愛の光通信    2020年夏号通巻54号    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321    東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 ●よみがえるネパール ―― 地震から4年目の復興 ―― 海外盲人交流事業事務局長 福山博  【安達禮雄育英基金の奨学金を受けて、昨春高校を卒業し、国立トリブバン大学教育学部に入学したミナ・ブージェル。しかし奨学金受給のめどが立たず経済的に困窮して、母親の介助で母校へ相談に来た。その後、彼女の訴えが実り、安達禮雄育英基金が給付対象を大学まで拡げてくれたので、彼女も奨学金を受けることができた(2ぺージに関連記事)。】  日本盲人福祉委員会(日盲委)の助成を受けて、私は昨年(2019)12月13日〜31日の旅程で、ネパールを訪問した。主な目的は、当協会が支援している統合教育校の視察と「ネパール地震2015」復興に関する調査である。  12月14日(土)深夜0時20分羽田空港発、タイ国際航空機でバンコクを経由して、同日13時に、カトマンズ空港に到着。NAWB(ネパール盲人福祉協会)の車で、宿舎である三ツ星ホテルのチベット・ゲスト・ハウスへ直行した。  翌12月15日(日)午後2時、NAWB本部にて日程調整会議を行った。9月のNAWB第32回総会で役員の大幅改選が行われたことは事前に連絡を受けていたが、実業家である新会長のアジャヤ・ラトナ・スタピット氏は、海外出張中ということで会えなかった。そこで副会長のチルタ・ラジ・ワンタ氏が会長を代行していると紹介された。同氏はネパール赤十字の理事やネパール障害者協会の常務理事を歴任された大物なのだが気さくな方だった。  2017年1月から事務局長の職にあったマリカ・プラサイ博士が、退職していたことはこの場で知らされた。彼女の後任は置かず、パワン・ギミレ常務理事(全盲)が、代行するということであった。彼はネパール国軍の少佐だが、ネパール共産党毛沢東派との内戦で2003年に失明した職業軍人で、現在は国軍内で、内戦等で障害を負った軍人にスポーツ等を指導している。     ひどく遅れた地震からの復興  2015年4月25日に発生した「ネパール地震2015」からの復興は、ネパール政府復興庁設立の遅延やインドによる国境閉鎖等により大幅に遅れていたが、2018年12月の調査では復興の槌音が聞こえるようになっていた。しかし、当協会が支援する地震被害を受けた学校では再建計画がたてられず、関係者はみな沈痛な表情をしていた。だがその後青写真が引かれ、実際に工事が開始されたため2019年12月には学校関係者は満面の笑みとともに我々を出迎えてくれた。  12月16日(月)午前7時、首都カトマンズ市内の宿舎を出発し、私はNAWBのラトナ・カジ・ダンゴール教育課長と共に4WDで、「ネパール地震2015」の震源地であるゴルカ郡の山の上にあるアマル・ジョティ・ジャンタ校(幼稚部から高校3年生までの一貫教育校)を訪問した。1961年に開校した伝統校で、同校の職員室や事務室のあった校舎本館などの古い建物は、「ネパール地震2015」で全壊した。  地震発生時にはインド政府の支援により、高校2、3年生用の校舎を建設し、完成していた。だが、地震の被災でその新しい校舎壁面に無数の亀裂が生じていた。  その後の建築士による調査で、同校舎の建築構造の被害はまったくなかったので、通常の授業に使って差し支えないとの太鼓判が押され、2017年12月に訪問したときは、壁に亀裂があるままの教室を使っていた。しかし、2018年12月に訪れたときは教室は使用されておらず、補修工事が行われ、あとは仕上げの塗装工事を残すまでになっていた。2019年12月に訪れたときは、完全に補修され新築落成したかのようであった(表紙の写真参照)。  米国ゴルカ財団の資金提供により、総額2,147万4,309ルピー(1ルピーは約1円)で、2018年7月30日に着工され、2020年4月12日に完工する予定の12教室を含む校舎本館立替工事は、順調に進められており、構造体はほぼ完成しており、あとは仕上げ工事を残すだけだった。