11月7日厚労省東京労働局は、広告代理店最大手・電通の本社などを労基法違反の疑いで家宅捜索した。過労自殺するまで従業員を酷使する電通の悪質な労務管理は許されるものではない。しかし、この問題は電通を叩けば、日本の長時間労働が解消されるという性格のものでもない。日本社会が抱える構造的な問題にメスを入れない限り、本質的な解決はあり得ないのだ。そのためには、「先ず隗より始めよ」で、政府、とくに厚労省が率先垂範する必要がある。
従業員を酷使する悪質な「ブラック企業」を調査するのは労働基準監督官だが、悲しいかなその絶対数が足りないため、監督官自体がブラックな職場環境にあるという笑えない現実がある。また、深夜過ぎても煌々と点灯していることから霞が関は不夜城と揶揄されるが、その中で、最も点灯率が高いのはなにあろう厚労省である(国家公務員一般労働組合調べ)。もちろん、公務員は労基法の対象外なので法律違反ではないが、労基法のお膝元がそんなお寒い現実でいいのだろうか?
政府は本年3月から国家公務員の長時間労働の見直しを議論する有識者会議「霞が関の働き方改革を加速するための懇談会」を4回にわたって開催した。そして、同懇談会は、本年6月、省庁職員の残業時間軽減策を河野太郎国家公務員制度担当相に提言した。
それによると国家公務員の長時間労働により、配偶者が離職・非正規化して社会の労働力が損失している。民間企業も霞が関からのオーダーで深夜・休日の対応を迫られ、長時間化している。
今後、親の介護等により時間制約がある職員が急増し、従来の霞が関の働き方は限界を迎えている。2017年までに、時間制約のある人材の集合体で、成果を出せる仕事のやり方に転換しておかなければ、霞が関は立ち行かなくなると指摘しているが、政府は今後どう対応するのだろうか?(福山)
【11月7日18〜19時、当協会点字出版所会議室において、郡司七重氏、加藤俊和氏、大橋由昌氏のお三方から駅ホームの安全について聞いた。司会・構成は、本誌編集部戸塚辰永】
司会:本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。小誌デスクの戸恍C永が司会を務めさせていただきます。それではまず自己紹介を郡司さんからお願いします。
郡司:郡司七重と申します。中途失明です。27歳まで見えていたので、だいたいの物は想像できます。全盲です。盲導犬と暮らして36年になります。現在は、全日本盲導犬使用者の会の会長をしています。
加藤:視覚障害者の歩行の自由と安全を考えるブルックの会の代表をしています加藤俊和です。この会は、1995年に佐木理人さんが転落され、大ケガを負ったことを契機に生まれました。
大橋:大橋由昌です。今年からNPO法人横浜市視覚障害者福祉協会の副会長を務めています。今日は10月16日に東京都盲人福祉協会で行われた緊急フォーラム「視覚障害者と駅ホーム」の主催者の一人として参加させていただきました。
司会:いま大橋さんから話がありました緊急フォーラムが行われたその日に、近鉄で視覚障害者が転落死しました。それに先んじて、8月15日には東京メトロ銀座線青山一丁目駅で盲導犬を連れた視覚障害男性が転落し、進入してきた電車にひかれて亡くなりましたが、まずこの事故の原因から話し合いましょう。
加藤:当初、盲導犬を連れていたのに転落して亡くなったということで大々的に報道され今なお続いています。原因について、普通は左手でハーネスを持って盲導犬と歩行するが、亡くなったSさんは右手でハーネスを持って盲導犬を連れていたことが注目されました。また、銀座線には可動柵がなく、点字ブロック上に大きな柱が林立しており視覚障害者にとって歩きづらい駅ホームであることが取り上げられました。本人の責任や盲導犬協会の責任を追及するのでは無く、安全をどう確保していくかについて話し合うことがこれからのためだと考えます。9月30日検討会での東京地下鉄株式会社の説明では、開いた会見によると、Sさんは左手を線路側に出して電車に乗り込もうとして転落したということが残された映像からわかっています。Sさんは常にこうして電車に乗っており、全盲と報道されましたが多少視力があり、それも転落の一因かと考えています。
司会:盲導犬ユーザーとして郡司さんはどう思われましたか?
