愛の光通信    2019年夏号通巻52 2019.7    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321    東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 (写真)看板には「アガンチェン寺院、ハヌマンドカ(旧王宮)、シヴァ寺院&関連ビルディ.ングのリハビリテーション(再建)」 JICA(国際協力機構) 日本政府の支援を受けて、ネパール政府文化・観光・民間航空省考古局によって実施されているなどと書かれている。 ●視覚障害教育と地震復興事業調査2018 海外盲人交流事業事務局長 福山博  【2017年12月の調査では、ネパール政府による復興庁(NRA)設立の遅延やインドによる輸出制限等のため校舎再建などの地震被災からの復興は大幅に遅れていた。しかし、2018年12月の調査では、はっきり聞こえる復興の槌音が響いていた。当協会は緊急支援を行った後は、直接的な復興に関する財政支援等は行っていない。しかし、緊急支援があったからこその現在の復興事業である。また、緊急支援に協力してくださった方々も、本格的復興事業に深い関心を寄せられていると思う。それに日本国内では報道されることも少ないので、日本政府/JICAによる支援をも含めてここに紹介する。】  日本盲人福祉委員会(日盲委)の助成を受けて、私は2018年12月14日〜31日の旅程で、ネパール連邦民主共和国を訪問した。その主目的は、当協会が支援している統合教育校の視察と「ネパール地震2015」復興事業に関する調査であった。  12月15日(土)深夜0時20分羽田空港発、タイ国際航空にてバンコクを経由して、同日13時55分、予定より1時間遅れてカトマンズ空港に降り立った。同空港は滑走路が1本しかなく、それを国内線と国際線で使っているため混み合い、カトマンズ上空で約1時間も旋回して待機したのだ。  待ちくたびれたネパール盲人福祉協会(NAWB)の4WDで、宿舎である三ツ星ホテルのポタラ・ゲスト・ハウスへ直行した。  12月16日(日)午後2時、NAWB本部にて日程調整会議。ネパール滞在中のスケジュールについてNAWBから、「昨年までは12月25日は『クリスマス』による公休だったが、今年はそれが廃止された」との報告があった。     復興の槌音  2015年4月25日に発生したネパール地震に際し当協会は、155万3,000円の救援金をNAWBに送金し、それは視覚障害者を中心とした地震被災障害者の緊急支援に使われた。また、日盲委は150万円をNAWBとNAB(ネパール盲人協会)が共同で組織した災害救援対策調整委員会(DRRCC)に送金し、地震被災視覚障害者の緊急支援を行い、その後も本年まで毎年20万円の支援をした。  2015年8月にアジア太平洋CBR会議参加のために来日したNAWBタパ会長は、9月4日に当協会で開催された「ネパール地震2015被災者支援報告会」に参加し、日本からの支援に感謝すると共に、学校再建費用は各国政府等の協力を得て、ネパール政府が財政支出すると述べたが、1ページに述べたような事情で復興事業は大幅に遅れた。     校舎の修復と再建  12月17日(月)午前7時に宿舎を出発し、私はNAWBのラトナ・カジ・ダンゴール教育課長と共に4WDで、ネパール地震の震源地であるゴルカ郡の山の上にある12年制(小学1〜高校3年)のアマル・ジョティ・ジャンタ(A・J・ジャンタ)校を訪問。同校の2階建校舎本館など1960年代の古い校舎は、2015年4月のネパール地震で全壊した。  同校は辺鄙な山の上にあるが、米国のキリスト教系NGOが長年にわたり献身的に支援してきたため、学業に秀でた学校としてネパール全土にその名をとどろかせ、首相や大臣等を輩出した有名校である。このため地震発生時にはインド共和国政府の財政支援により、+2(高校2・3年生)用の校舎を建設し完成していた。そして地震の1カ月後に落成式が予定されていたが、地震被災でその新校舎壁面には無数の亀裂が生じたので中止された。  その後の建築士による被災調査で、同校舎の被害は軽微で、通常の授業に使って差し支えないとの太鼓判が押され、2017年12月に訪問したときは、壁に亀裂があるままの教室を使っていた。