愛の光通信    2011年夏号通巻36号 2011.6    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321 東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 (写真)教科書の読み合わせ校正:ネパール盲人福祉協会(NAWB)は、ネパール全土の統合教育校で第1〜10年生が使う点字教科書を作成しています。教科書に間違いがあったら大変なので、点字教科書作成にあたっては、入念な校正が行われます。点字の校正は、点字を読む触読校正者と、活字原本の教科書を読む晴眼者が2人一組になって、読み合わせをして行います。もっとも原本に間違いがあったらお手上げですが、それが「無きにしも非ず」なのは困った問題です。 ●新育英事業スタート―― 安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金 ――  篤志家3氏による、三育英基金事業が本年度から本格的にスタートしました。  各200万円(計600万円)の基金の運用益で運営される三事業は、それぞれ7人の奨学生に1年間(実質は夏休み等があるため10ヶ月)の教育費と寮費(食費・被服費等)を、いわば丸抱えで支給する奨学金事業です。  しかし、後に述べる事情で、本年度の正雄育英基金には2人の欠員が出たため、三事業の奨学生は、下記一覧表のとおり19人となりました。     1. バスビッティ校(マハッタリ郡バスビッティ)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Sabina Balampaki 6歳 RC(※) 女 順子女子  2. Chandina Kumari Mahara 11歳 RC 女 順子女子  3. Anita Kumari Thakur 11歳 RC 女 順子女子  4. Shobha Kumari Yadav 11歳 RC 女 順子女子  5. Anita Saha 12歳 RC 女 順子女子 (※)RCはリソースクラスの略で、小学1年生の前に点字を学ぶクラス。     2. ジュッダ校(ロータート郡ゴール)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Bhojindra Saha 15歳 5学年 男 安達禮雄  2. Jay Narayan Saha 12歳 7学年 男 安達禮雄     3. ドゥマルワナ校(バラ郡ドゥマルワナ)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Sangita Adhikari 15歳 7学年 女 正雄  2. Chanda Khatiwada 7歳 1学年 女 正雄  3. Chanchali Maya Ghalan 23歳 4学年 女 順子女子  4. Sarita Mahato 14歳 4学年 女 順子女子     4. パシュパティ校(シラハ郡ラーハン)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Subhash Chandra Chaudhary 17歳 8学年 男 正雄  2. Sita Sharan Datta 17歳 6学年 男 正雄  3. Tej Narayan Yadav 14歳 6学年 男 正雄     5. アマル・ジョティ・ジャンタ校(ゴルカ郡ルイテル)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Samir Pariyar 20歳 9学年 男 安達禮雄  2. Rojina Ghimire 11歳 4学年 女 安達禮雄     6. シャンティ・モデル校(ルパンディヒ郡マニグラム)  以下、a@奨学生の名前 年齢 学年 性別 育英基金の順  1. Nawaraj Kunwar 9歳 4学年 男 安達禮雄  2. Sarita Baniya 10歳 3学年 女 安達禮雄  3. Dilli Regmi Jaihsi 7歳 RC 男 安達禮雄 ●「毎日奨学金事業」の終了  当協会は2005〜2009年度までの5年間にわたり、ネパール盲人福祉協会(NAWB)と共同で毎日新聞東京社会事業団の寄託による「ネパール視覚障害児奨学金事業(毎日奨学金事業)」を実施してきました。