ISSN 0913-3321    LIGHT OF LOVE    Overseas Program for the Blind - Plans and Reports    秋号・Autumn No.15 2000. 10    愛の光通信    東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 写真キャプション:寄宿舎落成式にてタムラカー商工大臣から表彰される弱視児童(シャンティ統合教育校にて) ---------------------------------------------------------------------------------------- p2 LIGHT OF LOVE    協会創立50周年と海外交流事業に思う    理事長 堀込藤一  今年は東京ヘレン・ケラー協会創立50周年の記念すべき年に当たります。  まだ戦後の混乱期にあった1948(昭和23)年8月,岩国飛行場に降りたったヘレン・ケラー女史は,国民の熱烈な歓迎を受けました。女史は,秘書のポリー・トムソン女史とともに全国を回られ,視・聴覚障害者の皆さんを励まし,力づけました。 東京ヘレン・ケラー協会の設立  ヘレン・ケラー女史の来日を機に毎日新聞社,厚生省,東京都,視・聴覚障害者団体,財界などが中心になってヘレン・ケラー・キャンペーン委員会(略称:HKC)が結成されました。HKCの主催で9月4日,皇居前広場で開かれた国民歓迎大会には5万人が集まり,HKCが選定した「ヘレン・ケラーの歌」の大合唱で女史を迎えました。女史は「ヘレン・ケラーの美しい歌の調べが,演壇の下から私の足に伝わってくるのを感じます」と述べ「皆さま方のランプの灯をいま少し高く掲げて道を照らしてやってください。そうすれば目の見えない人たちも,光明を与えられて見ることができ,新しい生活の道が開かれるのです」と呼びかけました。  これに応えて,HKCは全国に募金を呼びかけ,その寄付金で1950(昭和25)年東日本ヘレン・ケラー財団を設立しました。財団は昭和27年社会福祉法人・東京ヘレン・ケラー協会に改組されますが,発足以来,あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の養成施設であるヘレン・ケラー学院をはじめ,点字講習会,鍼灸学術大会などいろいろな催しを行いました。その後,点字出版所,点字図書館,盲人用具センターを開設し,視覚障害者の文化の向上,教養の充実,生活のアップのために,力を尽くしてまいりました。 海外盲人交流事業に乗り出す  発足以来,国内の視覚障害者の方々の支援活動に力を注いできた協会は,1981(昭和56)年の国際障害者年を記念して,海外の視覚障害者の支援事業に乗り出すことになりました。これを協会は「福祉の輸出」と位置づけ,対象国にネパール王国を選びました。日本の障害者福祉も決して十分とはいえないものの,日本よりさらに貧困に悩み,福祉の恩恵に頼ることの少ない国の人々に,力を貸してあげたい,という考え方でした。 ネパールでの点字出版所の開設に協力  東京ヘレン・ケラー協会は,ネパール政府,ネパール盲人福祉協会と協力,ネパールに点字製版機,点字印刷機,点字用紙などを贈るとともに,ネパール人技術者を招き,点字印刷の技術を習得してもらいました。これによって点字教科書の印刷が軌道に乗り,ネパール王国の視覚障害者教育は格段の進歩をみせました。  交流事業は,職業訓練,失明予防など多方面にわたっていますが,注目される事業の一つに統合教育の推進があります。統合教育とは,盲学生だけを対象にした盲学校ではなく,健常児と一緒に学ぶという教育システムです。協会は現在4校の寄宿制と1校の通学制統合教育校を支援しています。健常児と障害者が共に学ぶというノーマライゼーションの画期的な試みが,協会の協力によって,ネパール王国で行われているのです。 海外交流事業の一層の充実を  海外交流事業の推進に当たっては,内外の方々から温かい励まし,ご協力をいただいております。特に郵政省ボランティア貯金からは毎年ご援助を受け,交流事業を計画的に実施できるようになりました。  東京ヘレン・ケラー協会創立50周年にあたり,海外交流事業のさらなる発展,充実に努力する事をお約束し,ご挨拶といたします。 ---------------------------------------------------------------------------------------- p3 LIGHT OF LOVE    アワーズプロデュース    チャリティ音読公演    Vol. 5「嗚呼!