しかし、2018年12月17日に訪れたときは教室は使用されておらず、補強のための補修工事が行われ、あとは仕上げの塗装工事を残すだけだった。  2017年12月に同校を訪れたときは、「ゴルカ郡では約500教室が被災したが、同校には使える教室も残っているので校舎建設の優先順位は低い。したがって再建はいつになるかわからない」と副校長は嘆いていた。  ところが実際は2018年5月18日に2,147万4,309.14ルピー(1ルピーは約1円)で12教室を含む校舎本館立替工事の契約が締結され同年7月30日に起工し、2020年4月に完工する計画だ。  この工事自体はネパール政府復興庁が実施するものだが、工事がトントン拍子に進んだのは、建設資金をゴルカ財団が提供したためだ。  ゴルカ財団は米国で高等教育を受けたゴルカ郡出身のネパール人と、ゴルカ郡で文化人類学等の調査を実施した米国人など、同郡と関係のある人人が、ゴルカ郡における貧困層の生活環境を改善することを目的に、米国の首都ワシントンDC郊外のバージニア州シャンティリーに本部を置く非営利団体である。  同じ仮設教室でも財政基盤のしっかりした都市部の学校のそれには床があり壁もある、しかし山間部の学校は壁もない掘っ立て小屋で明らかな違いがある。そういう意味でも、A・J・ジャンタ校校舎再建が前倒しになったことを私たちは喜びたい。     より良い復興(Build Back Better)  カトマンズの観光名所で旧王宮広場「ダーバー・スクエア」と市内中心部にあるネパール最大の病院で医科学の中心でもある国立ビル病院でJICAの支援による工事が開始されていた。  ダーバー・スクエアには「ハヌマンドカ」と呼ばれる旧王宮を中心に歴史的建造物が林立している。「ハヌマン」とはヒンドゥー教の「猿の神様」のことで、「ドカ」とは「門」のことだ。旧王宮の入り口にはハヌマンの像があることから、本来はこの入口をハヌマンドカ(門)と呼ぶのだが、現在では旧王宮全体をこう呼んでいる。  内部には、ヒンドゥー教のパンチャ・ムキ・ハヌマン寺院をはじめ珍しい八角形のクリシュナ・マンディール寺院などがある。  歴史的な価値のある歴代王室の建物には見事な装飾が施されており、JICAは日本から専門家を派遣し、世界遺産でもあるカトマンズ盆地の「ハヌマンドカの修復プロジェクト」を実施していた。  実際にハヌマンドカの門から中に入ると中庭になっており、そこでは倒壊しかねない建物を多くの支柱で支えながら、ネパールの職人による気が遠くなるような修復作業が行われていた。日本は古くからネパールの歴史的建造物の調査・修復に官民挙げて協力してきたので、この国家的事業に参加することになったのである。  またJICAは「ネパール地震復旧・復興プロジェクト」も実施している。この事業は、カトマンズ盆地における国立ビル病院およびパロパカール産婦人科病院の再建、最大の被害を出したシンドパルチョーク郡における導水管の再建、震央であるゴルカ郡における橋梁の整備を行うことにより、公共サービスの復旧・復興や、被害が甚大な北部山岳地域への公共サービス提供の強化を通じて、今後発生する災害への備えともなる「より良い復興」の実現を図るものである。  国立ビル病院はラナ宰相家による専制時代の1947年に、ネパールを近代化に導いた11代首相ビル・シャムセール・ジャンガ・バハドゥール・ラナ(1885〜1967)の名を冠してカトマンズ市内中心部に設立されたネパールで最も古く、最も大きな総合病院で、公的なトップレファラル(最高次レベルの医療サービスを提供する)病院だ。  NAWBの創設者であるL・N・プラサド先生が院長をしていたこともあるので、私たちにとっても親しみ深い病院だが、現在は政府機関である国立医学科学アカデミーによって運営されている。同病院は医師や看護婦の養成を行っているほか、世界各国で医師免許を取得した医師のインターンシップセンターともなっている。  JICAの事業は、国立ビル病院に4棟ある病棟のうち、唯一全壊判定を受けた築約50年の第3病棟を再建(約3,100平方メートル)するものだ。     