郡司:ちょうどニューヨークから帰って来た日で、ニュースで知り大変なことだと感じました。盲導犬と一緒でどうしてホームから転落したのだろうかと考えました。私たち以上に社会に衝撃を与えた事故だと思います。なぜかと言えば、盲導犬さえいれば、目の見えない人たちの安全・安心な歩行は確保されるのだということが余りに社会に浸透してしまって、盲導犬がスーパードッグのように考えられてしまったことも一因だったのではないかと私は思いました。ハーネスを右手に持ってはいけないという人もいますが、それはSさんの判断だったんですね。ただホームに転落する際、ハーネスとリードを離したことで盲導犬が転落せずに残ったということは事実だとわたしは信じたいです。
大橋:毎年視覚障害者の転落死亡事故が起きているのに、加藤さんが言われたように盲導犬を連れた人が転落死したということでマスコミに衝撃的にとらえられたと思います。このような事故が2度と起きないよう、注目されているうちに、駅ホームでの視覚障害者の安全な歩行をどうしたらよいか、社会啓発の観点からマスコミに取り上げて貰いたいと緊急フォーラムを企画しました。盲導犬使用者の訓練が云々と言うよりも交通バリアフリーという観点で駅ホームの安全性の面で議論ができました。郡司さんが言われたように盲導犬はスーパードッグではありません。目の代わりになるだけで、判断は使用者がするものだという認識を社会に発信していくことが、亡くなられた方への供養になると思います。
司会:駅ホームの安全を考える場合可動柵というハードと声かけというソフトの面があると思います。ハードの可動柵について加藤さん、概要を話していただけませんか?
加藤:平成28年3月の時点で665駅に可動柵が付いていると国交省の方が話していました。全国には約9,500もの駅がありますが、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに800駅というのが政府の目標なので、一割にも満たないのです。既存の可動柵は非常に高価で一駅あたり億単位の金がかかると言われています。お金の問題で簡易型の可動柵が出て来ていますが、決め手となるものはまだありません。だったら、内方線付点状ブロックくらいは全駅に付けて下さいと言いたいですよね。近鉄の全駅には「内方線」すら無かったのです。転落事故が起きてから「内方線」を付けると近鉄はすぐに発表しました。「内方線」は安いものです。なぜ事故が起きてから付けるのか、鉄道会社の安全への無責任さに憤っています。
司会:郡司さんは駅ホームを歩いていてどう感じますか?
郡司:私が高田馬場に出てくるときは新宿で乗り換えるんですね。総武線は可動柵がありませんが、山手線はあるのでとても楽です。片方にあるだけでもとても助かります。加藤さんが言われたように可動柵はすごく高いものでしょう。だったら、ホーム上の環境をもっとよくして貰いたいものです。点字ブロックが至る所に張り巡らされているので、もっとわかりやすいようにシンプルに敷いて貰いたいのです。
大橋:視覚障害者団体はすべての駅ホームに可動柵を付けるように要求しますが、9,500駅もあるので、僕は乗降客の少ないローカル駅も含めて全駅に可動柵を付けろという間に何人もが亡くなってしまうので現実的では無いと考えます。取りあえずホーム上に固定柵を付けるのが転落防止になります。柵だとドアがあるところが開いているので、落ちてしまうという人もいますが、100%安全を求めるよりも、欄干の無い橋に例えられるような無防備なホームに、たとえ手すりでもいいから作っておく方が大きな前進だと思います。とくに乗降客の多い駅には、もちろん優先的にホームドアを付けなければいけません。それから視覚障害者団体が新型の可動柵を検証に行っていますが、いろいろな意見を出すことはとてもいいことですが、余りにも完璧なことを要求するとどんどんハードルが高くなります。僕が提案しているのは、鉄道総研だとか、産総研といった専門機関で大がかりな検証実験をして貰いたいというものです。完璧なものを言い出したらきりが無いので、安価なもので最低限視覚障害者の命を守るものであっていいと思います。国と視覚障害者が検証実験を重ねて妥当なところでけりを付けない限り、この議論はずっと続きます。
加藤:まさに大橋さんのいわれる通りです。平成26年度の駅ホームからの転落件数は3,673件で、そのうち視覚障害者は80件でした。視覚障害者だけでなく鉄道会社は誰も落とさないというのが安全対策の基本です。工事費を含め、コスト的に考えると、既存の可動柵を100とすると簡易型が3分の1か半分くらいで、固定柵は10分の1以下です。「内方線」に至っては微々たる金額です。固定柵を付けたら、お年寄りもつかまることができます。そういう対策をすると高齢者も視覚障害者も共に助かるのです。
司会:郡司さんはホームドアやホームの固定柵についてどう考えますか?
