BRICsとは、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をとったもので、アメリカの大手証券会社・ゴールドマンサックスが2003年秋に発表した「ブリックスと夢見る――2050年への道」と題する投資家向けレポートで初めて使い、以来、「新興市場国」を表す言葉として使われている。この4カ国は、いずれも広大な国土、豊かな天然資源、大きな人口と市場を持ち、世界の政治・経済の中で存在感を増しつつある国々である。
ただ、かつての超大国で、先進国首脳会議(G8サミット)のメンバーでもあるロシアだけは、他の3カ国と同列に扱われるのを潔しとはしていない。このため、2月5日に行われた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)における新興市場国との特別会合に、ロシアのクドリン財務大臣だけは欠席し、ロシアの意地を示した。
「厚労省は、羮に懲りてなますを吹いているのではないか?」という冷やかしを聞いた。
平成8年(1996)7月、大阪府堺市の学童が病原性大腸菌O157に集団感染し、厚生省(当時)は「貝割れ大根」が感染源の疑いがあると発表。しかし結局、これは濡れ衣だったのだが、買い控えにより、貝割れ大根の生産者が大損害を出したのは、まだ記憶に新しいところだ。
これに懲りた厚労省やマスコミは、今年流行したノロウイルスの食中毒では、一般に汚染源としてもっとも多い「生牡蛎」を特定することを慎重に避け、「二枚貝」とか「貝類」と呼んだ。また、2月4日に確認された「変異型」のクロイツフェルト・ヤコブ病(ヤコブ病)の感染者も以前は、かならず「狂牛病」(牛海綿状脳症)との関係で説明されたが、今回の厚労省の「報道発表資料」は、「牛」という文字を巧妙に避けていた。しかし、昨年死亡した51歳の男性は、平成元年(1989)頃英国に約1カ月間滞在し、狂牛病に感染した牛を食べて発症したとされる「変異型」ヤコブ病の感染者なのだから、誤解なく説明するには「牛」の登場は不可欠のはずだ。というのも、これまでわが国のヤコブ病患者は脳外科手術に伴う「ヒト乾燥硬膜」の移植を受けた人ばかりだったのであるから。
ところで狂牛病が人間に移るといって大騒ぎになったのは、忘れもしない平成8年(1996)であった。O157の騒ぎがあったこの年のそれに先立つ3月27日に欧州連合(EU)が、狂牛病感染の危険がある英国産牛肉・乳製品の全面禁輸措置を決定した。英国政府が3月20日に、「人に感染する可能性がある」と発表したのを受けて、まずフランスが輸入禁止に踏み切り、欧州、アジア、アフリカ各国に波及して、EUの禁輸措置につながったのだ。
この事件を、私は極めて鮮明に覚えている。それはEUが禁輸措置を決定した翌日から3日間、私は当協会が企画したヨーロッパツアーの責任者としてロンドンに滞在していたのだ。そして、我々が止めるのも聞かず、参加者の中に奇特にも「ローストビーフ」をわざわざ食べに、老舗に出かけた人達がいた。
狂牛病とは、ご存じのとおり牛の脳がスポンジ状になり、死に至る病気。これが人に移ったらクロイツフェルト・ヤコブ病と呼ぶ。やはり脳がスポンジ状になり、認知症(痴呆)の症状が急速に進み1〜2年で死亡するケースが多い。たんぱく質の一種、プリオンの異常型による脳組織の破壊が原因とみられる。発症確率は100万人に1人だからたしかに罹患するのは宝くじに当たるよりも難しい。でも、だからといって、大騒ぎの最中に好んで食べることはないといったのではあるけれど。
幸い、ヨーロッパツアーに行った人で認知症にかかったヒトは、まだいない。もっともまだ潜伏期間の「10年以上」は過ぎていないのではあるが。(福山博)