歴史的建造物再建の速度  1873年に建立された名刹カルモチャン寺院がネパール地震2015で崩壊すると、国宝級の寺院なので現状保存と宝物保護のためにすぐに警察により臨時警備所が置かれ、24時間の警護が行われた。  2006年に非宗教国家と宣言するまで、ネパールはヒンドゥー教を国教に定めており、現在は国教ではないが、ネパール人の8割以上がヒンドゥー教徒である。また、観光立国であるネパールでは、カトマンズ観光の目玉である歴史的建造物のほとんどが、ヒンドゥー教寺院や仏教寺院であるため倒壊したこれらの寺院の再建は、宗教的見地だけでなく、観光という経済的見地からも重視されている。同寺院はカトマンズのNAWB本部に隣接しているので、私たちもその再建を注視してきた。  2017年12月に視察したときに、すでにカルモチャン寺院の再建工事が着工されていたが、2018年にはヒンドゥー寺院のドーム「シカラ」を支える2段ある基壇の1段目が完成していた。レンガは新しいものを使っていたが、ドアや窓枠は古い建材を補修して使っていた。歴史的建造物がどのように再建されるのか、その指標として今後も注目していきたい。     統合教育校の視察  先に述べたが12月17日にA・J・ジャンタ校を訪問し、ミナ・ブージェル(20歳)とロジーナ・ギミレ(19歳)に会った。二人は10年課程終了時に受ける中等教育修了試験(SEE)に合格して、その上の「+2」に進学して11年生になっていた。  同校では、米国で発行された「英語文法書」を授業で使っているが、その点字版がないので授業に差し支えると言っていた。  ところでSEEの成績は「+2」や大学への入学、大学院への進学、その後の就職や転職等にも一生ついてまわるので極めて重要な試験だ。SEEに合格しなければ、普通に生活していけるだけの給与をもらえる職に就くことは不可能に近い。  ネパールの修業年限は小学校5年、中学校3年、高校2年である。しかしこれでは12年間の教育を修了して高卒と認める日本を含む諸外国との間で問題が生じる。そこでネパールも将来的には12年課程の教育を修了して高卒とするが、現在はその移行期間として、暫定的に11・12年課程を「+2」と称している。【ナラヤンガット泊】  12月18日(火)、ドゥマルワナ校を訪問した。従来、同校に行くときは乾期に水が引いた川を4WDで渡らなければならなかった。しかし今回は、2017年12月に着工していた橋が完成し、同校のあるドゥマルワナ村は陸の孤島を返上していた。  1年前の2017年12月に同校を訪問したとき、全盲教員クリシュナ・ティミルシナ君から『統一英語点字(UEB)ハンドブック』点字版を発行して欲しいと陳情された。彼は就学前の点字クラスから10年課程を修了するまで当協会の丸抱え支援で勉強し、その後、奨学金を得て大学を卒業して母校の教師になった古くからの知り合いだ。そこで同ハンドブック点字版を持参し彼に手渡した。  同校の奨学生ラム・バハドール・ガレ2年生(11歳)の成績は「可」、クリシュナ・シャー・スナー2年生(12歳)の成績は「可」、チャンダ・カチワダ9年生(15歳)の成績は「良」、チャンパ・チョーダリ8年生(17歳)の成績は「可」であった。SEEに合格して「+2」に進級した11年生のサンジャリ・マヤ・ガラン11年生(31歳)は、「可」であった(6ページ参照)。【ビルガンジ泊】  12月19日(水)、ビルガンジからマニグラムまでの移動中、途中のブトワル市内の祭会場近くの交差点で、対向車線を走ってきたスクーターが私たちの20mほど前を右折しようとして転倒し、スライディングして私たちの車にぶつかってきた。車を止めて、すぐにダンゴール教育課長と運転手が救援に行き、野次馬や警察が来て一時は騒然となった。しかし、スクーターを運転していた若者もかすり傷で済んで大事に至らずに済んだ。【マニグラム泊】  12月20日(木)、シャンティ校を訪問。2017年12月、私たちが以前支援していた生徒の全盲教師ティカラム・ブーサル君から『UEBハンドブック』点字版を発行して欲しいと陳情されていた。そこで、今回持参した同書を彼にも手渡した。  同校の奨学生ニル・バハドゥール・チョーダリ9年生(20歳)の成績は「良」、サリタ・バニヤ11年生(18歳)の成績は「優」。彼女はパソコン操作のデモンストレーションを行ってくれた。  