愛の光通信    2017年夏号通巻48 2017.7    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321    東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局  統一英語点字(UEB)ナショナルセミナーの閉会式で挨拶する講師のホーム・ナット・アルヤール(Mr. Hom Nath Aryal)元ネパール盲人福祉協会(NAWB)事務局長(左端)。その右は来賓のガネッシュ・ポーデル(Mr. Ganesh Poudel)教育省統合教育部長、その右も来賓のクリシュナ・プラサド・カプレ(Mr. Krishna Prasad Kapre)教育省カリキュラム開発センター所長、その右はクマール・タパ(Mr. Kumar Thapa)NAWB会長 ●アンジュとの再会  土曜日が休日であるネパールの日曜日は、通常は平日なのだが、12月25日(日)はクリスマスなのでネパールでも休日であった。だが寄宿舎には視覚障害児がいるのでとドゥマルワナ校に向かった。そして、寄宿舎の前で花束を持って待っていたのは、ちょっと気が強くておてんばであった昔の面影が残る懐かしいアンジュ・ディタルであった。  写真:就学前(5歳)と現在(27歳)のアンジュ  私(福山)が彼女に最初に会ったのは今から22年前の1994年のことである。アンジュは現在27歳なので、彼女が5歳の頃だ。バラ郡のパタライア村というタライ平野の交通の要衝にある小さな小学校で学んでいたのだが、まったく教育成果が上がらず、彼女は小学1年生を3年間も続けた。  さすがにこれではまずいと、家族の同意を得て彼女は寄宿生としてドゥマルワナ校に転校すると、めきめきその実力を発揮して、一躍優等生となった。  その次に印象深く彼女を覚えているのは、2008年8月に同校で行われた対話集会でのことである。  視覚障害生徒から「以前は寄宿舎での2時間の自習に教師が付き添ってくれたが、今はいないので質問できなくて困る」という不満が出て、ちょっとした学園紛争もどきのいざこざがあったときのリーダーが彼女であった。  そのときは、私がブラジル、スーダン、中国の厳しい視覚障害者の教育環境を例に出して、ネパールの学習環境がいかに恵まれているか力説。  するとアンジュも「他の国の視覚障害者にまけないように私たちもがんばります」と決意表明して紛争は収まったのであった。そのとき彼女は10年生で19歳であった。  翌年、彼女はバラ郡を含む地域一帯の中心都市であるビルガンジ市のカレッジでプラス2(日本の高校2・3年)に進み、その後大学に進学した。  そして、それから8年ぶりに私の目の前に彼女はヒョッコリ現れたのである。  アンジュは近くの学校(Janta Higher Secondary School, Rajahatta, Dumarwana, Bara)で教師をしながら大学院修士課程も履修していた。  今日は学校は休みなので、私がドゥマルワナ校を訪問するということを聞き、わざわざ会いに来てくれたのだという。  彼女はまだ非常勤講師だが、自分の足でしっかりと立っていることには違いないので、私はとても嬉しく感慨深かった。  20年以上前は、「盲人に教育を受けさせて何になる」という声が、ネパールでは大っぴらに語られており、幼少期の彼女は視覚障害に加え、知的障害があるのではないかとさえ疑われていたのだった。  大都会のカトマンズ市では、公立校の教師という職業は、必ずしも羨ましがられるようなサラリーの職業ではない。しかし、農村僻地のバラ郡ではちょっと胸を張れる仕事で、いわば彼女は生まれ故郷に錦を飾ったのである。(海外盲人交流事業事務局長 福山博) ●地震復興への険しい道 海外盲人交流事業事務局長 福山博  私はネパールでは、これまでもっぱら中級ホテルに泊まってきた。しかし、今回22年ぶりにカトマンズ市の高級ホテルに投宿した。というのは、訳あって高級ホテルが、中級ホテル並の宿泊料金にディスカウントしていたので飛びついたのだ。  