企業再生支援機構は、2009年10月14日に国の認可法人として設立された非上場の株式会社だ。設立から5年間で業務を完了するよう努める時限的な組織で、設立から原則2年までに支援先を決定、支援決定から3年以内の支援完了を目指す。政府が100億円、民間金融機関約130社も100億円を出資。資金調達に使う政府保証枠は、平成21年度当初予算で1兆6,000億円分を確保している。
目的は、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中堅・中小企業およびその他の事業者の事業再生を支援することなど。機構設立のための当初の法案は地方の中堅・中小企業や第3セクターの再建を想定していたが、2009年6月に成立した修正法案は、第3セクターを外す一方でその対象を大企業にまで拡大した。
視覚障害者向けの読書機などの開発を行う株式会社アメディア(東京・新宿、望月優社長)は、1月8日、音声・拡大読書機「携帯リーダーCR-1000」を発売した。音声読書・拡大読書・色読み上げの3つの機能を備えており、こうした日本語仕様の携帯読書機は世界初という。
サイズは、縦102mm、横51mm、高さ11.35mm、重さ110gとコンパクトで軽量。本体表面にはタッチパネル式の2.8インチ液晶ディスプレーとその下部に5つの操作ボタン、上部側面にはスライド式の電源ボタン、背面には320万画素の内蔵カメラが搭載されている。携帯リーダーはこのカメラで撮影した画像を利用し、文字認識や拡大表示・色解析をする仕組みだ。
開発では、このカメラ撮影が1番の課題になったという。いかに簡単な方法で、手ぶれを起こさず、適切な距離や角度からカメラ撮影できるかが焦点となった。試行錯誤の末、専用の固定台を付属することで、この課題をクリアした。固定台を利用すれば、印刷物をきれいに真上から撮影することができ、A4サイズの印刷物なら2回に分けて全文を読み取ることが可能だ。固定台は、アタッシュケース型の書類ケース(A4サイズ用)と一体になっており、ケースの中に折り畳んで収納できるので、持ち運びにも便利だという。
ボタン操作も少ない操作で済むように工夫した。カメラ撮影は、中央のボタンを2回押すだけでシャッターを切れる。音声読書は、シャッターを切ってから数秒間、文字が認識されるのを待つと自動で読み上げ始め、読み上げ箇所を進めたり戻したりする場合は、ディスプレーを上下になぞることで、感覚的に行うことができる。用紙を置く向きや縦書き・横書きの区別は携帯リーダーが自動で判断し、印刷物を読み上げる前には、文書の上部は向かって右か左かも教えてくれるので、A4サイズの印刷物を2回に分けて撮影する場合に便利だ。読み上げの方法は、表形式を自動で認識する表読みモードもあり、付属のイヤホンを使えばイヤホンのボタンでシャッターを切り、周りを気にせず音声読み上げで読書することができる。音量は4段階、読み上げ速度は3段階、音声は男声・女声の2種類から設定できる。また、拡大読書は、最大倍率4倍で、反転表示機能もあり、ディスプレーを上下左右になぞることで画面がスクロールする。色読み上げは、ディスプレーをタッチした場所の色が読み上げられる。
連続使用時間は約120分。販売価格は20万7,900円だが、初回ロット100台に限り19万7,400円で販売される。
なお、本商品は当協会盲人用具センターでも取り扱っている。お問い合わせは、当協会盲人用具センター(03-3200-1310、平日10〜18時)へ。
昨年10月末、「僕の代わりに、新点字印刷システムの最終テストのために、11月29〜12月6日の旅程で、ドイツとチェコに出張してもらえませんか」と上司である田辺編集課長から言われた。ちょうど『点字ジャーナル』1月号の編集をはじめる頃で、私が返事を躊躇すると、それを察して、「出張中の仕事は、編集課でなんとかするから」との優しい言葉に、「はい、わかりました!」と、私はつい大きな声を出してしまった。
仕事は、ドイツ・マールブルク市のブリスタ・ブレイルテック社(以下、ブレイルテック)において自動製版機の「PUMA Z(ピューマ7)」を1台、チェコのツヴィコフ村にあるグラフォストロイ社の工場で点字印刷機GPB3・2台の出荷前最終テストに立ち合うことであった。
海外旅行には、これまでたいてい1人で行っていたが、今回は仕事ということで当点字出版所の藤森製版課長と佐々木印刷課主任、それに輸入代行を行う工作・産業機械の専門商社兼松KGKの富本さんの4名で行くことになった。
