THKA

社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会

点字ジャーナル 2019年9月号

第50巻9号(通巻第592号)
―― 毎月25日発行 ――
定価:一部700円
編集人:福山 博、発行人:奥村博史
発行所:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会点字出版所
(〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4)
電話:03-3200-1310 E-mail:tj@thka.jp URL:http://www.thka.jp/
振替口座:00190-5-173877

目次

巻頭コラム:朝日新聞の大胆な記事修正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
中島拓奨学基金が奨学金を無償給付 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
(特別寄稿)「大学門戸開放70周年」記念講演会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
視覚障害者の職場定着をすすめるために 全国ロービジョンセミナーより ・・・・・
14
(特別寄稿)終焉を迎えた視覚障害教育・心理研究会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
活気ある盲学校の未来へTry! 全国理療教育研究協議大会より ・・・・・・・・・・・
23
コミュニケーションで顧客満足度をアップ ―― 第2回三療セミナーより ・・・・・・・・
27
スモールトーク:賢い国ランキングで日本が総合優勝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
(新連載)しげじいハワイに行く (3)マウイ島観光 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33
盲教育140年 (18)学校教育法の制定と就学の義務制その2 ・・・・・・・・・・・・・・・
38
自分が変わること (123)「鼻こそは全て」と言えるのか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
43
リレーエッセイ:自分にしかできない事を、やり続けていくために  ・・・・・・・・・・・・
48
アフターセブン(54)11匹の金魚 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
55
大相撲、記録の裏側・ホントはどうなの!?
  (205)安美錦、40歳でついに引退 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
59
時代の風:肝臓がん患者の生存期間が2倍に、認知症の薬でトラウマ消える、
  AIで胎児の心臓病発見、全国視覚障害者等カラオケコンクール ・・・・・・・・
63
伝言板:NHKハート展、秋のチャリティ映画会、点字技能検定試験、
  朗読で味わう文学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
67
編集ログ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
71

巻頭コラム
朝日新聞の大胆な記事修正

 7月31日付『朝日新聞』(夕刊)1面にでかでかと、「米軍駐留費『日本は5倍負担を』」の見出しで、「トランプ米政権のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が先週、日本を訪問した際に、在日米軍の日本側負担について、現状の5倍となる巨額の支払いを求める可能性があることを伝えていたことがわかった」と書いてあった。同記事には、「04年の米国防総省の報告書によると、日本の米軍駐留経費の負担は74.5%にのぼり、ほかの欧州の同盟国に比べて突出して高い」ともありなお驚いた。
 2,239文字も費やしたこの記事はスクープのつもりなのだろうが、74.5%の5倍は372.5%、つまり米軍駐留経費の3.7倍を払えと米政府関係者が本当に言ったのだろうか。
 翌8月1日付『朝日新聞』(朝刊)には1面に1,013文字で、「ボルトン大統領補佐官が7月21、22日に来日し、谷内正太郎国家安全保障局長らと会談した際に要求したという。今後の交渉で求める可能性がある増額の規模として日本側に示した数字について、関係者の一人は『5倍』、別の関係者は『3倍以上』と述べた。ただ、交渉前の『言い値』の可能性もある」「米メディアは3月、トランプ政権が駐留経費の総額にその5割以上を加えた額の支払いを同盟国に求めることを検討していると報道。現在の5〜6倍に当たる額を要求される国も出てくるとしていた」とトーンダウン。
 そして同記事の最後に「菅義偉官房長官は31日午後の記者会見で、米国が米軍駐留経費の日本側負担について5倍増を提示したという朝日新聞の報道について『そのような事実はない』と述べた」と書いてあった。ということは、もしかしてこの記事は前日の夕刊に掲載した「誤報」を修正しているつもりなのだろうか。
 ただ、完全に否定されているにもかかわらず、同記事のタイトルは、「米軍駐留費負担『大幅増を』 日本に『5倍』要求も」という、読者をなめたものだった。(福山博)

コミュニケーションで顧客満足度をアップ
―― 第2回三療セミナーより ――

 8月2日(金)、東京・上野の東京文化会館にて、日本盲人社会福祉施設協議会と盲人ホーム杉光園が主催する第2回三療セミナーが行われた。
 本セミナーでは、(株)堀治療院の堀昌弘氏(74歳)が講師を務め、「コミュニケーションの観点から臨床リスクを考えてみよう」というテーマで、下記の講演を行った。
 前半では、堀氏の経歴が語られた。
 堀氏は、中学2年生(13歳)の時に失明した。教諭から「盲学校に行きなさい」と言われた時の辛さ・哀しみは、今でも表現することができないという。また、同級生から放たれた言葉が耳から離れない。
 「あん摩さんになるんか」、「めくらの学校へ行くんか」
 無邪気さゆえの言葉だったとは思う。それでも深く傷ついた。反発するように、「一流のあん摩師になろう」と決め、盲学校へ入学。中学校卒業と同時にあん摩業者に弟子入りし、高校生活と両立させ、国家資格に合格した。その後、開業し、従業員を増やし、規模を大きくした。
 堀氏は自身のことを「貪欲」であると言うが、その欲に傲慢さは微塵もない。ただ、お客様へ最高のサービスを提供したい、という誇り高き精神を表現しただけだ。しかし、そのまっすぐな意思が経営者としての首を絞めることになる。
 それは、28歳の時だった。風呂つきのマッサージ治療院を建て、温熱療法を開始しようと決意し、銀行から無担保で7,000万円の融資を受けた。しかし、融資といっても、それは借金である。家族を養い、従業員に賃金を支払えば、返済に回せる金などどこにもない。3年経つと、借金は膨れ上がり、1億円となった。当時、マッサージ師の時給は900円〜1,000円。どうして1億円を返せばいいのか。不安で眠れぬ日が続くが、もう打つ手がなくなった折、時代が堀氏に味方をした。障害者雇用促進法である。これにより、障害者1人につき、月額10万円が国から助成されることとなった。堀氏は30名ほど視覚障害者を雇用していたため、月に300万円が支給され、ようやく1億円の負債を返す資金を手にしたのだった。それからは順調に事業は進み、マッサージ師の育成にも力を入れ、(株)堀治療院から巣立った卒業生は176名にもなる。たくさんの卒業生が成功をおさめており、それを語る堀氏は喜びに顔をほころばせた。
 後半では、視覚障害者に求められるコミュニケーションについて語られた。
 現在、無免許のマッサージ師が増えてきている。駅周辺には、マッサージの看板が立ち並ぶが、すべて無免許のマッサージ師が施術している。中をのぞくと、無免許のマッサージ師を抱える店舗のほうが繁盛していることも多い。
 有資格者が無免許に負ける。その理由を堀氏はこう考える。
 「コミュニケーションができない店に、お客様は来ないですよ」
 看板があるかないかが問題ではない。施術能力よりも、コミュニケーション能力が重要視される時代なのだ。マッサージ業が接客業であることを忘れた有資格者は、スペシャリストではなくなる。
 昨今、医療過誤と苦情との線引きができないほど、訴訟内容が感情的問題となってきている。たとえば、皮膚を温めれば、赤くなる。それはごく普通のことである。しかし、赤くなった皮膚を見て、利用者側が不信感を抱いたらどうなるだろう。赤みについて、自己判断を下し、医師を巻き込み、訴訟問題となることもあるだろう。コミュニケーションを通し、信頼関係を築いて初めて、利用者側は経過を安心して観察することができるのである。そして、利用後の満足度も上がる。
 「視覚障害は決してハンデではありません。点字を触読できる指先の繊細さは視覚障害者にしかない才能です。だからこそ、三療は適材適所なんです」
 そう強く言い切る堀氏は、三療を視覚障害者の天職であると信じている。視覚障害だからといって、補助をしていると、人は育たない。自分の力で動くよう指導し、自分でつかみとる力を育てていかねばならない。その先でコミュニケーション能力は生まれる。時代に求められる才能を育てたい、という思いを力強く語り、講演は盛況のうちに終了した。(阿部美佳)

編集ログ

 小なりといえども媒体の責任者をしていると、新聞や雑誌の誤報や虚報をめぐる記事には大いに触発されたり、身につまされたりする。
 JR東日本の広報誌『JR EAST』6月号が架空のインタビュー記事を掲載したため、7月号にお詫びを掲載して事実上廃刊した一件などは誠に残念至極で、同情を禁じ得なかった。その点、廃刊の心配がない大新聞はやりたい放題で、のんきなものである。
 7月9日の早朝に出勤して、その日の新聞7紙を整理していると『朝日新聞』の1面に「ハンセン病家族訴訟、控訴へ」の大見出しが目に飛び込んできた。
 これは「スクープか、誤報か」と首を傾げたのは、出勤前に自宅で読んだ『毎日新聞』には、「ハンセン病家族訴訟 政府内に控訴断念論」と真逆のことが書いてあったからだ。
 どちらが正しいのかはすぐにわかった。NHKがニュース速報で「ハンセン病家族訴訟、控訴せず。安倍首相が決定」と報じたのだ。
 同日の『朝日新聞』(夕刊)一面は、「ハンセン病家族訴訟、控訴せず」の大見出しを掲げ、「誤った記事 おわびします」が掲載された。そして、翌10日の朝刊には、政治部長名で「ハンセン病家族訴訟 記事を誤った経緯を説明します」という記事が出た。その中で異様だったのは「首相は7月3日の党首討論会で『我々は本当に責任を感じなければならない』などと発言しました。しかし官邸幹部への取材で、この発言を受けても、控訴の流れに変わりはないと受け止めました」と書いてあったことである。
 『朝日新聞』は、向こう傷を恐れない特ダネ至上主義で、疑わしい未確認情報を、ほかの情報源によるクロスチェックなしに報道するように思われる。そこが同紙に誤報や虚報が多い原因ではないだろうか。小誌も「他山の石」としたいものである。(福山博)

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