「なぜ、国民ファーストの会ではないのだ。日本ファーストでは、トランプ大統領の『アメリカファースト』を連想して、自国優先や排外主義の政党と受け取られてしまうではないか」と、思わず余計なお世話だとは思いながら首を傾げてしまった。が、「国民ファーストの会」という政治団体がすでにあり、その名称で登録することができなかったというのが真相のようである。
小池百合子東京都知事の側近である若狭勝衆院議員(無所属)が8月7日、国会内で記者会見し、政治団体「日本ファーストの会」を7月13日付で設立したと発表した。そして国政選挙に立候補する人材を育成する政治塾「輝照塾」を開校し、9月16日の初回講師に小池氏を招くことも明らかにした。かくして小池氏が実質的に率いる地域政党「都民ファーストの会」が、国政進出する布石になるとみられている。
都議選で自民党が惨敗して、とりあえず解散総選挙は遠のいたとみられていたが、日本ファーストの会の旗揚げで、俄然、きな臭くなってきた。
若狭勝衆院議員に加えて、都議選で都民ファーストの会の候補者を支援した無所属の長島昭久衆院議員と渡辺喜美・松沢成文両参議院議員、それに8月8日に民進党を離党した細野豪志衆院議員を加えると国政政党の設立に必要な国会議員5人がそろう。いずれも保守派政治家である。政治団体から政党に衣替えすれば、「国民ファーストの会」という名称も使えるので、あるいはその時点で改称という裏技だって考えられないことはない。
ただ、政党を立ち上げて、総選挙の準備をするためには、どんなに突貫作業を行っても半年はどうしてもかかる。その間、自民党は選挙の受け皿作りが着々と進むなか、憲法改正にこだわってただ手をこまねいて傍観するのであろうか?そう考えると、情勢如何によっては今年の12月、あるいは来年の2月にも総選挙が実施される公算が大きくなるかも知れない。
点字出版業界は「点字選挙公報」製作に忙殺されるので気が気ではないのである。(福山)
よくムッソリーニやヒトラーを引き合いに出して、日米の政権を揶揄したり、批判する声がある。だが、安倍、トランプ両氏に対する批判はそれとして、それをファシズムと結びつける考え方に政治的リアリティがどれだけあるだろうか。
日米のメディアは、事あるごとに安倍首相やトランプ大統領をこき下ろしているが、誰ひとりとして逮捕拘禁された事実はない。そう言う意味での言論の自由は、あたりまえだが両国では誰にも保証されている。
一方、中国や北朝鮮はいかがだろうか。中華人民共和国は中国共産党による一党独裁国家であり、中国人民解放軍は党の軍隊である。そのため共産党にとって好ましくない人物の人権は、徹底的に蹂躙される。「北朝鮮の人権状況」については2006年12月20日に国連総会本会議において決議が採択された。それは北朝鮮政権による組織的な人権侵害が広く行われ、拷問、公開処刑、堕胎強要、外国人拉致などを非難し非常に深刻な懸念を表明している。
このため、日本においてもこれら両国については後難を恐れて口をつぐんだり、彼の国の提灯を持つ評論家や進歩的知識人が少なくない。日本における人権については、犯罪者の人権にまで気を配る「人権派弁護士」が、中国で不当逮捕されている人権派弁護士問題について無関心なのはこういう理由である。
問題はその国が独裁国か民主主義国か、メディアがおおっぴらに政権中枢を常時批判できる言論の自由があるかどうかで、おおむね言論の自由のない国は独裁国でナチスドイツや、スターリンのソ連と比肩してほぼ間違いないのである。
ノーベル平和賞受賞者の劉暁波(リュウ・ギョウハ)博士が本年7月13日、多臓器不全のため、遼寧省瀋陽の病院で逝去された。享年61。博士は中国共産党の独裁を批判し、自由や民主の尊重を求める2008年12月発表の宣言文「08憲章」の起案を主導し、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の刑に服役していた。