また、校舎建設だけでなく、パソコンや実験機材に加えて、保育施設、それにちょっと贅沢な水質浄化装置等非常に多彩な支援を受けていた。  同校を昨年春に卒業し、景勝地ポカラにある国立トリブバン大学プリチビ・ナラヤン校の教育学部に入学したミナ・ブージェルと同校で会った。  彼女は大学に入学したものの、経済状態が芳しくないので母校へ相談にきたと言っていた。しかし、あまりに奇遇なのでこの日我々が来るのを聞きつけて、待ち構えていたのかもしれない。だが、我々のこの日のスケジュールはいっぱいで、彼女から事情を聞くゆとりはなかった。そこで、4日後にポカラに行く計画があったので、そのときに再会することを約して別れた。  ミナの実家は、アマル・ジョティ・ジャンタ校のあるゴルカ郡内の農家で、実家から同校までは徒歩とバスで小一時間かかるということだった。父親は自作農で、1男3女の末っ子がミナで、家族の中で障害者は彼女1人である。  彼女には兄が1人、姉が2人いるが、農家の跡継ぎの兄は10年課程まで、姉はともに5年課程までの教育しか受けていないということだった。  自給自足に近い農村部の自作農に年収を聞いても明確な回答は期待できない。しかし、子供達の学歴を聞くと、どの水準の経済状態かがよくわかる。女の子は小学校卒業まで(5年課程)、男の子は中学校卒業まで(8年課程)というのは、農村部における貧しい自作農のごく一般的な姿である。     平屋の寄宿舎は安普請  カトマンズ盆地のパタンに隣接するキルティプールにある、ラボラトリー校は1956年に米国の支援により「公園の中の学園」をコンセプトに、国立トリブバン大学によって設立された12年制の国家的モデル校である。  校舎や講堂、事務棟など米国人により設計された建物はすべて煉瓦造だが、60年以上たったとはとても思えないモダンで瀟洒な平屋建である。ところが、後にネパール人により設計された寄宿舎は女子用が2階建、男子用が3階建であった。そして「ネパール地震2015」では、この男子用寄宿舎のみが全壊の被害を受けたのだった。このため、1年前までは講堂を区切って仮の男子用寄宿舎にして使っていた。  今回訪れてみると、さすがに懲りたのか今回は平屋建の男子用寄宿舎が完成していたが、モダンな校舎などと比較するとトタン屋根であり、いかにも安普請で残念な気がした。     JICAによる力強い支援  カトマンズに隣接するパタンの中心部バスターミナルの真横にあるナムナ・マチェンドラ校は生徒数3,000人のマンモス校だ。公立伝統校であるため建物が古く、地震によりほぼすべての校舎がなんらかの被害を受けた。しかも、立地場所が商業地のど真ん中であるため、再建工事を行うためには最新工法による難工事が必須で、総工費がいくらかかるかわからない等設計段階から難航していた。  12月24日(火)に私が同校を訪問すると、JICA(国際協力機構)の手で、視覚障害児のための定員40人の寄宿舎の工事が行われていた。なお、現在同校には36人の視覚障害児が寄宿舎に住んでいる。  当協会はこれまでにネパールの地方の学校3校に視覚障害児のための寄宿舎を建設してきた。それは現地の学校の要請に基づいたもので、現地の生活レベルに沿ったものであったため、見積段階から個人的にはもう少し快適な住環境を提供したいとも考えていた。  その点、今回はネパールの中でも生活レベルが高い土地柄で、しかも耐震性を十分考慮すべき建築であることから、十分な予算をかけて、見るからに立派な寄宿舎が建設されようとしていた。また、この寄宿舎が落成した暁には、JICAの手により校舎も次々と建設される予定であると聞いた。  私は校舎再建の前に視覚障害児用寄宿舎を落成させるJICAの英断を高く評価したい。校舎再建には長い年月が必要になるので、その後に寄宿舎を建設するとしたらいつになるかわからないからだ。  公立学校の校舎の建設は、予算措置がいつになったら執られるかは別として、ネパール政府も基本的には責任を感じている。