東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第25号 2014年12月24日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●第64回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ●第22回ヘレンケラー・サリバン賞 ●動画セミナー「目の不自由な人を素敵にサポート」公開 ●12月理事会を開催 ●ボランティア懇親会 ●サポートグッズフェアを開催 ●マッサージ指圧無料体験会 ●点字出版所人事 -------------------------------------------------- ●最年少(小2)小原檀さんに 3年ぶりヘレン・ケラー賞 ヘレン・ケラー記念音楽コンクール 第64回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(株式会社ナチュラリープラス特別協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団など後援)が11月15日(土)、東京都文京区のトッパンホールで開かれ、最も感銘を与える演奏者に贈るヘレン・ケラー賞はピアノ1部に出場した小原檀さん(横浜市立盲特別支援・小2)が見事輝いた。同賞はここ2年、該当者がいなかった。  出場者は全国の小学生から高校生まで49人。昨年出場者がゼロだったバイオリンは今回3人のエントリーがあり、その他の楽器の部には沖縄の衣装をまとった三線や演奏の難しいホルン、クラリネットが登場し、バラエティーに富んだ演奏を見せてくれた。  例年審査に当たっている和波孝よし先生が今回は都合で欠席したため、代わりにバイオリニストの桐山建志先生が初めて審査にあたった、桐山先生は「出場した皆さんのレベルの高さに驚きました。バイオリンの3人はとてもいい勉強をしていて、心に伝わってくる演奏が多くたいへん感動しました」と感想を語った。 特別演奏は桐朋女子高校音楽科1年の古澤香理さんがバイオリンでモーツァルトのソナタなど3曲を華麗に演奏し、喝采を浴びた。  入賞された方々は次の通り。(敬称略、数字は学年) 【ピアノ1部】 1位=小原檀(横浜市立盲特別支援・小2)、2位=石田乃彩(新潟県南魚沼市立浦佐小・3年)、3位=相原晴(筑波大付視覚特別支援・小2) 【ピアノ2部】 1位=佐藤あかり(福島県相馬市立中村第二小・5年)、2位=善如寺風太(岐阜県立岐阜盲・小6)、3位=亀井康生(横浜市立盲特別支援・小6)、奨励賞=玉置陽南(横浜市立盲特別支援・小5) 【ピアノ3部】 1位=工藤星奈(秋田県立盲・中2)、2位=該当者なし、3位=武井勇樹(千葉県立千葉盲・中3)、岩月かほり(愛知県立名古屋盲・中2)、奨励賞=川崎春香(新潟県立はまぐみ特別支援・中1) 【ピアノ4部】 1位=該当者なし、2位=高野翼(栃木県立盲・高1)、3位=渡辺麻菜美(岐阜県立岐阜盲・高2)、水野隆(東京都立文京盲・高1) 【弦楽器の部、全員バイオリン】 1位=遠山作弥(群馬県立盲・小5)、2位=坂下行人(新潟県佐渡市立金泉小・4年)、池内風香(筑波大付視覚特別支援・中3)、3位=該当者なし 【その他の楽器の部】 1位=川添ミユ(フルート演奏 東京都立八王子盲・中2)、2位=坂田優咲(ホルン演奏 筑波大付視覚特別支援・高2)、3位=該当者なし 【創作・編曲の部】 1位=該当者なし、2位=渡辺麻菜美(創作演奏 岐阜県立岐阜盲・高2)、3位=亀井康生(創作演奏 横浜市立盲特別支援・小6) 【独唱1部】 1位=芳澤和子(長野市立南部小・5年) 【独唱2部】 1位=宇木素裕(東京都立文京盲・高3)、2位=鈴木萌依(筑波大付視覚特別支援・高3)、3位=中畑友里(筑波大付視覚特別支援・専1) 【重唱・合唱の部】 1位=中畑友里・鈴木萌依(筑波大付視覚特別支援・専、高3)、2位=該当者なし、3位=筑波大付視覚特別支援・中学部合唱部、東京都立文京盲・音楽部、奨励賞=ヘレン・ケラー学院 ●ヘレンケラー・サリバン賞 アイダス協会 渡辺文治氏に  第22回(2014年度)「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞者は、アイダス協会理事、渡辺文治さん(63)に決定した。