こんなふざけた名前の市が誕生しなくて本当によかった。中部を表すCentralと空港や航空を表すAirを合成して中部国際空港の愛称が「セントレア」というのも感心しないが、まだぎりぎり辛抱の範囲である。しかし、その空港の南側にある愛知県美浜、南知多両町が合併して「南セントレア市」ではあまりに安易、無節操だ。
他人事ながら心配していたら、2月27日に実施された両町の住民投票の結果、「南セントレア市」の名前が住民の反発を呼び、2町の合併自体がご破算になった。市町村合併で誕生する新しい自治体の名前をめぐっては、この他長野県の「中央アルプス市」、千葉県の「太平洋市」などで「ネーミング騒動」が起きて、これらは白紙に戻り、青森県の「アップル市」、佐賀県の「湯陶里(ユトリ)市」などで反対の声があがっている。
2月20日(日)東京・四谷の弘済会館において、(財)日本障害者リハビリテーション協会と障害者放送協議会放送・通信バリアフリー委員会共催のセミナー、「『障害者のための情報保障』セミナー ―― デジタルテレビ放送の情報アクセス」が開催され、全国から85名が出席した。
第1部では、まず総務省情報通信政策局の飯島信也情報通信利用促進課長が、「情報通信政策とアクセシビリティ」と題して講演。続いて英国を代表する聴覚障害者団体であるRNIDのマーク・ダウンズ技術部長と、マーク・ホダ・ヨーロッパ・キャンペーン・オフィサーが、英国での地上波デジタル放送とバリアフリーの取り組みを紹介。第2部では、意見交換・質疑応答が行われた。
第1部の冒頭で飯島課長は、「インターネットや携帯電話が飛躍的に普及していく中、障害者や高齢者はその動きに取り残される傾向にある。総務省では解決策として、電話やファックス、携帯電話といった情報通信機器の規格化や、ウェブのアクセシビリティの規格化を進めている。放送のバリアフリー化については、字幕・解説放送番組の制作費を一部助成したり、放送局が放送法や郵政省の指針に基づいて制作している『字幕拡充計画』の進捗状況を調査・公表することで、その自主的な取り組みを促進している」と述べた。
続いて登壇したダウンズ部長は、「英国では1980年代からすでに字幕放送がはじまっている。BBCでは現在80%が字幕放送だが、2008年には100%にする計画である。また衛星放送『スカイ』では特殊な受信機を使うことによって音声解説を再生・録音できるシステムを導入している。現在は、画面のどこに字幕の手話通訳を映すと見やすいかといった調査や、音声を文字に代えてインターネット配信するシステムの開発などを行っている」と述べた。
またホダ・オフィサーは「字幕や音声解説などのサービスを行っている番組があることを知らない人もまだいる。CMやリーフレット、ウェブサイトなどで広く周知することが大切。EU加盟国ではバリアフリー放送がまだまだ不十分な国もある。関係法規の制定とともに、すべての人のためのテレビという認識を持つことが必要」と語った。
第2部では、岩井和彦全国視覚障害者情報提供施設協会理事長が、「視覚障害者のうちIT機器を使いこなしているのは4%程度。これから高齢化や中途失明者の増加が進む中、簡単に情報が得られるテレビは視覚障害者の生活において益々重要な位置を占めることになるだろう」と述べた。その上で、先ごろ日本盲人会連合が行った音声解説放送に関するアンケートの調査結果を紹介。「『どんな番組に音声解説が必要か』という問いには報道番組、ニュース速報、天気予報や台風情報、外国人のコメント、番組の宛先や申込先・問い合わせ先など様々な回答が寄せられた。なかには、歌番組で流れる曲のタイトルや、ドラマを紹介するCMの画面に映し出される放送時間の字幕などにも音声解説が欲しいが、これらは番組の司会者が言葉を補ったり、制作者がCM自体に音声を入れるようにすることでも解決できるのではないかという意見もあり、放送局側に視覚障害者の存在をアピールしていく必要性を痛感した」と述べた。またニュース速報について「字幕を音声化することが難しいのならば、まずは速報の告知音を、単なるニュースを伝えるときの音、注意を喚起する警報音、緊急避難勧告や行動を要請する音など、内容によって区別することからはじめてはどうか」と提案した。
質疑応答では、会場から「聴覚障害者のために音声を文字に代えてインターネットで流すというサービスがあるようだが、それとは逆に、視覚障害者のために画面に映っている文字を読み上げて、インターネットで配信することもできるのではないかと思う。その場合、法律に触れるなどの問題点があるか?」という質問が出た。これに対しては「今までそのような問題が取り上げられたことはないので、法に触れるかどうかははっきりとは分からない。しかし本来なら放送局がやるべきことを、当事者団体が人もお金も使ってやるのだから放送局が反対する理由はない」という意見がでた。これに関連して、ダウンズ部長は「技術的には可能なので、後は放送局側のやる気次第」と述べた。(成瀬)
2月28日(月)東京都新宿区の戸山サンライズで、「障害者と災害時の情報保障 ―― 新潟県中越地震の経験と今後の防災活動」と題したシンポジウムが開催された。主催は、障害者放送協議会と日本障害者リハビリテーション協会。会場には、障害当事者、障害者団体関係者、行政関係者など、約230名が参集した。
まず、内閣府防災担当・災害応急対策担当の丸山直紀参事官補佐が、政府の防災対策について講演。障害者を含めた要援護者の避難支援に関する課題として、災害時の情報伝達体制が整備されていないことや要援護者情報の共有・活用が進んでいないことを挙げた。特に要援護者の情報の活用は、プライバシー保護の点から難しい問題だという。これらを踏まえて、政府は3月末に、市町村の防災マニュアルの指針となる「避難勧告等の判断基準・伝達マニュアル(仮称)」及び「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」をまとめる計画だ。
続いて、各障害者団体の代表者が、新潟県中越地震で直面した問題とその取り組みについて報告。これらを受けてのシンポジウムでは、「利用者が参画した防災活動とマニュアルづくり ―― 新潟県の経験と今後の展望」について、行政担当者を交えて意見交換が行われた。
その中で、新潟県視覚障害者福祉協会の松永秀夫氏は、中越地震の実状を報告。会員以外の視覚障害者については、情報がないため安否確認ができなかったことを説明し、障害者情報の活用の重要性を述べた。また、松永氏は「視覚障害者は災害時にガイドヘルパーを呼んで逃げるわけにはいかない」と話し、日頃からの近所付き合いの必要性を訴えた。この点に関して、新潟県長岡市議会議員の藤田芳雄氏(全盲)は、「災害時には障害者を支援するガイドヘルパー等も被災する。広域的な支援者のネットワーク作りが必要である」と付け加えた。
防災マニュアル作りに関しては、静岡県と山梨県の具体例が報告された。静岡県では、視覚障害者への災害情報伝達方法として、音声機能付き携帯電話へのメール配信を活用する。また、山梨県の担当者は、要援護者情報の管理システムを紹介。障害者等の個人情報を透明シートに書き込み、民生委員や障害者団体等が保管し、災害時には地図に透明シートを重ね、要援護者の位置を特定するという。
今回のシンポジウムで強調されたのは、障害者を含めた要援護者が日頃から地域の行事等を通じて住民と交流を深め、防災時のネットワークを作ること。また、障害者の参加した防災マニュアル作りが、よりよいマニュアルにつながることが確認された。(山本)