愛の光通信    2002年冬号通巻19号    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    ISSN 0913-3321 東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 (写真:左からNAWBのアルヤール事務局長、ラウト常務理事、当協会竹内理事)  皆さまよりお寄せいただきました英文タイプライターやテープレコーダー等は、本年5月13日(月)にネパール盲人協会(NAWB)に届けました。 ----------------------------------------------------------------------------------------     ネパールの視覚障害児教育     統合教育の理念と実際  当協会のネパールにおける支援事業は、これまで、(1)点字教科書の作成と配布、(2)バラCBR(視覚障害者リハビリテーション)、(3)統合教育の3本柱であった。このうちCBRが最も大規模であったので、これまでの『愛の光通信』はともすればCBR中心だった。これはわが国にはなく、なじみが薄いのでより説明を要したためでもあった。  その点、点字教科書の発行や視覚障害者教育は、誰もがイメージを描きやすいので、現地の特殊事情を具体的に点描するだけになっていた。  他方CBR事業の一環として実施してきた眼科診療所の運営も2002年6月で、完全に現地に移管した。そこで、今回は改めてネパールの視覚障害者教育事業を概括する。     統合教育って、なに?  わが国における視覚障害児教育は、いまだに専門性を持った盲学校(分離)教育が原則である。  統合教育は、障害児も健常児とともに学ぶべきとする「ノーマライゼーションの理念」に基づいており、国際的に教育改革の一般的方向として確認されている。このため、ネパールでも原則として統合教育が採用されているが、盲学校が地方に1校あることと、寄宿制であるため実状はかなり変則的なものになっている。  統合教育では、障害児は自宅から最も近い学校へ通うことが原則である。しかし、私達が直接支援している統合教育校5校の視覚障害児78名中、自宅から通学しているのはたった3名に過ぎない。なぜなら農村僻地では視覚障害児が通える距離にまともな学校がないためだ。そこで、しかたなく郡単位に比較的設備の整った公立校を選び、そこに寄宿舎を作り、統合教育を行うのである。  設備が整っているといっても、教室には照明器具がないばかりか、窓にはガラスもはまっていない。ただ、長机にベンチ、それに黒板があるだけだが、それらさえない学校も少なくないのだ。     マハト君の場合  私達が、統合教育をはじめる契機になったのは、1989年CBRのための全戸調査の際、ある視覚障害児に出会ったことによる(写真:教室のマハト君)。彼は村の学校にいたが勉強している風ではなかった。というより、100名近くの生徒をたった一人の教師が、いったいどうやって教育するのか?という有り様だった。  彼の名前はクリシュナ・プラサド・マハト君で、4頁のデータにあるドゥマルワナ校のbPだ。実は私達が彼を発見したとき、彼には名前がなかった。ブラフマン(バフン/僧侶階級)に名付け親になってもらうための僅かな謝礼を、彼の両親は出し惜しんだのだ。そこで、ブラフマンでもあったネパール盲人福祉協会(NAWB)のゴータム・プラサド・アルジャール事務長(当時)が、みかねて名付け親になったのであった。  マハト君は発見されたとき6歳で、彼の将来が私達の肩に重くのしかかった。というのも当時はCBRがやっと緒についたばかりで、調査活動でさえまだ前途遼遠であった。しかも時を同じくして、ネパールに駐在してCBRを精力的に開発していた当協会の担当職員が、突然辞職したのだ。このため、統合教育校は3年後の1992年1月にやっと開発され、マハト君が第1番目に入学した。まず就学前の「点字教室」に入り、その後順調に進級してきたのであった。  ネパールには小学校1年から郡単位で行う進級試験がある。ただし、その試験は選別するためのものではないから難しくはない。なにしろ100点満点で、30数点とれば合格なのだ。したがって、設備が先進国並に整った都会の私立校では全員が当然のように進級する。しかし、マハト君に出会った学校のようなところで学ぶとしたら、きわめて絶望的にならざるを得ない。また、国民の半数はネパール語を母語としないので、彼らはネパール語の修得を通じて教育を受けることになる。  