しかし視覚障害児用寄宿舎に関しては、これまでまったく無視してきた。  実際にキルティプールにあるラボラトリー校やポカラにあるアマルシン校など、重点校数校以外は関心を寄せることがなかったので、当協会を含めた国際協力事業やチャリティ事業として建設されてきた。このため、NAWBも地震で被害を受けた寄宿舎の再建に頭を悩ませてきた。     寺院の再建は伝統工法で  1873年に建立された名刹カルモチャン寺院が、「ネパール地震2015」で完全崩壊すると、国宝級の寺院なので現状保存と宝物保護のためにすぐに警察により臨時警備所が建設された。  2017年12月に視察したときに、すでに同寺院の再建工事が開始されていたが、2018年にはヒンドゥー寺院のドームを支える2段ある基壇の1段目が完成していた。レンガは新しいものを使用していたが、ドアや窓枠は古い物を補修して使っていた。そして、2019年12月に訪れたときは真っ白にお化粧された壮大な寺院に復原されていた。  同寺院はカトマンズのNAWB本部に隣接しているので、歴史的建造物がどのように再建されるのか、我々も注視してきた。  煉瓦造で倒壊した寺院は、煉瓦と煉瓦の接着にはセメントモルタルは使わず、昔ながらの赤土に石灰を混ぜたモルタルを使っていた。倒壊した寺院は、煉瓦が一個ずつ完全な形を保っていたものも多かったので、私は経年劣化で接着力がなくなり、そのために地震で完全崩壊したのだと考えた。  そこで、再建する寺院は漠然とセメントモルタルで煉瓦を接着するものだとばかり考えていた。しかし意外にも、小さな寺院も含めて完全に伝統技術で再建していた。     統合教育校の視察  公平性を担保するためか、ネパール政府は地震による被災を受けなかった学校にもそれなりの設備拡充を行っていた。釈迦生誕の地に近い生徒数3,000人のシャンテ校は、地方都市を結ぶ国道の沿線にある伝統校である。  ネパールは完全なトップダウンの社会なので、やる気のある校長は、手ぐすね引いて我々を待ち構えて、率先して学校を案内して新しい設備を紹介してくれる。  農村僻地にあるバラ郡ドゥマルワナ村は、タライ平野に住む先住民族であるタルー族の村だ。ここにあるドゥマルワナ校は、いち早く+2(高校2年、3年課程)を取り入れて発展し、同校を基礎にトリブバン大学ドゥマルワナ校をも開校している。同校はバナナやカボチャも実る農園や、安価な収穫期に購入して蓄えておく米倉をも持っており、寄宿舎の食費を節約して、その分貧しい児童・生徒を多く収容している。     統合教育校卒業生の進路  ネパールは土曜日が休日で日曜日は平日である。前日にネパール第2の都市ポカラにあるアマルシン校を訪問したついでに、翌12月21日(土)、ミナ・ブージェル(21歳)とロジーナ・ギミレ(20歳)に会いにトリブバン大学プリチビ・ナラヤン校内にある女子寮を訪問した。といっても男子禁制なので、門の前で写真撮影して話は学外で聞いた。  ネパールの学校制度は、従来小学部1〜5年、中学部6〜8年、高等部9〜10年である。そして10年課程を修了したら学校教育修了証明国家試験があり、これに合格したら一昔前までは小学校の教員になることができた。ところが現在は、11〜12年課程で教育を専攻し、試験に合格しなければ教員になることはできない。しかも、実際の教員採用試験は公平を期すために公募で行われるので、視覚障害者が実際に教員になるのは極めて厳しくなった。  ネパールは従来就学率が低かったため、ユネスコの「万人のための教育」により、全ての人たちが初等教育を受けられ、文字の読み書き計算ができるようになるなど、教育環境を整備しようとする取り組みが精力的に行われてきた。その課程で教員不足ということもあり、視覚障害のある普通校の教員が400人ほど誕生した。しかし、教員が充足した現在において教職は、一般に非常に狭き門になっている。そこで、ただでさえハンディのある視覚障害者は、学歴に磨きをかけるため大学を卒業したり、修士課程を修了する必要がでてきているのである。  