東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥(L'Oiseau bleu) 第31号 2018年2月1日発行 発行人:福山 博 編集人:福山 博 発行:広報委員会 ●第67回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール  第67回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(東京ヘレン・ケラー協会主催、参天製薬株式会社協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団など後援)が昨年11月11日(土)東京都文京区のトッパンホールで開かれました。  今回の出場者は全国の小学生から大学生まで41人。器楽6部門、声楽3部門の9 部門で日頃の練習の成果を披露し、ピアニストで国立音楽大学・同大学院教授の花岡千春先生、桐朋学園大学学長の梅津時比古先生、声楽家の淡野弓子先生、ヴァイオリニストの和波たかよし先生に審査をお願いいたしました。最も感銘を与えた演奏に贈るヘレン・ケラー賞の受賞は4年ぶりに該当なしに終わりました。  特別演奏は、東京藝術大学音楽学部附属音楽高校、同大学を卒業し、同大学院修士課程在学中で、昨年開催された第86回日本音楽コンクールピアノ部門で第2位及び聴衆賞に入賞された鐵百合奈さんにご出演いただき、モーリス・ラヴェル『夜のガスパール』より「オンディーヌ」、ヨハネス・ブラームスのピアノソナタ第2番嬰ヘ短調作品2番を演奏いただきました。  (写真)馬塲理事長から賞状を授与されるピアノ1部一位入賞の矢部菜央さん  第67回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールに入賞された方々は次の通りです。  (敬称略、数字は学年) 【ピアノ1部】 1位=矢部菜央(東京都立八王子盲 小3) 【ピアノ2部】 2位=石田乃彩(南魚沼市立浦佐小 6年) 3位=城間久斗(横浜市立盲特別支援 小5) 奨励賞=室井興佑(横浜市立すすき野小 5年) 【ピアノ3部】 3位=佐藤あかり(筑波大附属視覚特別支援 中2) 【ピアノ4部】 3位=鈴木元気(筑波大附属視覚特別支援 高3) 奨励賞=宮代希(筑波大附属視覚特別支援 高1) 【その他の楽器の部】 2位=香山拓也(アルトサクソフォン演奏 筑波大附属視覚特別支援 高3) 奨励賞=我妻空(箏演奏 東京都立久我山青光学園中1) 【創作・編曲の部】 奨励賞=吉田智空(創作演奏 横浜市立盲特別支援高1) 【独唱1部】 2位=城琉乃介(山梨県立盲 小6) 奨励賞=芳澤和子(長野市立櫻ヶ岡中 2年) 【独唱2部】 3位=広瀬由花(栃木県立盲 高1)、森山 結華 (平成音楽大 3年) 【重唱・合唱の部】 奨励賞=東京都立文京盲 音楽部 ●就職支援セミナー開催  7月21日(金)、ヘレン・ケラー学院は、初の試みとして就職支援セミナーを開催し、夏休み初日にも関わらず、学生と教職員40人近くが参加した。  テーマは1.視覚障害者の「あはき」就労の現状と具体的な進路先や求められる人物像。2.卒業生講話。3.企業講話の3題。  「1.」の講師は、東京視覚障害者生活支援センター就労支援担当の石川・宮之原両氏で、内容は将来を見すえて勉学に励む必要性や、業種により手技が大きく異なること、卒業してからがスタートであること、人気の高いヘルスキーパーは50歳を超えると採用率が極めて低いことなどであった。  卒業生講話は、ヘルスキーパー、デイサービス、開業で活躍している卒業生3氏をお招きし、勤務にいたった経緯や、仕事内容、普段から心がけていることなどを中心に話していただいた。なかでも学院を平成19年度に卒業し、人形町治療院(埼玉県鴻巣市)を経営している佐野雄彦先生はまだ30代だが、卒業後に漢方の勉強もされ、治療院の他に漢方薬局も開業し、鍼灸専門月刊誌『医道の日本』(2017年5月号)に論文が掲載されるなどして活躍されていることから、学生には強い刺激となったようだ。  企業講話は、ヘルスキーパー運営についての方針や、訪問医療マッサージの具体的業務など、企業の考え方も垣間見える話だった。  セミナー終了後は、「多くの卒業生や企業担当者と交流ができて、とても良いセミナーだった。次回も期待しているよ」と、学院講師の先生から嬉しい感想をもいただいた。  (写真)学院OB佐野雄彦先生 ●サポートグッズフェア2017 with 学院感謝DAY  7月29日(土)、協会主催「サポートグッズフェア2017」とヘレン・ケラー学院主催「感謝DAYあん摩マッサージ指圧30分無料体験会」を同時開催した。7月下旬の開催は初めてだったが天候にも恵まれ約250人が来場した。  サポートグッズフェアは、初出展も含め20社の視覚障害者向け機器・用具の企業・団体が、それぞれの人気商品や新商品などを展示。来場者は商品を手に取って確認し、説明を受けることができるため、どのブースも盛況だった。ここ数年、出店しているヨガや茶菓のサービスコーナーはもちろん、初出展の化粧品会社では、メイクアップ体験などもあり、女性の姿が多く見受けられた。  新発売されるデイジー再生機PTR3やPTN3の展示ブースでは、操作などの質問をする姿が多くみられ、興味の高さがうかがえた。  あん摩マッサージ指圧無料体験会は、ヘレン・ケラー学院の2年生8名、3年生9名が2名の専任講師の指導のもと、30分の施術を担当し、1年生4名が受付や誘導を行った。今年は、過去最大となる16台のベッドを用意して体制を整えたが、予想を上回る123名の方が訪れた。待ち時間が長くお帰りになる方も数名いた。しかし、多くの方から「体が軽くなった」「もっと体験したかった」とのお声を頂戴した。初めて体験する2年生も、施術しながら積極的にコミュニケーションをとるなど、地域の方たちとの交流を深めた。 ●韓国視覚障害者図書館協会一行が来訪  9月12日(火)〜15日(金)の旅程で、韓国視覚障害者図書館協会(金鎬植<キム・ホシク>会長)一行24人が来日。当協会には9月13日(水)午後1時15分〜3時15分、同一行に通訳2人と添乗員1人を加えた27人が訪れ、馬塲敬二理事長による歓迎挨拶と協会の説明、加藤俊和技術顧問(全視情協参与・サピエ図書館担当)による「サピエ図書館誕生から現在までの実績の推移」のレクチャーを行った。  施設見学では、編集室では戸塚辰永主任による編集工程の説明、点字製版室では山本令子主任(現・課長補佐)によるドイツ製PUMAZ自動製版機の実演、印刷室では佐々木晃技師によるチェコ製GPB-3の実演を行った。  韓国では亜鉛板による点字製版は行われていないので、使用済みの点字亜鉛原版を、争うように見本として持ち帰っていた。 ●2017年度ヘレンケラー・サリバン賞は「点訳・音声訳集団一歩の会」理事長の岩野英夫氏に  2017年度の「ヘレンケラー・サリバン賞」の受賞者は、「心をこめて、よりよい奉仕を 支えあって共生」を合い言葉に、録音・点訳図書制作貸出・寄贈・ガイドヘルパー事業を行っている特定非営利活動法人 点訳・音声訳集団一歩の会の創立者で理事長の岩野英夫氏に決定した。  贈賞式は10月3日(火)に当協会で行われ、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。  岩野英夫氏が、練馬区立図書館音訳講習会修了者4名と点訳・音声訳集団一歩の会を立ち上げたのは、1994年4月のことであった。それに先立つ1年前の1993年1月から、彼は近所に住む視覚障害者と知り合いになり、個人ベースでプライベート録音サービスを行っていた。  当時、彼はタカマツ加工という各種プラスチック材料およびその製品の販売を行う商社を経営していた。1991年にバブルが崩壊し、1992年に入ってから全国の地価は下落し始め、この頃からプラスチック産業は、市場性が高く、高度成長が期待できる中国へ進出した。バブル期の超多忙な生活から解放され、皮肉なことにやっと人間らしい生活を取り戻すことができた52歳の岩野氏も第2の人生を考える時期に来ていた。  彼が改めて朗読を本格的に習い始めたのは、マイクを使うことから離れて久しく、限界を感じていた頃、ちょうど目に付いたのが音訳講習会であったからだ。  彼は会社を立ち上げる前に実は芸能活動も20年ほど行っていた。10代の頃は親戚が表面処理(メッキ)工場を営んでいたので、そこで働きながら童謡歌手の歌のおばさんこと安西愛子という大御所の指導を受け、結婚式の司会とか、音楽プロデュースの仕事などを行っていた。  その当時のことで思い出深いのは、東京都青梅市に盲老人ホーム聖明園ができて4・5年たった頃から、池袋ロータリークラブの方々と慰問活動を10年ほど続けたり、東京都東村山市にある国立ハンセン病療養所の一つである多磨全生園に慰問に行き、その後は、ボランティア活動で完成した録音物を長く寄贈したことだ。  