1937年に創刊し、480万人の読者を持つ世界で最も影響力があるとされる米大手旅行月刊誌(英文)『トラベル・アンド・レジャー』が7月に発表した読者投票による2015年の世界の人気観光都市ランキングで、京都市は昨年に引き続き2年連続で1位に選ばれた。この事実は、各報道機関が競って大きく取り上げたのでご存じの方も多いだろう。
同ランキングのアジア編では、1位京都、2位シェムリアップ(カンボジア)、3位バンコクに続いて、東京が世界的観光地の香港(5位)やシンガポール(6位)を抑えて堂々の4位であった。
一方、英総合月刊誌(英文)『モノクル』が、6月に発表した2015年の「世界の住み良い都市ランキング」では、東京が1位になった。
同誌は2007年創刊で、ロンドンに編集本部を置き、ニューヨーク、香港、東京に拠点を構え国際情勢、文化・芸術、ライフスタイルなどの分野を強みとしている。
このランキングは犯罪率、医療制度、学校、景気、公共交通網に加え、緑地スペース、文化への取り組み、日照時間、電気自動車の充電スポット数、スタートアップビジネスの容易さ、飲み屋の閉店時間など多角的な視点から評価され、東京は巨大都市にもかかわらず、治安がよく静かであることが高く評価された。
以下、2位ウィーン、3位ベルリン、4位メルボルン、5位シドニー、6位ストックホルム、7位バンクーバー、8位ヘルシンキ、9位ミュンヘン・チューリッヒ、10位コペンハーゲンの順。
ただ、このランキングはほとんどの新聞は取り上げず、同誌の発行元と資本業務提携している『日本経済新聞』に小さく掲載されたくらいである。
同誌は雑誌の枠にとらわれずカフェ、ショップ運営、オンラインラジオなど多岐に渡る営業活動を行っており、東京にも近年モノクル・カフェやモノクル・ショップが開店している。
このような営業戦略から、月刊誌『モノクル』の媒体としての信頼性に疑問符がついているのかも知れない。(福山)
ネパールで4月25日に起きた、「ネパール地震2015」に対しては多くの方々から救援金をいただき、当協会は130万円をネパール盲人福祉協会(NAWB)に送りました。
また、日盲委は現在募金活動を活発に展開しています。
そこで、NAWBクマール・タパ会長(全盲・国立トリブバン大学講師)による「NAWBの活動とネパール地震に被災した視覚障害者の支援」をテーマに、日本語通訳を介した報告講演会を下記のように開催します。
参加は無料ですが、会場の都合で事前登録をお願いいたします。
日時:9月4日(金)16〜17時45分
場所:ヘレン・ケラー協会ホール(新宿区大久保3-14-20)
内容:NAWBの活動と「ネパール地震2015」被災者支援
報告者:NAWBクマール・タパ会長、他
交通:地下鉄副都心線「西早稲田駅」下車2分
※駅からのガイドをご希望の方は、事前にその旨お申し込みください
お申し込み締め切り:8月17日(月)
お申し込み:ネパール地震報告実行委員会(電話03-3200-1310)平日の10〜18時
主催:東京ヘレン・ケラー協会、ネパール盲人福祉協会(NAWB)
上記報告会の後、隣接する会場にて、NAWB会長を歓迎する懇親会を、会費制で開催します。
日時:9月4日(金)18〜19時30分
場所:毎日新聞社早稲田別館地下食堂(新宿区大久保3-14-4)
会費:4,000円
お申込み締め切り:8月17日(月)
お申込みとお問い合わせ:ネパール地震報告実行委員会(電話03-3200-1310)平日の10〜18時
ネパール盲人福祉協会(NAWB)を代表して、私は第3回アジア太平洋CBR会議に参加するため9月1日に東京を訪問します。同行者は、ネパールにおける東京ヘレン・ケラー協会のボランティアで、前NAWB事務局長のホーム・ナット・アルヤールさんです。彼は晴眼者で、点字出版等の訓練のためにこれまでに2回来日した経験があり、今度で3度目です。したがって、彼は日本語を上手に話せます。
3月号の本誌に「ネパール盲人の半世紀」で書いたとおり、私の妻は八王子盲学校に3年間留学していたので、彼女もまた日本語を上手にしゃべります。
しかし、私は9月に初来日するので、残念ながら日本語は挨拶程度しかしゃべれません。それでも、日本における盲人福祉についてはこの機会に熱心に勉強するつもりです。
第3回アジア太平洋CBR会議は、今年(2015)の9月1日から3日まで、東京・新宿の京王プラザホテルで開催されます。同会議の1回目は2009年にタイのバンコクで開催され、その結果、アジア太平洋CBRネットワークが結成されました。そして、2010年にアジア太平洋CBR大会がマレーシアのクアラルンプールで開かれ、第2回アジア太平洋CBR会議が2011年にフィリピンのマニラで開催されました。また、2012年にはインドのアグラで第1回CBR世界会議も開催され、短期間にダイナミックな関連会議が次々に開催されました。