渡辺さんは視覚障害情報機器アクセスサポート協会(アイダス協会)の前身である日本オプタコンティーチャズ協会で発足当時から中心メンバーとして活動し、オプタコンの指導法確立とその普及に努め、アイダス協会への改組後も情報機器の指導者養成や普及に尽力。また、医療・教育・福祉の有機的な連携を組織化し、視覚障害リハビリの発展に貢献された。  贈賞式は、10月1日(水)に当協会で行われ、本賞(賞状)と副賞としてヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。  ★受賞理由  アイダス協会やロービジョンセミナーで活躍する渡辺さんの活動の原点は、昭和48年に初めて日本にオプタコンが導入されたことだった。日本盲人職能開発センターを中心に、米国から発明者を招聘して国際セミナーや、1週間のオプタコン指導者(オプタコンティーチャ)養成講習会が開催された。草創期の受講生であった渡辺さんらは、早々に日本オプタコンティーチャズ協会を結成し、指導者向け講習会を10年以上にわたって行ったが、渡辺さんの大学卒業論文もオプタコンに関する研究だった。  しかし、ITの普及と共に、高価で操作が難しいオプタコンは淘汰された。  渡辺さんは大学卒業後、昭和52年に神奈川県総合リハビリテーション事業団に就職した。配属された七沢ライトホームは、視覚障害者に点字指導、歩行訓練、日常生活動作訓練などを行う施設だが、平成22年に身体障害部門の更生ホームと統合され、「七沢更生ライトホーム」と改称した。  渡辺さんは視覚障害者生活支援員として、点字指導や感覚訓練をはじめ歩行訓練以外はなんでも取り組んだ。とくに視覚障害者は、物を触ることで空間認知力や想像力が育まれるので感覚訓練に力をいれた。  視覚障害者の多様化に伴い、それを受け止めるには専門分野別に団体があるが、相互の情報交換がほとんどなされない大きな壁があった。その壁を無くし学際的な統合をはかる必要があると、日本視覚障害リハビリテーション協会、視覚障害日常生活訓練研究会、日本視覚障害歩行訓練士協会、ロービジョン研究会を統合して、平成4年に「視覚障害リハビリテーション協会」が設立されたが、渡辺さんはその設立にも深く関与した。  最近、渡辺さんがもっとも力を入れているのは、ロービジョンの勉強会である。ロービジョンの障害は多様で複雑だが、眼科医でさえロービジョンのリハビリに関心がない人も多く、従来は医療と福祉と教育で情報を共有できていなかった。そこで彼も呼びかけ人の一人となり、平成12年に神奈川ロービジョンネットワークが設立され、今では、県下のすべての大学医学部、特総研や盲学校、リハビリ施設の関係者や多数の眼科医が参加して、年に2回の研修会と毎月の勉強会を続けている。  60歳で定年退職した渡辺さんは再雇用され、視覚障害者リハビリ一筋37年、平成28年3月を持って七沢更生ライトホームを去る。眼科医と対等な立場で話ができるスタッフを育てあげるのが喫緊の課題だという。 ●動画セミナー「目の不自由な人を素敵にサポート」  点字図書館職員職員2人出演!  インターネットを介した資金調達プロジェクト「クラウドファンディング」で集まった支援金を元に製作した「目の不自由な人を素敵にサポートできる動画セミナー」が9月に完成、ネットで公開された。  同事業を企画したセカンドアカデミー(株)が当協会に協力を求めてきたため、企画段階から参加、点字図書館職員2人が出演した。西武新宿線新宿駅や協会近くの交差点でのサポートの様子が描かれており、協会の広報にも繋がっている。  動画はhttp://www.second-academy.com/movie/で見ることができる。 ●晴天の霹靂解散 準備不足も何のその  11月9日まで安倍首相は「解散は考えていない」と語っていたので、この日まで解散風は微風だった。ところが翌日急変し、同月11日付新聞朝刊各紙一面には「解散」の文字が踊り、解散風は台風並みに急成長した。  そこで間髪を入れず、日本盲人福祉委員会選挙プロジェクトの点字版部会事務局は動き、在京の事務局メンバーを招集するとともに、音声版部会と拡大文字版部会の代表を招き、翌日の12日午後3時から当協会点字出版所会議室において緊急選挙プロジェクト事務局会議を開催した。その後、準備態勢の進捗を確認しながら、矢継ぎ早に点字版部会事務局会議・全体会議、点字・音声・拡大文字版合同会議を同月中に開催した。  その間にも11月21日解散、12月2日公示、12月14日投開票で衆議院議員選挙を行うことが閣議決定された。