同校は点字プリンターを寄贈してもらって所有していたが、使われていなかった。使うためには点字のソフトが必要なのだが、同校にはそれがないのだ。【ナラヤンガット泊】  12月21日(金)、ネパール第2の都市ポカラにあるアマルシン校を訪問した。トゥルシ・ダーカル8年生(13歳)の成績は「良」。同校には2010年にユニセフ大使でタレントの黒柳徹子さんが寄贈したものと、2012年に英国の婦人が寄贈したものの2台の点字プリンターがある。ところが、2017年12月に同校を訪問したときこれらは稼働していなかった。しかし、2018年12月に訪問したときはダックスベリーという米国製点字ソフトがインストールされており点字プリンターは稼働していた。  「ネパールは貧しい国であるからパソコンも点字プリンターもないので教育も遅れている」というような単純な思いこみからパソコンや点字プリンターを無闇に欲しがる。それらをシステムとしてどう運用するのか考えないで、誰彼構わずリクエストするので、結果的に宝の持ち腐れになる場合も少なくない。【ポカラ泊】  12月22日(土)ポカラの宿舎を午前8時に出発してカトマンズに帰る途中、NAWBのランドクルーザーが、交通量の多い街道でパンクした。  12月23日(日)、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業第19期生として2017年9月〜2018年6月まで日本に滞在し、『点字ジャーナル』2018年7・8月号に寄稿してくれたラクシミ・ネパールさんに会いにNAWBダンゴール教育課長と共に、彼女の住むバクタプールへ行った。  彼女は、国立トリブバン大学大学院の修士課程に在籍しており、2週間後に大学院の修了式を控えていた。同日、同大試験管理事務所に行き修了式のための登録をしなければならないという。同事務所は授業を行うキャンパスとは別だというので、私たちは彼女を介助してそこに行くことにした。  同事務所では大学の卒業のために登録を行う学生もいて長蛇の列を作っていた。視覚障害者は優先的に登録できるので、ダンゴール教育課長はラクシミさんを手引きして手続きを終えた。  12月25日(火)、ラボラトリー校に行き優等生のマニシャ・ギリ7年生(13歳)に会った。2017年12月に会ったとき彼女の唇が荒れていたので、リップクリームを手渡すと照れたように笑った。  ナムナ・マチェンドラ校に行くと、ルパ・タマン6年生(14歳)の成績は「良」、シュリスティ・スベディ10年生(18歳)の成績は「良」であった。ただ彼女たちの恩師で、身の回りを含めて献身的に世話していた教師が最近亡くなったので、この日、寄宿舎は閉鎖されていた(10ページ参照)。  12月27日(木)午前11時からNAWBにて会議。NAWBタパ会長から「英語文法書の点字版がなく、2019年事業として作成したいので、財政支援をお願いしたい」と切り出された。  12月17日A・J・ジャンタ校を訪問したときに「英語文法書」の点字版がないと言われていたので、あらかじめWEBで調べていた。すると米連邦議会図書館から「英語文法書」の点訳データが無償公開されていたので、それを紹介した。  すると「それはUEBで記載されているのか?」との質問があった。  私は「おそらくUEBではなく、その前のEBAE(英語点字米国版)で書かれていると思う。たしかに今はUEBで表記された教科書が使われているが、だからといってEBAEで点訳された点字図書が廃棄されたわけではない。米国では今でもEBAEで点訳された点字図書が、問題なく使われている」と言ったら、NAWB側も納得してくれた。  私はドゥマルワナ校に在籍するサンジャリ・マヤ・ガランさんの進路についてNAWBに質問した。  タパ会長は「サンジャリは成績もいいので、奨学金を受けて大学に行けるだろう」と言った。  私は、「そんな悠長なことをしていたら彼女は大学を卒業するときは37歳になってしまう。+2で教育学を学んでいるのなら+2終了時の33歳のときに母校のドゥマルワナ校で教員として就職できないか」と聞いた。  すると、タパ会長は「可能だろう」と返答した。  彼女の両親は早く亡くなり、父親の妹である叔母の家で子守をしていた。