もう一つの思い出は、矢崎節夫という詩人と二人三脚で、「童謡とその詩人たち お話と歌によるコンサート」というタイトルで、童謡詩人・金子みすゞの詩「わたしと小鳥とすずと」などを歌に乗せたコンサートを10年くらい続けたことである。  岩野氏が音訳ボランティアを志した動機は、自分が司会などの芸能活動を行ったことがあり、しゃべりにある種の自信があったことだった。だが、一歩の会を立ち上げてみると、マイクの前で語ることはほとんどなく、もっぱらマネージメントに専念した。  ゼロからのスタートなので、どのような機材を揃えるかで悩み、ソニーのカセットデッキを選び、ドキュメンタリーが少ないというので、第1作目は『ホームレスになった』という都庁の職員でルポライターの作品を、地方の放送局の元アナウンサーだった会員にお願いした。  一歩の会は現在、4つの月刊誌と1つの週刊誌という録音雑誌をはじめ、様々な音訳・点訳冊子を発行している。選考委員会では約20年間の点訳・音訳活動、なかでも『週刊東洋経済』デイジー版が、原本発行の翌週には読者の手元に届いているとして、その迅速な音訳サービスを驚きとともに高く評価していた。  それに加えて有償事業だが、きめ細やかなガイドヘルパー事業がことのほか高く評価された。それは、一歩の会の所在地である東京都練馬区だけでなく、希望者には広範囲に同行援護利用契約を結びガイドヘルパーサービスを提供しているからだ。とくに緊急事態に対しては、ユーザーの事情をよく考慮した支援を行っていると激賞した。  (写真)授賞スピーチを行う岩野氏 ●全盲の人権活動家陳光誠さん来訪  5年前に、中国当局により軟禁されていた全盲の人権活動家陳光誠氏が、活劇を思わせる脱出劇の末、米国に亡命した事件があった。  2012年4月、陳氏は軟禁されていた中国山東省臨沂市の寒村・東師古村の自宅から16時間かけて8カ所の塀を乗り越え、その途中、足を3カ所骨折したためその後は這って計20時間以上かけて壮絶な脱出を行う。しかもそれは、米中戦略・経済対話のためにヒラリー・クリントン国務長官が北京にやって来る直前だっ た。そして紆余曲折の末、陳氏は米国へ亡命したのだが、その間の奇跡の脱出は驚きとともに当時日本でも大きく報じられた。  アムネスティ・インターナショナル日本の招きで10月18日に来日した陳光誠氏(45歳)は、26日には当協会を訪れ『点字ジャーナル』のインタビューに応じた。  同氏は11月7日まで滞在し、札幌市、盛岡市、鎌倉市、千代田区、徳島市、広島市、京都市、名古屋市の全国8カ所で講演したほか、盛岡市の桜井記念視覚障がい者のための手でみる博物館、アイメイト協会、日本点字図書館等も訪問した。  日中友好を声高に言う人々は、人権等には触れない場合が多いが、障害者には自分の身の回りのことだけでなく広い視野で見て欲しい。中国の盲人協会や障害者連合会は、共産党の組織で、障害者を管理する組織であり、視覚障害者の権利を守り福祉向上を目指す日本や米国の盲人協会とはまったく違って、障害者は軽んじられ役職には定年間際や左遷された共産党員が就いている。  人権や言論状況の改善には、中国の民間に広がる庶民の力とインターネットの力に加え、国際社会の役割が重要。遠い場所で起きているように見える人権侵害に無関心でいれば、問題は拡大し続けて自分たちにも影響を及ぼす。アジア全体が民主化する過程で、日本はとても重要な役割を果たすだろう。民主的で自由な国家を建設できないまま中国が強国化すれば、全世界の災難になり、隣国の日本は悪影響を受けるはずだ。  中国の人権状況は悪化しているが、共産党の激しい弾圧を受けながらも社会の変革を求める民間レベルの運動は着実に広がっている。すでに民主化の土台は整っており、将来間違いなく変革が起き、民主的な体制に変わるだろう。  札幌、盛岡と講演してきたが、学生だけでなく一般市民も熱心に聞いてくださった。関心をもち、少しでも支援の気持ちがあることを表明するだけでも大きな力になる。経済大国・日本には「人権大国」としての役割も担ってほしいと陳氏は強い期待を寄せた。  (写真)米国から同行した英語・中国語通訳とともに ●突然の総選挙で大わらわ  10月7日午後6時までの約束だった最高裁判所裁判官国民審査の点字データ(A4判用)が遅れていたので編集課はジリジリしながら待っていた。すると「国民審査の校正は全て終了したので、点毎は引き揚げます」とのメールが午後8時半に届いてビックリ。大あわてでデータ入手担当施設に「点毎が校了したのになぜ、なぜデータが届かないのか?」と電話で督促。