ホテルシャンカーは、1894年に建てられたラナ宰相家の宮殿を、ラム・シャンカー・シュレスタという実業家が買い取って改装し、1964年にホテルとして開業したネパールの老舗ホテルである。  しかし、120年前の建造物であるため2015年4月の大地震で右翼ファサードの円柱等が被災した。  このため目下大修復工事中で、宿泊者も通用口から出入りしなければならないため、宿泊料金は格安に設定されたのだ。そこで、私は復興工事の見学もできると喜び勇んで予約したのであった。  高級ホテルでは、この他にホテルエベレストが同地震で被災し、こちらは再建を断念したので「500人もの雇用が失われた」とニュースになった。  ホテルとは「人が泊まるための設備を備え、寝具を提供する施設」と定義される。したがってその建物自体が商売道具だから、ホテルシャンカーとしても早く本格営業を開始したいのはやまやまのはずである。ネパールではそのホテルでさえ、やっと工事が始まったばかりなので、他は推して知るべしだ。  私が見聞した限りホテルシャンカーを例外として、再建工事を行っているのは文化的な価値もなく、比較的低予算で建設できる横町の小寺院や個人住宅ばかりであった。  2008年5月に王制が廃止されたため、以来王宮は博物館となったが、この建物は日本人建築家が設計したため無傷であった。ところが、それを囲む塀は、無残な壊れ方をしており、鉄条網をはわせて当面の間に合わせにしていた。  私たちが長年支援する、カトマンズ市に隣接するラリトプール郡パタン市にあるナムナ・マチンドラ校は、郡当局が新たに設定した建築基準「公道から10フィート(304.8cm)、隣接する建物から10フィート離れて建設しなければならない」ことが問題となり、設計にさえ着手していなかった。  というのは、従来の校舎は公道ぎりぎり、隣接する建物ぎりぎりに建っていたので、新建築基準通りに校舎を建てると在校生をすべて収容することができなくなるのだ。  そこで、郡当局に陳情を繰り返しているのだが、例外をみとめればその建築基準が空文化するので、暗礁に乗り上げていた。  ネパールの建物は鉄筋レンガ造が基本だが、他に木骨に日干しレンガ・石積・赤土と石の混合材などもあり、元々建築基準に適合しない建造物も多い。したがって、現実を無視して立派な耐震基準を設定したら、絵に描いた餅になるだけである。  このようなありさまで、地震から1年半余が過ぎても、ネパールで校舎を着工したという話は、結局、聞くことはできなかった。  完全倒壊した校舎は、昨年の時点で後かたづけが行われていた。また、構造部分に損傷のない校舎はそのまま使い続けられていた。問題は中途半端に打撃を受けた校舎で、完全に立て直すのか? 修理・補強して校舎として使い続けるのか? 当然、公立校は行政の財政支援を受ける必要があり、その交渉も絡んで難しい選択を迫られていた。 ●UEBセミナー報告 NAWB教育課長 ラトナカジ・ダンゴール  東京ヘレン・ケラー協会の財政支援を受けて、ネパール盲人福祉協会(NAWB)主催の統一英語点字(UEB)ナショナルセミナーがNAWB本部会議場で、2016年12月11・12の両日開催された。  本セミナーの参加者は、NAWBの職員を始め、視覚障害者の当事者団体であるネパール盲人協会(NAB)職員、教育省カリキュラム開発センター次長、教育省統合教育部課長、教育省カトマンズ郡教育事務所次長、経験豊かな統合教育校のリソースティーチャー、ネパールで唯一の盲学校の校長、視覚障害児親の会会長などネパールの当事者と視覚障害教育や点字出版界を代表する42名であった。  本セミナーはUEBのルールを遵守して、ネパール点字の権威であるホーム・ナット・アルヤール氏(元NAWB事務局長)とNAWBのクマール・タパ会長を講師にして行われた。  英語圏の8カ国ではすでにUEBを導入しており、それらの国では同じ点字による縮語、句読点・記号が使用され、英語圏各国の視覚障害者はすでにUEBによる英語点字の文献を読むことができている。UEBの導入は世界の趨勢なので、ネパールでもその導入は喫緊の課題であった。  そのためにはUEBとは何か、セミナー参加者がよく理解し、ネパールでの導入に参加者全員が同意することが不可欠だった。