結婚そして夫婦?!」  すっかりお馴染みになりました,テレビやラジオで活躍するアナウンサーによる朗読と音楽で物語をつづる「音読公演」。日本語を読む力を磨き,その響きの美しさを少しでも多くの人に知ってもらおうという制作者側の強いこだわりと視覚障害者にも舞台を楽しんでもらいたいという気持ちが形となって実現したものです。  その第5弾は,笑いとペーソスにあふれた喜劇「嗚呼!結婚そして夫婦?!」。99年7月16,17の両日,東京・中野坂上のハーモニーホールでの公演では,結婚が噂されていた「クボジュン」アナが,純白のウェディングドレスで現れ会場を沸かせました。出演は,野間脩平,奥寺健,佐々木恭子(フジテレビ),菅原牧子(TBS),宮本隆治,久保純子(NHK),藤吉次郎(テレビ東京)中村こずえ,塙野ひろ子,小森谷徹,竹下典子の皆さん,構成と演出は佐藤久四郎さんでした。 Vol. 6「戦火の中のこどもたち」  同年11月16日と11月27日の両日は,第6弾「戦火の中のこどもたち」で,これはいわさきちひろさんの同名の絵本をモチーフにしたもの。「どんどん壕の中が熱くなってきて,・・・・・・私は忘れない,あの夜だけは・・・・・・」と,沖縄戦や東京大空襲がいわさきさんの絵をスライドで映しだした背景の前で語られました。空襲警報や爆撃の音も臨場感を高め,なにより朗読が真に迫っていたため,観客のほとんどは涙ぐんでいました。特に戦争中に少女期を過ごしたと思われる年輩の女性は,目にいっぱい涙をため,声を殺すのに苦しそうでした。  年に2回「音読公演」と銘打って小説や詩を朗読するこの会は,所属する放送局や立場を越えて無報酬で行うものです。このため規則も義務もないいたって緩やかなグループですが,たった一つだけ約束があるといいます。それは冬の公演では,戦争をテーマにした作品を取りあげるというもの。  これは,演出家の佐藤さんが「8月15日」同様,「12月8日」も心に刻む場にしようと提案し,出演者がそれに応じたものです。  出演は,野間脩平,奥寺健,佐々木恭子(フジテレビ),菅原牧子(TBS),宮本隆治(NHK),藤吉次郎(テレビ東京),中村こずえ,柘植紀子,竹下典子の皆さん,構成と演出は佐藤久四郎さんでした。  なお,主催の潟Aワーズより収益の一部が,当協会のネパールにおける視覚障害者支援事業に寄付されました。ご協力ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    眠っている英文タイプライターやノート型PCをお譲りください!  視覚障害者にとって,キーボードは普通文字を書くためになくてはならないものです。その練習用,教育用としては電源のいらないマニュアル式のポータブルタイプライターが最適です。一方,ネパール盲人福祉協会では,パソコンを使って事務処理をしたり,点字教科書の製作にも一部パソコンを導入しています。また,バラCBRセンターでもワープロを使って報告書を書いています。もし,ご家庭や職場で使わなくなった英文タイプライターやノート型パソコン(Windows 3.1以上)がありましたらネパールで役立ちますので,お譲りください。  事前に海外盲人交流事業事務局(03-3200-1310)まで電話連絡のうえ,できれば送料ご負担でお送りいただければ幸いです。 ---------------------------------------------------------------------------------------- p4 LIGHT OF LOVE    釈迦生誕の地で寄宿舎オープン    ―― タムラカー商工大臣をむかえ盛大に落成式 ――    海外盲人交流事業事務局次長 福山博  「このまま,横になりたい」新築なった寄宿舎のベッドに腰掛けながら,そんな誘惑が暑さでぼんやりした頭の中に現れては消えた。  この日(5月9日),釈迦生誕の地として有名なネパール・ルンビニ地方の最高気温は摂氏36.4度。 新寄宿舎の落成式が行われた,ルンビニ県ルパンディヒ郡マニグラム町のシャンティ・ナムナ高校(シャンティ校)の広い校庭には,南国の鳥を思わせる色鮮やかな天幕がカタカナのロの字形に張られ,正面には雛壇が設えられていた。  その中央にはひときわ豪華な椅子が据えられ,本日の主賓であるラム・クリシュナ・タムラカー商工大臣が,盛大な拍手と共に席に着いた。  そして,この日のために東京から駆けつけたわれわれも来賓として,最前列の右端に緊張しながら座ることになった。  午前8時に始まった落成式は11時には終わると聞いていたが,いっこうにその気配はなく,気温はじりじりと上がっていった。なにしろ大臣さえまだ挨拶していないのである。  