それから10分後に「大変遅くなり、申し訳ありません」の謝罪と共にデータが送られてきた。今回の選挙では、藪から棒に誕生した政党の比例区原稿入手に手を焼いて、同施設は大混乱に陥っていたようだ。  大混乱といえば、東新宿にあるビジネスホテルも同様だった。製版課の職員1名が10月10日午後11時半頃、同ホテルにチェックインしようとしたところ、「予約を受けていません」との返事。製版課からは別途2名が10月8日から宿泊しており、一緒に予約したはずだと猛抗議して、なん とか宿泊できたのであった。  このような事態に至ったのは、10月1〜8日が中国・国慶節の大連休で、10月7日まで都内のホテルは満室で混乱していたためらしい。  国慶節期間中、当協会は同ホテルと送金のことでも大もめした。振込期限内に送金したにもかかわらず、ホテル側がその確認が取れないというのだ。  予約がキャンセルされたら大事なので、点字出版所長が預金通帳など送金した証拠書類を持って同ホテルに乗り込むと、さすがのホテルスタッフも気付いたようで途端に平身低頭となったが、日本のホテルとは思えない大失態であった。 ●ボランティア懇親会を開催  第43回点字図書館ボランティア懇親会を11月7日(火)、当協会3階ホールで開催し、ボランティア活動を5年継続してくださった音訳ボランティアの方2名に感謝状を贈呈した。  今年のメインイベントは、バリアフリー映画鑑賞推進団体シティ・ライツ代表平塚千穂子さんによる講演、「見えなくても、映画はみえる」というテーマで、これまでの活動や今後の夢についてお話いただいた。  実際に音だけの観賞、音声ガイド入りの観賞、映像の入った観賞の3パターンを体験し、音声ガイドの重要性を実感することができた。今まではあまり関心を持たれなかった障害者の文化活動という分野に貢献してくださる平塚さんのような方は、とても貴重な存在だと感じた。  講演後は平塚さんを囲んでの懇親会。普段ゆっくり話す暇のないボランティアさん同士の交流ができ、とても和やかな時間となった。 ●補助事業完了報告  社会福祉法人新宿区社会福祉協議会備品整備・施設整備(株)日本財託助成金を受けて、下記の事業を完了いたしました。  ここに事業完了のご報告を申し上げますとともに、ご協力を賜りました関係者の皆様に謹んで感謝の意を表します。  事業名 ヘレン・ケラー学院校舎漏水補修工事  総事業費 52万9,200円  助成額 42万円  完了日 平成29年11月15日 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ヘレン・ケラー学院 ●学院内に点字ブロックを設置  夏休み中に、正面玄関入口と玄関内上りかまち、階段部分に点字ブロックを設置した。  通常は直線状に点字ブロックを設置するのだが、学院玄関の上りかまちがカーブしている特殊形状であるため、学院長の鶴の一声でアーチ状に加工して施工することになった。  施工は業者2名と田村芳雄学院職員の計3名で大汗を流しながらの作業となった。 ●チャレスポとコンバットレスリング大会で施術     チャレスポ!TOKYOにて  9月18日(月・祝)、ヘレン・ケラー学院は、東京国際フォーラムで開催された『チャレスポ!TOKYO』にマッサージコーナーを出展した。  このイベントは、東京都と東京都障害者スポーツ協会が主催し、多くの方々に障害者スポーツの魅力を知っていただくための参加体験型スポーツイベントとして平成24年から開催し、東京国際フォーラムでの開催は今回で3回目。マッサージコーナーは今回初めての試みで、第1号として貢献できたことは学生にとって、とても良い経験になったことだろう。  多くの方に体験していただくため、体験時間は15分で、定員70名に設定し、混乱を避けるため事前整理券配布方式で行い、お陰様で満員御礼にて終えることができた。参加したのは、学生7名とOB2名の9名(引率は教職員4名)。学生達は、すでに社会で活躍しているOBの手技を間近で見たり、手技の意見交換を交わしたりするなど、積極的に学習している姿が印象的だった。また、施術の合間に、パワーリフティングの宇城元選手や、ウェルチェアーラグビーの官野一彦選手など、筋肉隆々とした選手の身体を直に触らせていただく機会にも恵まれ、とても勉強になったと喜んでいた。  会場には小池百合子都知事も来場され、車椅子に乗って競技体験をするなどしていたが、ちょうど解散総選挙が騒がれた時期であり、多くの報道陣に取り囲まれていた。     