郡司:私はホームドアを付けて貰いたいと思いますが、当面固定柵でもいいので、とにかく安心・安全な環境にして貰いたいですね。駅員を配置して貰うのも必要です。私は、誘導ブロックを伝って歩くんですよ。ですが、その上に物や人が立っていて、どいてくれないから結局、右へ右へと行って反対側に行ってしまい、あわや落っこちそうになったことがあったんです。その時に、「危ない!」と女の人が私のコートを引っ張ってくれたのでホームから落ちずに済みました。そう言う機転の利く人がいるかどうかわからないから、ラッシュのときに一時間だけ警備員を置くのではなく、もう少し警備員を配置して欲しいですね。お盆とはいえ午後5時45分という帰宅時間で、青山一丁目という繁華街の駅だからかなりの人がいたと思うのに、何でSさんに声をかけてくれる人がいなかったんでしょう。差し伸べてくれる手があったら彼はあんな悲惨な目に遭わなかっただろうと思っています。やはり、人の力って大切ですよ。たしかに可動柵も必要、固定柵も必要ですが、お金がかかるでしょう。人と人との密な関係を作り上げていくことはお金がかからないやり方です。だから、全日本盲導犬使用者の会では、盲導犬を連れていても道に迷っているようならば、声をかけて下さいと呼びかけていく運動をやっていきたいと思っています。
司会:大橋さん、この間の緊急フォーラムでも「止まれ!」という呼びかけをするように広げていきましょうと話していましたね。
大橋:心のバリアフリーとかよく言うんだけど、緊急フォーラムの狙いは社会啓発です。マスコミに取り上げてもらい、安全性に関心を持ってもらいたいということがひとつ。背景には、気軽に声をかけて欲しいということです。けれども、近鉄の事故では新聞によっては、目を離した隙に落ちてしまったという表現があり、障害者を子ども扱いしているのには腹立たしく感じました。心のバリアフリーだとかきれい事を言っているよりも、身近な存在として理解してもらうようにこれから啓発活動をしていかなくちゃいけないと思い、緊急フォーラムを開きました。
郡司:たしかに大橋さんの言うことも分かります。ですが、視覚障害者は「助けてください」とか権利を主張する以上必ず義務があると思います。あの新聞記事を私も読み、「一人で歩くときには白い杖を持っていたけれど」という表現がありませんでしたか?
大橋:ありました。
郡司:ということは、裏を返すと一人で歩かないときには杖を持っていなかったんでしょう。ホームに出るのはいいんですよ。それだったらなんで杖を持って出ないかって思うんですよ。白い杖を持っていることが視覚障害者として自覚することだし、周りからも視覚障害者だと分かってもらえるんです。例えば、盲導犬もそうだけれども、視覚障害者であるということを認知してもらうことは大切なことじゃないですか。なんであの人は杖を持って降りなかったのかと、それが視覚障害者の義務だと私は思います。
加藤:郡司さんのおっしゃることも分かりますが、今は中途視覚障害の方がたくさんいます。こんなことを言っては申し訳ありませんが、視覚障害者になりきれない人がいっぱいいます。これは阪神・淡路大震災でも、東日本大震災でも現場で嫌というほど痛感させられました。声を出せない人やようやく外に出られる人やいろいろな方がいます。杖を持っていない理由もあり、近鉄では降りたところが狭くて落ちてしまい、周りの方も注意できなかったことに問題があると思います。視覚障害者には杖を持ってほしいと思いますが、いろいろな段階の方がおられることも理解しなければならないでしょう。それからもうひとつ、青山一丁目駅で転落したSさんの場合、10m離れたところに駅員がいたんです。お客さんは少なくて一人の方が「危ない!」と声をかけたという記事がありました。駅員が気付くのが遅かったけれども、声をかけるかけ方が「下がってください」という言い方ではなく、「危ない!」とか、「止まれ!」が人間味のある言い方なのですよ。9月30日の会見で、「白杖を持っている人や盲導犬を連れている人に声をかけていいんですか」っていう質問がたくさんあったんです。何を考えてるんだと思いました。とにかく危ないときは、「止まれ!」と言ってひるませたら助かるかもしれない。そういう人間味のある声かけを、プロの駅員ができないとはどういうことかと私は憤りました。駅員はプロだから、「止まれ!」と言って助ける義務があるんです。そういった訓練をする必要があるんです。なんでそんな質問が多く出てくるのか不思議に感じましたね。
