昨年(2016)12月15日、衆議院本会議にて統合型リゾート施設の整備推進法案(IR推進法)の修正案が自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決・成立し、同月26日に施行された。
同法に対しては、「朝日」・「毎日」はもちろん、「讀賣」も安倍内閣の機関紙と揶揄される「産経」さえもこぞってギャンブル依存症者の増加につながると反対した。
わたしは、パチンコやカジノはおろか競馬・競輪・競艇を問わず、ギャンブル一切に興味のない者だが、ギャンブル依存症と同法を結びつけるのはいささか強引だと思う。
厚生労働省の研究班が2014年に発表した推計によると、国内のアルコール依存症経験者は109万人だが、ギャンブル依存症は536万人で、成人人口の5%近くに及ぶ。これは米国の1.58%、香港の1.8%、韓国の0.8%に比べると突出しているが、それはその多くがギャンブルではなく遊戯だとされているパチンコによるものだ。我が国のギャンブル依存症をへらすためには、韓国のように禁止するか、次善の策としてパチンコの換金を禁止して本来の遊技業に戻すことが必要だ。
IR推進法を新聞はこぞって人聞きの悪い「カジノ法」と呼ぶので誤解する向きも多いが、同法はカジノをただちに解禁するものではない。統合型リゾート施設を運営するにあたり、国はどのような監視や管理を行うのか、誰が運営主体になれるのか、許認可を受ける事業者や地域はどこなのか、また、マネーロンダリング対策、ギャンブル依存症対策をどうするのか、必要な法整備を行うように求めるもので、本格的な法整備はこれからだ。
そこで、私は国内のカジノに無条件で入場できるのは日本国以外の旅券所持者で、例外的に入場できる日本人は年収3000万円以上で、金融資産が1億円以上の者とするなら、カジノ解禁に賛成してもいいと思っている。実際に、そのような富裕層がわが国には130万人前後いるらしいのだが、いかがであろうか。(福山)
世の中にはどうも馬が合いそうにない、できるだけ敬遠したいタイプがいる。さしずめ私の場合は、市民プールのロッカールームで、毎日ゲップを繰り返す初老の男性がそれである。
おそらく彼は数年前に、長年勤めてきた会社なり役所なりを辞め、奥さんから毎日家でブラブラしていては体に毒だと言われて、水泳を日課にしているのではないかと思われる。
少なくとも1年以上、ほぼ毎日平泳ぎで100mは泳いでいるのだがちっとも上達しない。
25mを泳いではひどく呼吸を荒げて数分休憩して、また25m泳ぐのだが、それが「あれでよく溺死しないなあ」と感心する泳ぎっぷりなのだ。そんな溺水泳法でも毎朝継続して泳ぐのは、これまた驚異的な精神力というべきである。そして、そのたびに水からあがればロッカールームで、激しいゲップを繰り返すのだ。
もしかしたら彼は淡水では苦闘しているが、海ではそれなりに泳げるのかも知れない。水泳以外での彼の自信に満ちた所作を見ると、それはきっと間違いないことのように思える。
海水の浮力は真水の1.03倍で、大したことないようだがこの差は実は大きい。海で顔を海面から上げた状態で苦も無く平泳ぎができる人でも、淡水で顔を常時水面から上げて平泳ぎするのは意外と難しい。しかし、彼は淡水でも海水同様の泳ぎ方にこだわっているようだ。
顔を水面から常に上げた状態で平泳ぎをしたいのだが、淡水プールでも海での泳ぎ方に固執するのでズブズブ沈んでしまう。そこで満身の力で水面上に顔を出し、息を吐いて、大あわてで息を吸い込むので空気嚥下症(呑気症)になるのだ。大変な瞬発力で、空気を勢いよく吸い込むので、肺だけでなく、胃にまで空気が入り込む。ゲップとは、胃の中にたまった空気やガスが口から排出される現象をいうので、こうしてゲップが出るのだ。そして、一生懸命呼吸をする余り、水面から頭を大きく出すので、その反動でまた体が大きく水中に沈む。かくして、彼は息継ぎをするたびに大変なエネルギーを使い苦悶の表情を浮かべる。しかも、顔を常に水面から上げた状態で泳ぐつもりなので、彼はゴーグルを付けていない。しかし、沈むので塩素消毒された水が目に染みるため、いつもどちらかの片眼を閉じている。
楽に泳ぐためには、彼はまずゴーグルを買い、水面に顔をつけて泳ぐ練習からはじめるべきだろう。水面に顔をつけて泳ぐと体全体が水面と平行になり、断然浮きやすく、泳ぎやすくなる。そして空気は水中で吐いて、顏を水面から出した瞬間に吸い込めば楽に息継ぎができ、大きくバランスを崩すこともない。しかし、それを言っても海での成功体験から、おそらく彼は聞く耳をもたないだろう。
結構、上手な同年輩のスイマーと彼はよくコースエンドで談笑しており、アドバイスを求められる環境にある。また、知り合いに指導を求めるのが沽券に関わるのならスイミング教室だってある。しかし、そのためには自分の泳ぎ方に重大な欠陥があり、空気嚥下症の原因になっていることを自覚する必要があるのだが、これがわれわれ初老の男性にはなかなか難題なのだ。(福山)
「巻頭コラム」を補足すると、韓国にはかつてコンビニよりも多い「メダルチギ」と呼ばれるパチンコの一種の店が1万5,000軒あり、3兆円市場になっていました。ところがこれは、2008年6月法律により禁止されました。メダルチギが原因で多額の借金を苦に自殺した人が相次ぎ、さらに盧武鉉大統領の親族が許認可にかかわったとされる疑獄事件が起こり社会問題化した結果です。日本には1万1,600軒のパチンコ店があり、20兆円市場と言われています。国情の違いで我が国では一挙に禁止なんてできっこないので、「カジノ法」を契機にパチンコのギャンブル性をなんとか無くして欲しいものです。
12月21日からインドからネパールに入る際の玄関口、人口11万3,000人のビルガンジ市にある「スラジ」というホテルに5連泊しました。ネパールには10軒以上のホテルにカジノがあるが、そのほとんどは5つ星の高級ホテルです。しかし、3つ星ホテルにカジノがあるのは、おそらくこのホテルスラジが唯一でしょう。なにしろ税・サービス料込みで1泊約3,000円なので、5つ星ホテルの5分の1の手軽さです。もっともスイートルームもあり、そこは革張りの応接セットがあり、宿泊費も6,000円ほどすると聞きました。
同国のカジノには原則ネパール人は入れません。また、欧米人や日本人はヒマラヤが目当てなのでカジノに行く人は皆無。かくしてネパールのカジノは、インドルピーと米ドルしか通用せず、多くのインド人と少数の中国人の社交場となっています。
ところでホテルスラジはここでも例外で、怖いお兄さんがドアマンをしており、おそらく100%がインドの金持ちで占められており、他国人は中をのぞき込むことさえできません。日本では何かと言えば「不公平」、「不平等」を連呼する向きもあるが、カジノなどは、「外国人専用」、「金持ち専用」であって一向に構わないと愚考するがいかがでしょうか。(福山)
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