コンバットレスリング世界大会 10月22日(日)、埼玉県本庄市の本庄総合公園体育館で開催された「第3回コンバットレスリング世界選手権大会」にてヘレン・ケラー学院はマッサージを施術した。 チャレスポ東京に参加した話を保健体育の先生に話した翌週、「先週の帰宅途中に、コンバットレスリング大会実行委員長の知人と偶然すれ違い、マッサージ体験ができないか? と提案しておいたわ」と先生から聞いた後、とんとん拍子に話が進み「世界大会にマッサージブースを設けませんか?」とお誘いをいただいた。 コンバットレスリングは、本庄市発祥のスポーツで、1本または、獲得ポイントで勝敗が決まる競技である。本庄市はヘレン・ケラー女史が尊敬した塙保己一生誕の地でもあり、同市市長から、ヘレン・ケラー学院の出展をとても喜ばしいことだと当日ご挨拶いただいた。 当日は早朝6時半に新宿駅に集合して、解散したのは18時。往復3時間半と遠方であることから、すでにあマ指の免許を保持している学生2名と保健体育の先生の計4名で参加し、筋肉隆々とした23名のアスリートの肉体をほぐした。 日本をはじめ、米国、オーストラリア、ルーマニア、ブラジルやアルゼンチンなど、筋肉構造に違いがあり「骨盤が日本人と全然違う」「脊柱起立筋が盛り上がっている」「長趾伸筋の筋肉が女性の小指より太い」「ふくらはぎの筋肉が2つある!?」と、驚きの連続だった。  全ての疲労が取れるわけではないが、外国選手にも「SHIATSU, so nice!!」と喜んでもらった。 ●在ネパール日本国大使館での署名式  ネパール盲人福祉協会(NAWB)が、日本政府の2017年度「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に申請していた総額82,257米ドル(約946万円)にのぼる「点字教科書発行用点字プリンタおよび付属装置(Braille printers and ancil- lary equipment)」の供与が認められ、その署名式が12月18日(月)午前11時からカトマンズにある在ネパール日本国大使館において、ネパール駐箚特命全権小川正史大使とNAWBクマール・タパ会長によ って行われた。  同署名式には、筑波大学カマル・ラミチャネ准教授が主賓として、日本の識字率は200年前から世界最高水準であったこと、国の発展には教育が不可欠で、今度の供与は視覚障害者教育の核となる点字教科書発行に極めて有益であると述べた。  同署名式には別途、NAWBの役職員、同申請のために推薦状を出した東京ヘレン・ケラー協会を代表して、ネパール出張中であった海外盲人交流事業事務局長の福山博も参列した。  本署名式はネパール国内での関心が強く、国営放送のネパールテレビジョン(NTV)や民放の24ニュース、政府系ネパール語日刊紙『ゴルカパトラ』をはじめとしたネパールのマスコミが多数取材に来ており、同日から翌日にかけてネパール国内で大きく報じられた。  (写真)署名後契約書を交換して握手する小川大使とタパ会長 ●製版課の大阪・東京研修  仲村点字器製作所が平成20年3月に工場を閉鎖し、平成24年に点字器の販売中止を決定し、事実上の廃業を宣言した。このため同社製の自動点字製版機ZP Makerを使っている施設は、その保守・整備に苦慮している。当協会点字出版所はZP Makerを3台所有しており、これまで何とか独自に修理してきたが、点字製版機の心臓部となる6点ピンボックスの分解・整備はできないでいた。  日本ライトハウス点字情報技術センター(TeCTI)は、過去に6点ピンが折れたことから、6点ピンボックスの分解・整備の技術を確立していた。そこで、当協会は日本ライトハウスに協力依頼し、大阪と東京で研修を行うことで同技術の習得を行った。     大阪研修  9月5日(火)に製版課の山本令子、佐藤尊礼、岩屋安昭、佐久間朋の4人で東大阪市のTeCTIへ行った。予定より30分ほど早く着いたが、講習をお願いしていた金子研一主任も「早く来ていただいて助かったかもしれない」と、予定よりも早く研修会を始めてくださった。  ZP Makerの分解・整備は、ピンの受けや亜鉛版を動かす可動部・基板などについたゴミを、強力なエアダスターで吹き飛ばす事から始まり、ZP Makerの構造説明、点を打ち出すクランク等の各可動部へ注油する際の注意点が解説された。  一番の要である6点ピンボックスの内部は、それぞれ1〜6の点に対応する6枚のピンがあり、1・4の点と2・5の点、2・5の点と3・6の点の間に仕切り板が1枚ずつあり、これらの上にピンをおさえるブロックが1つ入っていた。