東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第25号 2016年1月1日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●点字図書館に多目的ルーム ●第65回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ●第23回ヘレンケラー・サリバン賞 ●学院にOAチェア ●学生募集と入試を前倒し ●サポートグッズフェアを開催 ●ボランティア懇親会 ●協会理事会 -------------------------------------------------- ●図書館に多目的室 メイスン財団から助成受け  点字図書館の長年の懸案だった多目的ルームが、館内のレイアウトを一部変更して8月に新設された。完成後は視覚障害者への点字やパソコンの指導、ボランティアの打ち合わせ、ミニ会議など様々に活用されている。 狭い図書館を上手に使うには困難が伴う。以前から職員の空き机や丸テーブルを使ってやりくりしてきたが、「小さくてもいいから独立したルームがほしい」という声は上がっても、現実を考えるとなかなか踏み切れなかった。26年度事業計画には新ルームの設置を載せたものの資金の目処がたたず断念。今年度こそ実現させる意気込みで事業計画に再び入れたのである。  ルーム設置に踏み切った第1の要因は資金の目処が立ったことである。数年前、書架の更新に高額の助成を認めてくれた日本メイスン財団に再びお願いすることにし、直接日本本部を尋ねて援助を訴えた。見積額全額はかなわなかったが、総経費7割の助成を得ることが出来たのは、資金難の図書館にとっては大きな力となった。  レイアウトは川西幸治・図書館次長が緻密な配置を考えた。図書館南端のスペースはそれまで書架に囲まれた中に丸テーブル、テレビ、情報機器類を置いていたが、そのスペースを多目的ルームとして利用するプランである。このため書架を移動したり、使われなくなったカセットテープを大量に処分してスペースを確保。職員のデスクの移動等で動きやすい配置を目指した。  工事はヘレン・ケラー学院の夏休みにあたる8月22(土)、23(日)の2日間とした。当日が休館のため利用者に不便を掛けることがないように配慮したのである。  新しい多目的ルームはパーティションで仕切って独立性を保ち、音漏れがないようにしてある。個人的な相談もここではOKだ。室内には角テーブルと椅子4脚。場合によっては6脚までおける広さを確保。エアコンと火災感知装置も完備した。パソコン指導も点字指導も周囲に気兼ねなく教えることが出来る。誰もが自由に使える空間を確保したことは点字図書館にとって今年度一番の成果だろう。 ●ヘレン・ケラー賞は志岐竜哉さん  音コン ピアノ部門で、伴奏にも高い評価 第65回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(東京ヘレン・ケラー協会主催、参天製薬株式会社協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団など後援)が11月7日(土)、東京都文京区のトッパンホールで開かれた。今年の出場者は器楽7部門、声楽3部門に全国の小学生から高校生まで49人が参加、日頃の成果を披露した。最も感銘を与えた演奏に贈るヘレン・ケラー賞はピアノ4部で1位になった志岐竜哉さん(筑波大付視覚特別支援・高3)が輝き、クリスタルトロフィーと賞状が贈られた。  例年審査に当たっていた武久源造先生が今年は都合で欠席されたため、代わりにピアニストで国立音楽大学・同大学院教授の花岡千春先生が初めて審査にあたったが、「皆さん本質的な音を響かせ、他のコンクールでは味わえない胸に迫る演奏に感心しました」と絶賛された。  志岐さんの演奏について、花岡先生のほか和波孝@(バイオリニスト)、淡野弓子(合唱指揮者)、梅津時比古(毎日新聞特別編集委員、桐朋学園大学学長)の各先生が「音楽をよくとらえており成熟した感性が認められる。