彼は肝臓がんの全身転移が確認されるまで、治療を受けさせてもらえず結果的に習近平に殺された。毛沢東は、年下の周恩来が自分より長く生きると旧悪が暴露されると恐れ、周恩来の膀胱癌が全身に転移するまで、治療を受けさせなかったが、独裁者は代わっても手口は同様のようである。
言論の自由を訴えて、1935年にノーベル平和賞を受賞したドイツのジャーナリストカール・フォン・オシエツキーも、1938年にナチスの強制収容所で結核により48歳で没したが、ヒトラーも毛や習と同じ手口を使った。そして、劉もオシエツキーも身柄を拘束されて、ノーベル賞の授賞式に出られなかった。
また、ノーベル平和賞に対抗してナチスはドイツ芸術科学国家賞を、中国は孔子平和賞を創設したこともそっくりだ。ただ、ナチスのそれはドイツ人を対象としたので、辞退とか授賞式の欠席などはなかったが、中国のそれは気の毒なほど赤っ恥の連続である。
第1回(2010年)の受賞者は、台湾の連戦元中華民国副総統だが受賞を拒絶。第2回(2011年)はロシア連邦ウラジミール・プーチン首相だが、本人は授賞式を欠席。第3回(2012年)は国連事務総長在任中の2001年にノーベル平和賞を受賞したコフィ・アナン元国連事務総長と中国のハイブリッド米の研究者である袁隆平(エン・リュウヘイ)氏で、授賞式には袁氏だけが出席した。第4回(2013年)は、中国仏教協会の釈一誠(シャク・イッセイ)会長。第5回(2014年)はキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長だが、本人は授賞式を欠席。第6回(2015年)は、村山富市元首相とジンバブエのロバート・ムガベ大統領の2人に絞られたが、結局、二人とも辞退。第7回(2016年)は、中国PKO部隊の殉職者3名であった。
かくして、中国人以外の孔子平和賞受賞者は誰も、授賞式に出席していないというちょっと世にも珍しい独創的な国際賞を中国は作ったのであった。(福山)
北朝鮮の政治体制と、同国に住む市井の人々、特に障害者の人権は明確に区別する必要があります。独裁国家の人権が改善することは、独裁政治体制が緩むということでもあるのです。ただ、同国への金銭や食料の支援は諸刃の剣で、本当に必要としている人々の口に入るのか、そのための信頼できるモニターが行われているのか、慎重に検討する必要があります。独裁国家独特の回収システムにより、本来の趣旨とはまったく違った目的に使われる可能性が大きいからです。飢餓に同情してカンパしたら、間接的に核開発に使われたでは悲劇です。
これは朝鮮学校に対する助成も同様です。在日本朝鮮人総聯合会(総聯)中央常任委員会の機関誌『朝鮮新報』本年(2017)4月 15日付によると、「金正恩委員長は金日成主席生誕105年に際して、在日同胞学生の民族教育のために2億1,800万円の教育援助費と奨学金を総聯に送った。金日成主席と金正日総書記、金正恩委員長が送った教育援助費と奨学金はこれまで163回にわたり、総額480億599万390円に及ぶ」とされています。この意味するところは、朝鮮学校に対する地方自治体等の資金助成は、とりもなおさず北朝鮮への財政支援と同じということにならないでしょうか。
しかし、白杖はどうでしょうか? おそらく本来の目的以外には使えそうもありません。そこで、高橋和代さんの「使わなくなった白杖が余っていたら寄附してください。北朝鮮に贈ります」という呼びかけに、小誌も及ばずながら協力しようと思った次第です。高橋さんは盲ろう者なので、連絡はEメールかFAXでお願いします。高橋和代さんへの連絡が困難な方は、小誌編集部が仲介しますので、電話で編集長の福山(03-3200-1264)宛ご連絡ください。(福山)
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