地域密着型のリハビリテーションであるCBR(コミュニティ・ベースド・リハビリテーション)は、先進国では実施されていないので、日本ではなじみの薄い外来語だと思います。先進国における障害者リハビリテーション(リハビリ)は施設の中で実施されますが、開発途上国における障害者リハビリは、障害者が住んでいる地域を基盤に実施されるのです。
開発途上国でも1960年代初頭に都市部にリハビリセンターが設立され、農村部に住む障害者を集めてリハビリを実施しましたが、結果的には失敗に終わっています。
この教訓から国際援助機関は、施設中心のリハビリから農村プログラムにシフトする必要性を痛感しました。CBRは農業を基盤に、障害者の自宅を基盤に、地域社会を基盤に実施する事業です。
CBRの最初のパイロットプロジェクトは1970年代に実施され、1980年代に地域社会にある既存のさまざまな資源を活用して、開発途上国の農村に住む障害者と家族の生活の向上のためにWHOが方法論を開発して取り組まれました。その継続的成功から、現在では、アジア、アフリカ、および南アメリカの開発途上国で広く実施されています。
CBRは「すべての障害者のリハビリ、機会均等化および社会統合に向けた地域社会開発における戦略の一つである。そして障害のある人、家族および地域社会並びに適切な保健医療・教育・職業・社会サービスが一致協力することによって実施される」(1994年合同政策方針、WHO、ILO、ユネスコ)と定義されました。
NAWBはこの30年間、ネパールの様々な地域において視覚障害者のためのCBRを実施してきました。ネパールにおけるCBRの全国協議会である「ナショナルCBRネットワーク・ネパール」の連絡事務所は、今でもNAWBの本部内にあります。そして、わたしと一緒に来日するアルヤールさんは、同ネットワークの前事務局長でした。
私たちNAWBは南アジアにおけるCBR事業のパイオニアであることをとても誇りにしており、現在でもネパールの15の郡でCBR事業を精力的に実施しています。
CBRを始めるには、その地域の有力者に呼びかけて協力委員会を組織する必要があります。次いで、新聞広告で事業の責任者であるコーディネーターと職員であるリハビリワーカーを公募します。彼らは、高卒以上の教育を受けていますが、そのほとんどが採用の段階では障害者リハビリに関する知識はほとんど持っていません。そこから、コーディネーターを含めた彼らは歩行訓練、日常生活動作訓練(ADL)、点字教育、初歩的眼科ケアなどCBRに必要な知識と技術を集中的に研修します。
地域社会での彼らの最初の仕事は、視覚障害者を捜すための個別訪問調査です。どの村に、○○という名前の、何歳の男性(女性)がいるとリストアップするのです。場所によっては、この調査だけに2〜3年かかる場合もあります。
次に発見した視覚障害者を治療可能かどうかで2グループに分けます。そして治療可能な人は眼科病院やアイキャンプに差し向け、治らない人はCBRに登録し、以下の年齢に従って分類します。
1. 就学前児童(6歳未満)
2. 就学適齢期の児童(6〜15歳)
3. 大人(16〜45歳)
4. 年配者(45歳以上)
就学前の視覚障害児に対しては、その親の相談にのり、治療や訓練など適切な支援を行います。就学適齢期の児童に対しては、最寄りの統合教育校で勉強できるように支援します。
大人に対しては、歩行訓練や職業訓練などのプログラムを実施し、それが済んだら、無利子の融資を行って、それを元手に視覚障害者が雑貨店を開業したり、家畜を飼育することにより経済的な自立を図ることをうながします。
これらと平行してCBR事業では、失明防止にも取り組みます。具体的にはビタミンA剤を配布したり、国際NGOやライオンズクラブの協力で白内障の開眼手術である「アイキャンプ」や眼科検診を行うのです。
前記以外にも、NAWBは以下の活動を実施しています。
特殊教育教員養成:NAWBは1991年から6週間の特殊教育の教員養成研修を行っており、別途、様々なNGOの職員や、ネパール政府の特殊教育部門の担当者をも訓練しています。
点字識字事業:正式な教育の機会に恵まれなかった視覚障害者に点字を教えています。
リーダーシップとエンパワーメント(力をつける)トレーニング:NAWBは自助グループのためのリーダーシップとスキルアップ研修を行い、これはマイクロ・クレジット・プログラムの実施にとても役立っています。
