7月に参議院選挙がある。おそらく7月10日か、17日のいずれかが投開票日となるであろう。しかし、そのどちらになるかはまだ判然としない。
このため、点字・音声版「選挙公報」等を製作する日本盲人福祉委員会視覚障害者選挙情報支援プロジェクトでも意見が割れ、点字版部会は7月10日、音声部会は7月17日を投開票日と想定して準備を進めている。
新聞等での報道では圧倒的に7月10日執行説が有力なのだが、あえて音声部会が17日執行説にこだわるのには、次のような理由がある。
新たに有権者となる18歳以上の若者は、公示3カ月前の3月23日以降に進学や就職などで住民票を移した場合、参院選が7月10日投開票の日程で行われた場合、投票は転居する前の居住地で行うことになる。例えば、九州で生まれ育ち、北海道の大学に進学し、3月23日に住民票を移したら、参議院選挙は九州で投票しなければならない。
一方、7月17日を投開票日にすれば、「3月30日以降に住民票を移した場合」となるので、そういう転居者はとても少ないだろう。そこで「政府もそのように配慮するのではないか」という「安倍内閣性善説」に基づく読みなのだ。そこで、音声部会は7月17日執行説を取るのだが、点字版部会はこの説にはくみしない。
というのは、7月10日投開票で準備しておれば、仮に1週間遅れの17日投開票となっても対応可能だが、その逆は極めて困難だからだ。
いずれにしろ投票日は閣議で決まるわけだが、安倍内閣が18歳以上の新有権者に配慮して7月17日を投開票日に選ぶか注目したいものである。
私は「選管職員が過労死しかねない衆参同日選挙は、未来永劫、絶対執行してはいけない」と考えているので、それさえなければ「安倍内閣性善説」でいいのではないかと思っている。(福山)
サピエの点字データが少なく飽き足らないという訳ではないが、私はここ数年百十数年前に書かれた点字雑誌を読んでいる。それは、1903(明治36)年に東京盲唖學校(現筑波大附属視覚特別支援学校)の同窓会が発行した『むつぼしのひかり』という定期刊行物だ。会の機関紙であったとは言え、当時視覚障害者向けの総合雑誌が皆無であったから、その内容が盲教育や生活に関する見解のみならず、現代のあはき業に当たる鍼按術に関する奧村三策の論考をはじめ、西洋の盲界事情の紹介から、日露戦争に関連した社会評論、当時差別されていたと思われる盲男性から見た差別的な盲女子論、そして和歌などの文芸作品まで、非常に広範にわたっており、いわば「盲人の総合雑誌」であったといえる。たった1台の点字製版機を使用して、生徒や教師が必死に製版・印刷した熱意は正に驚きであり、それだけ文字情報に渇望していた反動だったのであろう。
この2月25日に、『視覚障害者による視覚障害者のための明治時代の点字総合雑誌「むつぼしのひかり墨字訳」第1集』(桜雲会、中村満紀男監、1,500円税・送料別、A4版150ページ)が、むつぼしプロジェクトから刊行された。私は、プロジェクトの一員として、赤茶けたぼろぼろの点字雑誌を読み上げていた。第1集は創刊号から10号までを活字化したものである。
監修者の中村福山市立大学教授・筑波大学名誉教授は、本書の研究上の価値を「これまでの障害児(者)の歴史的研究が、伝記等を除けば、非障害者が残した文献・資料によって障害者の見解や主張を類推してきたから、当事者自身の記録を参照できなかった。『むつぼしのひかり』は東京盲(唖)学校卒業生である盲人自身により編集・出版された、当事者による彼らのための点字雑誌であるから、他の資料では代替不可能な、視覚障害者自身の見解と主張を忠実に再現できる」と記している。
百年以上も前の原本を保存上から借覧するわけにはいかないが、テキスト版も作成したので、明治期の諸先輩たちの「情報を得たい」「点字資料を読みたい」という若き熱気をぜひ多くの皆さんに感じ取っていただきたい。ラジオすらなかった時代に点字の資料は、闇の中で個々人が人生を歩む方向を見定めるときの羅針盤の代わりであり、まさしく「北斗六星」であったに違いない。今一度教育やリハビリ指導の現場において、視覚障害者に対する「点字の指導方法」などを再考してほしい。これまでの盲人文化は、極言すれば「点字文化」であったともいえるのだから、点字を巡る環境の改善によっては新たな視覚障害者文化を生み出すのではあるまいか。
同書の購入は、桜雲会(03-5337-7866)へ。活字・テキスト版両方を希望する方は、私のEメールBRB30105@nifty.comまで、住所・氏名をご連絡ください。
日盲委視覚障害者選挙情報支援プロジェクト点字版部会は、5月13日に日本点字図書館に関係23施設の担当職員69人を集め、5月17日に日本ライトハウス情報文化センターに22施設、43人を集めて、「点字版選挙公報製作研修会」を行いました。「巻頭コラム」で、「点字出版部会は7月10日、音声部会は7月17日を参院選投開票日と想定している」と書きましたが、音声部会は7月10日執行にも対応できるよう準備を進めているとのことです。
片岡亮太さんの「バルセロナ滞在記」を一読して、もはや14年前のことですが、2002年はアントニ・ガウディ(1852〜1926)生誕150周年にあたり、それを記念して通常は中に立ち入れないガウディ設計の個人邸宅にも立ち入れるイベントがありました。そこで夏期休暇をとってひとりで1週間ほどバルセロナを訪れたことを懐かしく思い出しました。
『毎日新聞』5月13日付(朝刊)「ひと」欄で、藤原章生記者が、「戸塚辰永さん=ドイツでエッセーを出版した全盲の編集者」と題して、小誌デスクをご紹介くださりました。ただ、ひと欄の本文は漢字カナ交じり文で600字程度ですから、かなり凝縮した内容になっております。それに肉付けして、漢字カナ交じり文2000字程度で詳しく書いてくださったのが、今号の「自分が変わること」でした。藤原さんありがとうございました。
今号の「近代盲人業権史」には、今日では差別的とみなされる表現が出て来ます。しかし、現・全日本盲学校教育研究会の前身が、明治・大正期に行った全国盲唖教育大会における討議内容であり、元の内容自体も差別を意図したものではないため、原文のまま引用していることを念のためお断りいたします。
今号の「リレーエッセイ」は、都合により休みます。(福山)
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