また、今後は教職に代わる新職域の開拓が強く求められているが少数の公務員やNGO職員以外では、英国に本部を置くNGOによる視覚障害者マッサージや音楽家である。しかし、ラジオやテレビなどで活躍する視覚障害音楽家はまったくの一握りで、多くは路傍で歌ったり、演奏したりして、投げ銭をもらう大道芸や門付に近いストリート・ミュージシャンである。彼らの多くは10年課程以上の教育を受けている場合が多いが、歩道を不法占拠して音楽を演奏しているので、交通警察の取り締まりに遭うことも少なくない。ただ、声がよく通って上手であれば、通行人が次々と10ルピーほどをザルに投げ入れるので、実入りは悪くないようだった。  教育の下では比較的学生たちは平等であるが、奨学金の受給とか、就職に関しては不合理な見えない大きな力が作用するように思われる。 ●ネパール全土封鎖 ―― 視覚障害者14人に聞いた ―― 元NAWB事務局長 ホーム・ナット・アルヤール  ネパール最初の新型コロナウイルス感染者は、冬休みで帰省していた武漢大学のネパール人学生で、1月24日に陽性であることが判明した。2番目は3月23日にフランスから帰国した19歳の女性だった。この間、ネパール政府は3月18・19日に全土の学校を閉鎖し、22日にすべてのネパール発着の国際線を停止。23日には長距離バスを停止して、24日から全土封鎖(ロックダウン)を開始した。  人々は午前6時から8時までの2時間だけ外出を許されるので、この間に毎日必要な食料などを購入する。食料は充分確保されているが、マスクや手指消毒液はどこを探しても売っていない。政府は自治体を通じて、ロックダウンで仕事ができなくなった人々に、米、豆、食用油、ジャガイモなどを配布している。  手洗いは医療体制が脆弱な国では最も効果的で手頃な感染防止策だが、家で常に石鹸を使い、水で手を洗うことができる人は、アッパーミドル以上の恵まれた階層に限られる。  ネパール警察は、すべての警察署に新型コロナウイルス対応部隊を設置し、ロックダウンの違反者には「両手で自分の耳をつかみ、屈伸運動をさせる」特別なスクワットを罰として強要し、悪質な違反者には容赦なく警棒を振るっている。  5月21日現在、ネパールでは合計427人が新型コロナウイルスに感染し、2人の死者が出ている。  ネパールの視覚障害者にも結婚式を延期せざるを得なかったり、新型コロナウイルスによる影響が少なからず出ている。自動車優先のネパールでは、道路を視覚障害者が単独で渡ることは自殺行為に等しい。そのため白い杖を持って道ばたに立つと、ついこの間まで、誰彼となく道路の横断を手助けしてくれた。しかし新型コロナウイルス問題で、誰も道路の横断を助けてくれない。家族など介助者がいる場合でも、警察官が全盲の手引きに気づかないのではないかと気が気ではない。ソーシャル・ディスタンスが叫ばれるが、2m離れて手引きされることは不可能だ。ロックダウンが解除されて出勤しなければならなくなったとき、どうすればいいのか。唯一の公共交通機関であるバスの車内はいつも混んでいるので、人に触れる可能性が高く不安が残るという声も大きかった。  一方、普段は学校に単身赴任で泊まり込んでいるため、週に1日しか家族と会えないが、今は毎日家族と長い時間を過ごすことができてとても幸せ。在宅勤務でインターネット電話で連絡を取り合ったり、会議を行っており、むしろ自由な時間が増えてさまざまなIT技術を学ぶ良い機会になっている。フェイスブックへ投稿する新型コロナウイルス意識向上ビデオの準備に忙しいなど前向きな視覚障害者も5人ほどいた。  ネパールの隣国インドでは、5月21日現在、感染者が11万2,359人、死者が3,435人もいる。同国で感染が収まるまでは、ネパールのロックダウンは継続されるだろう。  もちろん筆者もカトマンズ市内の自宅から出られないので、以上の情報はネパール各地に住む視覚障害者14人の携帯電話に連絡して取材した。このため、対象者は中流以上の生活をしている給与所得者と学生に限られている。