東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥(L'Oiseau bleu) 第33号 2019年2月4日発行 発行人:福山 博 編集人:福山 博 発行:広報委員会 ●第68回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール  第68回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(東京ヘレン・ケラー協会主催、参天製薬株式会社協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団など後援)が11月10日(土)、東京都文京区のトッパンホールで開かれました。  今年の出場者は全国の小学生から高等部専攻科まで43人。器楽7部門、声楽3部門の10部門で日頃の練習の成果を披露し、ピアニストで国立音楽大学・同大学院教授の花岡千春先生、桐朋学園大学学長の梅津時比古先生、声楽家の淡野弓子先生、邦楽ジャーナル編集長の田中隆文先生、ヴァイオリニストの和波たかよし先生に審査をお願いいたしました。  最も感銘を与えた演奏に贈るヘレン・ケラー賞は独唱1部で1位を受賞した神山翔さん(栃木県立盲学校・小6)が見事に輝き、クリスタルトロフィーと賞状が贈られました。  神山さんが通う栃木県立盲学校は、ヘレン・ケラー賞が創設された2001年と平成最後に最高賞を飾りました。また、NHK宇都宮放送局や下野新聞で神山さんの特集が組まれるなど、最高賞を獲得した熱が栃木に広まっているようです。  今年の特別演奏は、スイス・ティボールヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール第2位(最高位)など、多方面で輝かしい成績をおさめている戸澤采紀さん(東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校3年)にご出演頂きブラームス「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第3番 二短調」、シベリウス「ロマンス ヘ長調 Op.78 No.2」を演奏いただきました。  (写真)馬塲理事長からヘレン・ケラー賞の賞状を授与される神山翔さん  第68回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールに入賞された方々は次の通りです。  (敬称略、数字は学年) 【ヘレン・ケラー賞】 独唱1部 神山翔(栃木県立盲 小6) 【ピアノ1部】 2位=大元壮(筑波大附属視覚特別支援 小3) 奨励賞=新倉将希(神奈川県立平塚盲 小1) 【ピアノ2部】 2位=矢部菜央(東京都立八王子盲 小4) 3位=長縄美波(荒川区立汐入東小 4年) 奨励賞=太田愛菜(埼玉県立特別支援塙保己一学園 小6)、室井興佑(横浜市立すすき野小 6年)、相原晴(筑波大附属視覚特別支援 小6) 【ピアノ3部】 1位=宮城翔(沖縄県立沖縄盲 中1)、石田乃彩(筑波大附属視覚特別支援 中1) 奨励賞=佐藤あかり(筑波大附属視覚特別支援 中3) 【ピアノ4部】 2位=宮代希(筑波大附属視覚特別支援 高2) 3位=工藤星奈(筑波大附属視覚特別支援 高3) 奨励賞=平山彩羅(佐賀県立盲 高2) 【弦楽器の部=全員ヴァイオリン】 2位=坂下行人(筑波大附属視覚特別支援 中2) 3位=橋透孝(大阪府立大阪南視覚支援 中1) 【その他の楽器の部】 3位=坂本孝暁(箏演奏 筑波大附属視覚特別支援 中2)、香山拓也(アルトサクソフォン演奏 筑波大附属視覚特別支援 専1) 奨励賞=我妻空(箏演奏 東京都立久我山青光学園中2) 【創作・編曲の部】 奨励賞=平山彩羅(佐賀県立盲 高2) 【独唱1部】 1位=神山翔(栃木県立盲 小6) 2位=小汐唯菜(筑波大附属視覚特別支援 中2) 奨励賞=太田愛菜(埼玉県立特別支援塙保己一学園小6) 【独唱2部】 1位=広瀬由花(栃木県立盲 高2) 2位=八染まどか(栃木県立盲 高3) 奨励賞=原理子(筑波大附属視覚特別支援 高2)、伊藤美穂(山形県立盲 高2) 【重唱・合唱の部】 1位=筑波大附属視覚特別支援・中学部合唱合奏部 2位=東京都立文京盲・音楽部 3位=ヘレン・ケラー学院 ●東京ヘレン・ケラー協会人事  青木こずえ(点字使用者)が8月1日付で点字出版所編集課に配属された。  