金子主任は「自分でやるときは一気に外す」と言われたが、我々が実際に取り外してみると一つひとつ外そうとすると手前2枚のピンはともかく、残りはブロックまで届く仕切り板に阻まれうまくいかない。外したピンと仕切り板をボックス内に戻す作業も簡単にはいかず、1枚ずつ入れようにも2枚1組ずつ入れようにも引っかかったり落としたりと、ピンと仕切り板を戻した後も、ピンボックスを閉じた際のネジ止めが強いとピンが動かず、弱いとピン(凸部)がウケ(凹部)から外れかねないと、難儀しながらも何とか習得することができた。     東京研修  9月7日(木)、今度は金子主任に上京していただき、当協会が所有する3台の自動製版機の分解・整備の指導をしてもらった。はじめは小型のB5タイプ(1号機)を分解・整備した。内部にはホコリがかなり溜まっており、エアダスターを使うと盛大にホコリが舞い上がった。購入してから20年間、1度も内部の清掃をしていないので、金子主任は身構えていたようだったが、意外にも内部は比較的キレイであった。  金子主任はZP Makerの初期型の構造にも興味津々で、B5タイプはとても丁寧に作り込まれていると評していた。具体的には、打ち出す際に原版が上下に動かないようにする押さえに、比較的新しいA4タイプはネジで留めてあるだけだが、B5タイプはスプリングが取り付けられていた。  残りの2台のA4タイプZP Makerも同様に分解・整備を行ったが、こちらではヒヤッとする事案があった。点検後のテストモードの一つにすべてのピンとウケを動かして「メ」の字を打つテストの際に、原版に「メ」の字が刻印できなかったのだ。「点検・整備のつもりで、壊してしまったんじゃないか」と一同青ざめたが、結論はTeCTIが所有するものと、当方が所有するZP Makerではテストモードのシステムが異なっていただけで、実際には問題なく点字製版をすることができた。  金子主任は、同じA4タイプでテストモードの仕様が異なることを不思議がりながらも、「徹夜作業にならなくて良かった。これでホテルを探さなくてすむ」と安堵の表情を浮かべて帰阪された。  (写真)左が金子主任(当協会にて) ●編集後記  今号(第31号)は、盛りだくさんの紙面となりました。  これはヘレン・ケラー学院が、意欲的に初の試みとなる就職支援セミナーを開催したり、積極的に外部のスポーツイベントに出かけて、マッサージ施術のデモンストレーションを行ったことによるものです。  点字出版所の製版課も大阪と東京で研修会を行いました。これは「すでに発売中止になった他所の施設の自動製版機に、万が一日本ライトハウスの職員が手を触れて壊してしまったら取り返しがつかない」という日本ライトハウスの懸念を払拭するために考えた方式です。  まず、当協会の職員が大阪に行き、日本ライトハウス点字情報技術センターにおいて、金子主任から自動製版機の分解・整備を手を取って伝授していただきました。  2日後、当協会で日本ライトハウス金子主任の指導の下、当協会の職員が自動製版機の分解・整備を独力で行います。その際、金子主任は口頭での指導のみで、当協会の自動製版機に一切手を触れないので、万が一不測の事態が起こっても金子主任は責任を負わないで済むという考え方です。そして、この方式でうまく進みました。  もちろん金子主任が上京される際の交通費と、日当等はお支払いする約束でご協力いただきました。(福山博)     広報委員会 委員長:福山博(理事・点字出版所長) 委員:大久保美智子(ヘレン・ケラー学院) 委員:戸塚辰永(点字出版所編集課) 委員:岩屋安昭(点字出版所製版課) 委員:和泉枝里(点字図書館) 委員:森本環(点字出版所録音課) 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 ●『青い鳥:L'Oiseau bleu(ロワゾー・ブルー)』Web版http://www.thka.jp/about/information.html ●“視覚障害者と共に”社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。http://www.thka.jp ●『愛の光通信』Web版  海外盲人交流事業事務局が年に2回発行する『愛の光通信(Light of Love)』は下記からダウンロードして読むことができます。 http://www.thka.jp/kaigai/reports.html