災害リスク軽減訓練:NAWBは村落レベルでの自助グループに災害リスクを軽減するための訓練を提供しています。
点字出版事業:ノルウェー製両面点字ラインプリンター(Braillo 200)2台と日本の仲村製点字印刷機2台により、ネパール全土の統合教育校の第1〜10学年の教科書を発行しており、その他に、小説等の点字図書、点字カレンダー、点字雑誌等を発行しています。
その他に、拡大読書機や光学機器を備えたロービジョンリソース(資源)センターの運営、ナショナル点字図書館の運営、デイジー図書の作成、セミナー、ワークショップなどを開催しています。
最後に、NAWBの事業内容とその成果を以下に述べます。
歩行訓練4,831人、収入確保事業1,086人、統合教育305校、職業訓練1,290人、眼科治療25万3,369人、白内障手術8,925人、日常生活訓練と意識向上51万7,863人、ビタミンA配布16万6,824人(児童)、教員養成訓練280人、視覚障害児の就学1,542人、点字教科書製作10万7,580セット、リハビリワーカー等の養成82人、デイジー図書作成28タイトル、点字図書作成32タイトル、点字図書館の受益者450人(学生)、視覚障害者への就職斡旋51人。
私たちは今回のCBR会議に参加することによって多くのことを学び、ネパールのCBR事業がさらに加速することになるだろうと期待しています。
私たちネパールからの参加者2人は、日本盲人福祉委員会(竹下義樹理事長)の助成金を受けた東京ヘレン・ケラー協会の事業で来日します。
最後になりましたが、関係者の皆さんに篤く御礼申し上げますと共に、東京で皆さんにお会いできますことを心より楽しみにしています。ありがとうございました。
本年(2015)4月25日にマグニチュード7.9の激しい地震が起こり、その後5月12日にも最大規模の余震がありました。これにより、我が国・ネパールはとてもひどい打撃を受け、まさにこの瞬間、歴史上極めて困難な時期を迎えました。
「ネパール地震2015」と名付けられたこの地震は、ネパールの30以上の「郡」で、人々の人生と生計に大損害を与えました。
ネパール内務省により伝えられた情報によれば、約2万5,000人が地震によって重傷を負い、9,000人以上が死亡しました。
資産の損害は莫大で、実際の損害を見積もるのにさえ多大な時間を要します。完全にまたは部分的に損壊した8,000棟を超える住居や膨大な数の学校、そして病院とヘルスポスト(小規模保健所)、最果ての地震被災地では、通常の生活と生計が途絶しました。
一般的に、様々な障害者(身体、コミュニケーション、精神、知的)は、災害が起きた時と、その後に最も強く被害を被ります。
我々の経験によると、障害者は機能的な制限のために災害対応に取り残され、さらに困窮することが示されています。
破壊的な地震の被害を受けた地域で、障害者と高齢者の災害対応に対処するために実施されたプロジェクトにより、これまでになされた若干の努力を我々は観察することができます。地震は障害の原因となり、被害を与えます。一方において、地震は障害者にひどい打撃を与え、もう一方では、精神・身体障害者を生み出します。
ネパール盲人福祉協会(NAWB)は緊急理事会を開催した後、異なる地震被災地における視覚障害者のデータを収集するために調査票を作成しました。
視覚障害者の当事者団体であるNAB(ネパール盲人協会)と協議して、共同で「災害救援対策調整委員会」を結成し、10郡の地震被災地で調査を開始しました。
障害者は自らの機能の制限により、政府だけでなく、非政府組織が主催する、様々な救助・救援施設へのアクセスができないでいます。我々の調査では、90%の障害者が救援物資を受け取っていません。わずかな被災障害者が、個人的な関係や障害分野で働く組織による支援の努力により、これらを得ることができています。この場合の重要な問題は、救援とリハビリテーションサービスのための機能構成の不具合です。そして、これらのサービスを実施するために、私達のような組織があるのです。
NAWBは、地震の前に「災害リスクの軽減と管理プロジェクト」の一環として、ラリトプール郡ハリシッディー村に「ジャラ障害者会」と、同郡シッディプール村に「シッディプール障害者会」という名前の2つの自助グループを作りました。
これらの自助グループは、地震の前に災害リスク軽減の訓練を行いました。4月25日の震災の後、NAWBはコーカナ町とシッディプール村、およびハリシッディー村における障害者23人(全盲2人、弱視1人、肢体障害17人、知的障害2人、てんかん1人)にテント(防水シート)を配布しました。