阿部美佳が9月1日付で点字出版所製版課に配属された。  吉野早紀が9月1日付で点字出版所編集課に配属された。 ●2018年度ヘレンケラー・サリバン賞は 「聖明福祉協会・盲大学生奨学金事業に  2018年度の「ヘレンケラー・サリバン賞」は、向学心に燃える視覚障害大学生の勉学の一助となるように、半世紀にわたって奨学金を貸与し、学習環境を改善するとともに、社会の各方面に有為の人材を輩出してきた「聖明福祉協会・盲大学生奨学金事業」に決定した。  第26回を迎える本賞は、「視覚障害者は、何らかの形で外部からサポートを受けて生活している。それに対して視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が委嘱した視覚障害の委員によって選考される。  贈賞式は10月4日(木)に当協会で行われ、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。  社会福祉法人聖明福祉協会は、1955年(昭和30年)に現在の理事長である本間昭雄氏により東京都世田谷区を拠点に創設され、当初は視覚障害者の家庭を訪問し、点字を教えたり、身の上相談に応じていた。その後、老人問題が大きな社会問題となったため、盲老人のための福祉施設を作ろうと青梅市に土地を求めて山を整地して、1964年(昭和39年)に軽費盲老人ホームを開設。  翌年には盲養護老人ホームを開設して、定員50人から始まった聖明園は、聖明園曙荘・聖明園寿荘・聖明園富士見荘として発展し、現在は計280人が利用している。  1969年(昭和44年)、聖明福祉協会は創立15周年を迎えた。そこで自身も中途で失明し、十分に勉強ができなかった本間理事長は、自分の体験を思い起こして、記念事業として視覚障害大学生に対する奨学金事業制度の創設を決めた。そして1969年に第1期生を募集して以来、50年間に212人に奨学金を貸与して、学習環境を改善するとともに、社会の各方面に有為の人材を輩出してきた。  同奨学金開始当初は朝日新聞厚生文化事業団から、現在は篤志家や一般社団法人昭和会館などの団体から寄付金をいただき継続している。制度も拡充し、2、3年前から国内の4年制大学だけでなく海外の大学院へ進学する学生への援助も開始した。当初月額5,000円だった貸付金額も、いまや月額4万円に増えている。  卒業生のなかには、大学教授や研究所員、弁護士、公務員、施設職員など、幅広い分野で活躍している人が大勢いる。日本盲人会連合会長の竹下義樹氏も、東京大学で教授を務める福島智氏も、内閣府障害者政策委員会委員長を務める石川准静岡県立大学教授も、聖明福祉協会・盲大学生奨学金事業を利用した人たちである。 (写真)聖明福祉協会本間昭雄理事長 ●就職支援セミナー開催  7月21日(土)、ヘレン・ケラー学院は昨年に引き続き「就職支援セミナー」を開催し、学生8人、教職員5人が参加した。  前半は「就職活動における履歴書や職務経歴書の記入方法、自己PRについて」と題し、学院臨床情報処理学講師の新美知枝子先生に、履歴書記載の実態と企業が求めていること、記入のしかたなどをご講義いただいた。  後半は卒業生講師の大谷重司氏、星野博子氏、村野誠氏に、ヘルスキーパー・開業・治療院・リハビリデイセンター(機能訓練指導員)など、それぞれの業務内容や、学院生活での苦労や現在の職場に至った経緯、仕事における取り組み方などをご講話いただいた。  