スーツ姿は東京から派遣されたわれわれ2人だけで,上着を着ているのもネパール風に正装した愛想のいい大臣だけだ。参列者はみんなノーネクタイでサンダル履きも多い。  ネパール盲人福祉協会(NAWB)点字出版所での技術指導のため同行した当協会点字出版所印刷課主任の島田金幸はそれを見て,早速上着を脱ぎにかかった。しかし,私は挨拶があるためそれもかなわず,全身から汗が噴き出すのをただ耐えるしかなかった。スピーチの間に,数回ステンレスのコップに注いだ水が配られ,列席者はそれをがぶ飲みしている。ネパールではミネラルウォーター以外を飲むと強烈な下痢にやられることは百も承知だったが,われわれも誘惑には勝てず,ついにその“禁”を破った。水は余りにも甘美であり,命が救われた思いであった。  ネパールにはモデルスクールという,いくらか設備の整った公立高校が75の郡に1校ずつある。シャンティ校もそんな模範校の一つである。  ネパールでは五・三・二制の小中高一貫教育が一般的で,同校もその例に漏れず10年制である。そして,このシャンティ校では,6年前からネパール盲人福祉協会と東京ヘレン・ケラー協会の支援で統合教育も行っており,現在17名の盲児童が寄宿舎に暮らしながら勉強している。もっともこれまでの寄宿舎は名ばかりで,薄暗い倉庫のようなところであった。  そこで1999年度の郵政省ボランティア貯金の配分金と当協会の資金に現地の資金をあわせた総額 113万9616ルピー(1ルピーは,当時約2円)で建設されたのがこのたび新築なった寄宿舎である。  これで当協会はNAWBと共同で都合3校の寄宿舎を建設したことになる。なかでもこの学校は地元の有力者をたくさん輩出していることもあり,モデル校のプライドにかけて資金を集めたため,とりわけ立派な寄宿舎となった。  ところで天幕越しの日光と照り返しでわれわれは音を上げたが,それでも雨季に入り,少ししのぎやすくなったのだという。自分の耳を疑ったが地元の人々は確かに「クール」といっていた。  写真キャプション:●新築落成した寄宿舎の前にて ---------------------------------------------------------------------------------------- p5 LIGHT OF LOVE  このセレモニーの前夜,東京からの来賓ということでNAWBのホームナット・アルヤール事務局長が「ネパール語で挨拶するのがよいでしょう」と,とんでもないことをいいだした。  驚き困ったが,「よーし」と腹をくくり,私は夜の9時頃までネパール語の特訓を受けた。そしてICレコーダーに残されたアルヤール先生の声に合わせて,夜の11時半過ぎまで,発音練習を1人で繰り返した。  一方,島田はそれまでの3日間早朝6時半〜7時出発,そして途中豪雨等のアクシデントにも見舞われ,ホテル帰着は9時過ぎという強行軍の日々の連続で,疲労困憊に達していた。海外旅行が初めてというプレッシャーも加わり,島田はルンビニに着く頃は顔面蒼白であった。  ところが,泊まったホテルが和室・和食もある日系のルンビニ法華ホテル。これが幸いした。若い彼は日本食と畳の部屋で一夜にして回復。  その逆に私はというと,セレモニーが終わり,大臣と名刺交換をし,感謝とねぎらいの言葉を受けてからがいけなかった。事業管理のため寄宿舎に立ち寄ったら,児童のベッドに腰掛けているのがやっとの有り様でめまいさえした。  上着は,セレモニーが終わると共に脱いでいた。ただ,この日は半袖だったので,汗ばんだ二の腕が上着にぴったりと張り付き,無理に脱ごうとしたら「バリッ」という嫌な音がした。アンダーシャツは,絞れるほど汗を含んでおり,左手の甲には汗疹が出来,むやみにかゆくなった。生気を取り戻したのは,日陰で30分も休んでからであった。  ネパールでは一般に英語はほとんど通じないが,なかには驚くほど流暢な人もいる。盲児の父親であるバッタライさんもそんな1人だ。彼は,この日NAWBを代表して出席していたラウト常務理事とは青年会議所(JC)の仲間だという。服装も恰幅も良かったので,「ビジネスマン?」と聞くと,「ファーマーで仕事の関係でカトマンズとルンビニ間をよく行き来する」という。どうも彼は,手広く農場を経営しているようである。5人の子供のうち2人の娘が全盲で,彼は弱視の島田を通じて,日本の盲教育事情をしきりに知りたがった。  それまで時折眉間にしわを寄せていた彼だが,写真を撮っていいかと聞くと,小さな2人の娘を左右に抱き寄せ,幸福な父親の顔に変わった。  翌日に予定されていたカトマンズへの帰路は,ジープで8時間の道のりである。