以前、本誌で連載した「ブレーメンの奇妙な雲行き」でも記したが、私は糖尿病でインスリンを朝晩2回打ち、ヨーロッパなどの長時間のフライトでは機内に注射器を持ち込み、注射する。今回もその旨航空会社に伝えると、英文の医師の診断書と糖尿病手帳を準備するように言われた。そこでかかりつけの医師に相談すると、「わかった。おやすい御用だ。ついでに新型インフルエンザの予防接種も受けたら」と薦められて、これもしてもらった。
この出張に、私はネットブックという小型ノートパソコンを持参することにした。ドイツやチェコで電子メールやインターネットを利用した電話サービスの「スカイプ」で、職場と連絡を取るためである。そこで、インターネットが使えるか、宿泊先のマールブルクの「マールブルガーホーフ」に電話した。すると、「あなたはどなたですか?」と女性従業員が聞くので、私は「そちらに11月29と30の両日、日本から4人で泊まるうちの1人で、戸塚と申します」と答えた。すると、「失礼ですが、予約リストにはあなたの名前も、日本人4名の予約もありませんが、それは本当ですか」と困惑し、疑うような口調が聞かれた。
この会話は、出発前日のことなので私は絶句した。気を取り直し、「ブレイルテックの方が、私たちの代わりに予約したはずですが・・・」と言うと、「その方のお名前は?」ときた。そんなことを言われても「これから会う人なんだから、それにこちらは確実に明日宿泊する客なのに・・・」と思いつつ、「わかりません」と答えた。が、私は、ホテルの部屋でインターネットが使えるのか、宿泊料金はクレジットカードで支払えるのかだけを聞きたかっただけなのである。しかし、数分も禅問答のような話をする羽目になり、また、とんでもない心配の種も抱え込んでしまった。結局、ホテルのロビーにはパソコンがあり、無料でインターネットが使えるが、部屋で個人用のパソコンを使いたければ、有料のインターネットに接続しなければならないこと、ビザとアメックスのカードでの支払いが可能であることがわかった。
翌日、この女性職員がにっこりとほほえんで迎えてくれる中、我々は無事チェックインできたのであった。一体、前日のあの電話応対は何だったのだろう、と思うが、これがドイツの不思議なところなのである。なお、ホテルの名誉のためにいうが、朝食も非常に美味しく、同ホテルは値段の割にサービスも行き届いたところであった。
11月30日の朝、ホテルからタクシーで15分ほどのブレイルテックへと向かった。玄関でラインハルト業務部長とフントハウゼン技術部長の出迎えを受け、2階の部屋に通された。
自己紹介を済ませると、すぐに自動製版機ピューマ7の輸送日程、技術者の来日日程などの相談を富本さんの通訳で行った。当初、チェコで製造された点字印刷機をいったんマールブルクへ運んで、製版機と共に荷造りしてハンブルク港へ運ぶことも考えたが、できるだけ早く届けることを優先し、チェコから印刷機を、マールブルクから製版機を直接ハンブルクに輸送し、そこで1つにまとめて東京港行きの貨物船に乗せることにしたという。
ブレイルテックには12名の職員がおり、点字製版機の他に、点字プリンター、点字タイプライター、それにいわゆる「ブリスタ」の名称でおなじみの盲ろう者の通訳に活躍する速記用点字タイプライターなどを本社工場にて製造し、別途、チェコのグラフォストロイ社に平型点字印刷機のGPB3を製造委託して、販売している。1階の工場を見学すると、1人の職人がブリスタを作っていた。彼は、「東京から65台も注文が入ったが、こんなにたくさん、誰が使ってくれるんだい?」と尋ねた。「日本では速記用点字タイプライターは盲ろう者の通訳に使っているんですよ。いいクリスマスプレゼントになりますね」と話すと、「それはいいね」と彼の声が弾んだ。そして、ブリスタは完全な手作りであるため、1日に4台組み立てるのが精一杯だと彼は言った。
ピューマ7は、コンピュータ制御の自動製版機で、点字データでも、原稿を見ながら直接入力での製版も可能で、しかもA4でも、B5でも、インターラインでも、インターポイントでも製版できる優れものである。
同製版機で製版した点字を触読すると、点の大きさはほぼパーキンスブレイラーと同じではっきりしている。ただ、点字印刷見本の点字用紙はドイツの教科書にも使われているものだというが、日本の点字用紙よりも粗雑でざらざらしており、点は高すぎて、指先が痛いほどであった。