ヘルスキーパーは、法定雇用率が高まったことから増加傾向にあり、業界人気も高い。しかし、「指が痛い」「腰が痛い」と言って、休職や退職に至るケースも少なくないそうである。それに対して講師からは、「それは自身の技術が未熟だからであり、その辺りを考えながら学生生活を過ごして欲しい」という指摘があった。  また、「在校中から、多くの勉強会に参加していた」「国家試験に受からなければ話になりませんよ」と厳しい言葉も聞かれた。  質疑応答では、「就労の際、何を優先に考えるか」について、女性ならではの家庭を持つ働き方のアドバイスがあり、女性にとっては大いに参考になったことと思われる。 三氏とも元気で魅力あふれる話術で、何度も引き込まれた。  「熱意のある話で良かった。参加した学生は、将来のイメージが形になったのでは」と先生方からも感想をいただき大盛況に終わった。 ●補助事業報告  社会福祉法人新宿区社会福祉協議会備品整備・  施設整備 鞄本財託助成金を受けて、下記の事業を完了いたしました。  事業名 CDデュプリケーターの購入  総事業費 9万,720円  助成額 9万円  完了日 2018年(平成30年)11月27日  社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会  ヘレン・ケラー学院 ●サポートグッズフェア2018 with 学院感謝DAY  昨年(2018年)8 月25 日(土)協会3 階ホールで『サポートグッズフェア2018』が開催された。前々日から吹き荒れた台風が去り、当日は雨が降らなかった代わりに朝から気温がぐんぐん上がりたいへんな猛暑。客足が鈍るのではと心配しながら準備をしていると、開場と同時に大勢のお客さんがおみえになった。  会場には拡大読書器や画面読み上げソフト、白杖などを取り扱うブースや、iPhone・iPad の体験や相談ができるブースなど20社の出展があり、担当者の説明を聞いて質問をし、みなさん熱心に話しこまれていた。  また、メイクのアドバイスを受けられるブースもあり、こちらは若い女性やカップルのお客さんなどで賑わっていた。  点字出版所のブースでは絶賛発売中の全盲の語り部による『川島昭恵語りCD』と活字版でTXTファイルCDのついた『近代日本盲人史』、それにグレー地T シャツの胸に、青い鳥の刺繍が入った「青い鳥T シャツ」を販売した。  3 階以外の階でもワンコイン(500 円)でのヨガ体験や盲導犬の歩行体験、それにヘレン・ケラー学院主催「感謝DAYあん摩マッサージ指圧30分無料体験会」が催された。  休憩室で遅いお昼を食べていた学生さんによると「朝から7 人施術して、このあとも予約でいっぱい」とのことであった。結局、約250人がご来場くださって盛況であった。 (写真)道案内、無料マッサージ案内、青い鳥Tシャツ販売、展示会場 ●点字図書館ボランティア懇親会  第44回点字図書館ボランティア懇親会を、11月6日(火)協会3階ホールで開催した。ボランティア活動を5年継続してくださった方、今年は点訳ボランティア14人、ランプの灯ボランティア3人の計17人に感謝状を贈呈した。  今回の講師は、「ポップ王」として知られ、本屋大賞の創設メンバーでもある(株)三省堂書店の内田(うちだ)剛(たけし)さんにご講演いただいた。テーマは「本の力を信じて 〜 書店人生活25年を本屋大賞を中心に振り返る」。  本が最も売れたのは1996年で、当時は2兆円産業と言われていたが、その後売り上げは激減、今では半減するまでに落ち込んでしまっている。  どうすれば人が本屋に来てくれるのか。2000年当時は禁止されていた「手書き」によるポップを店内に掲げ、2003年には本屋大賞を設立。年間600冊もの本を読むという内田さんの、本に対する熱い思いが会場を沸かせていた。  軽妙な語り口で会場と一体になった1時間半は飛ぶように過ぎ、その巧みさで確実に皆の心をとらえた。