しかも車のクーラーは途中で動かなくなっており,今回の旅で身に降りかかったパンクやストライキによる道路封鎖が頭の隅から離れない。そこでわれわれは,落成式のあった夕刻,急遽その名もブッダ・エアーの小型機で帰ることにした。  当日のカトマンズは,軽装のわれわれには肌寒いほどの快適さで,現金なものでその頃には汗疹もまったく気にならなくなっていた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    ドゥマルワナ校の米倉 (米倉の写真)  この”三角形のとんがり帽子”は,米倉である。いかにも無骨なのは,父兄による手作りのためだ。寄宿舎の隣が菜園になっており,そこにちょこんと鎮座している。  タライ平野の穀倉地帯でも,季節により米が2,3倍に高騰することは珍しくない。そこで,新米が出回ると直接買い付け,この米倉に1年分を保存するのである。  この統合教育校は,ドゥマルワナ村という雨季になれば,陸の孤島となる農村僻地にある。一応国立学校だが,国から支給されるのは,1〜5年生担当の教員の給料だけである。従って,学校の運営費等は,地域に頼るほかない。これが町場や街道筋にある学校ならまだしも,典型的な貧しい地域では思うに任せない。しかし,この学校は様々な工夫と地元住民の強い絆に支えられ,五・三・四制の12年間一貫教育をも実現している。  他の学校が調理にプロパンガスや灯油を使い,食堂にテーブルと椅子を持ち込んでいるのに対し,この学校は,いまだに薪を燃し,土間にビニールシートを敷いて食事をしている。しかし,他の学校の浴室は,蛇口がついているだけだが,この学校にはちゃんとシャワーヘッドもついている。窓の泥棒よけの格子はむき出しの鉄筋だが,窓を大きくとって,室内は明るい。  地元に密着したこの合理性は,手当がなければ一切働かないという風土にあって,自主的に補習授業を行うような形にも現れている。  ---------------------------------------------------------------------------------------- p6 LIGHT OF LOVE    PROGRAM FOR THE BLIND IN NEPAL    FISCAL 1999 (from April 1st, 1999 to March 31st, 2000)  1.Bara CBR Project Community Based Rehabilitation (CBR) Project which has been proceeding in the whole district of Bara, Narayani Zone, with constant effort of Nepal Association for the Welfare of the Blind (NAWB) and Tokyo Helen Keller Association (THKA), provided 237 blind persons with training for Orientation and Mobility (O&M) and Daily Living Skill (DLS) and also provided 365 blind persons who had already achieved occupational independence with follow-up training during this period. After careful discussion with the parties concerned, the project is to be fully managed by local participants without financial support of THKA after July 2000. Although the scale of the project is to be diminished, many blind persons in Bara District will continuously be benefited by the project.  2.Braille Book Production In Braille Printing House of NAWB, the local staff produced and distributed over 2,700 copies of braille textbooks to 424 blind students of 32 integrated education schools and 1 segregated school for the blind in Nepal. They also produced and distributed braille calendar and monthly braille magazines to integrated education schools and relevant facilities.  