また、「UEBを導入しながら、理数学記号はネメスコードを今後も使い続ける」という米国とまったく同じスタンスを取ることも参加者全員で確認する必要があった。  というのは日本には日本点字委員会(日点委)という点字に関する決定機関があり、UEBの導入なども同委員会で決めることができ、日本中の点字にかかわるすべての教育機関、点字図書館、点字出版所などは、日点委の決定事項に従うシステムになっている。同様に、先進国には日点委同様の点字に関する決定機関があるが、残念ながらネパールにはそのような機関がないのだ。  そこで、点字に関するステークホルダー(利害関係者)を一堂に集めて、ナショナルセミナーを開催して、UEBに関する事情を説明し、学びながら、その導入を討議し、検討する必要があったのだ。  こうしてセミナーの2日目に講師陣は、参加者全員にUEBの使用に関心があるかどうか尋ねた。するとすべての参加者が、UEBを導入することに賛同するとともに、それぞれの持ち場で、視覚障害学生や他の関係者にUEBの重要性を積極的に広めることを約束した。  UEBナショナルセミナーの閉会式の主賓は、クリシュナ・プラサド・カプレ教育省カリキュラム開発センター所長とガネッシュ・プラサド・ポーデル教育省統合教育部長だった。そして、閉会式典はとても熱狂的に行われた。  セミナー参加者でパルパ郡にあるダムカダ校の全盲教師であるクリシュナ・プラサド・パラジュリ氏は、政府がすぐにUEBを承認し、UEBに従って点字図書を作成し、ネパールの視覚障害者が英語圏の様々な点字資料を読み、容易に勉強できるようにしてくれるだろうと期待感を表明した。  ダーランにあるネパールで唯一の盲学校のケシャリ・タパ校長は、本セミナーに参加して、英語教育の発展に立ち会うことができて幸運であると述べた。というのは、UEBという略語はこれまでも耳にしていたが、それが何なのかこのセミナーが開催されるまでまったく分からなかったからだ。彼女は講師であるアルヤール氏が25年以上にわたり視覚障害者のための特殊教育の専門家として働いていることに感謝し、本セミナーを祝福した。  教育省のポーデル統合教育部長は、ネパールの英語点字の開発に立ち会えた幸運を表明して、教育省としてUEB導入を承認することを表明した。  本セミナー閉会式典の来賓は、ネパールでのUEBの承認を支援するために、新しい開発を先取りしてくれた関係者に感謝の意を表明した。  閉会式の議長であるクマール・タパNAWB会長は、来賓のカプレ・カリキュラム開発センター所長とポーデル統合教育部長に感謝の意を伝えた。  式典は最後に、2017年にネパールの各地でUEBの重要性を広め、同年12月に再度ナショナルセミナーをNAWBで開催して、ネパール全土に広くUEBを普及することを宣言して閉会した。  写真:ナショナルセミナー参加者の集合写真  写真:UEBナショナルセミナー参加証書  写真:閉会式では最後に、タパ会長から参加者全員に対してUEBナショナルセミナー参加証書が授与された。 ●自動点訳ソフトの誤作動とUEB  UEBナショナルセミナーの質疑応答で、ホーム・ナット・アルヤール講師が、最も興味深く愉快に感じたのは次のエピソードだ。そして、彼は無理してナショナルセミナーを実施して本当によかったと感じたのであった。  NAWBとNABの点字出版所には、英語のテキストデータを自動的にグレード2の英語点字に変換する米国製点訳ソフト「ダックスベリー(Duxbury)」がある。その点訳ソフトを、ナショナルセミナーが開催される数ヶ月前に、それぞれの点字出版所は、相前後して最新の11.2にバージョンアップした。  ところが点字をプリントアウトしたところ、従来とは明らかに違う点字が紛れ込んでおり、触読校正者はパニックに陥り、「点字が間違っている」と二カ所の点字出版所では大騒ぎになったのであった。  これらの点字出版所は、UEBのために縮語のルールと句読点や記号の一部が変更されたことをまったく知らなかったのである。  そしてこのたびのUEBナショナルセミナーでこの変更を知り、点字出版所からの参加者は疑問が完全に氷解したのみならず、ダックスベリーが壊れていないことを知り、喜び勇んでその深刻であったエピソードを笑い話として、参加者に披露したのであった。 ●市民権取得のいばら道 ― 村の「サチブ」は超多忙 ―  インドからネパールに入る際の玄関口ビルガンジ市にある「スラジ」というホテルに、12月21日から5日間連泊した。埃っぽい不便な国境の町に長逗留することになったのは、その次にまわる予定のシャンティ校のあるルパンディヒ郡で大規模なゼネストが突然起きたためだった。こんな事件が頻発するので、ネパールの地方ホテルはドタキャンが簡単にできてある意味便利である。  私はビルガンジ市の宿舎としてホテルマカルを予約していたが、チェックイン前に部屋を見ると窓がなかった。「もっと良い部屋はないのか」と尋ねると、豪華応接セットがあるスイートルームに案内されたがそこにも窓はなかった。それは妥協するとしても「先ほどからガンガン鳴り響いている音は何だ」と聞くと、「ホテルの部屋の改装工事だ」という。そして、その工事は連日夜の10時まで続くという。  そこで私はスイートルームを格安にするという声を無視して、予約をキャンセルして、以前泊まったことのあるホテルスラジに移ったのであった。  「夜の10時まで工事なんて非常識ではないか」とNAWBのスタッフに聞くと、「カトマンズではあり得ないが、ここはインド(文化圏)だからなあ」という返事で大笑いとなった。おそらくホテルオーナーの一存で決まり、ホテルスタッフが不合理だと思っても、誰もそれを言い出せなかったのだろう。  この5日間を利用して、当協会の職員有志が2005年から支援するNAWB職員故クリシュナ・ムキーヤ氏の遺児であるアルチャナとローシャンのシチズンシップ(市民権)取得問題に取り組むことにした。この姉弟は今年(2017)4月に高校を卒業(12年課程を修了)するが、その後の進路を決めるためには市民権が不可欠なので、NAWBのバラ支部が中心となり2年前から申請しているのだが、まったく埒が明かないのだ。  この5日間、学校視察以外は市民権獲得のためバラCBRセンターでの会議と、必要書類を確認しコピーがぼやけた書類や不鮮明な写真の撮り直しに明け暮れた。ネパールはきちっと制度化された法治国家ではないので、ちょっとした例外事項があると途端に話が面倒になり、行政の極端な人手不足がそれに輪をかけるのだ。  日本では小さい村でも村長以下、村役場の職員は50人ほどいる。ネパールの村役場に相当するのは村開発委員会(Village Development Committee:VDC)だが、ネパールは政局が不安定で1990年代末から地方選挙が行われておらず、ほとんどの村では、村長の役割を果たす「サチブ」と呼ばれる書記が通常たった1名いるだけだ。  アルチャナとローシャンの住むアパートから徒歩10分ほどのところにパルサウニVDCがあるが、我々の滞在中、平屋の役場のドアが開いたことはなかった。それもそのはずで、サチブは住民登録から保健・教育行政など村内のすべての事業の予算執行と次年度の予算折衝も行わなければならないので飛び回っているのだ。そこで多くのサチブは、郡庁所在地に住み、仕事がある時のみVDCに出勤する。このためその日はサチブの署名が必要な住民登録、結婚登録、出産登録、推薦状などを入手するため、多くの住民が集まるという。  こんな状況なので孤児で、出生証明書に不正確な氏名が記載されているアルチャナとローシャンの市民権は、2年前から申請しているのにもかかわらずいまだに発行されないのだ。カトマンズではあり得ないほど不合理な状態は、こうした極端な人手不足もその一因なのである。  ところで、NAWBバラ支部は12月末までには市民権を取得すると豪語していたが、結局、取得できたのはそれからさらに4カ月後だった。(福山博)  写真:パルサウニVDCのサチブ ●2016年度事業報告(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)  ネパール盲人福祉協会(NAWB)主催の統一英語点字(UEB)ナショナルセミナーがカトマンズ市のNAWB本部会議場で、2016年12月11・12の両日開催された。