このことを指摘すると、すぐに中程度の高さのもの、さらに低くしたものを製版・印刷してくれた。中程度の高さのものは、日本で使われている点字とほぼ同じで大変読みやすかった。同製版機は、点の打ち出し位置や高さも自由自在に調節できる点も大きな特長といえるであろう。
フントハウゼン技術部長は、いかにもドイツ人エンジニアといういかめしい中年男で自信満々にピューマ7の性能や操作方法を説明してくれ、丁寧に我々の質問に答えてくれた。そして、おもむろに「この製版機は他の製版機では書くことができない、非常にきめ細かな図も書くことができます。少々時間がかかりますが、見ていて下さい」と言って図版用の1点打ちのピンを製版機に取り付けて、製版を始めた。
従来、製版機で円を描くと、6点のピンで製版するため、どうしても多少がくがくした円になってしまう。しかし、ピューマ7は、1本のピンで製版するため、正確で滑らかな円を描くことができる。こうして、付属のコンピュータソフトを用いて、自由自在に作図し、点字製版することが可能なのである。
話は飛ぶが、新点字印刷システムを載せた船は、昨年末の12月30日にハンブルクを出航したので、1月末には東京港に着く。そして通関手続きの後、2月上旬にはピューマ7は、毎日新聞社早稲田別館3階の当点字出版所製版室に、点字印刷機のGPB3・2台は当協会新館1階の点字印刷室に設置されるのである。
それに合わせて2月15〜19日の日程でドイツ人2名、チェコ人1名の技術者が来日し、新点字印刷システムの最終据付と、操作や保守・点検を、当出版所印刷課職員に指導する手はずになっている。そして、読者や視覚障害関係者に呼びかけて、4月上旬に新点字印刷システムのお披露目のための内覧会を開催し、『点字ジャーナル』の5月号から新点字印刷システムで発行する計画だ。
なお、内覧会の日程等については、本誌3月号でお知らせします。(戸塚辰永)
(福)光友会の前理事長・五十嵐光雄先生が、去る11月28日に逝去されました。そこで、同氏を偲んで、生前親交のあった横浜市盲の神崎好喜先生に、今月号に寄稿していただきました。なお、光友会は1月30日午前11時より神奈川県・藤沢市斎場(0466-87-5589)において五十嵐光雄先生を偲ぶ会を開催します。
元岩手県立盲学校の理療科教員であった根反一人氏が、1月2日の早朝、ガンで亡くなりました。享年46の若さでした。
1/4世紀前のことですが、同氏は筑波大学理療科教員養成施設在学中、「オプタコンで『四季報』の英語版を読んで株式投資をしている変わった学生」として一部ではつとに有名でした。そして、当時当協会が発行していた『点字株式』の編集委員に就任していただいたのでした。
その後、彼がふる里にて教職に就いてからは、『点字サイエンス』や『点字ジャーナル』にもたびたび寄稿していただきました。米国やドイツの展示会にも出かけるほどITにも造詣が深い彼でしたが、それに淫することなく、全盲としていかに使い倒すかという独特の視点を持っていたので、そのコンテンツは他の追随を許さないユニークなものでした。
しかし、2007年3月に岩手県立盲学校を退職して以降は、音沙汰がありませんでした。
彼が亡くなってはじめて、当編集部の戸塚デスクが大学浪人時代、附属盲近くの田本荘という下宿屋で彼と一緒であったということを知り驚いた次第でした。養成施設の学生であった根反氏は、寄宿舎の門限を嫌って下宿をしていたのです。あまりにオンボロで下宿人も少なく、経営者親子である母と娘の中が悪く、皿が飛び、包丁が持ち出され、挙げ句の果ては下宿人がやつあたりされるという凄まじい下宿だったらしいのですが、門限がないのが何よりだったのでしょう。
自由人根反一人氏の冥福を心よりお祈り致します。
(福)日本ライトハウス常務理事で、同法人の情報文化センター館長、NPO法人全視情協理事長の岩井和彦氏が、京都市にある図書出版社文理閣(075-351-7553)から『Let it be 視覚障害あるがままに ―― 夢は、情報バリアフリー ―― 』(税込1,785円)という、ビートルズ世代らしい、ちょっと欲張ったタイトルの著書を上梓されました。内容については、次号の本誌にてじっくりお伝えする予定です。ご期待ください。(福山)
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