この事業は、ネパール全土7校にまたがる視覚障害児47人に1年間(実質10ヶ月)の教育費と寮費を支給する奨学金事業です。しかし、同事業は2009年度で終了するため、2010年度から47人分の奨学金をどうするかが、NAWBでは大きな問題になりました。 ◆ネパール首相への陳情  苦慮したNAWBは、ネパール政府に強力な陳情を行いました。幸いなことに当時の首相はNAWBに理解を示すマダブ・クマール・ネパール氏でした。同氏のことについて、本誌2009年夏号で取り上げたところ、アルヤール事務局長(当時)は日本語が堪能な友人にネパール語に翻訳してもらい、同首相に手渡したため、ことのほか喜ばれたそうです。  まさかそれが功を奏したわけではないでしょうが、毎年、断続的に陳情してもあまり成果を上げられなかった事案が、瓢箪から駒で2010年度から「47人分の奨学金を政府が支出する」ことに内定しました。  しかし、内定したからといって、手放しで喜ぶわけにはいきません。正式に決定するまでに、どんなどんでん返しがあるかわからないからです。NAWBとしては、47人分の奨学金を政府が支出することを正式に決定するまで、怖くて新育英基金事業は開始できませんでした。もし、国からの支援がキャンセルされたら、21人分だけでも救いたいと思うのが人情だからです。実際に47人の中には10年生も混じっていたので、最悪の場合でも半数は救えるとの計算があったはずです。  じりじりしていたNAWBに政府から正式決定が伝えられたのは6月29日、そこからNAWBは新育英基金事業の募集を開始し、アルヤール事務局長が最後の仕事として、2010年7月3日付国営新聞『ライジング・ネパール』に「奨学生募集」の広告を打ったのでした。 (写真)きれいに片づいている女子の部屋 ◆2人の欠員  その後アルヤール氏が退職すると、NAWBから東京の私たちへの連絡はぱったり止まりました。再三の催促を行って9月12日に、三育英基金事業の奨学生名簿(21人分)が当方に届いたのですが、長年の経験で、この名簿には重大な問題があると確信できました。そして、実際に現地調査をすると、本誌前号に記したとおり予期しない問題が、次々と出現したのでした。  前号で報告しましたが、簡単に触れると、当初アダーシャ校に2人分の奨学金を給付する予定だったものの、ルール違反があったので、NAWBは同校を三奨学金事業の対象から外しました。そして、そのうちの1人分は、別途、シャンティ校に新たに割り当てることにしました。  その後、パシュパティ校の視覚障害児の自宅が、同校から徒歩15分の距離にあることがわかり、「通学できるのではないか?」とメールで指摘しました。  数回のメールのやりとりの中で、校長からの請願もあったので、「自宅から同校まで通学に1時間以上かかる視覚障害児童・生徒が同校に現れたら、その児童・生徒にこの奨学金を譲ること」を条件に、今年度は認めることにしました。しかし、その後NAWBが、この件を取り下げたので、結局この1人分も欠員となってしまったのです。 ◆人生を感じさせる身上調書  前ページの氏名一覧とは別に、私たちは現地調査の折りに、児童・生徒の「身上調書」を作成しました。それを見て、通学時間が徒歩15分の生徒がいることがわかり、問題にしたのでした。  通学時間に関していうなら、徒歩のみで6時間15分とか、バスと徒歩とで24時間という強者もいて、これはどうなっているのか、ちょっと詳しく聞いてみたい気がしました。もっとも、交通事情の悪いネパールでは、バスの終点から徒歩3日という距離に普通に家々があるので、実はこれは驚くには値しないのです。  一覧表を見ると23歳で小学校4年生の女性がいます。彼女は本誌2009年夏号で紹介した21歳で小学校に入学した女性で、1年飛び級したのです。このように成人してからの小学校入学は珍しいことではありません。今度の奨学金受給を契機に、今後も飛び級で進級して欲しいものです。  ところで彼女、2009年の現地調査ではラストネームは「タマン」と聞いたのですが、いつの間にか「ガラン」に変わっていました。誰のミスなのか今となっては調べようもありませんが、実はこの類はよくあることなのです。  