参加者はNAWBや当事者団体のネパール盲人協会(NAB)職員、教育省の担当官、主な統合教育校のリソースティーチャー等、ネパールの視覚障害当事者と視覚障害教育や点字出版界を代表する42名であった。  本セミナーはUEBのルールを遵守して、ネパール点字の権威であるホーム・ナット・アルヤール氏(元NAWB事務局長)とNAWBのクマール・タパ会長を講師に行われた。  英語圏の8カ国や日本ではすでにUEBを導入しており、UEBの導入は世界の趨勢なのでネパールでもその導入を急がなければならない。しかし、その導入には大きな障壁があった。  インターネット上で公開している世界各国の点字記号を紹介した『ワールド・ブレイル・ユーセージ(World Braille Usage)』を見ると、多くの国には日本点字委員会のような点字規格を決定する機関が存在することがわかる。しかし、ネパールのような開発途上国にはそのような機関がないので、そのような国では、盲人協会、教育行政、点字出版社など、点字に関するステークホルダー(利害関係者)を一堂に集めて決めるより仕方がないのである。  結局、NAWB主催の本セミナーがステークホルダーの意思統一の場となり、参加者全員がUEBの導入と、米国と同様に平行して理数記号はネメスコードを今後も使い続けることに賛同し、逐次、点字教科書と学校教育に受け入れることを決議した。  安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金の3基金による奨学金給付事業を継続実施した。併せて、当協会職員有志によるNAWBのバラCBR事業の現地スタッフの遺児3人を援助する「クリシュナ君遺児育英基金」と「クリシュナ+2育英基金」の事業管理に協力した。  上記事業の管理等を行うため、2016年12月16日〜2017年1月1日の日程で福山博事務局長がネパールに出張した。   事業報告集である『愛の光通信』を2016年7月と2016年12月の2回発行した。  JANNETの役員会・総会が5月25日にあり、業務が立て込んできたこともあり、福山事務局長は2004年から12年間務めてきた幹事を退任した。 ●2017年度事業計画(平成29年4月1日〜平成30年3月31日)     1.統一英語点字普及事業  ネパール盲人福祉協会(NAWB)は、2016年12月に「統一英語点字(UEB)ナショナルセミナー」を開催。同セミナーにおいて、教育省をはじめとした教育機関関係者、点字出版関係者、当事者団体代表等が一堂に会して統一英語点字を学習し、その上でネパールに導入して逐次点字教科書と学校教育に受け入れることを決めた。  このため本セミナー参加者は、教育省の官僚や団体・施設の役員や幹部、統合教育校も長い伝統と実績を持つ学校の校長やベテラン教師によって行われた。  もちろんネパールの統合教育校で視覚障害児に点字を教えるリソースティーチャーはベテランばかりではない。当協会の協力で英語点字のガイドブックを整備し、精力的に英語点字研修会を実施したのは1993〜1995年なので、当時を知るベテラン教師は次々に退職しておりむしろ少数派だ。このため新任のリソースティーチャーが混乱を起こさないように、わかりやすくUEBを指導する必要がある。このため統一英語点字普及事業の第2弾として、より実践的なワークショップを開催する。     2.育英基金事業  安達禮雄育英基金と正雄育英基金は小学1〜10年課程の男女の視覚障害児童・生徒を対象に、順子女子育英基金は小学1〜10年課程の女子の視覚障害児童・生徒を対象とした奨学金である。これらは寄付者、ネパール盲人福祉協会(NAWB)、当協会の3者が覚書を交換し、ネパール政府社会福祉協議会(SWC)に届け出ている事業である。この3事業が覚書に添って、滞りなく実施されるようモニターする。     3.フォローアップ事業  NAWBの点字教科書発行を中心とした事業に対して、フォローアップのための側面的支援を実施する。これは、当協会が長年実施してきた事業が無に帰さないように、平成16年度から継続して実施している事業である。     4.