3.Integrated Education Program NAWB and THKA have supported Integrated Education for blind students of two schools in Bara District and other three schools in Rautahat, Gorkha and Rupandehi District respectively. In Shanti Namuna Secondary School in Rupandehi District, construction of new hostel was launched to replace old hostel, since it had not provided adequate living environment for blind students due to its structural defect. On May 9th, there was an inaugural ceremony for the new hostel, attended by Minister of Industry, Commerce and Supplies, Ramkrishna Tamrakar, and other dignitaries from parliament, local district, school and NAWB. This construction was financially supported by the Postal Savings for International Voluntary Aid of Japanese Ministry of Posts and Telecommunication. And National Workshop for integrated education was held in Central Office of NAWB on April 30th through May 4th to give Knowledge of code of braille mathematics to resource teachers and other participants.  4.Primary Eye Care and Eye Clinic At the Eye Clinic in Bara CBR Center, 6,416 patients received treatment to cure eye diseases. Primary Eye Care Workshop was held in Bara CBR Center on December 28th to give local persons knowledge about prevention of blindness. Staff of Bara CBR joined Eye camps arranged by local hospital and also joined the project for distribution of Vitamin arranged by government.  5.Braille Technical Guidance Technical guidance for producing braille textbooks was held by technical staff of THKA in the printing house of NAWB to enhance the skill of staff of NAWB.  6.Campaign and Event To publicize this overseas program for the Blind and raise fund for it, THKA issued its own newsletter "LIGHT OF LOVE" in September 1999 and distributed to all supporters. To publicize this program, THKA with two volunteers participated in "International Cooperation Festival '99" at Hibiya Park on October 2nd and 3rd, 1999. THKA backed up a Charity Reading and Performance produced by OURS Co., Ltd., sales of which in part were donated to this overseas program for the blind.  (A.N.) ---------------------------------------------------------------------------------------- p7 LIGHT OF LOVE    1999年度事業報告(1999年4月1日−2000年3月31日)  1.視覚障害者リハビリテーション(CBR)事業  ナラヤニ県バラ郡全域で展開している本事業により,この1年間にリハビリテーションを受けた視覚障害者数と訓練内容は,歩行訓練(O&M)や日常生活動作訓練(ADL)の実施が延べ237名,職業的に自立した視覚障害者へのフォローアップが延べ365名であった。  本事業は,2000年7月をもって当協会の手から放れ,完全に地元の自主運営に切り替わる。この件に関しては,ネパール盲人福祉協会(NAWB)および現地の篤志家によって組織されるバラCBR地方協力委員会と,これまで繰り返し話し合い,十分な理解と合意を得ており,支援がなくなっても自然消滅させることなく,地元の協力で事業規模はかなり小さくなるが,独自のフォローアッププログラムにより,継続して本事業を継続する計画。  2.ネパールにおける点字出版事業  NAWB点字出版所において,初等〜高等教育課程の点字教科書2,746冊を製作し,ネパール全土の統合教育校32校と盲学校1校に学ぶ視覚障害児424名をを対象に2,782冊を無償配布した。製作数より配布数が多いのは,前年度製作した在庫があったからである。  なお,点字教科書は統合教育校の当該クラスの人数が増えたり,あまりに損傷の激しい 教科書分のみを追加する方式で,使える教科書はとことん使い切る方式をとっている。  3.統合教育事業 A.下記の統合教育校を引き続き支援した。  (1)バラ郡ドゥマルワナ校(寄宿制・盲児数20名)  (2)ロータート郡ジュダ校(寄宿制・盲児数16名)  (3)ルパンディヒ郡シャンティ校(寄宿制・盲児数   15名)  (4)ゴルカ郡アマルジョティ・ジャンタ校(寄宿制   ・盲児数15名)  (5)バラ郡バタラ校(通学制・盲児数3名) B.シャンティ校において,長年の懸案であった寄宿舎を新築落成した。これにより当協会が支援する寄宿制統合教育校における宿泊環境は一応整ったことになる。 C.全国統合教育講習会:2000年4月30日〜5月4日,カトマンズのNAWB本部において,ネメス式数学点字表記法の修得を目標に同講習会を開催した。参加総数は28名で,その内訳はネパール全土の統合教育校のリソースティーチャー19名,大学教員1名,CBRスタッフ4名,NAWBの職員4名であった。 D.点字器と点字用紙の配布:香港製簡易型点字器350枚を統合教育校等77カ所に配布した。大学に学ぶ視覚障害学生41名に対しノート用の点字用紙35,850枚を無償提供した。  4.眼科診療と失明予防 A.眼科診療所:バラCBRセンター併設の眼科診療所において,バラ郡の眼疾患者6,416名が診療を受けた。 B.失明防止講習会:1999年12月28日,バラCBRセンターにてバラ郡役所幹部やバラ郡の薬局店主や従業員等67名を対象に眼科医による講習会を開催した。 C.アイキャンプへの協力:ケディア眼科病院がバラ郡で実施したアイキャンプに協力した。 D.ビタミン配布事業:ネパール政府がバラ郡で実施した失明防止のためのビタミンA配布事業に協力した。  5.技術指導と事業管理  本誌8ページ「海外援護事業記録」のとおり,当協会のスタッフ延べ6名をネパールに派遣し,技術指導と事業管理を実施した。  6.広報・イベント・募金活動 A.1999年9月「愛の光通信」第14号を発行。 B.1999年10月2,3の両日,日比谷公園で開催された「国際協力フェスティバル」に参加し,ネパールにおける活動を発表した。 C.音読公演第5弾「嗚呼!結婚そして夫婦?!」と第6弾「戦火の中の子どもたち」を後援した。