東京ヘレン・ケラー協会会報『青い鳥(L'Oiseau bleu)』 第45号 2025年2月7日発行 発行人:奥村博史 編集人:大木俊治 製作:広報委員会 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会(Established in 1950) 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 ヘレン・ケラー治療院 鍼灸・あん摩マッサージ指圧 電話 03 (3200) 0585 FAX 03 (3200) 0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局  〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 第74回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール  「第74回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」(東京へレン・ケラー協会主催、参天製薬株式会社・名古屋宗次ホール協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社など後援)が昨年11月16日、東京都文京区のトッパンホールで開かれた。  全国から38名が参加。今回は5年ぶりに合唱審査も加わり、器楽7部門、声楽3部門の計10部門で日ごろの練習の成果を披露した。審査は、ピアニストで国立音楽大学元教授の花岡千春先生、桐朋学園大学特命教授の梅津時比古先生、声楽家の淡野弓子先生、ヴァイオリニストの和波たかよし先生にお願いした。 ヘレン・ケラー賞は該当者なし  最も感銘を与えた演奏に贈られるヘレン・ケラー賞は、昨年に続いて該当者がなかった。  特別演奏は、桐朋女子高等学校音楽科3年生(特待生)の朴沙彩(ぱく・さあや)さんによるピアノ演奏で、シューベルト(楽興の時 D.780 第3番 ヘ短調)、ラフマニノフ(ピアノソナタ 第2番 変ロ短調 作品36(1931年版))の2曲を披露し、会場を魅了した。 第74回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールに入賞された方々は次の皆さん。 (敬称略、学年は開催時。該当なしの順位もあります) 【ピアノ1部】 1位=小沼峻稀(さいたま市立中島小・3年) 2位=近江あさひ(筑波大付視覚特別支援・小1) 奨励賞=大江隼矢(筑波大付視覚特別支援・小3) 【ピアノ2部】 1位=野本彩華(筑波大付視覚特別支援・小5) 2位=浅田晴(栃木県立盲・小5) 3位=奥本駿(福岡県立北九州視覚特別支援・小5)、有水さやか(千葉県立千葉盲・小6) 奨励賞=加藤詩温(筑波大付視覚特別支援・小5)、志村夏歩(筑波大付視覚特別支援・小6) 【ピアノ3部】 2位=増島史裕(東京都立久我山青光学園・中2) 3位=新倉将希(神奈川県立平塚盲・中1) 奨励賞=山田凌虎(佐賀県立盲・中3) 【ピアノ4部】 2位=東玲那(横浜市立盲特別支援・高3) 3位=北村咲希(三重県立盲・高2) 奨励賞=森谷涼太郎(筑波大付視覚特別支援・高3) 【弦楽器の部】 奨励賞=新倉将希(クラシックギター演奏、神奈川県立平塚盲・中1) 【その他の楽器の部】 1位=角本詩(ユーフォニアム演奏、大阪市立港南中・3年) 【創作編曲の部】 奨励賞=片山優茉(川崎市立高津小・6年) 【独唱1部】 3位=松井知花(東京都立久我山青光学園・中2) 奨励賞=重永大武(練馬区立下石神井小・6年) 【独唱2部】 2位=神山翔(栃木県立盲・高3) 奨励賞=森琉士(愛知県立名古屋盲・高3) 【重唱・合唱の部】 奨励賞=筑波大付視覚特別支援小学部5年 第32回ヘレンケラー・サリバン賞に井上英子さん  視覚障害者への支援に功績のあった人・団体を表彰する「第32回(2024年度)ヘレンケラー・サリバン賞」(東京ヘレン・ケラー協会主催)が視覚障害者就労生涯学習支援センター代表の井上英子(いのうえ・えいこ)さん(73)に決まり、昨年10月8日、当協会3階ホールで贈賞式が行われた。奥村博史理事長から賞状が、選考委員長の指田忠司・日本盲人福祉委員会常務理事から副賞としてヘレン・ケラー女史の直筆サインを刻印したクリスタルトロフィーが贈られた。  井上さんは東京都世田谷区生まれ。大学在学中、成人学級で点字教室の講師を務めていた故・松井新二郎氏(全盲)と出会い、松井氏が運営していた日本盲人カナタイプ協会(現・日本視覚障害者職能開発センター)に就職して携帯文字読み取り機「オプタコン」の講習や指導を担当。