「ネパール地震2015」のときもそうだったが、盲人協会等に組織化されている視覚障害者には連絡できるが、そうでない人には全くアクセスできないのは今回も同じだった。 ●2019年度事業報告(平成31年4月1日〜令和2年3月31日)  安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金の3基金による奨学金給付事業を実施した。  これらの3事業は、従来小学校1年生から高校3年生を対象としてきた。ところが、NAWB(ネパール盲人福祉協会)から安達禮雄育英基金の給付対象を大学生までに延長して欲しい旨の要請があり、安達禮雄育英基金の設立者の快諾を得て承認した。  当協会職員有志によるNAWBバラCBR事業現地スタッフの遺児3人を援助する「クリシュナ君遺児育英基金」と「クリシュナ+2育英基金」の事業管理に協力した。  上記事業の管理等を行うため、2019年12月14日〜12月31日の日程で福山博事務局長がネパールに出張した。  事業報告集である『愛の光通信』(52号)を2019年7月、同(53号)を2019年12月に発行した。  2020年2月6日午後、日本医歯薬専門学校(東京・高円寺)において視能訓練士学科の学生を対象に「ネパールにおけるTHKA(東京ヘレン・ケラー協会)の国際協力」の演題で講演を行った。 ●2020年度事業計画(令和2年4月1日〜令和3年3月31日)      1.育英基金事業  安達禮雄基金は小学校から大学までの男女の視覚障害者を対象に、正雄育英基金は小学校から高校まで(第1〜12学年)の男女の視覚障害者を対象に、順子女子育英基金は小学校から高校までの女子の視覚障害者を対象とした奨学金である。  これらは寄付者、NAWB、当協会の3者が覚書を交換し、ネパール政府社会福祉協議会(SWC)に届け出ている事業である。この3事業が覚書に添って、滞りなく実施されるようモニターする。      2.フォローアップ事業  NAWBの点字教科書発行を中心とした事業に対して、フォローアップのための側面的支援を実施する。これは、当協会が長年実施してきた事業が無に帰さないように、2004年度(平成16年度)から継続して実施している事業である。      3.国内事業  広報・募金活動は、NAWBから事業報告等が提出されることを条件に、『愛の光通信』を年2回発行し、例年通り実施する。  日本障害者リハビリテーション協会に事務所を置く、障害分野NGO連絡会(JANNET)の一員として、障害分野の国際協力を行う他施設・団体と情報交換・交流を深める。         ●三つ子の魂百まで  カラフルな服装はシャンテ校幼稚部の子供達。毎朝行われる朝礼は、必ず「ナマステ」で終わるのだが、とても熱心に祈る子と、うわの空の子がいて面白い。ナマステは「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」などに使える万能の挨拶語である。「ありがとう」は正式には「ダンニャバード」というのだが、とても重いニュアンスがあるので、実際はほとんど使わない。しかし逆説的だが、「ナマステ」も本来ヒンズー教では、「私はあなたの中の神に敬意を表する」という宗教的な意味がある。このためネパールでもイスラム教信者は、けっして「ナマステ」とは言わない。 ●平成31(2019)年度 資金収支計算書  (自)2019年4月1日  (至)2020年3月31日 (収入)   以下、勘定科目:予算(A) 、決算(B) 、差異[(A)−(B)]、備考の順。単位は円。 