「話しきれなかったことがまだまだある」と内田さんご自身が講演の最後におっしゃっていたが、聴衆もまだまだ聞きたいと感じていた。  講演終了後は、内田さんを囲んで懇親会が行われた。講演では話しきれなかったという、本を取り巻く現状の奥深い部分を、さらにほんの少しうかがうことができた。 ●職場見学 ヘレン・ケラー学院は、夏休みを利用して、都内を中心にヘルスキーパールーム(2社)と特別養護老人ホーム、学院OB治療院の見学を行った。  この見学は、将来に備えて学生のうちから現場を体験しておこうという授業の一環として取り組んでいる。それぞれの見学先では、設備を実際に手で触れて確認したり、運営方法の説明を受けた。 今年は3A・3B・5Aの学生が参加し、企業担当者や卒業生に質問をするなど、緊張した表情を見せながらも積極的に発言をしていた。  (写真)ヘルスキーパールームでベッドを確認する ●再建が進む被災校舎  2018ネパール現地報告  海外盲人交流事業事務局長 福山博  (写真)左上:地震で倒壊した本館校舎、右上:倒壊した場所に再建中の本館校舎、左下:粗末な仮設校舎、右下:インド政府が建設して被災し修復した校舎  日本盲人福祉委員会の助成を受けて筆者は、2018年12月14日〜31日の旅程でネパールにおける支援事業視察のために出張してきた。  吉報としては、ネパール地震2015で全壊した震源地ゴルカ郡のアマル・ジョティ・ジャンタ校の本館校舎再建工事が行われていたことである。  同校は不便な山の上にあるが、首相や大臣等を輩出した有名校であるため地震発生時にはインド政府の財政支援により、高校2・3年生用の校舎を建設し完成していた。しかし、地震の影響でその新しい校舎壁面には無数の亀裂が生じたが、その校舎補修工事が2018年12月には完了し、あとは仕上げの塗装工事を残すだけになっていた。  以前同校を訪れたときは、「ゴルカ郡では約500教室が被災したが、同校には使える教室も残っているので校舎再建の優先順位は低い、再建工事はいつになるかわからない」と副校長は嘆いていた。  ところが実際には2018年5月18日には税込総額2,147万4,309.14ルピーによる12教室を含む校舎本館立替工事の契約が締結され、2018年7月30日から建設が開始され、2020年4月12日に完工する予定である。  この工事はネパール政府復興庁(NRA)が実施するが、トントン拍子に進んだ裏には、建設資金をゴルカ財団が提供したことが関係している。  同財団は米国で高等教育を受けたゴルカ出身のネパール人たちと、ゴルカ郡で文化人類学の現地調査を実施した米国人など同郡と関係のある人々が、ゴルカ郡における貧困層の生活環境を改善することを目的に活動する、米国の首都ワシントンDC郊外に本部を置く非営利団体である。同財団の意向によって同校の建て替え工事は一気に進んだものと思われる。  同じ仮設教室でも財政基盤のしっかりした都市部の学校のそれには床があり、山間部の学校はドアもない掘っ立て小屋同然で明かな違いがある。そういう意味で、アマル・ジョティ・ジャンタ校校舎再建が前倒しになったことを喜びたい。     『UEBハンドブック』点字版の贈呈式  12月18日(火)、インド国境沿いの農村にあるドゥマルワナ校を訪問した。これまで同校へは川の水が引いた乾期に4WDで川を渡らなければならなかったが、2018年に橋が完工しており、ドゥマルワナ村は陸の孤島を返上していた。 (写真)新しくできた橋  1年前の2017年12月に同校を訪問したとき、旧知の全盲の教員クリシュナ・ティミルシナ君か ら『UEBハンドブック』の墨字版が発行されたことは喜ばしいが、次は点字版をぜひ発行して欲 しいと陳情された。  彼は就学前の点字クラスから10年課程を修了するまで当協会の丸抱え支援で勉強した1期生で、その後奨学金を得て大学を卒業して母校の教師になったので、25年前からの知り合いだ。  