1985年の米国研修中、視覚障害者が一般企業で就労している現場を見て、日本でもパソコンなど情報機器操作を学んで一般就労する道を切り開いた。2006年に職能開発センターを退職後、世田谷区の京王線明大前駅近くに視覚障害者就労生涯学習支援センターを設立。現在も求職者や在職者を対象にパソコン講習などの訓練コースを開き、職場適応援助者(ジョブコーチ)として事業所を訪問するなど支援を続けている。  井上さんは受賞スピーチの中で、母に初めて買ってもらった本が「ヘレン・ケラー物語」だったことを明かし、米国研修中にニューヨークのAmerican Foundation for the Blind(アメリカ盲人協会)を訪れ、「『この机でミス・ヘレン・ケラーはお仕事をしていました』と説明を受けたとき、女史は歴史上の人物から身近な人に変わりました」と思い出を語った。受賞理由の詳細は、協会HPの「ヘレンケラー・サリバン賞」(https://thka.jp/801/)に掲載している。 ネパール出張報告2024 海外盲人交流事業事務局長・福山博  昨年12月14日〜24日、ネパールに出張した。今回は盲学校から自宅近くの普通校(ジャナタ高校)に転校した弱視児カリシュマ・カトリ(9歳、5年生、3姉妹の三女)を、盲学校に連れ戻すという特別なミッションがあった。彼女は5か月間、ダーラン盲学校で歩行訓練と点字の初歩を学んだが、私は「それまで墨字で教育を受けてきたのに、盲学校でいきなり点字を教えられ、それがショックで実家に逃げ帰ったのではないか」と考えていた。 自宅近くに設備が整いサポート体勢が万全な学校があれば、そこで学ぶに越したことはないが、そうでなければ中学(10年課程)の卒業さえおぼつかない。2023年12月、ネパール盲人福祉協会(NAWB)のホーム・ナット・アルヤール理事と私はジャナタ高校を訪れた際に問題点を指摘し、カリシュマの盲学校への転校を提言したが、家族は頑として承知しなかった。今回私たちは、10年課程修了国家試験(SEE)に合格し、その意味を熟知しているであろう晴眼者の長女(17歳、11年生)に特に強く働きかけた結果、説得に成功し、三女の転校が決まった。 私とアルヤール氏は三女と母親、長女の三人を連れてダーラン盲学校に向かった。車で1時間弱の距離だ。盲学校では校長をはじめ大歓迎してくれた。途中、弱視児が授業でパソコンを操作しているのをみて、三女は目を輝かせ、長女は「ジャナタ高校にはパソコンはありません」と言った。盲学校へ登録に行く日、三女がお腹を壊して一度延期されたが、その後無事に入学できたという報告が年末にあった。私は胸を撫で下ろした。 日本ネパール協会から感謝状  日本とネパールとの文化交流事業や国際親善などを実施している日本ネパール協会は、1964年12月5日に設立され、昨年60周年を迎えた。東京ヘレン・ケラー協会は、海外盲人交流事業発足以来、40余年加盟し続け、日本ネパール協会を支えてきたということで、このたび「感謝状」を贈られた。(写真右)また記念品として、ネパールにあるエベレストをはじめとする8,000m峰8座をデザインした赤と青のグラスをいただいた。(写真左) 図書館ボランティア懇親会でコンサート  第50回図書館ボランティア懇親会を昨年11月29日、協会3階ホールで開催した。例年同様、当館でのボランティア活動を5年以上続けられた方への感謝状贈呈(点訳ボランティア1名が該当したが当日欠席)のほか、図書館開設50周年を記念し、当館でのボランティア活動30年以上の方に、特別表彰として表彰状と記念の楯を贈呈した。点訳ボランティア5名、音訳ボランティア4名の方が該当し、当日は4名が出席した。  イベントは、弁護士の大胡田誠さんと歌手の大石亜矢子さん夫妻による「全盲夫婦によるトーク&コンサート」。大石さんは「アメイジング・グレイス」から始まり、オリジナル曲を含む8曲を、ピアノの弾き語りによる演奏で披露。合間には大胡田誠さんによるトークがあり、弁護士になるまでの道のりや、ご両親の励ましの言葉などの話に、参加者は耳を傾けた。お二人によるデュエットもあり、終始和やかな雰囲気のコンサートだった。  終了後には、点訳・音訳ボランティアに分かれて懇親会が行われ、旧交を温める人、初対面の親睦を深める人など、思い思いの時間を過ごした。 総選挙でてんやわんや  第50回衆院選が、昨年10月15日公示、27日投開票の日程で行われ、点字出版所は作業に追われててんやわんやとなった。  