経常経費寄附金収入 :850,000、907,607 、△ 57,607   経常経費寄附金収入:850,000、907,607 、△ 57,607 その他の事業収入:380,000、380,000 、0   補助金事業収入(※)380,000 、380,000 、0 受取利息配当金収入:0 、0、0   受取利息配当金収入:0 、0 、0 その他の収入:0 、0 、0   雑収入 :0 、0 、0 事業活動収入計(1) :1,230,000 、1,287,607 、△ 57,607  ※日本盲人福祉委員会からの補助金80,000円、毎日新聞東京社会事業団からの助成金300,000円     (支出) 人件費支出:120,000 、120,000 、0   職員給料支出:120,000 、120,000 、0 事業費支出:576,000 、576,004 、△ 4   海外援護費支出:300,000 、300,000 、0   海外出張費支出:276,000 、276,004 、△ 4 事務費支出:243,000 、244,872 、△ 1,872   旅費交通費支出:0 、0 、0   事務消耗品費支出:2,000、2,075、△ 75   印刷製本費支出:96,000 、95,900 、100   通信運搬費支出:83,000 、84,430 、△ 1,430   手数料支出:27,000 、27,467 、△ 467   租税公課支出:0 、0 、0   諸会費支出:35,000 、35,000 、0   雑支出:0 、0 、0 事業活動支出計(2):939,000、940,876、△ 1,876 事業活動資金収支差額(3=1−2):291,000、346,731、△ 55,731 当期資金収支差額合計(4=3) :291,000 、34,731 、△ 55,731 7│ 前期末支払資金残高(5):2,317,953 、2,317,953 、0 当期末支払資金残高(4+5):2,608.953 、2,664,684 、△ 55,731 ●重荷を背負って  日本では高度経済成長に伴い、農作業を行う牛馬に代わって1960年には耕運機が74万5,792台も普及した。このため、かろうじて東京オリンピックが開催された1964年頃までは、日本の農村でも飼葉を作るために草刈りをして、それを運ぶ光景を見ることができた。  ネパールの農村では、牛や水牛を使った耕作が今でも珍しくないばかりか、牛車も馬車もまだ現役である。ネパールで最も一般的な食肉は、山羊肉であるためその飼育も盛んで、飼葉の需要は多い。 ●寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)2019年4月1日〜2020年3月31日 温かいご支援ありがとうございました!   (個人) 青木貞子、朝妻洋子、在田一則、安藤生、石田隆雄、石原幸栄、岩屋芳夫、植竹清孝、上野伊律子、遠藤利三、笈掛ユリエ、大垣内勇、大橋東洋彦、大森純子、岡本好司、貝元利江、勝山良三、加藤万利子、苅安達男、川尻哲夫、川田孝子、神田信、菊井維正、小泉周二、肥塚美和子、古賀副武、小林良子、小森愛子、酒井久江、佐々木信、指田忠司、白井雅人、杉沢宏、鈴木洋子、須原ひとみ、高橋恵子、田中徹二、田中正和、当津順子、長岡英司、生井良一、新阜義弘、野津虎雄、長谷川ミユキ、林紘子、原田美男、樋渡敏也、富久縞博、藤元節、本間昭雄、前山博、増野幸子、松井繁、松本大、御本正、三宅正太郎、茂木幹央、森栄司、森川精子、森山朝正、山岡三治、山口節子、横大路俊久、吉田重子、渡辺勇喜三   (団体等) 岐阜県立岐阜盲学校高等部生徒会、小林動物病院、スズキリフレッシュルーム、学校法人聖明学園古和釜幼稚園、園田鍼灸院、株式会社高垣商店、NPO法人点訳・音声訳集団一歩の会 ●海外交流事業記録 (2019/4〜2020/3)  4月25日:米国の視覚障害者ケイトリン・ベスト氏を取材  5月15日:日本国際協力センター(JICE)アブダビ事務所の副所長等2人が、見学と打ち合わせに来訪  6月9〜11日:ドイツ・ブレイルテックのフントハウゼン技術部長を招き、当協会でPuma VIIの保守・整備のためのワークショップを開催  6月14日:IAVI(国際視覚障害者援護協会)評議員会(舟橋会館)  6月18日:アラブ首長国連邦(UAE)ザイード高等組織機構(ZHO)から見学(13人)  7月:『Light of Love(愛の光通信)』No.52発行  7月27日:JANNET総会(戸山サンライズ)  8月2日:韓国の特殊教育教師8人(全員女性)が見学  