THKA

社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会

点字ジャーナル 2010年5月号

第41巻5号(通巻第480号)
―― 毎月25日発行 ――
定価:一部700円
編集人:福山 博、発行人:藤元 節
発行所:社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会点字出版所
(〒169-0072 東京都新宿区大久保3−14−4)
電話:03-3200-1310 E-mail:tj@thka.jp URL:http://www.thka.jp/
振替口座:00190-5-173877

目次

巻頭コラム:「点字ルネサンス」を目指して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
ネット図書館「サピエ」と共に ―― 全視情協石川新理事長に聞く ・・・・・・・・・・・・・・
4
歴代会長の夢叶う NPO法人浜視協の船出を祝う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
私も本を読みたい! 参議院議員会館で読書バリアフリー法集会 ・・・・・・・・・・・・
16
知ってください盲ろうについて 埋もれた盲ろう者を発掘するために ・・・・・・・・・・・
19
めっちゃ楽しい肉体ゲーム!
  ―― 音声ゲームバイク「サウンドハンター」(望月優) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
22
用具センターからのお知らせ:「ドコモ・ケータイお役立ち講座」開催 ・・・・・・・・・・・
27
自分が変わること:信じる人にひかれて その1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
29
リレーエッセイ:思いいづるままに(外谷恭一) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
外国語放浪記:ESS暮らし ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
あなたがいなければ:大阪フォーラムでの出会い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
43
よりどりみどり風見鶏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
48
大相撲:朝青龍引退で新時代突入 ―― 5月場所展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
52
ネパールの読書事情とナショナル点字図書館の設立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
来年3月にプラハで国際音楽コンクール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
58
スモールトーク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
61
時代の風 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
64
伝言板 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
68
編集ログ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
71

巻頭コラム
「点字ルネサンス」を目指して

 本号から印刷を、英国の固型点字からドイツのマールブルク式エンボス点字に切り替えました。ルネサンスは、1445年にドイツ人グーテンベルクが発明した活版印刷という技術革命と出会うことで実現しました。新点字印刷機GPB3は、プラテン印刷機という活版印刷の技術を現代に活かしたものです。ドイツ・チェコに触読校正者を派遣して、慎重を期したつもりですが、点字の読みやすさはいかがでしょうか? 印刷システムの変更に合わせて、本誌も少しだけリニューアルしました。
 インターネットに代表されるIT技術は、ルネサンス以来500年ぶりの情報革命であることは疑い得ません。しかし、「だから点字はいらない」という早とちりが、技術大学の一部教師にあるのは残念なことです。排斥ではなくて、いかに点字を再生(ルネサンス)するかが、現代的課題だというのにです。
 「点字ルネサンス」の担い手はなにより皆さまです。変わらぬご愛読を末永くお願い致します。編集長敬白

知ってください盲ろうについて
―― 埋もれた盲ろう者を発掘するために ――

 東京盲ろう者友の会は3月29日(月)、盲ろう者についての広報・啓発ツール「知ってください盲ろうについて」が完成したと発表した。これは多くの人に盲ろう者という存在を知ってもらい、支援を受けられずにいる盲ろう者を発見するためのツールだ。
 これまでも同会などによる同種のパンフレットはあったが、なかなか手にとってもらえなかったり、情報量が十分でなかったという。その反省を活かし、まず媒体をパンフレット・DVD・Webの3つに増やした。パンフレットはB5版24ページ、DVDは上映時間約20分、Webは48ページと情報量を多めに設定。視覚に訴えるよう写真やイラスト・映像を多用するなど工夫を凝らしてある。内容は、盲ろうという障害についての概要、コミュニケーションや支援の方法、盲ろう者の日常生活や、同会が運営する東京都盲ろう者支援センターの活動などが描かれている。同会の福島智顧問は、「交流会などセンターでの取り組みの様子を見ると、楽しそうに見えるかもしれません。でもこれは余暇ではなく、これ自体が生活という人もいるのです」と解説する。
 こうしたツールはいかに広め、利用してもらうかが肝心だ。同会は、平成21年度日本郵便「年賀寄付金助成」496万7,000円と自主財源約100万円をもとに、パンフレット2万部、DVD2,000枚を製作。東京を拠点とする施設が作ったツールではあるが、全国の行政機関、学校、関係施設・団体、病院などの約1,500カ所に配布する。また、郵送料を自己負担してもらえれば希望者にも配布するという。
 問い合わせなどの窓口も、東京都盲ろう者支援センター(03-3864-7003)が担当する。同センターは通訳・介助者の養成・派遣、生活訓練、総合相談、交流会・学習会など、総合的な盲ろう者支援を行う施設だ。近隣に住む盲ろう者は同センターで支援するが、遠方に住む盲ろう者は、全国盲ろう者協会と協力し、全国44カ所にある盲ろう者友の会などを紹介している。
 同会山岸康子理事長は、「たくさんの人のお力添えがあり、盲ろうという存在が少しずつ社会に知られるようになりましたが、東京都ではまだ1割しか盲ろう者が発掘されていません」と現状を訴える。同会が行った平成19年の調査によると、身体障害者手帳に視覚と聴覚の両方の障害が記載されている東京都内の盲ろう者は821人。しかし、厚生労働省の調査結果から算出すると、東京都内には約2,000人の盲ろう者がいると推計されるのだ。厚労省の調査は身体障害者手帳を持たない人も対象にしている。このことから、単一障害のみ手帳に記載されている盲ろう者もいるが、手帳の交付を申請していない盲ろう者も多く存在すると考えられるのだという。
 福島氏は、「盲ろう者は、ある意味で見えない瓦礫に埋もれて、コミュニケーションという水や食料が届かない状態です。パンフレットを作っても直接埋もれた人には届きません。周りの人の救助活動が必要なのです」と社会の協力を訴えている。(小川百合子)