なんと解散から投票日までは、たった23日間である。  とくに編集課は、11月末で辞める職員(退職日は12月15日)と、点字教科書作成に忙殺される製版課を応援するためベテランが11月から異動した。このため同月から新人2人を採用したばかりで、新入職員研修が終わるやいなや、右も左も分からぬまま2人は選挙業務の大旋風に巻き込まれてしまった。  とまどったのは新人だけはない。とにかく時間不足で万全の準備態勢を敷くにはほど遠い状態で選挙戦へ突入したため、誰もが不安いっぱいで「印刷機の整備が間に合わないかも知れない」と技師は蒼白になった。  しかし、フタを開けてみると野党の選挙協力もあって、小選挙区の立候補者が全体で前回の26%も減少した。さらに前回の総選挙から2年しかたっていないため最高裁判所裁判官国民審査の対象者は前回の10人から5人へと半減した。  こうして準備段階では緊迫した局面もあったが、終わってみれば職員全員のがんばりで準備不足を克服して、点字版も音声版の選挙公報もその製作は、当初の計画より前倒しして、あっけないほど順調に完了したのであった。                          (点字出版所 福山博) ●12月理事会を開催  平成26年度第4回協会理事会は12月12日、協会ホールで開かれた。  本部、学院、点字図書館の補正予算を審議、いずれも承認された。また衆議院議員選挙における点字出版所の取り組みなどを報告した。 ●ボランティア懇親会 節目の40回  第40回点字図書館ボランティア懇親会を10月27日午後、協会ホールで開いた。今年は点字図書館開設40周年に当たり、節目の懇親会となった。約30人のボランティアが参加し、活動歴5年を迎えたボランティア4人に感謝状を贈った。  記念講演をお願いした日本盲人社会福祉施設協議会理事長・ぶどうの木ロゴス点字図書館館長の高橋秀治さんは「私の歩んだ道」と題して自らの人生を振り返り、視覚障害者の社会参加や自立に向けた長年に渡るご自身の関わりを話し、深い感銘を与えた。 ●サポートグッズフェアを開催  協会恒例のサポートグッズフェアが8月30日(土)、協会3階ホールを主会場に開かれた。好天の当日、午前10時の開場から引きも切らずに来場者が訪れ、午後4時の終了までに約200人の方が各ブースを巡回してゆっくりと商品を手に取るなど、これまでにない盛況で、フェアを楽しんだ。  出展したのは16企業・団体。メーカーや代理店がそれぞれ特徴のある製品を展示して利用者の疑問や相談にきめ細かく応じ、中には高額な商品の予約を取り付けた企業もあった。  初登場は畳教室でのヨガ体験コーナー。インストラクターが、ポーズのイメージや作り方をわかりやすい言葉を使い、体に触れながら進める「チャレンジド・ヨガ」だった=写真。挑戦したのは約30人。目が不自由でも先生の説明とアシスタント2人のサポートで汗びっしょりになりながら「気持ちがいい」「ヨガなんて初体験。でもやって良かった」と評判だった。  また、学院の教室を利用して休憩室を設けたのも成功だった。NPO法人「多摩草むらの会」が運営している飲食店がお茶やジュースを提供した。お店で売っている有機野菜やおまんじゅう、かわいいグッズも即売され、混雑した会場から足を運んだお客様はゆっくりと長いすに座って、しばらく休んだ後、改めて会場に向かわれた方がたくさんいた。  今回も多くのボランティアさんが手引きや案内のお手伝いをしてくだった。 ●マッサージ指圧無料体験会  8月30日は、ヘレン・ケラー学院主催のあんまマッサージ指圧無料体験会も同時に行われ、学院生が汗びっしょりになって施術に挑んだ。  事前の告知で広まったため、午前10時のスタート前から15、6人の患者さんが訪れ予約表に名前を記入し待合室は混雑し始めた。対応したのは臨床実習を学んでいる3年生以上の16人。これに受付や連絡役に回った1、2年生も参加して総勢25人体制で受け入れた。  1階教室と3階教室を治療室にし、トランシーバーを使って患者さんを割り振るなど適切な応答で患者さんを誘導。待合室で長時間待たせることもなく、95人もの患者さんにうまく対応することが出来た。 ●点字出版所人事 ▽採用 11月1日=佐藤駿平、菊池惟菜(編集課) ▽退職 12月15日=布施郁美(編集課) ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp