この夏、例年になくインド北部で日本脳炎が猖獗を極めており、確認作業が行われていない村々もあり正確な数字ではないが、死者はすでにインドで1000人を、ネパールでも400人を超えているという。犠牲者のほぼ全員が子どもなのは、この地域で子どもへの予防接種が徹底されていないためである。
アジア、インド亜大陸に広く分布する疾患であるにもかかわらず、この病気は世界的に「ジャパニーズ・エンセファリティス(日本の脳炎)」と呼ばれる。このなんとも日本人にとってはなはだ迷惑な、人聞きの悪い病名が付けられているのは、昭和10年(1935)にわが国ではじめて病原ウイルスであるフラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスが、犠牲者の脳から分離されたためである。