来年3月にプラハで国際音楽コンクール
―― 締め切りは本年9月末日

 チェコ盲人協会とヤン・デイル音楽学校・視覚障害者高等学校は、世界中の視覚障害音楽家が、同様の障害を持つ音楽家に出会い音楽的才能を披露するため、第12回国際視覚障害者音楽コンクールを2011年3月13〜18日にチェコ共和国の首都・プラハで開催する。
 対象者は、視覚障害を持つ18〜35歳のクラシック音楽の声楽と器楽演奏(木管楽器、金管楽器、弦楽器、ピアノ、アコーディオン、ギター)の音楽家と学生、および視覚障害を持つ作曲家で、作曲の場合は年齢に制限はない。
 プラハの音楽コンクール開催地までの航空券等の旅費は、全額参加者負担だが、参加者と介助者1名の食費と宿泊費は主催者が負担する。ただし、予選で落選したらその時点で食費と宿泊費は打ち切られ、それ以降の滞在費は全額自己負担となる。介助者とは別に伴奏者を伴いたい場合の食費と宿泊費は参加者負担となる。
 本コンクールに参加するためには、主催者が用意する書式に基づいて2010年9月30日までに登録証明書を提出する必要がある。そして、登録料として100ユーロを2010年10月28日までに登録証明書に記載されている銀行口座に送金しなければならない。登録終了後のプログラムの変更は認められず、登録料はどのような理由があろうと返還されない。
 コンクールは予選が2回行われ、それに勝ち抜いた者が決勝に進むことができ、受賞者には賞金として優勝が1,000ユーロ、第2位が600ユーロ、第3位が400ユーロ贈られるが、受賞者は受賞式典で演奏する義務を負う。  コンクールにおける公用語はチェコ語と英語で、通訳は1日あたり300ユーロで雇用することが可能である。
 同コンクールと同時に行われる作曲コンクールは、世界中の視覚障害を持つ作曲家に扉が開いており、年齢制限はない。ただし、ポップスの作品は一切受け付けておらず、2010年9月30日までに主催者の住所に提出するクラシック作品であれば複数のエントリーも受け付ける。なお、提出された譜面は返還されない。
 受賞者と受賞作品の発表は、2011年3月17日に開催される国際視覚障害者音楽コンクールのグランド・コンサートのプログラムの一環として行われる。受賞者には事前に招待状が届き、本人と介助者1名の食費と宿泊費は主催者が負担する。
 受賞者には賞金として優勝が800ユーロ、第2位が500ユーロ、第3位が300ユーロ贈られる。
 詳細については、下記にお問い合わせいただきたい。
 担当者名:Maria Novakova
 住所:Czech Blind United(SONS), International Department, Krakovska 21, 110 00 Praha 1, Czech Republic
 Eメール:internationaldep@sons.cz

編集ログ

 4月10日、ロイターの日本人カメラマンがバンコクの騒乱取材中に殺されました。応援要請で現地入りし、遠距離からの兇弾に倒れたのです。この一報に接して、先月まで「ケララ便り」を連載してくれた「堀内佳美さん(アークどこでも本読み隊)は、無事だろうか?」なんて思いませんでしたか。そう思っていた矢先、編集部宛「友人・知人も、みんな無事でおります。バンコクは、あまりよい状態ではないですが、騒動の真っ只中にわざわざ飛び込んでいかない限りは、まず危険はありません」という元気なメールが届きました。タイの暦では4月中旬が新年、堀内さん「ハッピー・ニュー・イヤー!」。
 日本では桜が咲き、新しい船出のシーズンが到来すると、本誌の地元、視覚障害者施設が集まる高田馬場は、一方で学生街でもあることを強く実感します。特に駅前は「新入生歓迎コンパ(懇親会)」の学生達で、文字通り足の踏み場もなくなり、もみくちゃにされた盲導犬が迷うくらいの喧噪の巷と化するのです。
 本号でも、新たな船出をことほぎ、全視情協石川理事長にインタビューし、浜視協のNPO法人化祝賀会の模様をとりあげました。
 『点字ジャーナル』は創刊以来、40年間1ページ38マス、31行でやってきたわけですが、今号から1ページ31マス、27行の編集に変わり、どうも勝手が違ってとまどうばかりです。とくにタイトルの付け方が難しくなりました。というわけで、このコーナーも「編集ログ」と勝手に改題しましたので、ご了承ください。
 通常の刑事裁判では「疑わしきは被告人の利益に」ですが、麻薬所持に関してはそれを除外している国があるので、老婆心ながら今回「スモールトーク」で取りあげました。知らない間にバッグに「白い粉」が入っており、それを自分のものではないと証明できなくて、刑場の露と消えるなんて、誰にとってもぞっとしない話だと思うからです。(福山)

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