大橋:これからは駅員教育も進むでしょう。僕の趣味はブラインドスキーで危険を伴うスポーツだから、最悪の場合「転べ!」って言われるんです。駅ならば、転べじゃなくて「止まれ!」「ストップ」なんです。最後は止まれなんだから、駅員は止まれの声かけ訓練を少なくともすべきだと思うし、一般の人にももっともっと気楽に声をかけてくれるような風土作り、そういう意味ではパラリンピックはいいチャンスになると期待しています。それから杖の件では、日盲連の声明を見ると近鉄をそのまま批判しているけれど、杖を持っていなかったということも書かないと、近鉄が一方的に責められてかわいそうだなと感じました。だから、われわれのほうも居住まいを正すところは正さないといけないのではと思いました。
司会:通勤している視覚障害者は、単独歩行を毎日しているわけですから、いろいろと気をつけなければならないところもあるのではないでしょうか?少し見える人は残存視力を過信して歩いていることはありませんか?
加藤:それは千差万別でひとからげに言える問題ではないのですが、Sさんは比較的視力があったようで、ランドマークとなる目標を目で見つけて、障害物感知に盲導犬を使っておられた感じがします。青山一丁目駅の構造は右側に柱があり、残念ながら障害物を避けていくには右側に犬のほうが楽だったんです。目で見てわかりにくい人も右側なので、それのほうが楽なんです。柱を見つけるのも盲導犬に任せていました。この人は少なくとも2カ月以上そうやって歩行していました。向かい側に電車が止まっていて、進入してきた電車のライトの光が対向線上に停止していた車両に反射して眩しさで見えない状態になってしまったのではないかと思いますが、これはしっかり検証する必要があります。強い光が目にはいったときにはどうすればいいのか、ハード面もソフト面も考えていかないといろんな事故はなくならないでしょう。
司会:大橋さんどうでしょうか?
大橋:運動団体に絡んでいる者とすると、いま駅ホームの問題に取り組んでいる団体がいくつもありますが、ネットワーク化して情報を共有するとか、あるいは運動団体の中核として日盲連あたりがまとめて、単なる紋切り型の要求をするのではなくて、もう少し深く研究した上で、国に対して提言をしていく。あまり詳しくないような人が国のバリアフリー委員会などに出るのではなくて、現場で勉強もし、活動もしている人を引き上げて国の委員会に送り出して、専門的な議論もできるようにしていかないと、なんか上っ面の要望活動だけで終わってしまうので、今後は安全対策のネットワークを再構築してほしいと願っています。
加藤:盲導犬の事故でなかったら注目されませんでした。原因は今回の事故でもSさんは全盲と書かれていますが、残存視力があると誰も言わないんですよ。周りの人もしっかり見ていたんです。ハーネスを右手に持って電車に乗るときにはしっかり視認して乗っていたんです。これは映像が残っています。左手にハーネスを持つ原則はありますが、残存視力のある人は右手で持って上手く障害物を避けて歩行できている人もいるということを一方的に否定してはいけないと私は思います。全盲かどうかでスパッと切って片付けてしまうのもよくありません。
大橋:僕も残存視力があって、光がはいっただけで、目の前が真っ白くなって瞬間的に全く分からなくなるし、中途半端に見えるほうが誤認しやすいと思いますね。
加藤:そういった人は全盲経験はないので、どうしても元の視力に頼りがちになりますね。だから、Sさんは視力を頼りにしたせいもありますね。
郡司:最近たくさんの人が声をかけてくれます。だから、今がチャンスだと思います。Sさんの死を無駄にしないためにも、有形無形な声かけが広がっていくことを願っています。
大橋:上野さんの転落事故から最近の事故まで国交省を含めてどのような対応をしているか、加藤さんお分かりですか?