ネパールは典型的な学歴社会なので、特に視覚障害者は10年間の教育を受けて学校教育修了国家試験(SLC)に合格しなければ、どのような将来展望も見いだせません。しかし、30歳までになんとかSLCに合格するなら、視覚障害者であっても学校の教員やNGOの職員などの職に就くことは可能となります。彼女も懸命に努力をすれば、今までの人生とは違った、また、新たな道が開けるはずだと思われます。 ◆乱雑な男子の部屋にて  私たちの現地調査では、女子の部屋はのぞく程度にして、余り立ち入りません。ネパールは男女関係が厳格なので、気をつかってのことです。そこで、女子にも男子の部屋に来てもらい面談します。日本でもそうですが、男子の部屋は一様にだらしなく、一方、女子の部屋はきれいに片づいています。やかましく注意すると、男子が笑ってごまかすのも国際共通のようで、どうも、そのだらしなさに国境はないようです? (写真)男子の部屋のチャンチャレ・マヤ・ガランさん(23歳) ●教育参事官になったディパック・マジさん  元NAWB事務局長/ホーム・ナット・アルヤール  ディパック・マジさん(Mr. Deepak Majhi・28歳)は、1982年10月9日に、首都カトマンズ市の北隣にあるヌワコット郡の郡庁所在地・ビドゥール町(人口2万人)で、先住民の一つであるマジ族の一家に生まれました。  8歳のときに腸チフスに罹った彼を、古い習慣に凝り固まっていた両親は、病院の代わりに呪術師の所に連れて行くという間違いを犯し、そのため彼は失明しました。その後、父親は若くして亡くなり、母親はその直後に他の男と共に出奔したので、幼い彼は極めて惨めな境遇に置かれました。  それを哀れに思った、近所に住む教育に造詣の深い篤志家が、彼をネパール盲人福祉協会(NAWB)に連れて行きました。そして、NAWBのはからいで、東ネパールの中心都市ダーラン市(人口11万8千人)にあるネパールで唯一の盲学校に入学して、彼は小学校(5年制)を卒業しました。生家から盲学校までは約900kmもあり、バスで片道12時間もかかる道のりでした。  その後、NAWBの手配で、彼は郷里のヌワコット郡に帰り、普通校で統合教育を受けて中学校(3年制)を卒業しました。しかし、その学校ではリソース・ティーチャー(障害教育担当教員)が不足していたため、それ以上勉強を続けることはできませんでした。  そこで、彼はNAWBに相談して、カトマンズ盆地にあるパタン市(ラリトプール)のラガンケルにあるナムナ・マヒンドラ校の9年生に進級しました。同校は比較的設備が整い、点字書籍もそろっており、彼はまたとない教育環境を手に入れたのでした。  1999年、彼は優秀な成績で10年課程を修了し、学校教育修了国家試験(SLC)に合格しました。そして奨学金を受けて、彼はカトマンズ盆地のバクタプール市にあるトリブバン大学サノチミ校において12年課程を修了しました。その後も奨学金を受けて、カトマンズ空港の南側にあるトリブバン大学コテショール校に進学し、教育学を専攻して教育学士を取得しました。  この間に、彼はナムナ・マヒンドラ校の同級生で全盲の女性ニーラ・アディカリさんの紹介で、学生結婚をしました。  伴侶となったのはニーラさんの目の見える従姉妹で、学校教師のニーシャ・ティミルシナさんです。彼女の献身的な支えがあり、彼は大学を無事卒業できました。そして、カトマンズ市の中心部にある病床数125床の総合病院であるカトマンズ・モデル病院で受付係として働き始めました。  ニーラ・アディカリさんについては、以前に本誌2010年新春号でも紹介しましたが、2009年に障害者として初めてキャリア試験に合格し、女性・児童社会福祉省の官僚となった女性です。  ところで、ディパック・マジさんは勉強ができるだけの秀才ではなく、ダーランの盲学校で勉強していたときには、視覚障害を持つ生徒の教育レベルを向上させるための生徒会を組織しました。また、9年生の時には、当事者団体である「ネパール盲人協会(NAB)」ラリトプール支部長に就任し、現在もその任にあります。また、ユニセフの支援を受けて児童の権利を啓発するグループも作り、統合教育に関する多くのセミナーに出席して、障害児のための教育推進を強く訴えてきました。さらに、障害者の親睦団体を設立したり、障害者ネットワークのコーディネータとしても活躍してきました。  