そして第2段階として、ドイツのNGOであるCBM(クリスチャン・ブラインド・ミッション)の財政支援の下、NAWBは1組(8枚)のトタン波板をハリシッディー村の23人と、シッディプール村の19人(全盲5人、弱視・知的障害1人、肢体障害8人、聴覚障害3人、知的障害2人)に1組ずつ配布しました。
さらにNAWBは、障害者のために5カ所の「一時避難所(シェルター)」を建てるために、コーカナ町の提供者と個別に調整しました。これは全盲2人、肢体障害2人、聴覚障害1人の計5人の自宅(仮設住宅)をシェルターにするというものです。
NGOのBIA財団の参加と財政支援により、NAWBはネパール全国障害者連盟(NFDN)と協力して、6月13日に障害者のために10カ所の「一時避難所」を建設するために、調整しました。全盲2人、肢体障害3人、聴覚障害4人、聴覚・肢体障害1人の計10人の自宅(仮設住宅)を一時避難所にするのです。これはNAWBラトナ・カジ・ダンゴル教育課長補佐によって進められました。
また、NAWBに障害地震被災者のために、支援者から10本の松葉杖が提供され、現在までに3人の肢体障害者に渡されました。
NAWBは、点字教材をいれた12個のリュックを、ドラカ郡にある「カリンチョーク・マヴィ校」の寄宿舎にいる被災視覚障害学生に配布しました。対象者の学年は、1年2人、2年1人、4年1人、7年3人、9年3人、10年2人の計12人です。
NAWBは、東京ヘレン・ケラー協会やドイツ・ネパール援助協会(GNHA)と協力して地震災害の後、自宅に帰省させるために、視覚障害学生14人の旅費を提供しました。その対象者の所在地(郡)は、ジュムラ郡8人、アチャム郡2人、ドティ郡2人、バグルン郡1人、フムラ郡1人の計14人です。
NAWBは、東京ヘレン・ケラー協会の財政援助で、6月13日に、「サンジワニ・モデル校」の視覚障害学生のために制服や毛布を含む救援物資を提供しました。そしてまた、カブレ郡の障害者33人にトタン波板を1組ずつ提供しました。
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日本盲人福祉委員会(日盲委・竹下義樹理事長)では、ネパール地震被災視覚障害者のために、一口1,000円以上の募金を呼びかけています。賛同される方は、次の口座にご希望の口数をお振り込みください。
郵便振替口座:00100-8-729004
加入者名:社会福祉法人日本盲人福祉委員会
※通信欄に「ネパール地震」と明記してください。詳しくは、日盲委事務局(03-5291-7885)へお問い合わせください。
今月号は、期せずして「NAWB特集号」のような誌面構成となりました。ネパール盲人福祉協会(NAWB)クマール・タパ会長の「9月に東京でお会いしましょう」で、一言も「ネパール地震」に触れていないことを、いぶかしく思われた方があるかも知れません。この記事のオリジナル原稿は英文で書かれ、3月末に当方に届きました。しかし、原稿の約半分が、あまりにCBRを専門的に論じていたので当方でかなりかみ砕いて、日本の読者にもわかりやすいように書き直しました。
その日本語の原稿を、八王子盲学校理療科教諭の小島純子先生に、まったくのボランティアでネパール語に翻訳していただきました。そして、著者校閲のためにタパ会長に送信したのがネパール地震の直前でした。このため、全盲夫婦が家族の生命を守るのに必死になっている大混乱の中、「送った」「届いていない」のすったもんだがありました。
そんな最中に、「ネパール地震に触れて書き換えてください」などと言えるはずも無く、出稿にこぎ付けるのが精一杯だったのです。NAWB関係者の自宅や学校等の全壊があり、一時はタパ会長の来日さえ危ぶまれましたが、幸いなことに、関係者の人的被害がほとんど無かったため、計画は続行することができました。
タパ夫人のジャヌカ・プラサイさんは八王子盲学校に3年間留学していたことから、タパ氏にとっても、耳にタコができるほど聞いた日本は、東京は、八王子は恋い焦がれた地であり、長年訪日を待ち望んでいたのです。
ただ、CBR会議の登録料を支払い、航空運賃を払う段階になって思わぬトラブルに見舞われました。地震の影響でカトマンズ、バンコク間の乗客数が激減したため、タイ国際航空が突然、減便したのでタパ氏らが予約したネパールへの帰国便が無くなったのです。結局、帰国を1日伸ばして調整しましたが、地震の余波は思わぬところに出てくるものです。(福山)
日頃お感じになっていること、記事に関するご意見などを点字800字以内にまとめ、本誌編集部(tj@thka.jp)宛お送りください。