だが、子供達が成長したので叔母の家では用なしになった。他に頼るところがない彼女は、衣食住が無料だと聞いて、21歳でドゥマルワナ校の門を叩いたのであった。 ●2018年度事業報告(平成30年4月1日〜平成31年3月31日)  ネパール盲人福祉協会(NAWB)を財政的に支援して、『統一英語点字(UEB)ハンドブック』(点字版)を作製して、統合教育校等へ配布した。  安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金の3基金による奨学金給付事業を継続実施した。  当協会職員有志によるNAWBバラCBR事業現地スタッフの遺児3人を援助する「クリシュナ君遺児育英基金」と「クリシュナ+2育英基金」の事業管理に協力した。  上記事業の管理等を行うため、2018年12月15日(土)〜12月31日(月)の日程で福山博事務局長がネパールに出張した。  事業報告集である『愛の光通信』(50号)を2018年7月、同(51号)を2018年12月に発行した。  2019年2月4日(月)午前、日本医歯薬専門学校(東京・高円寺)において視能訓練士学科の学生を対象に、「ネパールにおけるTHKA(東京ヘレン・ケラー協会)の国際協力」の演題で講演を行った。 ●2019年度事業計画(平成31年4月1日〜令和2年3月31日)     1.育英基金事業  安達禮雄基金と正雄育英基金は小学校から高校まで(第1〜12学年)の男女の視覚障害児童・生徒を対象に、順子女子育英基金は小学校から高校までの女子の視覚障害児童・生徒を対象とした奨学金である。これらは寄付者、ネパール盲人福祉協会(NAWB)、当協会の3者が覚書を交換し、ネパール政府社会福祉協議会(SWC)に届け出ている事業で、この3事業が覚書に添って、滞りなく実施されるようモニターする。     2.フォローアップ事業  NAWBの点字教科書発行を中心とした事業に対して、フォローアップのための側面的支援を実施する。これは、当協会が長年実施してきた事業が無に帰さないように、2004年度(平成16年度)から継続して実施している事業である。     3.国内事業  広報・募金活動は、NAWBから事業報告等が提出されることを条件に、『愛の光通信』を年2回発行し、例年通り実施する。  日本障害者リハビリテーション協会に事務所を置く、障害分野NGO連絡会(JANNET)の一員として、障害分野の国際協力を行う他施設・団体と情報交換・交流を深める。 ●再建されたネワール住宅  新築なった5階建の自宅屋上で写真に写っているのは、NAWBダンゴール教育課長夫妻。2015年の地震被災者なので、再建に当たっては政府から1世帯あたり、ネパールの一人当たりGDPの3倍に相当する3,000米ドル(約33万6,000円)の助成金が出るはずなのだが、手違いで貰えなかったと彼は悔しそうに言葉少なに語った。  彼が住むのはカトマンズから車で約45分かかる前号でも紹介したネワール人の豊かな集落コカナ村である。このため、地震で被災した近隣の住宅もそのほとんどが再建されていた。しかも、この村はカトマンズ盆地土着のネワール族の文化を色濃く残していることからユネスコの世界遺産に登録されているので、再建された住宅の外観は、ネワール建築の様式を活かして建設されていた。  ネワール人は人口の5.48%しかいないが、カトマンズで見るべき観光資源のほとんどは彼等の遺産で、十分な教育を受けている人も多いので教員・官吏・実業家に多く、その存在感はとても大きい。 ●平成30(2018)年度 資金収支計算書 (自)平成30年4月1日 (至)平成31年3月31日     (収入)  以下、勘定科目:予算(A)、決算(B)、差異[(A)−(B)]、備考の順。単位は円。 経常経費寄附金収入:840,000、858,757、△18,757   経常経費寄附金収入:840,000、858,757、△18,757 その他の事業収入:400,000、400,000、0   補助金事業収入(※):400,000、400,000、0 受取利息配当金収入:0、0、0   受取利息配当金収入:0、0、0 その他の収入:15,000、15,000、0   雑収入、15,000、15,000、0 事業活動収入計(1):1,255,000、1,273,757、△18,757  ※日本盲人福祉委員会からの補助金100,000円、毎日新聞東京社会事業団からの助成金300,000円     (支出) 人件費支出:120,000、120,000、0   職員給料支出:120,000、120,000、0 事業費支出:977,000、977,047、△47   海外援護費支出:700,000、700,000、0   海外出張費支出:277,000、277,047、△47 事務費支出:208,000、206,505、1,495   旅費交通費支出:0、0、0   事務消耗品費支出:0、0、0   印刷製本費支出:95,000、95,040、△40   通信運搬費支出:48,000、47,240、760   手数料支出:30,000、28,670、1,330   租税公課支出:0、555、△555   諸会費支出:35,000、35,000、0   雑支出:0、0、0 事業活動支出計(2):1,305,000、1,303,552、1,448 事業活動資金収支差額(3=1−2):△50,000、△29,795、20,205 当期資金収支差額合計(4=3):△50,000、△29,795、△20,205 前期末支払資金残高(5):2,347,748、2,347,748、0 当期末支払資金残高(4+5):2,297.748、2,317,953、△20,205 ●木挽の職人芸  ネパールにも製材所はある。しかし、大きなノコギリを使い二人がかりで丸太から板に製材している光景はこの学校だけでなく、地方のホテルでも過去に見た。丸太を所有していたら、人力製材の方が安上がりなのだろうか。木挽きする二人の奥、右側に次の出番を待つ丸太、その左側には完成した板が5枚並んでいる。ノコギリで挽いただけなのだが、厚さのそろった、立派な板で、おそるべき職人芸である。 ●寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)平成30年4月1日〜平成31年3月31日 温かいご支援ありがとうございました!   (個人)  青木貞子、朝妻洋子、芦田賀寿夫、在田一則、安藤生、石田隆雄、植竹清孝、上野伊律子、生形てる子、遠藤利三、大橋東洋彦、大橋由昌、大森純子、岡本好司、貝元利江、梶原剛、勝山良三、加藤万利子、加納洋、川尻哲夫、川田孝子、菊井維正、楠本睦子、黒見恵美子、小泉周二、郷農彬子、古賀副武、小島亮、小林良子、小森愛子、斎藤惇生、酒井久江、坂入隆、坂齊勝男、佐々木信、指田忠司、白井雅人、杉沢宏、鈴木洋子、染矢朝子、高橋恵子、田中徹二、田中正和、当津順子、長岡英司、中原章雄、生井良一、新阜義弘、初瀬勇輔、林紘子、原田美男、富久縞博、藤芳衛、本間昭雄、前山博、増野幸子、松井繁、松浦健三、松本大、御本正、三宅正太郎、宮下浩子、茂木幹央、森栄司、森川精子、森山朝正、安田英俊、山口節子、山本周子、吉田重子、渡辺勇喜三   (団体等)  岐阜県立岐阜盲学校高等部生徒会、小林動物病院、古和釜幼稚園、下館ロータリークラブ、有限会社信和ハウス、園田鍼灸院、点訳・音声訳集団一歩の会、宗教法人花園神社、有限会社ヤマオー事務機 ●海外交流事業記録(2018/4〜2019/3)  4月25日(水)19:00〜21:30:ネパール大地震3周年追悼上映会「カトマンズの約束」(なかのZEROホール)鑑賞。  4月27日(金)13:30〜15:50:ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の研修生ラクシミ・ネパール氏(26歳)来訪・見学。  5月30日(水):IAVI評議員会  6月6日:ラクシミ氏と会談(戸山サンライズ)  6月7日:ネパール、フィジー、パキスタンからの障害者リーダー育成事業研修生3人と会食  6月3日:JANNET総会(戸山サンライズ)  7月:『Light of Love(愛の光通信)』No.50発行  7月5日:カトマンズのヒマラヤン・ホリディズから当協会の元職員の消息照会に対応  8月17日:韓国全州(チョンジュ)大学校で特別教育を勉強中の女子大生5人が施設見学  9月3日:米国ワシントン州サイラス・ハビブ副知事(全盲)取材(第一ホテル東京)  9月:『JANNETメールマガジン』9月号(第181号)に「ラミチャネ博士が、世界の優秀な青年10人に選ばれました」を寄稿。  