国内事業  広報・募金活動は、NAWBから事業報告等が提出されることを条件に、『愛の光通信』を年2回発行し、例年通り実施する。  日本障害者リハビリテーション協会に事務所を置く、障害分野NGO連絡会(JANNET)の一員として、障害分野の国際協力を行う他施設・団体と情報交換・交流を深める。 ●平成28(2016)年度 資金収支計算書 (自)平成28年4月1日 (至)平成29年3月31日  社会福祉法人の会計基準が変わり、当法人は平成25年度決算から新たな社会福祉法人会計基準に移行しました。     (収入)  以下、勘定科目:予算(A)、決算(B)、差異(A)−(B)、備考の順。単位は円。 経常経費寄附金収入:1,200,000、1,212,172、△12,172   経常経費寄附金収入:1,200,000、1,212,172、△12,172 その他の事業収入:100,000、100,000、0   補助金事業収入:100,000、100,000、0、日本盲人福祉委員会からの補助金 受取利息配当金収入:0、0、0   受取利息配当金収入:0、0、0 その他の収入:60,000、60,000、0   雑収入:60,000、60,000、0 事業活動収入計(1):1,360,000、1,372,172、△12,172     (支出) 人件費支出:120,000、120,000、0   職員給料支出:120,000、120,000、0 事業費支出:1,096,000、1,095,344、656   海外援護費支出:820,000、820,000、0   海外出張費支出:276,000、275,344、656 事務費支出:197,000、196,171、829   旅費交通費支出:0、0、0   事務消耗品費支出:4,000、3,369、631   印刷製本費支出:98,000、97,142、858   通信運搬費支出:39,000、38,294、706   会議費支出:0、0、0   手数料支出:21,000、20,144、856   租税公課支出:0、2,222、△2,222   諸会費支出:35,000、35,000、0   雑支出:0、0、0 事業活動支出計(2):1,413,000、1,411,515、1,485 事業活動資金収支差額(3=1−2):△53,000、△39,343、△13,657 当期資金収支差額合計(4=3):△53,000、△39,343、△13,657 前期末支払資金残高(5):2,747,228、2,747,228、0 当期末支払資金残高(4+5):2,694,228、2,707,885、△13,657 ●寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)平成28年4月1日〜平成29年3月31日 温かいご支援ありがとうございました!   (個人) 青木貞子、阿佐博、朝妻洋子、芦田賀寿夫、安藤生、石田隆雄、今泉新治、植竹清孝、上野伊津子、上村小夜子、遠藤利三、大西正広、大橋東洋彦、大橋由昌、岡本好司、小野塚耕吉、貝元利江、勝山良三、加藤万利子、川島玉子、川田孝子、菊井維正、木塚泰弘、楠本睦子、黒岩敏、古賀副武、小島亮、後藤晴子、小長谷厚子、小林良子、小森愛子、斎藤惇生、酒井久江、坂入隆、坂口廣光、坂齊勝男、指田忠司、佐藤達夫、柴田光俊、白井雅人、杉江幸彦、杉沢宏、杉田安男、鈴木雅夫、染矢朝子、高橋恵子、田中徹二、田中正和、当津順子、富田清邦、長岡英司、中原章雄、野津虎雄、林紘子、原田美男、富久縞博、前山博、間下勉、増野幸子、松浦健三、松下信雄、松本大、三宅正太郎、茂木幹央、森栄司、森川精子、森山朝正、山辻英也、横大路俊久、横山章、渡辺勇喜三   (団体等) ◆岐阜県立岐阜盲学校高等部生徒会、花園神社 宮司 片山裕司、有限会社大本印刷 取締役 大本堅治、◆小林動物病院、古和釜幼稚園、園田鍼灸院、株式会社高垣商店、毎日新聞東京社会事業団 ●海外交流事業記録(2016/4〜2017/3)  2016年4月11日:東京都盲人福祉協会より東京日本語教育センターで日本語学習中のネパール人視覚障害者(ラジェシュ・チャパガイン氏)の件で相談を受ける(結局、彼は、2017年4月筑波技術大学情報システム学科に進学した)  