そこで2018年度予算に『UEBハンドブック』(点字版)製作費として40万円を組み、昨年8月にNAWB宛送金した。その点字版が完成したので、車で統合教育校に運んで贈呈式を同校でも行ったのである。 (写真)左から二人目がクリシュナ君  12月20日(木)、シャンティ校を訪問した。同校でも2017年12月に旧知の全盲教師ティカラム・ブーサル君から『UEBハンドブック』点字版を発行して欲しいと陳情されていたので、校舎本館前で贈呈式を行った。 (写真)中央の白杖を持っているのがティカラム君 ●韓国とフィリピンから施設見学     韓国・全州大学から女子大生5人組  8 月17 日(金)午後2 時40 分〜午後4時、韓国・全州大学の女子大生5 人と通訳1 人の計6 人が、点字出版所の施設見学に訪れた。  彼女たちは大学で特殊教育を学んでおり、授業の一環として大学から助成金を貰って来日したのだ。このため帰国後、レポートを書き、大学で発表しなければならないが、日本での見学の予約が取れず苦労したこと、見学に応じてくれたところも形ばかりの説明に終始したこと。しかし、当協会点字出版所だけは、「詳しく説明していただき、資料も貰うことができて、大変助かりました」と感謝の言葉を述べていた。 そこで、「韓国にもお盆がありますよね。今週は日本のお盆休みであることを知っていますか?」と言った。すると「あっ!」と一斉に声があがり、「韓国では旧暦で行うので知りませんでした。韓国でもその期間中は帰省したり、旅行に出かけるので忙しいです」と言って驚いていた。     フィリピン・セブ島から見学  編集課で使っている点字ディスプレイやブレイルメモのメーカーであるKGS(株)は、フィリピンのセブ島に子会社を持っており製品の組み立てを行っている。その縁で10 月17 日(水)、KGSの手配で、セブ・ブライユ・センター・インコーポレーテッド(CBCI)から4人の関係者(検眼専門医2人にソーシャルワーカーと看護師)が当協会点字出版所を見学に訪れた。  CBCI は1979 年に設立され、フィリピン教育省によって正式に認可された非営利団体で、セブ市の財政支援で運営されている。その事務所と学習センターは、セブ師範大学(Cebu Normal U- niversity)の多目的ビルの2 階にある。  セブ島(州)の面積は山梨県とほぼ同じで、人口は336 万人で、これは静岡県より少し少ないが茨城県、広島県、京都府より少し多い人口だ。しかし盲学校はないので、視覚障害者は統合教育を受けている。また、別途職業教育を受ける視覚障害者もおり、それらの就学前教育として点字やパソコン を教えているのがCBCI で、現在、40 人の利用者がいるそうだ。  教育予算不足で統合教育校では、点字教育などの視覚障害者に対する適切な指導がなされておらずCBCI の存在意義は高いのだが、そのCBCI自体予算が逼迫しているのが悩みの種だという。  今回の来日に当たって、9 月中旬のKGSの話では10 人が来日するということであったが、10 月9 日にはビザの関係で5 人に減り、実際に二 人のKGS社員に引率されて当方を訪問したのは4 人で全員女性だった。全盲の参加予定者は体調を崩して、ドタキャンになったのだという。  (写真)引率したKGSの2人(左端の男性)とCBCIの皆さんに説明する田辺編集課長(右端)     韓国の点字教科書会社から見学  11月14日(水)午後2〜4時、韓国で点字教科書を製作している(株)エクスビジョン・テクノロジーのキム・ジョンホ理事(視覚障害学生教科書制作事業総括・全盲)、ソン・ミンヒ団長(視覚障害学生教科書制作事業実務責任者)、ナ・ヒャンソン責任者(拡大教科書制作責任者・日本語通訳)が当協会点字出版所を訪れて、日本における点字教科書、拡大教科書、DAISY教科書の製作法法について、予定時間を1時間もオーバーして熱心に見学していった。  