THKA

社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会

点字ジャーナル 2018年9月号

第49巻9号(通巻第580号)
―― 毎月25日発行 ――
定価:一部700円
編集人:福山 博、発行人:馬塲敬二
発行所:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会点字出版所
(〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4)
電話:03-3200-1310 E-mail:tj@thka.jp URL:http://www.thka.jp/
振替口座:00190-5-173877

目次

巻頭コラム:死刑廃止制度のジレンマ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
最優秀賞は、東海医療専門学校臨床センター長
  ―― あマ指コンテスト2018
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5
盲学校教育を支えている理療科教員 理教連定期総会報告 ・・・・・・・・・・・・・・
9
視覚障害者の「働きたい」をかなえる 全国ロービジョンセミナーより ・・・・・・・・
13
(同行取材)癒やしのファンク・ミュージックとピエロ 
  ―― 加納洋氏と行田市へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
スモールトーク パワハラとスメハラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22
(特別寄稿)川島昭恵語りCD発売記念会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
25
「弱さ」を「強さ」に変える ―― 堀利和・広瀬浩二郎対談 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
29
カフェパウゼ 生まれ故郷でも、暑くて寝られない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
33
しげじい、チョーさんの台湾旅行 (6)台北マラソンで力走 ・・・・・・・・・・・・・・・・
35
盲教育140年 (6)盲学校における鍼治教育は医師の危機 ・・・・・・・・・・・・・・・
40
自分が変わること (111)丘陵の町の尚子さん ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
45
リレーエッセイ:忘れてはいけない日 ―― 東日本大震災  ・・・・・・・・・・・・・・・
50
アフターセブン(42)見ちゃダメ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
55
大相撲、記録の裏側・ホントはどうなの!?
  (193)全敗が近づいてもぶれなかった嘉風の相撲道 ・・・・・・・・・・・・・・・・
59
時代の風:納税通知書に音声コードを添付、ES細胞から大脳組織、
  抗生物質が効かない仕組み解明、自己免疫性膵炎の原因を特定 ・・・・
63
伝言板:NHKハート展、点字技能検定試験、点字楽譜講演会、
  ツクバ・グローバル・サイエンス・ウィーク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
67
編集ログ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
71

巻頭コラム
死刑廃止制度のジレンマ

 オウム真理教の麻原彰晃ら7死刑囚の刑が7月6日執行された。7人を1日で執行したのは、戦後では1948年12月23日にA級戦犯7人が処刑されて以来のことだというので、改めて死刑制度に対する賛否が議論された。
 私は死刑廃止論者だが、現在、死刑を廃止している諸国のシステムが素晴らしいとか、手本になるなどとは思っていない。死刑は廃止すべきだが、当分の間は死刑を凍結し、事実上廃止したうえで、「終身刑」などの法整備をして廃止するのが望ましいと考えている。
 ネパールは1997年に死刑を廃止したが、そのために警官による事実上の処刑に等しい射殺が行われている。フィリピンも2006年に死刑を廃止しているが、ドゥテルテ大統領は強権的な治安改善を行い、就任1カ月で400人を超える違法薬物の容疑者を現場で警察が射殺したことは記憶に新しい。
 ドイツ南部バイエルン州ビュルツブルクを走る列車内で2016年7月18日夜、男がナイフとおので乗客に切りつけ、3人が重傷、1人が軽傷を負った。男は停車駅で列車を降りて逃走したが、追跡した警察官により射殺された。
 一方、日本でも似たような事件があった。2018年6月10日夜に走行中の東海道新幹線車内で、ナタで襲われ女性2人が重傷を負い、男性1人が死亡した。しかしこの事件では、車掌が説得して、警察官が制圧して逮捕した。現場からナタの他に刃渡り10cmのナイフも見つかった。
 このことをもってドイツは死刑廃止国だから犯人を射殺し、日本は死刑存置国だから射殺しなかったというのは早計だ。欧米では凶器を持って切りつけた経緯があれば、それだけで現場で射殺することを厭わないのだ。
 一方、日本では生きて裁判にかける努力を可能な限り追求している。
 EUの人権意識はきれい事であり、偽善であることを理解したうえで、死刑制度は考えないと私達は結論を間違えるかも知れない。(福山博)