4月20日:JANNET役員会  5月25日:JANNET役員会・総会(戸山サンライズ)  5月27日:IAVI(国際視覚障害者援護協会)評議員会(船橋記念会館)  6月1日:難民を助ける会(AAR Japan)主催、ネパール地震復興支援を中心テーマとした勉強会に参加  7月:『Light of Love(愛の光通信)』No.46発行  7月21日:フィリピン障害者教育支援事業の件で、日本のNGOに勤務する視覚障害当事者から相談を受ける  9月20日:バングラデシュで1993年から視覚障害女性の教育と社会的自立支援を行っている日本盲人キリスト教伝道協議会国際交流部(阿佐牧師)とバングラデシュのバプテスト宣教統合学校(BMIS)モモタ・バイラギ校長が来訪  12月:『Light of Love(愛の光通信)』No.47発行  12月16日〜2017年1月1日:ネパール出張(福山)  1月10日:「クリシュナ+2育英基金」の件で元理事長の藤元節氏来訪  3月31日:IAVI評議員会(船橋記念会館) ●これでも高級ホテルのお湯  安宿だとバスタブがないので気づきにくいが、カトマンズの水道水はご覧のとおり黄色く濁っており手が荒れる。こんな水で歯を磨いたらひとたまりもないので、うがいにも1?25ルピー(約25円)のミネラルウォーターを使うが、ちょっとマグネシウムが多いので便秘気味の方専用。そこで飲み水は別途エビアン水を購入。マグネシウムは下剤なので、とくに止瀉薬を飲むときはエビアン水に限るのだ。 ●寄贈品の梱包方法  文房具のなかでもノート類は重い。航空宅配便の制限は20kgなので、隙間にクッション材を入れてぴったりに合わせ、粘着テープと荷造り紐でしっかりと固定。入らなかった文房具はスーツケースへ。ちょっと大げさと思われるかも知れないが、これは過去の教訓を活かした結果なのだ。しかも航空機の便名とNAWBの住所・電話番号まで記載してある。かくして朝妻書店からの寄贈文房具の第2弾は12月18日NAWBに届いた。 ●募金のお願い  ネパールにおける視覚障害者支援、とくに教育の充実をはかるために募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 ●寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号に掲げる社会福祉法人です。当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号及び租税特別措置法第41条の18の3、法人税法第37条第1項及び第4項の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ●編集後記 「市民権取得のいばら道」で紹介した、アルチャナとローシャンの市民権問題で、ネパールの持つ立法・行政面での旧態依然とした深刻な問題が垣間見えました。  二人の亡父に男の兄弟がいたら、このような難問にはなりませんでした。その伯父さんが、「彼らは亡くなった弟の子供達です」と証言すれば市民権は簡単に貰えたのです。  しかし、まったく不条理なことにそれが伯母さんでは、駄目だというのです。  また、彼らがインド系ネパール人「マデシ」であったことも不利に働いた可能性があります。  インド人でネパールのパスポートを不法に所持している人々が大勢いるので、担当の行政官は極度に二の足を踏んだようなのです。(H・F) 発行:社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会海外盲人交流事業事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4 TEL : 03-3200-1310   FAX : 03-3200-2582 http://www.thka.jp/ E-mail: XLY06755@nifty.com  ※迷惑メールが増えています。当協会宛のメールには、適切な「件名」をお書き添えください。