加藤:国交省は私たちに今でも映像を見せないし、間接的にしか答えないということは、やはり訴訟を起こされて、原因がどこにあると追求されて、自分達に落ち度があることを怖れています。今回も東京地下鉄株式会社は、周囲の人の証言から駅員がどこに配置されていたのかも分かっています。それで、もう防御にはいっています。なぜ声をかけられなかったのかということです。それから日本人特有のことかもしれませんが、周りの人がもっと気軽に声をかけるようになるまで、まだまだ距離があると感じますね。大阪人は結構声をかけるのですが。
大橋:関東と関西と比べると大阪のおばちゃんのほうが良い意味でお節介ですよ。
加藤:誘導の仕方を知らなくっても、何してるのって。
大橋:とにかく、まず声をかけやすい精神風土が大切ですね。
司会:郡司さんニューヨークではどうでしたか?
郡司:ニューヨークには優しい声と優しい手があるんですよ。私はハーレム地区に泊まったんです。私が泊まったホテルのオーナーが言うんですよ。この街には昔の南部の良い風習が残っています。この街ではみんな仲良く暮らしているのだから、黒人を恐れてはいけないとね。本当に優しいんです。何処で見ているのか、横断歩道にいると、さーっと来て一緒に渡ってくれるんです。いつまでもついて来るのではなく、「オーケイ?」と言うから「サンキュー!」とこちらが言えば立ち去って行くんですよ。これは負担にならずすごくよかった。ニューヨークには点字ブロックがほとんど敷いてなくて、地下鉄にも駅員がいないのですが、周りの人が助けてくれるんです。私は1週間のパスを買って地下鉄であちこち行きましたが、本当に何人もの人たちに助けられました。
加藤:気軽に声をかけていいんだというのが、広がってほしいものですね。
大橋:大阪のおばちゃんのように。
郡司:声をかけられたら、こっちもありがとうと言わないとだめですね。必要がなくてもまずはありがとうと言って、ありがとうがないんじゃ声をかけた方の受け止め方もだいぶ違うでしょう。
大橋:「次の駅で降ります」と断らずにちゃんと受けましょうと言うのが、視覚障害者として大事なマナーじゃないかなあ。さっき郡司さんが言われたように要求だけしてこちらが何もしないのはまずいよね。
司会:今日の座談会が、駅ホームをより安全にするきっかけとなったと思います。皆さん、ありがとうございました。
先月号の「巻頭コラム」で、「死刑を廃止した国では、警察や軍隊が超法規的に犯罪容疑者を殺害するケースが少なくない」と書きました。そこで「さては福山は死刑残置論者か」と思われた方も多かったのではないでしょうか。ところが私は「死刑は国家による殺人である」と考える死刑廃止論者なのです。ただし、「刑務所から出たらまた殺人を犯すので死刑を望む」と法廷で述べる殺人犯もいるくらいなので、死刑を廃止する際は、終身刑のような制度が必須であり、それまでは現行制度下で死刑の執行を停止することが望ましいと考えております。
私がニューヨークを訪れたのは1988年と1996年のことで、当時は治安がとても悪くハーレムには絶対近づくなと言われていました。それが2001年の9月11日以降、劇的に治安が改善されたとは聞いていたのですが、座談会「駅ホームを安全に」で、郡司七恵さんがハーレムに宿を取ったと言われ驚きました。
在ニューヨーク日本国総領事館の「安全対策情報」による実際の数字で見ると1990年と比べると現在は、殺人事件は7分の1に、強姦は半分以下に、強盗は6分の1に減っており、目に見えて治安がよくなっていることがわかります。
ただし、だからといって日本と同じような感覚で出歩いていいということではありません。現在でも東京と比べると殺人は2.6倍。ただし、日本の犯罪統計では殺人未遂も殺人に含まれますが、ニューヨーク市の犯罪統計では殺人に未遂は含まれていないので、実際は10倍くらいになると思われます。そして拳銃で撃たれて死亡する件数が非常に多いことも米国における殺人事件の特徴です。さらに強姦は7倍、強盗は33倍もあります。ハーレムも125番地以外は、現在でも近づかない方が無難なようです。老婆心ながら申し添えます。(福山)
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