ネパール政府の官僚となったニーラさんは、マジさんは教育参事官(Secondary School Supervisor)の道を進むのが良いのではないかと、ある日ひらめきました。このポストは教育省の課長職に相当する重い役職で、先住民のために特別に6席が用意されていました。先住民で、障害を持ち、大学で教育を専攻した彼には、うってつけの職だと思ったのです。  ニーラさんの親切なアドバイスに頷いた彼は、研究機関の通信教育で2カ月間の受験勉強をしました。ただこのコースの教材は点字化されていなかったので、妻の対面朗読を頼りに勉強するしかありませんでした。  先住民のための教育参事官のポスト6席のために、全国から4,920人の応募がありましたが、マジさんもその一人でした。そして筆記試験と口頭試問を含むすべての手順を経て、この狭き門の結果は、2010年11月に明らかになりました。  彼は4,920人中4番目の成績で、見事に教育参事官の席を射止めたのです。そして、彼は翌12月から、バクタプール市のサノチミにある教育省教育局統合教育課において、障害者の教育計画の立案に忙しい日々を過ごすようになりました。 (写真)教育省で執務するマジさん ●クリシュナ基金から  協会有志等によるクリシュナ君遺児育英基金(クリシュナ基金)は、突然死したネパール人現地スタッフの遺児3名に対して、10年課程の教育を支援する育英事業です。  遺児3名が寄宿生活を送るブライト・ランド校の校舎が、このほど新築落成しました。これまではカレイヤ町の中心部にあったのですが、移転先は、そこから徒歩20分ほどの郊外にあります。とても静かな環境のはずなのですが、授業中にもかかわらず、校舎建築工事の槌音が、やかましく響いておりました。 ●快走するタライのオープンカー  車台に運転席だけがちょこんと載っただけの、いたってシンプルな作りの、この危険極まりない“裸のトラック”が快走する姿を、初めて見たときは、わが目を疑いました。  インドのムンバイに本社があるタタ自動車は、日本では馴染みが薄いですが、今や英国のジャガーやランドローバーという名門をも傘下に持つ、国際的な自動車メーカーです。  税金の関係でしょうか。ネパールのトラックは、同社製の車台をこのように裸のまま、インドの工場から延々とカトマンズに運び、そこに荷台や車体を取り付けて完成させるのです。  税込みで日本製の半値以下と聞きましたが、NAWBの運転手によれば、5年も酷使すれば、タライ平野からカトマンズにいたる急坂の峠道は上れなくなるといういわく付きの代物だとのこと。  かくして、余生は坂道があまりないインド国境沿いのタライ平野において、稲藁運びなどに従事するのです。 ●もう一つの国際協力 コンサート+音楽とシンポジウムの集い  東京ヘレン・ケラー協会は、創立60周年を記念して、平成23年(2011)1月23日(日)、東京・晴海の第一生命ホール(767席)において、出演者の全員が視覚障害者である「ハッピー60thコンサート」を開催しました。  午後2時、武久源造さんのチェンバロによるバッハの名曲でスタートし、澤田理絵さんのソプラノ歌曲、綱川泰典さんのフルート、韓国からのゲスト、李ジェヒョクさんのピアノと和波孝禧さんのヴァイオリンによるベートーベンの「スプリングソナタ」など、超満員のお客様とともに、クラシックの名演を楽しみました。  なお、韓国からのゲスト李さん以外は、協会主催の「ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」(旧・全日本盲学生音楽コンクール)で、優秀な成績を修められた方ばかりです。 (写真)左より、李、澤田、和波、武久、綱川の各氏  また、同コンサートの前日には、当協会と、海外から視覚障害留学生を日本に招聘している国際視覚障害者援護協会、それに韓国のカンナム障害者福祉館と共催で、日本点字図書館3階多目的室ABCにおいて、日韓友好「音楽とシンポジウム」の集いを開催しました。  この催しは、李ジェヒョクさんの来日初演奏に伴ってこられたカンナム障害者福祉館朴ジョングン館長(全盲)をはじめとした関係者を交えて、日韓の音楽交流を推進するために企画したものです。  第1部は、ヘレン・ケラー学院の和出野充洪先生(全盲)を中心とした声楽集団「ヴォーチェ・アプリート」が、「乾杯の歌」、「メリー・ウィドー・ワルツ」など、イタリア・ドイツ歌曲に、日本や韓国の歌も交えて熱唱しました。  