(関連記事:3ページ) ---------------------------------------------------------------------------------------- p8 LIGHT OF LOVE    1999年度収支計算書    自 1999年4月1日    至 2000年3月31日  <借方>  科目 金額 事務費 1,905,707円  賃金 1,200,000円  旅費 3,290円  消耗品費 11,319円  印刷製本費 195,195円  役務費 443,109円  原稿料 10,000円  雑費 42,794円 事業費 8,333,281円  海外出張費 1,312,238円  海外援護費 6,997,470円  雑費 23,573円 小計 10,238,988円 当期繰越金 1,344,653円 合計 11,583,641円  <貸方>  科目 金額 寄付金収入 11,510,945円  協賛金収入 713,000円  助成金収入 6,424,000円  募金収入 4,373,945円 事業収入 58,000円  販売収入 58,000円 雑収入 14,696円  雑収入 14,696円 合計 11,583,641円    貸借対照表    2000年3月31日  <借方>  科目 金額 流動資産 11,225,755円  現金 22,967円  預金 11,202,788円 資産合計 11,225,755円  <借方>  科目 金額 繰越金 11,225,755円  前期繰越金 9,881,102円  当期繰越金 1,344,653円 純資産合計 11,225,755円    □□□ 海外交流事業記録 □□□    (1999/6〜2000/5)  99年6月 *国際ボランティア貯金配分金決定  99年7月 * ハーモニーホールにてアワーズ音読公演(7/16−7/17)  99年9月 *「愛の光通信No.14」発行  99年10月 *日比谷公園で開催された「国際協力フェスティバル」に参加  99年11月 *TOKYO FMホールにてアワーズ音読公演(11/16・11/27)  99年12月 *現地における事業管理:根本厚志・立花雄大(12/14−12/22)  00年1月 *ボランティア貯金預金者代表団の現地視察事前説明会で現地の活動を発表(1/28)  00年3月 *現地における事業管理:末藤寿・酒匂桂(3/11−3/19)  00年5月 *現地における事業管理:福山博・島田金幸(5/2−5/14)  00年5月 *シャンティ校寄宿舎落成式(5/9)  00年5月 *井口淳海外事業担当理事退任,後任は竹内恒之理事(海外盲人交流事業事務局長) ---------------------------------------------------------------------------------------- p9 LIGHT OF LOVE  寄付者ご芳名(五十音順・敬称略)1999年7月1日〜2000年6月30日  温かいご支援ありがとうございました!  (個人) 青木貞子 青木ヒサ 秋山倶子 阿貴良一 浅倉久志 浅田きよか 浅野孝一 在田一則 阿部淳 荒木薫 安藤生 井口淳 池田義明 石井正 石川尚代 石田隆雄 石原幸栄 石光貞子 板倉昭義 板橋元一 出光永 伊藤啓子 今泉新治 井村恵津子 岩田修二 植竹清孝 上田文良 上野伊津子 上村香代子 上村健次 内山武 遠藤利三 及川幸男 大内三良 大岡信 大河原正子 大木昭英 大竹英雄 太田義秋 大西正広 大野勝弘 大橋東洋彦 大橋義男 岡本好司 岡山美恵子 小川恵美子 小河静 オギノ芳信 尾関育三 小野日央 小幡欣治 折戸正明 加来典子 片桐武昭 勝山良三 加藤晃 加藤万利子 門村道子 金森なを 金田一郎 苅安達男 川村良子 岸栄子 北原悦子 木塚泰弘 鬼頭タツ子 清宮篤志 汲田克夫 栗本久夫 小泉周二 肥塚隆 肥塚美和子 後藤尚子 後藤良一 小林一弘 小堀正夫 小森愛子 近藤公瑞 斎藤惇生 斉藤友吉 佐々木三郎 指田忠司 佐藤謙次郎 佐藤久夫 佐橋忠明 篠原信子 白井雅人 末吉恵里 菅原温子 杉澤宏 鈴木勝利 鈴村豊春 曾野綾子 染矢朝子 大門久人 高橋国平 高橋輝雄 竹村実 田中さ加恵 田中茂 田中徹二 田中正和 谷内正史 坪川靖彦 寺島アキ子 照井博 当津順子 鳥羽田節 中川みどり 中島章 中村保信 奈良泰夫 西條一止 野中省三 橋爪ナナ 橋本時代 橋本美吉 長谷川一郎 長谷川康子 八田公雄 林紘子 林大 檜山寿子 桧山美代子 福原ササノ 古市薫 星野彰 堀澄 間下勉 増野幸子 増田光子 町田英一 松尾宏之 松葉幸子 三浦光世 水野まち子 南英治 三宅正太郎 宮崎勇 宮下秀冽 宮原満州男 目黒千代子 本吉寿一・妙子 