンズ・アソシエーション・オブ・ジャパン)で、贈賞式にはハイディ・ズコウスキー・スウィートナム会長、洋子モスコウィッツ副会長、視覚障害者との交流プログラム Volunteers for the Visually Impaired (VVI、視覚障害者との交流の会)委員長の中瀬恵里さん、ナンシー鶴巻さん、元CWAJ会長の柳田昌子さんの5人が出席した。奥村博史理事長からスウィートナム会長に賞状が、選考委員長の指田忠司・日本盲人福祉委員会常務理事から副賞としてヘレン・ケラー女史の直筆サインを刻印したクリスタルトロフィーが鶴巻さんに贈られた。  CWAJは1949年、戦前に米国の大学で学んだ日米の女性たちによって設立され、現在は25カ国約400人の女性で構成する非営利のボランティア団体。奨学金給付やVVIの活動を通じ、視覚障害のある学生を支え、国際交流や英語教育の機会を提供してきた。  スウィートナム会長は英語で受賞スピーチを行い、CWAJの活動の柱の一つに、視覚障害者コミュニティの支援を通じた国際的な理解と友情の輪の拡大を挙げた。またVVIの活動として、日本視覚障害者職能開発センターでの英会話クラスや英会話による文化交流イベント、筑波大学附属視覚特別支援学校の生徒を対象にした英検模擬試験などを実施していることなどを紹介。「今後もCWAJは視覚障害者コミュニティの皆様との絆を大切にし、教育と文化を通じて相互理解を深める活動を続けていきます」とあいさつした。授賞理由の詳細は、協会HPの「ヘレンケラー・サリバン賞」(https://thka.jp/801/)に掲載されている。 ●THKA Japan 基金を設置  当協会は1986年、ネパールの児童・生徒に点字教科書を無償提供することを目的に「点字印刷技術移転事業」を始めた。ネパール盲人福祉協会(NAWB)の職員を招いて技術研修を行い、1992年1月にNAWB点字印刷所を首都カトマンズに建設。その後も点字教科書発行を中心としたNAWBの事業を側面支援してきた。  開始から40年の節目となる2026年度に直接支援を打ち切り、代わりに「THKA Japan基金」を創設してNAWBに運営・管理を委託することでフォローアップを半永久的に継続することにした。 昨年7月、当協会から300万円をネパールに送り、これを基にネパールの銀行に基金を設置すること、基金の利子をネパールの視覚障害者のために点字教科書を製作する費用に充てることを記した覚書に、当協会の奥村博史理事長とNAWBのオンタ議長がそれぞれ署名し、郵送で交換した(=写真)。10月、NAWBの上部組織である社会福祉評議会(SWC)で基金設置が正式に認められたことを受けて、当協会の海外事業への寄付金を積み立てた300万円を送金し、31日にネパール側から受領確認の連絡があった。これをもって、基金の開設と運営はNAWBに委託された。基金の運営状況については覚書に基づき、毎年10月にNAWBから年次報告を受けることになっている。 新設される「THKA Japan 基金」と、既にNAWBに委託されている三つの育英基金事業(安達禮雄基金、正雄基金、順子女子育英基金)については、NAWBからの報告を受け、その執行状況を、年2回発行する「愛の光通信」で寄付者などに報告する。昨年まで続けてきた「愛の光通信」点字版・墨字版の発行と送付は昨年夏号を最後にとりやめ、12月発行の冬号から希望者にPDF版とTXT版をメールで送り、同じものを協会HPに掲載する方式に変更した。 ●パンフレットを改訂  4年前にヘレン・ケラー治療院開設、昨年3月に学院が閉校したことに伴い、昨年10月に法人パンフレットを改訂した。各施設に置いているほか、在庫は本部管理室で保管している。 ●消防避難訓練 早稲田別館合同で  昨年9月11日、消防避難訓練が行われた。今回は例年のような東京ヘレン・ケラー協会の単独開催ではなく、毎日新聞社早稲田別館の全テナントによる合同の訓練に加わった。  10時20分の館内放送を皮切りに、避難を開始。強い地震のあと地下1階の燃料保管庫で火災が発生、1階に延焼したという想定で、非常階段で別館4階のベランダ(毎日販売協栄内)へ避難。10時30分には避難が終わり、目標の「10分以内での避難」を達成できた。  その後、10時50分から別館5階会議室で消火器講習があり、10分程度の動画を視聴した。 引き続き、全テナント合同による「AED・心肺蘇生講習」が、セコムより専門指導員を招き実施された。点字出版所からは防災委員3名を含め5名が実習に参加。ほかにも数名の職員が見学し、この貴重な機会に救命法を習得しようと、熱心に聞き入った。 ●突然の総選挙  新年早々1月10日付の読売新聞が「23日の通常国会冒頭解散、最短で2月8日投開票」と報じた。選挙通のベテラン職員が昨夏に退職するなど不安だらけの中で突然、選挙業務が始まった。  まずは総務省発注の点字パンフレット「投票方法等について」3万4225部の製作。学生アルバイトを急募し、職員も総出で取り組み、解散前の21日から全国47都道府県選管に発送を開始した。点字毎日号外「選挙のお知らせ」の発行で当協会の担当は、最高裁裁判官国民審査が17都道県分の約1万部、比例代表が東京都など約4200部、小選挙区が東京都(30区)など約5500部。