音楽性も豊かで引きこまれる魅力を備えている」と賞賛した。志岐さんは同級生の独唱の伴奏もしたが、これも「歌の長所を引き出すすばらしい伴奏」と高く評価した。 ? 入賞された方々(敬称略、数字は学年) 【ピアノ1部】1位=矢部菜央(東京都立八王子盲・小1)、2位=室井興佑(横浜市立すすき野小・3年)、3位=相原晴(筑波大付視覚特別支援・小3)、奨励賞=古田桃香(岐阜県立岐阜盲・小3)、城間久斗(横浜市立盲特別支援・小3) 【ピアノ2部】1位=石田乃彩(新潟県南魚沼市立浦佐小・4年)、2位=古田土明弥(筑波大付視覚特別支援・小5)、奨励賞=芳沢和子(長野市立南部小・6年) 【ピアノ3部】該当者なし 【ピアノ4部】1位=志岐竜哉(筑波大付視覚特別支援・高3)、2位=高野翼(栃木県立盲・高2) 【弦楽器の部】2位=池内風香(バイオリン 筑波大付視覚特別支援・高1) 【その他の楽器の部】1位=坂田優咲(ホルン 筑波大付視覚特別支援・高3)、奨励賞=川嶋健太(三味線 筑波大付視覚特別支援・中2)、三刀屋美鈴(三線 東京都立文京盲・高1) 【創作・編曲の部】奨励賞=善如寺風太(創作演奏 岐阜県立岐阜盲・中1) 【独唱1部】3位=小汐唯菜(千葉県立千葉盲・小5)、奨励賞=中山美穂(千葉県立千葉盲・小3)、宮負朋基(千葉県立千葉盲・小4) 【独唱2部】1位=中畑友里(筑波大付視覚特別支援・専2)、2位=鈴木萌依(筑波大付視覚特別支援・専1)、奨励賞=林真由美(筑波大付視覚特別支援・高3)、村田明由(筑波大付視覚特別支援・高3) 【重唱・合唱の部】奨励賞=東京都立文京盲音楽部、ヘレン・ケラー学院 ●サリバン賞に譜久島さん 国際交流活動を陰から支える  第23回(2015年度)「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞者は、日本盲人福祉委員会事務局員の譜久島和美さん=写真=に決定した。世界盲人連合及び同連合アジア太平洋地域協議会の総会等の行事の開催等にあたって、譜久島さんは社会福祉法人日本盲人福祉委員会(日盲委)の業務の枠を超えて献身的に尽力し、視覚障害者の国際連携と国際交流の推進に大きく貢献したことが高く評価された。 贈賞式は、10月6日に当協会で行われ本賞賞状と副賞として、ヘレン・ケラー女史の直筆サインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。 譜久島さんは大学卒業後、2年間臨時任用教員を勤め、半年間の米国留学を経て、一般企業で働きながら、横浜市立盲学校でボランティアをしていた。 昭和63年8月、日本盲人会連合(日盲連)に入職し事務畑を歩み、平成13年に正式に日盲委に出向する。日盲委は、日本盲人会連合、日本盲人社会福祉施設協議会、全国盲学校長会からなる社会福祉法人だが、日盲連内に間借りして、非常勤の事務局長一人で運営していた。それを見かねて、彼女は平成9年から日盲連の業務のかたわら日盲委の仕事も手伝っていた。 譜久島さんはたった一人の常勤の事務局員となり、日盲委の経済的基盤である愛盲シール委員会をまかされ、補助金申請やボランティアの手配等、実務の多くは譜久島さんひとりにまかされた。 2年に1度開催される世界盲人連合アジア太平洋地域協議会マッサージセミナーでは、第7回香港、第9回北京、第10回ソウル、第11回マレーシア、第12回バンコクと毎回20人近い日本代表団の付き添いと事務手続きを行った。  特に、平成18年9月に茨城県つくば市国際会議場で16カ国・地域から約600人の参加者を迎えて開催された第8回マッサージセミナーでは200人余りのボランティアのシフト作成と配置指示を行った。 平成22年10月、ホテルグリーンタワー千葉で、22カ国・地域から約250人が参加したアジア太平洋盲人福祉会議では、実行委員会の事務局員として、参加者の対応等に昼夜を問わず当たった。譜久島さんの自己犠牲を厭わない尽力で、この間の視覚障害者の国際連携と国際交流は大きく推進することが出来た。 ●新しいOA椅子だ! 新宿区社協の助成で購入  ヘレン・ケラー学院は11月27日、社会福祉法人新宿区社会福祉協議会 備品整備・施設整備(株)日本財託助成金の交付を受け、OAチェアを21脚購入した=写真。従来品は老朽化により、上下昇降のガス圧が抜け、座面が下位まで落下してしまい高さ調整が出来ず、正しい姿勢で使用できない状態にあった。設置先は情報処理室及び各教室(教卓)。新調したOAチェアは、長時間座っても疲れないよう座面・背面のクッションに厚みがあるものを選定。また、キャスター部は 転倒防止のためPタイル仕様のゴム脚にした。 「本来は法人が整備すべきものであるため、教職員専用のものではなく、学生も利用できるように管理・運用してください」と助成決定通知文に審査委員コメントが記されており、助成に感謝するとともに、然るべき運用をしていきたい。 ●学生募集・入試を前倒し  ヘレン・ケラー学院は例年、入学試験を1月下旬〜2月初旬に実施してきたが、学生数減少に少しでも歯止めをかけるため、第1次入学試験を1月16日の早期実施に踏み切った。また入学志願者に在職中の方がいることを想定し、土曜日開催とした。試験日を早めたことで願書受付も1カ月早い10月から開始。出足は好調で、ひとりでも多くの学生確保に努めたい。 ●サポートグッズフェアを開催 この夏も大盛況  8月29日(土)に夏の恒例イベント、サポートグッズフェアとヘレン・ケラー学院主催の「感謝デーサービス 30分無料マッサージ体験」を開いた。 フェアには215人、マッサージ体験には105人も訪れ、会場整理やガイド等で多くのボランティアさんにご協力いただいた。 出展したのは14の企業・団体。会場の3階ホールでは午前10時の開場とともに多くの方が入場し、ロービジョンのための拡大読書器やめがね、点字使用者はIT対応のピンディスプレイなど、年々進歩する機器や用具について丁寧な説明を受けていた=写真。  また、去年開催したヨガの体験や休憩室での茶湯の接待などを今年も企画し、来場者に心のこもったおもてなしをした。  ヨガ体験は「チャレンジド・ヨガ/視覚障がい者のためのヨガクラス」のインストラクターの指導で3回に分けての講習。各回とも予約で満員となり最後は予定人数を超えてしまうほどだった。  同時開催のヘレン・ケラー学院生による「無料マッサージ体験」もフェアに劣らない人気で盛り上がった。午前10時からの施術には近隣の人やフェアに来場した視覚障害者等が整理券をもらって待機。学生がトランシーバーを使って1階と3階の治療室に連絡して上手に誘導するなど、スムーズな運営で患者さんに喜んでもらった。今年は1年生から5年生まで全学年から20人が参加して2人の担当教官の指導で、たっぷり施術に汗を流した。 ? ●ボランティア懇親会 プロの朗読を楽しむ  第41回点字図書館ボランティア懇親会は11月2日(月)、協会3階ホールで開催した。ボランティア活動を5年続けてくださった方にその貢献を讃えているが、今年は6人が該当し、三浦理事長から感謝状が贈られた。 懇親会の特別イベントは朗読家の鈴木千秋さんをお招きして「朗読を楽しむ」と題した講演と朗読をお願いした。鈴木さんは著名な朗読家である幸田弘子さんに30年近く私淑し、朗読を続けているが、今回はボランティアさんの前で太宰治の「桜桃」と国木田独歩の「たき火」と、味わいの違う2作品を読んでいただき、「さすがプロの読み手」とみんな真剣に聞き入った。その後、鈴木さんを囲んで懇談。音訳ボランティアさんからの質問やお話などが飛び交い楽しく過ごした。 ●特定個人情報取扱規定を承認 協会理事会  平成27年度2回目の協会理事会は12月18日、協会ホールで開いた。主な議題は点字図書館と点字出版所の補正予算案と、「番号法(通称)」施行に伴う特定個人情報取扱規程の制定及び関連する就業規則の改定。いずれも提案説明を受けて審議し、承認された。 ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp