愛の光通信    2024年夏号通巻62号    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321    東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局  (巻頭写真のキャプション)  2023年に高校(12年課程)を卒業し、奨学金を受けて大学法学部に入学したマニシャ・ギリの本名は、ダンバール・クマリ・ギリ(写真左端)であることを、2023年12月に知り驚いた。NAWBの関係者に言わせると「マニシャは現代的な名前だが、ダンバール・クマリとはなんという古くさい名前だ」と言って嘆いた。  2013年12月に7歳の彼女と知り合った。教育環境に恵まれない8年制の小学校2年生だった。NAWBも弱視教育には不慣れだったので彼女に悲しい思いもさせたが、結局、エリート校のラボラトリー高校に転校することで、彼女の前途は大きく開けたのだった。 ●視覚障害者の悲嘆と希望    パスーデブ・アディカリ氏の場合  パスーデブ・アディカリ氏(42歳)は1982年5月、カトマンズ郊外のボダナートで生まれた。  ボダナートは、高さ約36mのネパール最大のチベット仏教の仏塔(ストゥーパ)がある観光地だ。  生まれつき全盲だったので小学校への入学は4年遅れ、自宅からバスを乗り継いで3時間かかるサンジワニ・モデル高校(SMSS)の小学部に入学した。  当時、ドイツのCBMがネパール盲人福祉協会(NAWB)を通じて同校の視覚障害統合教育を支援していたので、寮費も含めて無償だった。  そして2002年に10年課程学校教育修了国家試験(SLC)に合格した。当時はこれで高校卒業と認められた。そのときSMSSで受験したのは晴眼者を含めた66人で彼は首席だった。このため同校から首席証明書が発行されたが、これがあるとネパールでは、進学先の授業料は無料になる。  当時11・12年課程は、「インターミディエート(IM)」といって高等教育の範疇だったので、自宅からバスで10分の距離にある国立トリブバン大学パシュパティ校に進学した。  だが郵便局長の父は、「盲人が大学に行ってなんになる」と言って、この進学を認めなかった。そして、どんなに頼んでも制服代と教科書代を出してくれなかったのでとても困った。  11年課程に入学してみると同級生の多くは16歳だったが、先に述べたように彼は小学校入学が遅れたため、すでに20歳であった。  授業は午前5時45分〜10時に行われたので、彼はその後に働き、密かに自活することを決意した。  そのため大学に通いながらFM放送でパートタイムで働くために必要な研修を4回受けた。それはインタビューの仕方や機材の使い方の訓練で、1回目は45日間、2回目は3ヶ月間、3・4回目はともに2週間実施された。  この研修が終わるとサガルマータFM放送でパートタイマーとして働きはじめ、生活に困らないだけの収入を確保した。  彼には2歳年下の晴眼者の恋人がおり、学校では2級上の彼女がIMを卒業すると同時に結婚した。  大学進学時にびた一文出さなかった父も、結婚費用は親の義務だと言って出してくれた。  FM放送では眼疾患者のカウンセリング番組を放送することになり、彼はティルガンガ眼科センター(現・ティルガンガ眼科研究所)で6ヶ月のカウンセリング訓練を受けた。番組は、盲人が眼疾患者のカウンセリングを行うというので評判となった。  大学は人文学部でネパール語と政治学を専攻した。その後、トリブバン大学本部校で修士課程に進みながら今度はティルガンガ眼科センターで緑内障のアイ・カウンセラーとして働いた。  修士課程修了後、フィンランドの国際NGOが組織した「フォワード・ルッキング」に5年間勤務し、ネパールガンジとパルパ郡で障害者のためのFM放送の3ヶ月研修を行って、視覚障害者113人とそれ以外の障害者42人の計155人を養成した。  その後、カトマンズ空港のテレフォン・オペレーターとして10年間勤務し、現在に至っている。  業務内容は、たとえば「今日のポカラ行きのブッダ航空の便が遅れているようですが、何時になったら飛ぶのですか?」などの空港への問い合わせに対して、同僚8人とともに回答する仕事だ。  彼は別途、カトマンズに隣接するバクタプールのグレースFMでも働いているので、月収は月によって違うが4万5,000〜5万ルピー(約5万円)だという。一般の公務員の月給が1万5,000〜2万ルピーなので、大変な高給取りである。  21年前に結婚して子供は男2人で、長男は12年過程を修了してIT(情報技術)を学ぶために2023年3月に日本に行き、現在(2023年12月)大阪の日本語学校に入学している。次男は12年生で、カトマンズでITを勉強している。  本業とは別に「ブライト・スター・ソサエティ(BSS)」というNGOを組織しており、ネパール地震2015では、障害者に食料や簡易宿舎を建設するためのトタン板などを配給して貢献したので、NAWBから表彰された。  通常のBSSの年間予算は50万ルピー程度だが、特別な課題があるときは大きく膨らむ。  たとえば、ダーディン郡の視覚障害のある少女の耳が聞こえなくなったが、インプラント手術を行えば耳が聞こえるようになるとの診断だった。だがそのためには150万ルピーが必要だった。BSSは苦心惨憺してその資金を集め、手術は成功した。  アディカリ氏は彼女の耳が聞こえるようになったときは本当に嬉しかったという。彼女は現在、カトマンズのラボラトリー高校中等部1年に在籍している。  障害者に無理解だった父は、2年前に屋根から落ちて車椅子生活となった。それがきっかけで、父はそれまでの因果応報の障害者観を脱することができ、ようやく自分の息子とも和解した。     シータ・ダマラ氏の場合  シータ・ダマラ氏(39歳)は、1984年12月に生まれつきの全盲としてネパール王家の出身地であるゴルカ郡で看護学校を経営する裕福な家庭に生まれた。この地の山の上にはアマル・ジョティ・ジャンタ高校という有名な公立校があり、そこでは当時東京ヘレン・ケラー協会の財政支援による統合教育が行われていた。  彼女はまず幼稚部に入りそこで1年間点字教育を受けた。自宅から学校までは徒歩で3時間かかるので、平日は寄宿舎での生活であった。  20年前に10年課程学校教育修了国家試験(SLC)を受けたが、当時はこれで高校卒業とみなされていた。現在は12年課程修了で高校卒業となるので、そもそも学校制度が異なっていたのだ。  高校卒業まではNAWBの支援を受けられるが、高等教育はカトマンズの中心部にある有名なお嬢様学校であるトリブバン大学女子部のパドマ・カニャ・キャンパスに通った。  11・12年課程のIMの学費はこの頃から視覚障害者は無料となったが、当事者団体のネパール盲人協会(NAB)が運営する寄宿舎の費用は実家から仕送りをしてもらって賄った。4年制大学も同様に学費は無料で、実家からの仕送りで人口学と政治学を修めた。  大学を卒業すると、トリブバン大学本部校があるキルティプルにある障害者にコンピュータを教えるTSDCで半年間コンピュータを学んだ。そして政府機関の社会福祉協議会(SWC)でコンピュータ講師を4年間務めた。その後、点字が大好きなのでNAWBで触読校正を8年間務めて現在に至っている。給料は1万5,000ルピーと少し安いが、やりがいのある重要な仕事なので気に入っている。  12年前に父が59歳の若さで、ある日突然心疾患で亡くなった。とても仲のいい家族だったが、父の死後は金銭のことで諍いが頻発し、家族間の歯車が狂い始めた。母も看護学校の運営に尽力したが、結局、3年前に看護学校は閉校した。  個人的には7年前に最初の結婚をしたが、全盲の夫は高校卒業(10年課程)の学歴だったので気に入った仕事が見つからずまったく仕事をしなかった。どんなに頼んでも仕事をせず、結局、毎日喧嘩になり3年前に離婚したが、いまだに彼は職に就いていない。  2021年6月に大学で音楽を学んだ現在の夫と結婚し、彼は音楽家としてしっかり働いてくれているので、今は幸せだと言って微笑んだ。 ●2024年度奨学生一覧     ネパール新地図(係争地を含む)  小誌No.60(2023年7月・夏号)の「2023年度奨学生一覧」に掲載したネパール地図は、「係争地が含まれていない古い地図である」とNAWB関係者から指摘があった。  ネパール議会は2020年6月、インドとの領有権問題の火種となっている地域を領土に含む新しい地図を承認した。新地図にはリプレク峠(Lipulekh Pass)地域と、カラパニ(Kalapani)およびリンピヤドゥラ(Limpiyadhura)の一部地域が含まれている。これらの一帯は計300?以上の広さで、インドおよび中国と国境を接する重要地域である。  インドがリプレク峠に道路を建設し、係争地域がインドに属すると示された改訂地図が、首都デリー市から発行されたための対抗措置である。     実名表記について  小誌の記事は報道機関の実名原則にならい具体的に書き、人名は実名で記すことを原則にしている。これは当協会が、毎日新聞社の関係団体であるだけでなく、ネパールで支援を受けている視覚障害者の氏名等を匿名化すれば、小誌の信頼性は著しく損なわれると考えてのことだ。ただ、個人情報保護法の影響で、社会全体が匿名社会化しているため実名記載をなんとなく忌避する空気も一方ではある。  実名による問題点は報道被害により該当者が不利益を受けることだ。小誌は1986年(昭和61年)の創刊以来、そのような苦情はないが、昨年よりアルファベット表記はやめてカタカナ表記にした。  ネパールの高校(Secondary School)は幼稚部から12年課程の一貫教育校である。このため全校生徒数は1,000人を超えるのが普通である。  ネパール全土に点在する18校(盲学校1校、統合教育校13校、大学4校)は、2024年度の対象視覚障害奨学生が就学する学校である。  2023年度は開発が遅れている極西部地域の学校はジュムラ郡の「Iバイラブ高校」だけだったが、大学1校を含めて2024年度は4校に増えた。  NAWBが実施している大学生への奨学金は、一般的な給付型奨学金で学生本人に給付されるが、小学生から高校生を対象にした奨学金は、直接、その児童・生徒が就学する学校に支払われる。生徒や両親に給付すれば、就学以外の目的に使われるおそれがあるからだ。このため大学生に対しては直接本人に面接してきたが、それ以外は対象奨学生が就学する学校を訪問してきた。だが、Dバルマンディール高校とEカラシルタ小学校には残念ながら訪問できそうにない。両校はフムラ郡の郡庁所在地である人口1万1,557人のシムコット町にあるのだが、ここに至る車道がないのだ。このため最後は山道を8時間も歩かなければならない。健脚を発揮してもカトマンズから空路、4WD、それにトレッキングで片道4日間かかり、学校訪問に1日かかるので、少なくても往復9日間はかかるのだ。  40歳の頃までは8時間計画のトレッキングを8時間で踏破することができたが、69歳の現在は半年間訓練を積んだとしても10時間はかかり、悪くすれば肉離れを起こして遭難しかねない。  シムコット町には標高2,818 mの地に空港があるが、定期便はない。仮に往路は無事に行けたとして、復路が飛ばなかったら悲劇だ。このような理由で、バルマンディール高校とカラシルタ小学校へは残念ながら訪問できそうにないのである。(福山博) ●2024年度奨学生一覧  「奨学生が就学する学校マップ」は省略 -----------------------------------------------  以下、aA奨学生の氏名、性別、障害、学年、地図番号・学校名、育英基金名。  (1)パルワティ・チョーダリ、女、全盲、5、@ドゥマルワナ高校(バラ郡)、順子女子育英基金。  (2)サムジハナ・チョーダリ、女、全盲、2 、@ドゥマルワナ高校(バラ郡)、順子女子育英基金。  (3)カリシュマ・カトリ、女、全盲、4、Aジャンタ高校(スンサリ郡)、順子女子育英基金。  (4)カルナ・カトリ、女、全盲、8、Aジャンタ高校(スンサリ郡)、順子女子育英基金。  (5)クリシュナ・ライ、女、全盲、2、Bサンジワニ・モデル高校(カブレ郡)、順子女子育英基金。  (6)ウシャ・ライ、女、全盲、10、Bサンジワニ・モデル高校(カブレ郡)、順子女子育英基金。  (7)サンジタ・ムグラティ、女 全盲、1、Cアダーシャ高校(バクタプール)、順子女子育英基金。  (8)シャルミラ・バム、女、全盲、1、Dバルマンディール高校(フムラ郡)、順子女子育英基金。  (9)ギタ・カミ、女 全盲、5、Eカラシルタ小学校(フムラ郡)、順子女子育英基金。  (10)サルミラ・スナル、女、弱視、4、Dバルマンディール高校(フムラ郡)、順子女子育英基金。  (11)ロヒット・ボムジャン、男、全盲、2、Bサンジワニ・モデル高校(カブレ郡)、正雄育英基金。  (12)ガガン・グルン、男、 全盲、3、Fアマル・シン高校(ポカラ)、正雄育英基金。  (13)アキリティ・ダハル、女、弱視、1、Fアマル・シン高校(ポカラ)、正雄育英基金。  (14)シュヤム・タクール、男、 全盲、6、Gパシュパティ高校(シラハ郡)、正雄育英基金。  (15)アビナム・ダハミ、男、 全盲、5、Hカリンコック高校(ドラカ郡)、正雄育英基金。  (16)シリスティ・タマン、女、全盲、4、Hカリンコック高校(ドラカ郡)、正雄育英基金。  (17)サパナ・ウパディヤ、女、全盲、2、Iバイラブ高校(ジュムラ郡)、正雄育英基金。  (18)アジャヤ・クマール・ラム、男、 全盲、6、Gパシュパティ高校(シラハ郡)、安達禮雄育英基金。  (19)プラクリティ・B. K.、女、全盲、1、Jプルワンチャル盲学校(スンサリ郡)、安達禮雄育英基金。  (20)サンディプ・カティワダ、男、 全盲、4、Kラボラトリー高校(カトマンズ)、安達禮雄育英基金。  (21)サハナ・ジミ、女、全盲、1、Jプルワンチャル盲学校(スンサリ郡)、安達禮雄育英基金。  (22)アニシャ・ポクレル、女、全盲、8、Lシャンティ・ナムナ高校(ルパンディヒ郡)、安達禮雄育英基金。  (23)アーウシュ・チョーダリ、男、 全盲、2、Mナムナ・マチンドラ高校(ラリトプール)、安達禮雄育英基金。  (24)ミナ・ブージェル、女、全盲 大学4、Nトリブバン大学プリティビ・ナラヤン校(ポカラ)、安達禮雄育英基金。  (25)ディリサラ・ダマラ、女、全盲 大学1、Oトリブバン大学シャヒッド・アダーシャ校(カトマンズ)、安達禮雄育英基金。  (26)シタ・クマリ・チョーダリ、女、全盲 大学1、Pトリブバン大学カイラリ・マルチプル校(カイラリ郡)、安達禮雄育英基金。  (27)ハスタ・バハドゥール・カドカ、男、全盲 大学1、 Qトリブバン大学サノチミ校(バクタプール)、安達禮雄育英基金。 ●極西部フムラ郡の統合教育     フムラ郡シムコット町  ネパール西北部にある番号Dバルマンディール高校とEカラシルタ小学校は、ネパール極西部フムラ郡の郡庁所在地であるシムコット町(Simkot Rural Municipality)にある。同郡はネパール極西部の辺境の地で、シムコット町でさえ他の郡との車が通る道がない。  2011年のネパール国勢調査によるとフムラ郡の人口は5万858人で、シムコット町の人口は1万1,557人である。標高2,818 mのシムコット町に他の地域から車でアクセスできないので首都カトマンズに行くためには、通常、次のような旅程となる。  まず8時間徒歩で山越えして同郡のサルケガド町に行き1泊する。翌朝、乗り合い4WDで9時間かけてカリコット郡のマンマ・バザールに行きそこで1泊する。翌朝、バスで9時間かけてネパールガンジに行き、そこで夜行バスに乗り換えて18時間かけてカトマンズに到着する。別途、シムコット町には空港があるので、空路で行く場合はネパールガンジ乗り換えで、最短で1日でカトマンズに着く。ただし、シムコット空港への定期便はないので、乗客が集まるまで1週間ほど待つか、高額なチャーター便の航空運賃を払う必要がある。     バルマンディール高校  1987 年 9 月 5 日に開校したバルマンディール高校(Balmandir Secondary School)には、固定電話は引かれていないので、もっぱらカイラシュ・ロカヤ校長の携帯電話で連絡をとっている。  同校は地域コミュニティを基盤とした公立校で、幼稚部から10年課程までの一貫教育校である。全校生徒数は484人で、そのうちの14人が視覚障害児童・生徒だが、視覚障害統合教育のためのリソースティーチャーはいない。  同校には下記のような奨学金制度がある。  1.女子生徒32人に年間1人あたり1,000ルピーを給付している。  2.ダリット(低カースト)の男子生徒41人に年間400ルピーを給付している。これは地方自治体から支給されるものである。  カラシルタ小学校  1999 年 7 月 20 日に開校したカラシルタ小学校(Kalashilta Basic School)には、固定電話は引かれていないので、もっぱらガネーシュ・バハドゥール・シャヒ校長の携帯電話で連絡をとっている。  同校は地域コミュニティを基盤とした公立校で、幼稚部から5年課程までの小学校である。全校生徒数は162人で、そのうちの3人が視覚障害児童だが、視覚障害統合教育のためのリソースティーチャーはいない。  同校には下記のような奨学金制度がある。  1.女子児童76人に年間1人あたり1,000ルピーを給付している。  2.ダリット(低カースト)の男子児童42人に年間400ルピーを給付している。これは地方自治体から支給されるものである。  両校には寄宿舎がないので、視覚障害児童・生徒はヒマラヤ地域の障害者のエンパワーメントと開発のために活動しているNGO「ヒマラヤ教育開発(HEAD)ネパール」のインクルーシブ教育リソースセンター(Inclusive Education Resource Center)HNIERCの寄宿舎に住んでいる。  バルマンディール高校は、同寄宿舎から約700mの距離にあり、同じくカラシルタ小学校は約300mの距離にあり、道路を車は通らないので、視覚障害児童・生徒でも通学は容易で安全である。 ●日本語の学び方  コシ州スンサリ郡イタハリ市(人口19万8,000人)にもやはり日本語学校があった。ネパールで12番目に人口が多い都市なので当然だろう。  日本には2万4,000人のネパール人学生が学んでおり、これは中国、ベトナムに次いで3番目に多い。  ネパールの首都カトマンズには、およそ500以上の日本語学校があるというが、そのレベルは様々。レベルが高く日本の機関と連携しているネパール政府認定マーク付きの学校がある一方、運営方針がゆるくそこへ来る学生たちのモチベーションや出席率が低い学校もある。日本語を初めて習う場合は、ステップ1としてゆるめの学校からスタートし、徐々にレベルの高い学校へ渡り歩きながら学ぶのがネパール流だという。 ●2023(令和5)年度 資金収支計算書 (自)2023年4月1日 (至)2024年3月31日  以下、勘定科目:予算(A)、決算(B)、差異[(A)−(B)]、備考の順。単位は円。     (収入)  経常経費寄附金収入:2,451,000、2,471,377、△20,377  寄附金収入;2,451,000、2,471,377、△20,377  その他の事業収入:100,000、100,000、0  補助金事業収入(毎日新聞東京社会事業団からの助成金);100,000、100,000、0  受取利息配当金収入:0、0、0  受取利息配当金収入;0、0、0  その他の収入:0、0、0  雑収入;0、0、0   事業活動収入計(1):2,551,000、2,571,377、△20,377     (支出)  人件費支出:120,000、120,000、0  職員給料支出;120,000、120,000、0  事業費支出:1,913,000、1,913,430、△430  海外援護費支出(順子女子育英基金増資と点字教科書フォローアップ事業);1,300,000、1,300,000、0  海外出張費支出;613,000、613,430、△430  事務費支出:261,000、264,321、△3,321  旅費交通費支出;1,000、756、244  事務消耗品費支出;3,000、2,478、522  印刷製本費支出;97,000、96,800、200  通信運搬費支出;80,000、83,742、△3,742  手数料支出;35,000、35,545、△545  渉外費支出;10,000、10,000、0  諸会費支出;35,000、35,000、0  雑支出;0、0、0   事業活動支出計(2):2,294,000、2,297,751、△3,751   事業活動資金収支差額(3=1−2):257,000、273,626、△16,626   当期資金収支差額合計(4=3):257,000、273,626、△16,626   前期末支払資金残高(5):5,196,089、5,196,089、0   当期末支払資金残高(4+5):5,453,089、5,469,715、△16,626 ●ビラトナガル空港食堂のメニュー(1ルピーは1円)  紅茶:20ルピー  コーヒー:100ルピー  ミネラル水(500ml):20ルピー  コーク(250ml):70ルピー  トースト(2枚):50ルピー  野菜サラダ:100ルピー  フライドポテト:100ルピー  ゆで卵(2個):60ルピー  オムレツ:50ルピー  野菜サンドウィッチ:100ルピー  卵サンドウィッチ:150ルピー  焼きそば:200ルピー  蒸し餃子(6個):200ルピー  フライドチキン:300ルピー  ビール(650ml):650ルピー ●2023年度事業報告(令和5年4月1日〜令和6年3月31日)  ネパール盲人福祉協会(NAWB)への支援として、当協会が寄附者と創設に協力した安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金の3基金による奨学金給付を続けるとともに、点字教科書発行の資金支援などのフォローアップ事業を実施した。協会職員を現地に派遣し、現地視察やスタッフとの交流、状況報告を受けるなどした。事業報告集『愛の光通信』を2回(60号と61号)発行した。  また、上記育英基金事業と同様に、NAWBに「THKA,Japan基金」(仮称)を新設し、フォローアップ事業を半永久的に継続できないか研究を行った。 ●2024年度事業計画(令和6年4月1日〜令和7年3月31日)    1.育英基金事業  正雄育英基金は小学校から高校まで(第1〜12学年)の男女の視覚障害児童・生徒を対象に、安達禮雄育英基金は小学校から大学(4年間)までの男女の視覚障害児童・生徒・学生を対象に、順子女子育英基金は小学校から高校までの女子の視覚障害児童・生徒を対象とした奨学金。これらは寄附者、ネパール盲人福祉協会(NAWB)、当協会の3者が覚書を交換し、ネパール政府社会福祉協議会(SWC)に届け出ている事業であり、この3事業が覚書に添って、滞りなく実施されるようモニターする。なお順子女子育英基金は設立者から2023年12月に新たに100万円の寄附があり、NAWBに送金して基金規模を従来の200万円から300万円に増額した。    2.フォローアップ事業  毎日新聞東京社会事業団の助成金等を活用して、NAWBの点字教科書発行を中心とした事業に対して、フォローアップのための側面的支援を実施する。これは、当協会が長年実施してきた事業が無に帰さないように、2004年度(平成16年度)から継続して実施している事業である。  上記育英基金事業のように、NAWBに300万円で「THKA, Japan基金」(仮称)を新たに創設し、フォローアップ事業を半永久的に継続できないか、昨年度から研究しており、24年度はその具体化に着手する。    3.国内事業  広報・募金活動は、NAWBから事業報告等が提出されることを条件に、『愛の光通信』を年2回発行し、例年通り実施する。  日本障害者リハビリテーション協会に事務所を置く、障害分野NGO連絡会(JANNET)の一員として、障害分野の国際協力を行う他施設・団体と情報交換・交流を深める。 ●海外交流事業記録 (2023/4〜2024/3)  5月:JANNET事務局から依頼されDINF英語版(Disability Welfare NEWS)「News from Japan」へ寄稿した。  6月10日:日本ネパール協会2023年度通常総会に参加(南部労政会館会議室)。対面での開催は4年ぶりであった。  6月16日:2023(令和5)年度JANNET総会に参加。対面(戸山サンライズ2階中研修室)とオンライン(Zoom)のハイブリッドで開催。  6月:『愛の光通信』(60号)を発行した。  6月22日:NAWBとホーム・ナット・アルヤール氏宛EMS(国際スピード郵便)で『愛の光通信』(60号)を送付した。  10月24日:NAWBに30万円を送金した。  11月16日〜12月3日:ネパール出張。  12月25日:NAWBに順子女子育英基金の追加として100万円を送金した。  1月:『愛の光通信』(61号)を発行した。  3月27日:NAWBに『愛の光通信』(61号)と写真をEMSで送付した。 ●寄附者ご芳名(五十音順・敬称略)2023年4月1日〜2024年3月31日 温かいご支援ありがとうございました!     (個人)  芦田賀寿夫、安達麗子、在田一則、安藤生、石田隆雄、石原尚樹、岩屋芳夫、上野伊律子、遠藤利三、及川幸男、大橋東洋彦、岡本好司、貝元利江、勝山良三、加藤万利子、川田孝子、菊井明子、小泉周二、甲賀佳子、古賀副武、小島亮、小林良子、小林義文、小森愛子、近藤光枝、佐藤達夫、白井雅人、杉沢宏、須原ひとみ、高橋恵子、橋秀治、田中徹二、田中正和、田畑美智子、当津順子、長岡英司、生井良一、新阜義弘、林紘子、原田美男、樋渡敏也、富久縞博、藤元節、本間昭雄、増野幸子、松本大、三宅正太郎、茂木幹央、山辻英也、横大路俊久、吉田重子、渡辺直明、渡辺勇喜三     (団体等) ◆ウェルネス小林動物病院、◆株式会社高垣商店、◆有限会社ヤマオー事務機 ●ヒマラヤ杉に関する記憶と誤解  今から30余年前、日本ネパール協会の会長が文化人類学者の川喜田二郎先生(東京工業大学名誉教授)であった頃、先生を囲んで30〜40人で盛んに勉強会を行っていた。私も足繁く参加したが、未だに鮮明に覚えている2回の勉強会がある。  1回は先生考案のKJ法のワークショップだった。データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめていく方法で、「創造性開発」とか「創造的問題解決」に効果があるとされる方法だ。フィールドワークで多くのデータを集めた後、あるいはブレインストーミングにより様々なアイディアを出した後の段階で、それらの雑多なデータやアイディアを統合し、新たな発想を生み出すために有効だという。  もう1回はネパールに杉の大木が一本あったというエピソードだ。杉は英語でJapanese cedarといい日本の固有種で、日本にしか生育していない。それがなぜネパールにあるかというと、1902〜1905年に日本に留学したネパール人学生が持ち帰って植えたものであろうということだった。そしてそのときヒマラヤ杉は英語でcedarということも習い、英国人が日本に来て杉を見てヒマラヤ杉に似ているので、Japanese cedarと名付けたと教わった。私のヒマラヤ杉に関する知識はこれがすべてだったので、昨年、ネパールの山間部で実際にヒマラヤ杉に出会うまで、「杉の仲間」と思い込んでいた。  ところが、ヒマラヤ杉には直径10cm、長さ20cmほどの松笠が実っていたので驚いた。そこでヒマラヤ杉をネットで調べると、「マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹」と出てきたので大いに納得した。ヒマラヤ杉は松だったのである。ちなみに杉は「ヒノキ科スギ属に分類される常緑針葉樹」である。 ●セルロティ(ネパールの揚げパン)  ある日の三つ星ホテルの朝食(ブッフェ・スタイル)。ドーナッツに見えるのは主材料が米粉とバナナのネパールの揚げパン「セルロティ」で甘くない。宗教行事、結婚式、誕生日などのお祝いのときに欠かせないもので普段はない。だから、この日は「スペシャルサービス」と言って強く勧められた。焼きそばを半分に減らしてネパール初のセルロティを食べた。  実は東京の自宅近くのネパール料理店でも以前にやはり強引にサービスされたことがあったのだ。 ●サードアイレストラン  1989年創業の「サードアイレストラン」は、カトマンズの観光街タメルの中心部に位置するインド・ネパール料理とコンチネンタル料理の老舗。  地方を回って埃まみれになってカトマンズに帰ってくると、清潔な店内に高級感あふれる調度や雰囲気と丁寧なサービスに財布の紐も緩む。料金は東京と同等だが、広々とした開放感を加味するとリーズナブルとさえ言える。 ●寄附のお願い  ネパールにおける視覚障害者支援、とくに教育の充実をはかるために寄附をお願い致します。  寄附金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 寄附金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号に掲げる社会福祉法人です。当協会に対するご寄附は、所得税法第78条第2項第3号及び租税特別措置法第41条の18の3、法人税法第37条第1項及び第4項の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ●編集後記  ネパール人は午後7時半以降はめったに外出しません。このため午後6時頃のカトマンズは帰宅ラッシュで、流しのタクシーは捕まりません。  そこで友人に、カトマンズ盆地内で使える「Pathao」というアプリで、タクシーを呼んでもらいました。  配車リクエスト後にネパール語で電話がかかってくるので、ここまではネパールの友人頼みです。  うっかり英語で返事すると乗車拒否に遭うこともあるらしいのです。  支払いは降車時の現金払いのみで端数はチップとして切り上げます。  ポカラでは「in Drive」というタクシーアプリが使えますが、その他の都市では使えません。  というよりも流しのタクシーそのものがないのです。(H・F) 発行:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会海外盲人交流事業事務局 〒169-0072東京都新宿区大久保3−14−4 TEL:03-3200-1310   FAX:03-3200-2582 http://www.thka.jp/   E-mail: XLY06755@nifty.com  ※迷惑メールが増えています。当協会宛のメールには、適切な「件名」をお書き添えください。