マハト君の母語もボジュプリ語であるため明らかなハンディがあったが、小学校では常にクラスのトップであった。中学に進級してからは、もはやトップは狙えなくなったが、これは彼の責任というより、教育技術の問題に帰するところが大きい。なにしろ、当初は点字数学記号もなしに数学を教えていたのである。  マハト君は現在10年生、来春にはSLC(中等教育終了国家試験)の受験である。これにパスすると小学校の教員になることが可能で、進学にも不可欠である。実は地方にある公立校の教員の半数近くがこのSLCに合格していないのだ。  国際水準の教育を行う都市部の私立校のSLC合格率は75%であるが、公立校の合格率は20%にすぎない。地方では、たった一人も合格しない学校も珍しくないためSLCは「鋼鉄の扉」と呼ばれる。したがって、この難関に合格できるかどうかは、その人の一生を左右する。  とはいえマハト君が、SCLを目前にするまでになったことは、きわめて感慨深いものがある。視覚障害者の教員は、私達が支援をはじめる前はたった1名しかいなかったが、現在は200名近くに急増し、視覚障害児も希望がもてるようになったのだ。 ----------------------------------------------------------------------------------------               ベルトを探した日               点字出版所印刷課主任 佐々木 晃  平成14年5月、私はネパール盲人福祉協会(NAWB)点字出版所にて、点字製版機、点字印刷機の保守・点検を行うと共に、同出版所スタッフに技術指導を行ったが、その時のエピソード。  NAWBには2台の点字印刷機があるがそのうちの1台は、明らかにV型伝動ベルトが伸びていた。この印刷機は1987年に同点字出版所に設置され、以来約15年間休まず稼働し、一度もベルトを交換していないという。  私は取り外した三菱42インチV型ベルトを持ち、同点字出版所のトゥルシー主任と共に、カジ運転手のトヨタ・ランドクルーザーで、カトマンズを半日走り回った。とにかく暑い日で、街は砂埃と排気ガスに汚れていた。そこを荒っぽい運転の車が、警笛を鳴らしながら我先に割り込むので、渋滞はさらにひどくなっていった。  機械部品店を4、5軒も回ったが成果はなかった。どの店でも「何に使うのか」と聞かれるので、そのたびにトゥルシー主任が説明。しかしその店にないということは、雰囲気で私にもすぐにわかった。こんなことを汗だくになりながら繰り返すのはまったくの無駄骨に思えたが、最後に行った店で、「自動車部品店に行け」と教えられた。  我々が半信半疑ながら出かけると、V型ベルトは案外あっさり見つかった。残念ながら三菱製ではなかったが、大証1部に上場されているバンドー化学(株)のローエッジプレーンA型42インチV型ベルトがあったのだ。  点字印刷機に使われていたので、我々はV型ベルトをてっきり印刷機や工作機械専用とばかり思っていた。ところがこのV型ベルトの本来の用途は、カークーラー用だったのである。  価格は4本で700ルピー、当日のレートで1,153円であった。意外に安かったが、ネパールではそれでも肉体労働者の1週間分の日当に相当するという。4本買ったのは、V型ベルトは1台の印刷機に2本必要で、手頃な価格なのでこの際2台とも交換した方が良いと考えたのだ。  V型ベルトの交換時にネジやボルト、ナットのゆるみを点検したが、まったく異常はなかった。ただ、上下2本のローラーを締めたり、ゆるめたりするためのレバーに書いてあったはずの「ON」、「OFF」という表示が消えており、また、このレバーの使い方が徹底していないようだったのでフェルトペンで記入し、使い方を指導した。  V型ベルトの交換は製本担当のガンガ氏が中心となり、製版士のラトナ氏が手伝った。ガンガ氏は機械が好きでメカニズムに関する心得が3人の中でもっともあるように思われた。  NAWBのスタッフ3人と相談の上、今回は1台だけV型ベルトを交換し、様子を見て調子が良いようだったら、彼らがもう1台のV型ベルトは交換するということになった。 (写真:点字印刷機を調整する佐々木晃) ----------------------------------------------------------------------------------------           □□□ 統合教育データ □□□ ドゥマルワナ統合教育校(寄宿制)Shree Nepal Rastriya Higher Secondary School, Dumarwana  以下、aA視覚障害児氏名、年齢、性別、学年、母語の順。  (1) Krishna Prasad Mahato、19歳、男、10学年、ボジュプリ語  (2) Krishna Prasad Timilsina、23歳、男、10学年、ネパール語  (3) Kaushila Kumari Sarki、18歳 、女、10学年、ネパール語  (4) Jaldhari Mahato、18歳、男、9学年、ボジュプリ語  (5) Ramayan Ray Yadav、22歳、男、9学年、ボジュプリ語  (6) Vakil Miya、19歳、男、8学年、ウルドゥ語  (7) Jashima Khatun 、17歳、女、8学年、ウルドゥ語  (8) Nilkantha Timilsina、18歳、男、7学年、ネパール語  (9) Surendra Prasad Chaudhari、16歳、男、7学年、タルー語  (10) Kedar Nath Dhami、13歳、男、7学年、ネパール語  (11) Sudhir Kumar Chaudhari、16歳、男、7学年、タルー語  (12) Shyam Sundar Mahato、14歳、男、7学年、ボジュプリ語  (13) Umesh Raut、20歳 、男、6学年、ボジュプリ語  (14) Shanti Kumari Sonar、14歳、女、6学年、ボジュプリ語  (15) Anju Kumari Dhital、13歳、女、4学年、ネパール語  (16) Ajay Kumar Chaudhari、12 歳、男、4学年、タルー語  (17) Shiv Hari Pariyar、15歳、男、3学年、ネパール語  (18) Ajamuddin Miya、9歳、男、2学年、ウルドゥ語  (19) Karna Bahadur Ramauli 、15歳 、男、1学年(新入生)、マガール語  (20) Raj Kumar Mahara 、13歳、男、1学年、ボジュプリ語  以下、aA統合教育の教職員氏名、性別、役職の順。  (1) Vijaya Nayayan Jha、男、中等部担当教員  (2) Mahadev Chaudhari、男、初等部担当教員  (3) Rohit Prasad Chaudhari、男、初等部担当教員  (4) Tej Narayan Chaudhari、男、用務員  (5) Devi Khan Tharuni、女、寮母 ジュダ統合教育校(寄宿制)Juddha Secondary School, Gaur  以下、aA視覚障害児氏名、年齢、性別、学年、母語の順。  (1) Saroj Kumar Keshari、20歳、男、9学年、ボジュプリ語  (2) Gyanendra Nepal、18歳、男、9学年、ネパール語  (3) Ram Balak Das、19歳、男、8学年、ボジュプリ語  (4) Gajendra Sah 、18歳、男、8学年、ボジュプリ語  (5) Mina Kumari Lama、19歳、女、8学年、タマン  (6) Rina Kumari Sribastab、20歳、女、8学年、ボジュプリ語  (7) Prahlad Baitha、16歳、男、7学年、ボジュプリ語  (8) Nandu Mahato、16歳、男、7学年、ボジュプリ語  (9) Mira Kumari、16歳、女、7学年、ボジュプリ語  (10) Sabita Kumari、17歳、女 、7学年、ボジュプリ語  (11) Bhawisya Kumar Jha 、14歳、男、7学年(新入生)、マイティリ語  (12) Khusbu Khatun、12歳、女、6学年、ウルドゥ語  (13) Rekha Kumari、12歳、女、6学年、ボジュプリ語  (14) Dirgha Bahadur Khadka、16歳、男、6学年、ネパール語  (15) Nagendra Pandit、12歳、男、3学年(留年)、ボジュプリ語  (16) Bhojindra Sah、12歳、男、3学年(留年)、ボジュプリ語  (17) Deepak Rai、11歳、男、2学年、ライ  (18) Deepak Sitaula、11歳、男、1学年、ネパール語  (19) Deepak Jha、8歳、男、点字教室、マイティリ語  (20) Raj Kishor Sah、8歳、男、点字教室、ボジュプリ語  以下、aA統合教育の教職員氏名、性別、役職。  (1) Raghubir Jha、男、中等部担当教員  (2) Binod Mishra、男、初等部担当教員  (3) Salma Nessa、女、初等部担当教員  (4) Anhoti Sah、男、用務員  (5) Bhagwati Bhattarai、女、寮母 アマル・ジョティ・ジャンタ統合教育校(寄宿制)Amarjyoti Secondary School, Luintel  以下、aA視覚障害児氏名、年齢、性別、学年、母語の順。  (1) Sita Dhamala、19歳、女、10、ネパール語  (2) Kul Bahadur Sapkota、17歳、男、10学年、ネパール語  (3) Lalu Maya Baram 、21歳、女、9学年(留年)、マガール語  (4) Lokendra Babu Bhatta 、17歳、男、8学年(留年)、ネパール語  (5) Hira Pokhrel、16歳、女、8学年、ネパール語  (6) Sarita Lamichhane、13歳、女、8学年、ネパール語  (7) Keshari Neupane 、16歳、男、8学年、ネパール語、  (8) Juna Tamang、20歳、女、7学年、タマン、  (9) Kamala Adhikari、22歳、女、7学年、ネパール語  (10) Sanu Maya B.K.、20歳、女、7学年、ネパール語  (11) Mahesh Dawadi、13歳、男、5学年、ネパール語  (12) Bishnu Pokhrel、10歳、男、点字教室、ネパール語、  (13) Sujan Dhakal、9歳、男、点字教室、ネパール語  (14) Renuka Bhujel 、13歳、女、点字教室、マガール語  (15) Krishna Kumari Neupane、12歳、女、点字教室、ネパール語  a@統合教育の教職員氏名、性別、役職  (1) Dhruba Kumar Shrestha、男、中等部担当教員の順。  (2) Ramji Prasad Devkota 、男、初等部担当教員  (3) Janata Kumari、女、寮母  (4) Goma Luintel、女、用務員 シャンティ統合教育校(寄宿制)Shanti Model Secondary School, Manigram  aA視覚障害児氏名、年齢、性別、学年、母語の順。  (1) Tika Ram Bhusal、19歳、男、9学年、ネパール語、  (2) Khem Raj Pokharel、17歳、男、9学年、ネパール語  (3) Rabi Lal Paudel、17歳、男、8学年、ネパール語  (4) Bimal Paudel、15歳、男、8学年、ネパール語  (5) Kamala Regmi、17歳、女、8学年、ネパール語  (6) Shashikala Ghimire、18歳、女、8学年、ネパール語  (7) Samita Acharya、16歳、女、8学年、ネパール語  (8) Anita Bhattarai、18歳、女、8学年、ネパール語  (9) Phanindra Wagle、15歳、男、7学年、ネパール語  (10) Kamal Nath Tharu、18歳、男、7学年、タルー語  (11) Ori Ram Chaurasiya、18歳、男、7学年、ボジュプリ語  (12) Manisha Ghimire、15歳、女、6学年、ネパール語  (13) Nirmal Paudel、13歳、男、6学年、ネパール語  (14) Sunil K.C.、13歳、男、5学年、ネパール語  (15) Sandeep Bhattarai、12歳、男、5学年、ネパール語  (16) Sharmila Bhattarai、11歳、女、5学年、ネパール語  (17) Dadhi Ram Ghimire、10歳、男、4学年、ネパール語  (18) Rupa Thapa、14歳、女、4学年、マガール語  (19) Sunita Chapagain、12歳、女、3学年、ネパール語  (20) Pushpa Gautam、9歳、女、3学年、ネパール語  以下、aA統合教育の教職員氏名、性別、役職の順。  (1) Prakash Bhattarai、男、中等部担当教員  (2) Radhika Gaire、女、初・中等部担当教員  (3) Tara Aryal、女、初等部担当教員  (4) Ram Bahadur Lama、男、用務員  (5) Tulsi Pandey、女、寮母 アンチット(バタラ)統合教育校(通学制)Anchit Secondary School, Batara  以下、aA視覚障害児氏名、年齢、性別、学年、母語の順。  (1) Niran Kumari、14歳、女、6学年、ボジュプリ語  (2) Dinesh Prasad、13歳、男、5学年、ボジュプリ語  (3) Chhathu Mukhiya、11歳、男、4学年、ボジュプリ語  以下、aA統合教育の教職員氏名、性別、役職の順。  (1) Panna Lal Baitha、男、初等部担当教員 ----------------------------------------------------------------------------------------     母語の比率  4頁の「統合教育データ」を読むと面白いことに気づく。母語に占めるネパール語の比率がちょうど50%なのだ。ネパール中央統計局(CBS)が発表している人口に占めるネパール語の比率は50.31%なのでこれに符合する。もっともこれはただの偶然に過ぎないのだが、事業の健全性を示す指標に母語の割合は、あるいは役に立つかも知れない。 つまり、ネパール語100%であるなら、高カーストのための事業との疑義が生ずる。もっともデータからも分かるように、母語に関する地域間格差は極めて大きいので、それだけで即断するのは危険だが、注意するに越したことはない。善意の事業が、結果的に貧富の格差やカースト差別に手を貸していたということになったら悲劇である。  ところでCBSは毎年「Statistical Pocket Book」という統計資料を発行する。むろん表紙には「2000」とか「2001」とかの発行年が目立つように書いてある。ところが、人口爆発中であるにもかかわらず「母語の比率」というような、基礎的統計データは1991年の数値をそのまま使っており驚かされる。ちなみに2位はマイティリ語(11.85%)、3位はボジュプリ語(7.46%)、4位はタマン語(4.89%)で、他に28の言語が並んでいる。 ---------------------------------------------------------------------------------------- 2001年度事業報告(平成13年4月1日〜平成14年3月31日)  ネパールにおける事業は、本年度も引き続き寄付金と総務省郵政事業庁の国際ボランティア貯金の配分金を財源に、ネパール盲人福祉協会(NAWB)と共同で実施した。  ボランティア貯金の配分総額は平成12年度の約6億5千万円に対し、平成13年度は6億6千万円と若干増えたが、前年度バラ郡における視覚障害者リハビリテーション(CBR)事業が完了したため、当協会の支援事業自体規模が小さくなった。このため、配分額も平成12年の337万2千円から本年度は290万1千円となった。  昨年6月1日、ネパール王宮内において発砲事件が起こり、ビレンドラ国王をはじめとする王族10名が死亡した。その後、この事件をめぐる真相究明を要求するデモ、外出禁止令、ゼネストと現地は大混乱に陥った。また、昨年11月からはマオイストを標榜する過激派と国軍が各地で激しい銃撃戦を繰り返した。このため、昨年12月に予定されていた現地調査は、郵政事業庁とも相談の上中止とした。なお、当協会が現地で行っている事業自体はこのような治安ではあるが、NAWBにより粛々と実施された。 1.点字教科書作成・配布と技術指導  全国63校(盲学校1校を含む)の視覚障害児456名と、UNICEFやJICAの支援を受け1997年からネパール政府が農村部において開始した「基礎的・初等教育事業」で学ぶ視覚障害者548名の計1,004名を対象に点字教科書・副読本、点字カレンダー等を作成し無償配布した。 2.眼科診療事業  12年間継続した視覚障害者リハビリテーション(CBR)事業が昨年度終了したが、その一環として行ってきた眼科診療は、現地の強い要望があり、眼科助手を2名から1名に減らして実施した。 3.統合教育の推進  従来通り寄宿制統合教育校4校、通学制統合教育校1校に在籍する78名の視覚障害児の就学を保証・支援した。 4.広報・イベント・募金活動  年に1回発行してきた「愛の光通信」を年に2回発行し、版下までをパソコンで製作し、経費削減に努めた。  平成13年10月10日、東京都田無郵便局にて「西東京市国際ボランティア貯金推進協力会」の設立総会が開かれた。これは、同年1月21日、田無市と保谷市が合併して西東京市が誕生したことにより、それまで両市に組織されていた推進協力会を一本化するための総会で、当事務局はこの総会に招かれ、ネパールにおける事業を、ビデオなどを交えて紹介。また、同年10月29日からの1週間、新宿北郵便局のロビーにて、国際ボランティアパネル展を実施し、ネパールにおける支援事業を紹介した。 ---------------------------------------------------------------------------------------- 平成13(2001)年度収支計算書  (借方)  以下、科目、金額(円)の順。   事務費861,529    賃金240,000    旅費320    消耗品費41,244    印刷製本費75,075    役務費457,506    雑費47,384   事業費6,024,515    海外出張費687,515    海外援護費5,337,000    小計6,886,044   当期繰越金△2,138,566    合計4,747,478  (貸方)  以下、科目、金額(円)の順。 寄付金収入4,642,435  助成金収入2,541,963 募金収入2,100,472 事業収入97,200  販売収入97,200 雑収入7,843 雑収入7,843 合計4,747,478 ----------------------------------------------------------------------------------------     貸借対照表 平成14年3月31日現在  (借方)  以下、科目、金額(円)の順。   流動資産9,065,602   現金30,497    預金9,035,105   資産合計9,065,602  (貸方)  以下、科目、金額(円)の順。 繰越金9,065,602 前期繰越金11,204,168 当期繰越金△2,138,566 純財産合計9,065,602 ---------------------------------------------------------------------------------------- □□□ 海外援護事業記録 □□□ (2001/6〜2002/5)  2001年6月 国際ボランティア貯金配分金決定  2001年8月 国際ボランティア貯金へ完了報告書提出  2001年10月 「Light of Love(愛の光通信)No.17」発行  2001年10月 国際ボランティア貯金へ中間報告書提出  2001年10月 西東京市国際ボランティア貯金推進協力会設立総会にて活動報告(10月10日)  2001年10月 新宿北郵便局ロビーにて活動写真展を開催(10月29日〜11月12日)  2002年5月 「Light of Love(愛の光通信)No.18」発行  2002年5月 現地における事業管理:竹内恒之・福山博・佐々木晃 (5月9日〜5月16日) ---------------------------------------------------------------------------------------- 寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)平成13年7月1日〜平成14年6月30日 温かいご支援ありがとうございました!     (個人) 相原夏江/青木貞子/秋山倶子/秋山恭子/浅倉久志/芦田賀寿夫/安達禮雄/阿南澄枝/阿部淳/天野治夫/荒川志げ子/荒木幸子/在田一則/有本圭希/安藤生/池田恵子/池田義明/石川はな/石井芳重/石田隆雄/石谷喜代/石光貞子/市原政春/出光永/伊藤啓子/今井弘一/井村恵津子/岩屋芳夫/植竹清孝/上野伊律子/上村健次/鵜飼信子/梅沢三保/江原絢子/大内三良/大岡信/大河原正子/大木昭英/大島秀夫/大竹英雄/大西明絵/大西正広/大橋東洋彦/尾形雅子/岡本好司/岡山美恵子/小河静/片桐武昭/勝山良三/加藤万利子/金森なを/上條治夫/苅安達男/川上勲/川尻哲夫/ 川村良子/菊井維正/北風政子/木塚泰弘/木村ちづ子/鯨井多加子/楠本睦子/鞍谷清孝/小出隆家/小寺佳美/後藤良一/小長谷正夫/小林明子/近藤公端/近藤光枝/坂入操//坂口広光/佐々木信/指田忠司/佐藤謙次郎/佐藤久夫/佐橋忠明/柴沼豊子/霜崎喜久子/菅原温子/杉澤宏/高橋恵子/田中さ加恵/田中茂/田中徹二/田中亮治/谷内正史/田伏淳一郎/玉井義臣/田村和凡/辻三郎/寺島アキ子/当津順子/当山啓/徳間綾子/富永敏/鳥羽田節/直居鉄/長尾洋子/中島章/中山弘子/長棟まお/中村保信/西崎澤子/西條一止/西本行男/根本弘道/野津虎雄/橋本時代/長谷川一郎/林紘子/原田美男/檜山寿子/福原ササノ/古市薫/星野彰/間下勉/増田ミツ子/増田守男/増野幸子/町田英一/松葉幸子/松本滋/真鍋静子/水間保実/三浦光世/三井戸誠三/南英治/三原富美子/宮原満州男/目黒千代子/森典子/森雄士/森山朝正/山口元子/山崎邦夫/山田あき子/山田真弓/山本幸子/吉村弘子/米澤かよ/米田昌徳/若狭裕二/渡辺直明/渡辺尚道/渡辺勇喜三     (団体等) ◆(株)エトー代表取締役・江藤利雄 ◆(株)啓陽代表取締役・疋田豊 ◆スズキリフレッシュルーム・鈴木雅夫 ◆シャンバロー芸能事務所・白井雅人 ◆(有)信和ハウス ◆(株)高垣商店 ◆(有)大本印刷代表取締役・大本貞堅 ◆エアメールサービス ◆岐阜盲学校生徒会 ◆聖明学園古和釜幼稚園 ◆田中産科婦人科・田中雅治 ◆(株)バイリンガルグループ ◆花園神社宮司・片山文彦 ◆満福寺・野々山宏 ◆武蔵野女子学院中・高等学校 ◆山辻医院・山辻英也 ----------------------------------------------------------------------------------------     JICAよりNAWBにPC贈呈  海外協力事業団(JICA)よりNAWBに今春パソコン2システムが贈呈された。これはJICAが招聘した研修生が帰国後、研修成果を実際に生かせるようにするための事業で、平成13年度のアルヤール事務局長の研修がその対象となった。  昨年の申請に当たっては、当事務局も全面的に協力。現在、ネパールでとくに英語の点字教科書作成に威力を発揮している。 (写真:パソコンを操作するアルヤール事務局長) ----------------------------------------------------------------------------------------     ネパールの郵便事情  機械類の掃除に使うぼろ布をウエスというが、従来ネパールでは点字教科書をウエスにくるんで各学校に送っていた。そしてしばしば紛失していた。その理由は長い間わからなかったが、ある日、学校に紐でしばっただけの宛名のない教科書が届いたことから判明した。ウエスが途中で抜き取られ、宛名がわからなくなり行方不明になっていたのだ。そこで、NAWBはウエスの使用をやめ、段ボールでくるむことにした。段ボール箱は、商店でただでもらうことができるので、盗まれる心配がないのだ。  こうして、点字教科書の紛失はなくなったが、発送してから到着まで3、4か月かかる郵便事情は変わっていない。点字郵便物は無償のうえ、かさばるので郵便物が少ない日を選んで、配達されるためである。 ----------------------------------------------------------------------------------------     募金のお願い  ネパールにおける失明防止と視覚障害者援護の充実をはかるために、募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 銀行口座:三井住友銀行新宿通支店(普)5101190 寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号にかかげる社会福祉法人でありますので、当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号、法人税法第37条第3項第3号の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。 ----------------------------------------------------------------------------------------     編集後記  10月を目指していたのですが、本号の発行が大幅に遅れたことを、ここにお詫び申し上げます。▼ネパールは相変わらず混乱が続いており、地方で実施している統合教育事業の視察もままならない状態です。しかしながら、当協会の事業を含むNAWBの事業は、いまのところマオイストの標的にされていないのは不幸中の幸いです。▼ネパールの治安が前門の虎なら、さしずめ後門の狼は日本の不況と超低金利でしょう。長年、多大なご支援をいただいた国際ボランティア貯金も、もはやあてにできないのが現状です。▼皆さまのなお一層のご支援をお願い申し上げます。(H・F)   発行:社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4 TEL : 03-3200-1310  FAX : 03-3200-2582 E-mail : XLY06755@nifty.ne.jp