第2部は、大韓按摩師協会修練院教師の呉テミン氏(全盲)の通訳、国際視覚障害者援護協会事務局長山口和彦氏(全盲)の司会によるシンポジウム「視覚障害者文化・芸術活動と日韓交流」。パネリストは朴ジョングン館長、前ソウル盲学校音楽教師金テヨン氏(全盲)、ソウル盲学校英語科教師金インヒ氏、カンナム障害者福祉館文化芸術部チーム長呉チャンソク氏で、フロアーからも熱心な質問や意見が飛び出して、教育問題を中心に熱い議論が時間を超過して行われました。 ●東日本大震災の犠牲者を悼む ニュー・チューリップ小学校の祈祷会  当協会で2回も点字出版の研修を受けたことがある、元ネパール盲人福祉協会(NAWB)事務局長のホーム・ナット・アルヤール氏は、昨年同協会を退職しました。  彼はNAWBに勤めるかたわら、長年オランダのNGOが支援する私立ニュー・チューリップ小学校の非常勤理事長(無給)を務めています。  同校において、3月17日午前10時から東日本大震災犠牲者を追悼すると共に、被災者が一刻も早く元の落ち着いた生活を取り戻すことをお祈りする集会が催されました。 ●2010年度事業報告(平成22年4月1日〜平成23年3月31日)  ネパール盲人福祉協会(NAWB)の点字教科書発行を中心とした教育事業に対して、事業継続のための側面的支援を行った。  当協会がネパールで実施する事業の熱心な支援者から寄せられた各200万円を基に、安達禮雄育英基金、正雄育英基金、順子女子育英基金という3基金を平成20年度と21年度に相次いでNAWBに創設。安達禮雄基金と正雄育英基金は小学1〜10年課程の男女の視覚障害児童・生徒を対象に、順子女子育英基金は小学1〜10年課程の女子の視覚障害児童・生徒を対象とする。  今年度からそれらの基金の運用益により、地方の統合教育校6校、合計19人の視覚障害児童・生徒に衣食住を丸抱えにして就学の機会を提供する奨学金を給付した。その内訳は、安達禮雄育英基金によるジュダ校2人、アマル・ジョティ・ジャンタ校2人、シャンティ校3人の計7人。正雄育英基金によるパシュパティ校3人、ドゥマルワナ校2人の計5人。順子女子育英基金によるドゥマルワナ校2人、バスビッティ校5人の計7人である。  上記事業の管理等を行うため、政情が比較的安定しているネパール最大の祭とそれに次ぐ祭の間である2010年10月22日(金)〜11月2日(火)の日程で福山博事務局長がネパールに出張した。現地調査時には上記奨学生が21人ノミネートされていたが、基準に満たない生徒がおり、先に述べたように結局19人が奨学生に決まった。  また、永年NAWBの事務方のトップを務めてきたアルヤール事務局長が、2010年7月に退職したため、NAWBに事務的混乱が生じた。そこで、退職したアルヤール氏にボランティアでの協力を依頼し、遅滞なく事業を進めることができた。  国内活動では、福山事務局長が「障害分野NGO連絡会(JANNET)」の幹事として、障害分野における国際協力・交流事業に参画した。  事業報告集である『愛の光通信』を2010年6月(夏号・通巻34号)と2010年12月(冬号・通巻35号)に発行した。 (写真)ローカルホテルで使っていた懐かしい殺虫噴霧器、ネパールでも、今やスプレー缶タイプが主流です ●2011年度事業計画(平成23年4月1日〜平成24年3月31日) 1.育英基金事業  安達禮雄基金と正雄育英基金は小学1〜10年課程の男女の視覚障害児童・生徒を対象に、順子女子育英基金は小学1〜10年課程の女子の視覚障害児童・生徒を対象にした奨学金である。これらは寄付者、ネパール盲人福祉協会(NAWB)、当協会の3者が覚書を交換し、ネパール政府社会福祉協議会(SWC)に届け出ている事業である。この3事業は1年間の利息を原資に、平成22年度から奨学金を19人の児童・生徒に給付しており、覚書に添って、滞りなく実施されるようモニターする。  ただ、現在ネパールは無政府状態ともいえ、極めて政情が不安定である。さらに永年、NAWBの事務方のトップを務めてきたアルヤール事務局長が、平成22年7月に退職したため、NAWBに事務的混乱が生じている。そこで、退職したアルヤール氏の協力を得て、遅滞なく本事業を進める。 2.