点字は総務省発注の「投票方法等について」3万5564部、東京都選管発注の「氏名一覧」1万441部、日本盲人福祉委員会選挙プロジェクトから割り当てられた「点字毎日号外」(最高裁判所裁判官国民審査、衆議院比例代表、小選挙区)計2万518部の計6万6493部。音声版は国民審査と比例代表を合わせてデイジー版2944枚。膨大な業務量が短期間に集中した。  なおかつ発送先は東京都内だけで1129カ所、東京以外も合わせると延べおよそ2500カ所におよんだ。今回は東京都の小選挙区が25から30に増え、前回2021年を上回る作業量となったが、最終的にはミスなく、期限までに無事発送を終えることができた。  また東京都知事選(昨年6月20日告示、7月7日投開票)では、史上最多の56人が立候補し、うち51人分の選挙公報を作成した(5人は点訳を拒否)。従来の知事選では考えられなかった候補者の多さから、A4版160ページ、厚さ3.5aとなり、高速印刷機を使ってホチキス止めする方法は断念し、ローラー印刷して背固め製本することにした。労力も手間も時間もかかる仕事になったが、何とかやり遂げることができた。他の点字出版施設から「さすが東京ヘレン・ケラー協会」と、できばえに賞賛の声が寄せられた。 グローバル企業へ出張施術 開業3年目の就労継続支援B型事業所、ヘレン・ケラー治療院の利用者8人が昨年9月12日、総合金融サービスのグローバル企業、JPモルガンの東京オフィス(東京都千代田区)へ出かけ、施術を行った。同社の福利厚生と社会貢献を兼ねたイベントで、昨年に続いて受注した。 同社会議室に移動式の施術ベッド4台を設置し、3時間にわたり、交代で計24人を施術した。前回にもまして好評を博し、施術を受けた方から早速、治療院に予約が入った。 防災の日 消防避難訓練を実施  昨年9月2日、「防災の日」(9月1日)に合わせた協会の消防避難訓練を行った。  ヘレン・ケラー学院は臨床実習のため参加できなかったが、点字出版所、点字図書館、ヘレン・ケラー治療院の3施設が参加した。  今年は出火想定場所を従来と変更し、新館1階の点字出版所印刷室とした。  午前11時30分、大型点字印刷機GPB-3の電源コンセント付近からトラッキング現象で出火した−−との想定で訓練を開始。点字出版所職員が出火を確認して早稲田別館で館内放送するとともに、本部職員らが全施設への連絡、消防署への通報を実施。各施設とも手分けして、視覚障害者の職員、利用者らを誘導しながら、全職員が施設外へ避難した。  今回は戸塚消防署に協力を依頼し、併せてAED(自動体外式除細動器)の講習会も行う予定だったが、当日、消防署管内で火災が発生して緊急出動したため、署員の避難訓練立ち会いと講評、AED講習ができなくなった。機会を改めてAED講習会を開く方向で検討する。 人事 【点字出版所】〔採用・配属〕 <2024年10月1日> 豊釡薫(総務課) <10月3日>田代雅美(総務課) 編集後記 昨年7月1日付で、東京ヘレン・ケラー協会の業務執行理事・点字出版所長に就任し、併せて広報委員長も務めることになりました。どうぞよろしくお願いします。就任から3か月後に総選挙となり、不安でいっぱいでしたが職員のがんばりで無事に、乗り切ることができました。 今年はフランスの学生、ルイ・ブライユが点字を考案してから200年となります。ほかにも阪神大震災から30年、戦後80年、昭和100年など、さまざまな節目を迎えます。当協会では、発足当初から長い歴史を重ね、多くの卒業生を輩出してきたヘレン・ケラー学院を、3月末で閉校することにしました。学生数の減少には逆らえず、苦渋の決断でした。詳細は次号でお伝えしますが、今後はヘレン・ケラー治療院、点字出版所、点字図書館の3施設で視覚障害者の支援に取り組んでまいります。 石川県輪島市などで震度7を観測した能登半島地震から1年たちました。その被災地を昨年9月にまた豪雨が襲い、今もなお多くの方々が避難所生活を続ける中、今度は寒波の影響で記録的な大雪に見舞われています。 被災地の1日も早い復旧・復興を願いつつ、今年こそは災害のない、穏やかな年であってほしいと祈るばかりです。(大木俊治) ●広報委員会 委員長:大木俊治(業務執行理事・点字出版所長) 委員:福山博(点字ジャーナル編集長) 委員:大久保美智子(ヘレン・ケラー学院) 委員:戸塚辰永(点字出版所編集課) 委員:佐久間朋(点字出版所製版課) 委員:和泉枝里(点字図書館) 委員:塚本泉(点字出版所顧問) --------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 https://www.thka.jp ---------- ++