モハメッド・イクバル・ハニク 森栄司 森川政之衛 森典子 森山朝正 両角征吾 柳川克義 柳家小三治 薮内清 山口節子 山口元子 山崎邦夫 山田あき子 山本景子 山本幸子 山本強利 湯浅寛 吉田重信 吉田甸 米田昌徳 若林弘子 渡辺直明 渡辺尚道 渡辺登 和出野充洪  (団体) ◆(株)アワーズ ◆(株)ショウエー:落合榛美 ◆(株)ハーモニスクエア管理代表取締役:石森安英 ◆(有)大本印刷:大本貞堅 ◆エアメールサービス ◆江川整形外科医院:原田美男 ◆株式会社啓陽:疋田豊 ◆岐阜盲学校生徒会 ◆小林動物病院:小林敏 ◆シダックス・コミュニティー株式会社 ◆スズキリフレッシュルーム:鈴木雅夫 ◆高松キワニスクラブ ◆田中産科・婦人科:田中雅治 ◆多磨盲人会会長:汲田冬峯 ◆東京シネビデオ(株)代表取締役:横川元彦 ◆錦紙商事株式会社 ◆株式会社バイリンガルグループ ◆花園神社宮司:片山文彦 ◆満福寺:野々山宏 ◆宮古南静園視覚障害者会 ◆山辻医院:山辻英也 (お詫び)  当方の手違いにより、ご寄付を賜りながら、「大内三良」様のお名前が前号(1998年7月1日〜1999年6月30日寄付者名簿)に掲載されませんでした。ここに記してお詫び申し上げます。 ---------------------------------------------------------------------------------------- p10 LIGHT OF LOVE   国際協力フェスティバル'99   International Cooperation Festival at Hibiya Park (写真:ボランティア)  10月2,3の両日ボランティアの皆さんの協力を得て,日比谷公園で開かれた「国際協力フェスティバル'99」に参加し,ネパールにおける当協会の活動を写真パネル等を活用して紹介しました。   協会記念誌刊行   視覚障害者と共に50年   ―― 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会の歩み ――  本年4月1日(2000年),当協会は創立50周年を迎えました。昭和23年のヘレン・ケラー女史来日に呼応して展開された毎日新聞社のヘレン・ケラー・キャンペーンに寄せられた浄財を基に,昭和25年に設立されたのです。 ヘレン・ケラー女史の来日から協会設立の経緯,そして現在協会が展開している事業まで,この50年間を秘蔵写真とともに,凝縮したのがこの記念誌です。本文は横書き2段組で,巻末「資料」を含めるとB5版283頁の大部な作りですが,物語風の構成で読みやすく書かれています。  ※ ご希望の方には,実費の2,500円(送料340円)でお分けします。 (写真:協会50年史の表紙)    募金のお願い  ネパールにおける失明防止と視覚障害者援護の充実をはかるために、募金をお願い致します。  寄付金のご送金は下記口座をご利用ください。 郵便振替:00150−5−91688 銀行口座:さくら銀行新宿支店(普)5101190    寄付金に対する減免税措置  東京ヘレン・ケラー協会は、所得税法施行令第217条第1項第5号にかかげる社会福祉法人でありますので、当協会に対するご寄付は、所得税法第78条第2項第3号、法人税法第37条第3項第3号の規定が適用され、税法上の特典が受けられます。    編集後記  諸般の事業で、本号の発行が大幅に遅れてしまいました。ご寄付をお寄せいただいている方々には大変ご心配をおかけして、申し訳ございませんでした。▼よりきめ細かにご報告するため、今年からページ数を減らし年2回発行することが決まったのですが、その矢先にとんでもない見込み違いでした。▼経費節減の折から、本誌レイアウトも含めて本号から完全パソコン編集に切り替えました。このため、題字も含めて書体が変更になりましたこと、ご了承ください。▼次号は、少し変則的ですが、2,3月頃の発行を予定しております。 (H・F) (イラスト:青い鳥ロゴマーク) TOKYO HELEN KELLER ASSOCIATION(Established in 1950) 14-4, Ohkubo 3 chome, Shinjuku-ku, Tokyo 169-0072, Japan 発行:社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 海外盲人交流事業事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4 TEL:03-3200-1310 FAX:03-3200-2582 E-mail:XLY06755@nifty.ne.jp