このほか投票所に置く「氏名等一覧」約1万部、デイジー版約3000部の製作も業務に加わった。しかも今回は解散から公示(27日)をはさんで投開票まで「戦後最短」の16日間という超短期決戦で、業務はきわめて逼迫した。  毎日新聞社早稲田寮(別館6階)や近くのホテルに部屋を押さえ、編集、製版、印刷課の職員を中心に連日泊まり込みで業務に当たった。NHKから取材も舞い込み、30日夕方の「首都圏ネットワーク」の中で放送された。  途中、ある政党が原稿作成が間に合わずに選挙公報への掲載を見送るなど比例代表の入稿が大幅に遅れ、一時は2月4日の納期を守るのは絶望的だという声も上がった。それでも終盤の印刷業務に経験者らが応援に入り、経験豊富な職員が連日深夜まで準備を含めた発送業務に当たったことで、3日午前、無事すべての製作物の発送を完了することができた。 ●グローバル企業へ出張施術 昨年9月19日、ヘレン・ケラー治療院の利用者8人がJPモルガン東京オフィス(東京都千代田区)にて出張施術を行った。3回目の今年は5時間で28人に施術をした。初参加の利用者もいたが、早速治療院に予約を入れた社員の方もいた。出張施術は移動や環境変化もあり、利用者の疲労感が強くなりがちだが、楽しんで施術できたようだった。  ●助成事業報告 社会福祉法人丸紅基金 一、業務用ディスクデュプリケーターの購入 一、総事業費  647,900円 一、助成額   640,000円 一、納入年月日 令和8年1月20日 執行 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所  ●図書館ボランティア懇親会  点字図書館は昨年11月19日、第51回ボランティア懇親会を協会本館3階ホールで開催した。ボランティア・職員合わせて35人が参加。ボランティア活動を5年続けた方への感謝状の贈呈は、今年は点訳ボランティア3人、触読サポートボランティア1人が該当し、当日は2人の参加があった。  今年のメインイベントは、言語聴覚士の関口裕昭(セキグチ・ヒロアキ)さんによる講演「発達性ディスレクシアと私」(=写真)。全国の点字図書館やボランティア団体が加盟する視覚障害者等情報総合ネットワーク「サピエ」が、活字の本を読むのが困難な視覚障害以外の障害者も利用できるようになり、利用対象に含まれる読み書き障害(ディスレクシア)について学ぼうという試みだった。講演者の関口さんは、自身がディスレクシア当事者であるため、子供の頃に「知識欲があり本を読みたかったのに、文字を読んで理解することができなかった」経験を話した。現在の仕事に必要な専門書は、PC の音声読み上げ機能を利用して聞いたり、人に読み上げてもらって読むとのことで、「サピエには専門書が少ないので、専門書がもっと増えると嬉しい」というのも、視覚障害利用者から聞く意見と同じだった。  ●治療院でクリスマス会  昨年12月23日、ヘレン・ケラー治療院 鍼灸・あん摩マッサージ指圧では、利用者9人と職員7人が参加し、クリスマス会を開催した。 全員で食事を楽しんだあと、職員お手製の点字付き番号札を使い「第1回ヘレン・ケラー治療院クイズ大会(3択)」を実施したり、利用者による歌の披露や、くじ引き大会で盛り上がった。くじ引き大会では、1等から5等まで「冬に貰って嬉しいグッズ」を中心とした景品を用意し、当選者は喜びの声を上げていた。参加者全員が笑顔で楽しい時間を共有することができた。 ●人事 【点字出版所】〔採用・配属〕 <2025年10月1日> 八重樫知宏(やえがし・ともひろ、印刷課) <12月1日>生沼亜紗子(おいぬま・あさこ、総務課) ●編集後記 就任から1年半で2度目の衆議院議員選挙を経験することになりました。前回2024年10月は就任から3カ月で何もわからないまま終わりましたが、昨年7月に参院選を経験して態勢作りの必要性を痛感し、対策に1年かけて取り組もうと考えていた矢先でした。しかも選挙業務の経験豊富なベテランが協会を去り、点字自動製版機が不調で稼働停止中という危機的状況下での突然の解散総選挙。大いにあわてました。結果的に、全職員の奮闘で大きなトラブルもなく乗り切ることができましたが、業務過多で倒れる職員が出なかったのは奇跡だったとしか思えません。一時は納期に間に合わせるのは絶望的と高市早苗首相を恨みましたが、やはり「備えあれば憂い無し」、改めて課題を洗い出し、今後の糧としていく所存です。 今号でご紹介しましたが、昨年はヘレン・ケラー記念音楽コンクールで3年ぶりに「ヘレン・ケラー賞」受賞者を出し、ヘレンケラー・サリバン賞が初めて、国際的なボランティア団体に授与されました。今年はどのような新しい扉が開かれるのでしょうか。本年もよろしくお願いいたします。(大木俊治) ●広報委員会 委員長:大木俊治(業務執行理事・点字出版所長) 委員:大久保美智子(ヘレン・ケラー治療院) 委員:戸塚辰永(点字ジャーナル編集長) 委員:佐久間朋(点字出版所製版課) 委員:生熊枝里(点字図書館) 委員:生熊素万(点字出版所印刷課) --------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 https://www.thka.jp ---------- ++