10月31日:ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の研修生でサモアのアリ・トミー・ヘーゼルマン氏と会談(戸山サンライズ)  11月29・30日:IAVI「白い杖の留学生国際大会」レセプションに参加(アルカディア市ヶ谷)  12月:『Light of Love(愛の光通信)』No.53発行  12月14日〜12月31日:ネパール出張(福山)  1月25日発行:『点字ジャーナル』2月号に全盲のネパール人ラクシミ・ネパール氏が、「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業のフォローアッププログラムに対する私の知見〜チャリティーから投資へ」を寄稿。これは下記ホームページから日本語で読むことができる https://www.thka.jp/shupan/journal/202002.html  2月6日:日本医歯薬専門学校にて「ネパールにおけるTHKAの国際協力」のタイトルで講演(福山)  3月26日:IAVI評議員会(舟橋会館) ●吹き飛んだ「ネパール観光年」  今年のネパールは、「ネパール観光年2020(Visit Nepal 2020)」のキャンペーンで年が明けた。  元日の夕刻からはカトマンズの国立競技場で、大統領・首相・観光大臣列席のもと、5時間にわたり国軍や警察・各種団体による音楽や踊り、パレードなどによる開幕セレモニーが盛大に行われた。  しかし、その後の新型コロナウイルスの出現で、すべてが吹き飛び、政府は3月22日に「ネパール観光年2020」の中止を正式に決定した。 ●女子寄宿舎  米国や日本では、ユースホステルのことを略して「ホステル」などと呼ぶが、ネパールでは学校の寄宿舎を英国風にホステルと呼ぶ。  写真は、アマル・ジョティ・ジャンタ校を昨春卒業し、ポカラにある国立トリブバン大学プリティヴィ・ナラヤン校に昨秋入学したミナとロジーナ、学生の介助ボランティア、NAWBのダンゴール教育課長。 ●募金のお願い  ネパールにおける視覚障害者支援、とくに教育の充実をはかるために募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 ●寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号に掲げる社会福祉法人です。当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号及び租税特別措置法第41条の18の3、法人税法第37条第1項及び第4項の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ●編集後記  新型コロナウイルスに感染したネパール人は5月21日現在、ネパール国内では427人(死者2人)だが、海外には少なくとも5,200人(死者73人)がいると推計されています。  というのは海外出稼労働者がマレーシアと中東を中心に513万人もおり、彼らからの送金は年額7,550億ルピーに達し、これはGDPの25.1%に相当する一大産業になっているからです。  新型コロナ禍により失業する海外出稼ぎ労働者が増えており、彼らを入国させるかどうかが大きな政治問題になっています。  日本人や日本に生活基盤があるネパール人は、ネパール航空のチャーター便で成田空港に到着しましたが、カトマンズに帰るときは乗客を乗せないで帰って行きました。(H・F) 発行:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会海外盲人交流事業事務局 〒169-0072東京都新宿区大久保3−14−4 TEL:03-3200-1310   FAX:03-3200-2582 http://www.thka.jp/   E-mail: XLY06755@nifty.com  ※迷惑メールが増えています。当協会宛のメールには、適切な「件名」をお書き添えください。