フォローアップ事業  NAWBの点字教科書発行を中心とした事業に対して、フォローアップのための側面的支援を実施する。これは、当協会が長年実施してきた事業が無に帰さないように、平成16年度から継続して実施している事業である。 3.国内事業  広報・募金活動は、NAWBから事業報告等が提出されることを条件に、『愛の光通信』を年2回発行し、例年通り実施する。  日本障害者リハビリテーション協会に事務所を置く、障害分野NGO連絡会(JANNET)の一員として、障害分野の国際協力を行う他施設・団体と情報交換・交流を深める。 ●平成22(2010)年度収支計算書 自 平成22年 4 月 1 日 至 平成23年 3 月31日 (借方)  以下、科目、金額(円)の順。 事務費 610,763   賃金 240,000   旅費 8,100   通信費 120,925   消耗品費 3,828   印刷製本費 182,910   雑費 55,000 事業費 854,268   海外援護費 500,000   海外出張費 354,268 その他評価損 0  小計 1,465,031  当期繰越金 △308,591   合計 1,156,440 (貸方)  以下、科目、金額(円)の順。 寄付金収入 1,152,298   助成金収入 0   募金収入 1,152,298   雑収入 4,142   受取利息 1,142   その他の雑収入 3,000   合計 1,156,440 ●貸借対照表 平成23年 3 月31日現在 (借方)  以下、科目、金額(円)の順。 流動資産 2,289,759   現金 18,368   預金 2,271,391   資産合計 2,289,759 (貸方)  以下、科目、金額(円)の順。 繰越金 2,289,759   前期繰越金 2,598,350   当期繰越金 △308,591   純財産合計 2,289,759 ●海外交流事業記録(2010/4〜2011/3) 4月16日:愛の輪運動基金の中国人研修生見学 5月13日:CSR推進NGOネットワーク定例会(五輪記念青少年総合センター) 5月23日:下館ロータリークラブ50周年記念式典(ダイヤモンドホール) 5月27日:NAWB相談役ガジェンドラ氏一行が訪問 5月26日:「コーヒーアワー」ウィーン大学ヴォルフガング・ノヴァク氏講演(世界銀行情報センター) 5月30日:JANNET財務・組織委員会、役員会、総会(早稲田奉仕園) 6月:『Light of Love(愛の光通信)』夏号(No.34)発行 6月7日:JANNET財務・組織委員会(戸山サンライズ) 6月8日:JICA草の根技術協力事業の制度に関する説明会(JICA地球ひろば・広尾) 7月7日:中国盲文出版社一行が訪問 7月15日:CSR推進NGOネットワーク定例会(電通本社会議室) 8月31日:CSR推進NGOネットワーク定例会(五輪記念青少年総合センター) 10月2日:グローバルフェスタ(日比谷公園) 10月13日:下館ロータリークラブの例会にて卓話(ダイヤモンドホール) 10月22日〜11月2日:ネパール出張(福山) 12月1日:JANNET拡大財務・組織委員会(戸山サンライズ) 12月:『Light of Love(愛の光通信)』冬号(No.35)発行 ●寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)平成22年4月1日〜平成23年3月31日 温かいご支援ありがとうございました! (個人) 青木貞子、在田一則、安藤生、池田令子、石井芳重、石井浩介、石田隆雄、一幡良利、伊藤啓子、岩屋芳夫、植竹清孝、上野伊律子、上村小夜子、ウシフサヒサコ、馬野将幸、遠藤亀松、遠藤利三、大橋東洋彦、岡本好司、落合夕子、小野塚耕吉、貝元利江、勝山良三、金田敏子、菊井維正、黒見恵美子、小泉周二、肥塚隆、肥塚美和子、古賀副武、小島亮、後藤晴子、後藤良一、小長谷正夫、小林明子、小森愛子、斎藤惇生、酒井久江、坂入操、坂口廣光、坂斉勝男、指田忠司、佐藤達夫、佐橋忠明、菅原温子、杉沢宏、鈴木俊勝、鈴木洋子、染矢朝子、高橋恵子、竹脇美帆子、田中徹二、田中正和、谷内正史、田伏淳一郎、田村富子、照井タカ子、当津順子、当山啓、鳥羽田節、中尾照美、長岡英司、中嶋千代志、中村保信、奈良泰夫、成沢千賀子、野津虎雄、野中省三、橋本時代、林紘子、原田美男、福山博、藤元節、藤芳衛、本間昭雄、前山博、間下勉、増田光子、松浦健三、松下信雄、三原富美子、御本正、、森山朝正、山田隆造、山本幸子、横大路俊久、渡辺勇喜三 (団体等) ◆有限会社大本印刷・大本堅治 ◆岐阜県立岐阜盲学校高等部生徒会 ◆小林動物病院 ◆下館ロータリークラブ ◆シャンバロー芸能事務所・白井雅人 ◆有限会社信和ハウス ◆株式会社高垣商店 ◆山辻医院・山辻英也 ◆養護盲老人ホームひとみ園・茂木幹央 (物品寄付者) ◆梶原剛 ◆酒井久江 ◆山内有希 ●「郵便振替」等に書いてあったメッセージ● ◆お役立て頂ければ幸いです。宜しくお願いします。(鈴木俊勝様より) ◆些少ですが送らせていただきます。(中嶋千代志様より) ◆日頃の皆様のご活躍に感謝しつつ、ご健康とご多幸をお祈りしております。(染矢朝子様より) ◆ネパールでブレイルメモを使用していると聞きましたので、BM16を寄付します。中古ですが、メーカーのKGS (株)でオーバーホールしましたので、セルの状態もいいですし、バッテリーも新品と交換しました。ファームウ エアもバージョンアップをしてお送りします。(梶原剛様より)  ●校庭の稲  安達禮雄育英基金の対象校であるシャンティ校の校庭に雑草と共に見事に実った稲。雨期になると、連日の豪雨に校庭の中でも一段低くなったあたりは、さしずめ水田のような状態になるのだろう。  飛んできたツルが口にくわえた稲穂を落とし、それがその地の稲作の始まりになったという「鶴の穂落とし」をほうふつとさせる光景である。もっともネパールで白鷺はよく見るが、鶴はまだ見たことないのだけれど。 ●寄宿学校  ネパールの学校は、英国のエリート校をモデルにしているので、私立学校のことを寄宿学校(Boarding School)と呼ぶ。このためその中には寄宿舎のない学校も含まれる。  クリシュナ基金の子供たちが学ぶブライトランド寄宿学校は、60名の寄宿生がいるのでその名に恥じない学校である。 (写真)Bright Land English Boarding Schoolにて ●募金のお願い  ネパールにおける視覚障害者支援、とくに教育の充実をはかるために募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 銀行口座:三菱東京UFJ銀行 高田馬場支店(普)0993756  銀行送金の場合は、寄付金受領書をお送りするため、寄付のご趣旨と芳命・ご住所を、電話、FAX、またはEメールで事務局へお知らせください。 ●寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号に掲げる社会福祉法人です。当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号、法人税法第37条第1項及び第4項の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ●編集後記  昨年の5月28日、ネパール制憲議会は同日の期限内に新憲法を制定できなかったので、同議会の任期を1年延長しました。  そして今年、またもや新憲法を制定できなかったので、この2月に首相に就任したばかりのジャラ・ナート・カナル首相が、その責任を取って3ヶ月以内の辞任を表明。それを受けて制憲議会は5月29日に、憲法制定期限を3ヶ月延長することを決議しました。  彼の国の政治的混迷ぶりを、日本の誰も笑えないのが、ちょっと悲しいですね。  今年はネパール政府観光局の定めるネパールツーリズムイヤー、つまり観光年なので、主要政党はバンダ(ストライキ)を行わないことで合意しました。  これを真に受けて、今年はストライキが無いのかと喜んだのもつかの間、この4月からすでに数回、実施されました。(H・F) ●発行:社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4 TEL: 03-3200-1310 FAX: 03-3200-2582 http://www.thka.jp/ E-mail: XLY06755@nifty.com ※ 迷惑メールが増えています。当協会宛のメールには、適切な「件名」をお書き添えください。