最優秀賞は、東海医療専門学校臨床センター長
―― あマ指コンテスト2018 ――

 7月28日(土)、毎日新聞がある東京・竹橋のパレスサイドビル9F「マイナビルーム」において、第1回あん摩マッサージ指圧コンテストが、一枝のゆめ財団主催で開催され、最優秀賞に静岡県の太田一郎氏(42歳)が選ばれた。
 本コンテストは、あん摩マッサージ指圧(あマ指)師の国家資格を持つ出場選手が、施術の技術と接客態度までを、あマ指師国家資格を持つプロ2人(持ち点50点)と、一般市民4人(同)が採点した合計得点で順位を争うものだ。出場選手や関係者に一般ギャラリーを含めて200人余りが荒天をものともせずに集まった。
 出場選手は北は青森県から南は熊本県とマレーシア(筑波技術大学大学院生)までの28人。ノミネートされたのは32人であったが、当日は台風直撃の報道があったため3人がキャンセルし、1人が体調不良のため欠席した。もっとも当日の東京は台風の直撃は避けられたため、午後には晴れ間も見られた。
 毎日新聞の関連会社(株)マイナビは特例子会社を持っており、その(株)マイナビパートナーズは全員が国家資格取得者であるマイナビ治療院を運営している。現在の日本視覚障害ヘルスキーパー協会の星野直志会長は、マイナビ治療院でヘルスキーパーとして働いており、本コンテストの実行委員であったことからとんとん拍子で会場が決まったようだ。
 最優秀賞の太田氏は、静岡県熱海市にある東海医療学園専門学校の付属総合臨床センター長である。
 「校長の強い勧めがあり、学校代表のような立場で出場しました。審査員が業界の大先輩で緊張もしましたが、自分の持てる力を全て出し切ることができました」。無資格のマッサージサービスが、大手を振って多く見られる現状に言及して、「有資格者によるあん摩マッサージ指圧が見直されるよう、今後もレベルアップに取り組みたい」と決意を新たにした。
 優秀賞は東京都の木下誠氏(65歳、指圧の神陽館院長)と熊本県の橋口賢一氏(66歳)で、橋口氏は以前に熊本県立盲学校に務めており、「教え子がコンテストに出場すると聞き、それに触発されて出場しました。臨床には自信があったのですが、最優秀賞に届かず残念です」と悔しさを滲ませた。
 同コンテストの発案者である一枝のゆめ財団藤井亮輔常務理事(筑波技術大学教授)は、「参加者中16人が視覚障害者でしたが、残念ながら最優秀、優秀に視障者は入れませんでした。10位までだと半分いましたが接客面で差がついたようです。来年は捲土重来を期して欲しいものですが、晴盲問わず、この大会が業者の切磋琢磨の文化と業活性化の気運を高めるきっかけになれば本望です」と期待を寄せた。
 同コンテストは「一枝のゆめフェスタ」の一貫として行われ、会場では他に同財団の理事長で、明治国際医療大学矢野忠学長による「東洋医学とセルフケア」と題した講演や土門治療院土門奏院長による講演。東洋医学健康相談会、ワンコインマッサージ、ベッドサイド英会話教室、フリーキャスターの辛坊治郎氏と米国サンディエゴに住む鍼灸師で全盲の岩本光弘氏の対談トークショーが行われた。
 辛坊・岩本両氏はヨットで太平洋横断中の2013年6月25日にマッコウクジラに追突され、海上自衛隊の救難飛行艇に救助された。この時は福島県の小名浜港から出港したのだが、来年の2月に岩本氏は米国人男性とヨットに乗り、今度はサンディエゴから小名浜港を目指す計画を立てている。
 米国では日本のあはきの資格は通用しないので、取り直す必要があるが、鍼灸に関しては漢方と一緒の試験なので、米国には全盲の鍼灸師はいない。マッサージの資格を取るためにリハビリテーションセンターに行っても、まったくサポートがなくて苦労した。その点日本は先人達のお蔭で至れり尽くせりである。目が見えなくなったから仕方なくではなくて、自信を持って積極的にあはきに取り組んで欲しいと岩本氏は語った。(福山博)

編集ログ

 今年の立秋は8月7日でしたが、本当に残暑という感じがしました。例年であれば体感的には立秋前後はあまり変わりません。しかし、今年は梅雨明けが早く、尋常ではない酷暑となったからでしょう。35℃を越える酷暑の後では、30℃でもちょっと涼しく感じたのでした。
 ある酷暑日に私はたった半日ですが、汗かぶれになってしまいました。帰宅途中の電車内で、なにやら急に体中が猛然とかゆくなり、帰宅して調べたら体中が真っ赤にただれていたのです。水風呂にゆっくり入って、クーラーを寒いほど効かせた寝室で寝ていたら、かゆみも赤いかぶれもなくなりましたが、今夏の暑さを超える体験は、二昔前のネパールだけでした。
 あまりの暑さに、トヨタ・ランドクルーザーのエアコンがオーバーヒートし、そこが最も涼しいというので後部座席の中央に座っていた私は、「マドヲ アケテクレ」と数回英語で頼んだが、明らかに無視されました。
 そこで身を乗り出して、窓開閉ハンドルをクルクル回すと、熱風がドアの窓から一気に私の顔を襲ったので、あわてて閉めたら同乗していたネパール人4人が一斉に爆笑しました。このように外気温が高いところでは、窓は閉めておくのが常識だったのです。
 ほうほうの体でインド国境近くの「町一番のホテル」を称する宿に帰ってエアコンのスイッチを入れ、シャワーを浴びようとすると熱湯が噴き出ました。あやうく火傷をするところだったが、「この宿はお湯が出ないはず」と思い直して熱湯を出しっ放しにしました。すると、5分もしたら耐えられる温度になり、その後、ぬるま湯にまで下がりました。配管が即席の太陽熱温水器になっていたのです。
 その後は何と手の甲があせもになりました。冷たい水で洗ってもちっとも改善しません。逃げるように国内線の小型飛行機に乗ってカトマンズに向かう際、高度が2,000mを越えると急に涼しくなり、手の甲のあせもがスーッと消えました。(福山博)

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