10月17日:フィリピンのセブ・ブレイル・センターから4人が施設見学  11月:田畑美智子WBUAP会長の依頼で、カナダ人映画監督プラウフ氏の戦争と盲人をテーマにしたドキュメンタリー映画製作に協力  11月14日:韓国の点字教科書製作会社エクスビジョンテクノロジーの3人が施設見学  11月21日:ヒカリカナタ基金竹内昌彦理事長のNAWB見学(12月10日)を手配  12月:『Light of Love(愛の光通信)』No.51発行  12月15日〜12月31日:ネパール出張(福山)  2月4日:日本医歯薬専門学校にて「ネパールにおけるTHKAの国際協力」のタイトルで講演  2月14日:ワシントン州盲人協議会シアトル支部役員の田中恵氏(弱視)を取材 ●食用鳩の飼育  鳩肉は、フランスやエジプトでは高級食材だが、ネパールを含む南インドでは、鳥肉の一種として冬場によく食べられている。  つがいで鳩を飼育すると5〜6カ月齢で産卵を始め、毎月2個の卵を産み、繁殖能力は5年続く。この間、鳩は自分で餌を探して食べ、病気にもなりにくいので手間いらず、しかもわずかな資金で始められるので、農村の重要な収入源になっており、統合教育校で視覚障害児が飼育している例もある。 ●訃報  ナムナ・マチェンドラ校のリソース教師ブッダラクシュミ・シュレスタ先生が、2018年12月15日に喉頭ガンで急逝されました(享年60)。  彼女は2001年に英語教師として同校に赴任し、当協会の支援で2003年にNAWBが実施した特別教育教員養成研修会を受講して、同校のリソース教師となられました。以来、限られた予算を有効活用して、視覚障害教育に献身的に尽力されてきました。  ブッダラクシュミとは、仏陀とヒンドゥー教の美と豊穣と幸運を司る女神ラクシュミーが合体したネパールならではの名前です。シュレスタという姓は、ネワール民族の高位カーストです。ネワール人には仏教徒も多く、仏教とヒンドゥー教が混交した寺院さえあるのですが、彼女は純粋なヒンドゥー教徒でした。先生のご冥福をお祈りいたします。 ●募金のお願い  ネパールにおける視覚障害者支援、とくに教育の充実をはかるために募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 ●寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号に掲げる社会福祉法人です。当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号及び租税特別措置法第41条の18の3、法人税法第37条第1項及び第4項の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ●編集後記  葛飾北斎の浮世絵『富嶽三十六景』の「遠江山中」に描かれているので、私たちもかろうじて「木挽」を知っていますが、もはや死語です。  日本ではとっくの昔に廃れた職人技が、今でもネパールでは現役です。観光資源としても使えるのではと思うのですが、いかがでしょうか?  ネパールでは鳩を食するといっても、それは食用鳩に限られます。  カトマンズでは、信心深い人々が先を争って盛大に餌をやるので、日本以上に鳩の糞害に悩んでいます。  カトマンズ・ゲスト・ハウスの最上階に泊まると鳩の喧噪と共にめざめます。「ネパール観光の父」と称されるオーナーのカルナ・シャッキャ氏は、敬虔な仏教徒なので手が打てないのでしょうか。(H・F) 発行:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会海外盲人交流事業事務局 〒169-0072東京都新宿区大久保3−14−4 TEL:03-3200-1310   FAX:03-3200-2582 http://www.thka.jp/ E-mail: XLY06755@nifty.com  ※迷惑メールが増えています。当協会宛のメールには、適切な「件名」をお書き添えください。