日本の文科省著作点字教科書の場合、11月〜2月で、当該教科書の半分に当たる前期分を製作し、その後7月までに残りの後期分を製作している。  一方、韓国教育部(省)委託点字教科書の場合12月〜2月で全巻製作しなければならないので、時間に追われてどうしても粗雑になってしまうと、悩みを打ち明けていた。 ●二件の工事     新館屋上防水・笠木補修工事  12月1日(月)〜28日(金)協会新館屋上防水・笠木補修工事を施工した。総工費は税込313万2,000円で、施工業者は、池田建設株式会社。  工事はまず新館屋上の高圧洗浄と古い笠木の撤去に4日間、防水シートを張り付けるためのプライマー(接着剤)塗布と絶縁シートの取り付け、その上からウレタン防水施工に8日間、新しい笠木を取り付ける工事に3日間、清掃・片付け・検査・手直しに6日間、日曜日を除く合計18日間かかる計画だったが雨にたたられ、結局、1週間押して23日間もかかってしまった。  ところが一転して工事後は、今度はまったく雨が降らないので、雨漏りカ所の点検ができず、今は雨が降るのを待っている状態である。     旧固型印刷室改修工事  現在施工中の工事は、1月22日(土)〜2月21日(月)の<予定>で、3階旧固型印刷室の壁面塗装と床工事を行っている。  本工事は、まずは旧固型印刷室を半分に区切り、従来から設置してある断裁機や紙折機等をまず前方半分に移動し、後方半分の壁面を塗装する。次いで撤去した10トンあった固型点字印刷機を取り付けるためにうがたれていた溝を埋めて、1階印刷室の床と同様、ユータックプライマーレス工法により床をPLコーティングする。それが乾いたのち、今度は前方の機械を後方へ移動して、同様の施工を行うというものである。 施工業者は、株式会社大東機材で、総工費は税込270万円である。 (写真)工事が完了した後方半分は、PLコーティングした床が陽を反射してまぶしい ●教科書の製作・発行     『地域理療と理療経営』(第4版)  2013年3月20日発行の『地域理療と理療経営』(第3版)が、法改正などにより内容に問題が出てきた。そこで同書の改訂版(第4版)を2019年3月20日発行(予定)することになった。  同書は盲学校の理療科で教科書として使われており、拡大活字版、点字版、音声DAISY版の3媒体での発行となる。点字版、音声DAISY版は点字出版所において内製化しているが、拡大活字版は外部の印刷所に委託しての印刷となる。このため最後に発行する音声DAISY版が校了しなければ、真っ先に編集作業を行った拡大活字版を外部の印刷所に出稿できない。実際に、音声DAISY版をモニターした著者から必ず修正が入るのだ。     『生活と疾病 IA』(追補版)  2013年3月20日発行の『生活と疾病 IA』(初版)は第4章第7節で終わっているが、 そこに第4章第8節を追加したいとの著者からの要望があった。初版の拡大活字版は在庫はたっぷり残っており、第4章第7節までは一切手をつけないということだったので、拡大活字版は別冊の追補版を作成することにした。ただ、点字版と音声DAISY版は内製化しており、ほとんど在庫を持っていないので、こちらは別冊ではなく第1章から第4章第8節まで一体として、タイトルは『生活と疾病IA』(増補版)とすることにした。     点字教科書『中学部道徳』  10月25日(木)13:30〜文科省7階検定連絡室1で 、文科省著作中学部点字教科書『道徳』(1〜3年)の入札が行われた。  10月5日(金)に一般競争入札公告があり、10月16日提出期限の参考見積には、教科書に必要な材料、表紙の作成費用、本文に使われる点字用紙の金額、校正回数とその金額、製版に関しては、点図作成の金額、点訳回数と金額、印刷、製本にかかった金額を記入し、文科省へ提出した。  これが入札への参加意思表明となり、入札保証金を納めなければならない。この保証金も重要で、出版社は納めた保証金より安いページ単価を出さなければならないのだ。過去に納めた保証金より高いページ単価を出して失格になった点字出版所もあるので気が抜けない。  当日も当方は、今後のこともあるのでなるべく高く出したいが、文科省側は安く決めたいので、腹の探り合いになる。お互いの思惑が一致すればよいのだが、そうでない場合がほとんどで、展開が読めないと幾度となく入札回数を重ねる。しかし今回は、10月25日13時40分に無事に2回目で『中学部 道徳』を当協会が落札した。  編集委員は、筑波大学附属視覚特別支援学校と愛知県立大府特別支援学校の先生だったので、冬休みに東京で集中して校正したいという要望だった。  そこで当協会点字出版所は総力をあげて、12月23日には『中学部 道徳』(1〜3年)各学年2巻(全6巻)の点訳を行い、学校の冬休期間中に初校を校了することができた。 ●編集後記  当協会は昨年(2018年)7月に、全盲の語り部川島昭恵さんのCD『新美南吉&宮澤賢治』(税別2,600円)をリリースした。それを祝して7月14日(土)オーナーが元協会職員であるJR西荻窪駅近くのライブハウス「音や金時」にて「川島昭恵語りCD発売記念会」を開催した。  川島さんによる語り「セロ弾きのゴーシュ」(宮澤賢治作)で開幕し、大迫力のステージに観客はぐいぐいと物語の世界に引き込まれたが、これも日々の精進の成果なのだろうを感服した。  当協会が監修した、学研プラス刊、やさしく読めるビジュアル伝記7巻『ヘレン・ケラー』税込1,026円が、昨年10月26日に発売された。  これまでも当協会は、ヘレン・ケラーに関する伝記等の監修を様々な出版社から頼まれて、本部で引き受けてきた。しかし、それは徹底したものではなかったようで、「奇跡の人」とはアン・サリバン先生のことなのに、「奇跡の人ヘレン・ケラー」というような誤記を見逃してきたこともあった。  そこで今回は、協会の威信にかけて、点字出版所編集課の廣瀬宏尚・吉野早紀両氏、同製版課の阿部美佳氏の力を借りて、監修というよりも徹底した校閲で、ケアレスミスから著者の事実誤認まで徹底的に調べ上げた。  例えば、ヘレン・ケラー女史の伝記は、当たり前だが、そのオリジナルは英文である。しかし、それを和訳するときに、戦前から戦後すぐの時代には十分な資料もないままに誤訳されて、それが誤ったまま引用・転載されて現在に至るケースもあったようである。  例えば、「Dr.」を「Ph.D.」という意味で使われているのか、「医師」なのか、特定せずに一律に「博士」としている場合があり、今回は英文に当たって特定して、これらの誤りを正した。  この春には統一地方選、7月には参議院議員通常選挙、秋には小学部の文科省著作点字教科書の入札もあり、多難な1年になりそうだ。しかし、「点字選挙公報」も「点字教科書」も誤記や見落としは絶対許されないので、心して取り組みたいものである。(福山博)     広報委員会 委員長:福山博(理事・点字出版所長) 委員:大久保美智子(ヘレン・ケラー学院) 委員:戸塚辰永(点字出版所編集課) 委員:佐久間朋(点字出版所製版課) 委員:和泉枝里(点字図書館) 委員:森本環(点字出版所録音課) 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 ●『青い鳥:L'Oiseau bleu(ロワゾー・ブルー)』Web版http://www.thka.jp/about/information.html ●“視覚障害者と共に”社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。http://www.thka.jp ●『愛の光通信』Web版  海外盲人交流事業事務局が年に2回発行する『愛の光通信(Light of Love)』は下記からダウンロードして読むことができます。 http://www.thka.jp/kaigai/reports.html