東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第24号 2014年7月1日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●点字図書館創立40周年 ●変圧器取り替え1日工事 ●点字出版所 修規改訂休日1日増やす ●新規事業検討委を設置 ●平成25年度事業報告 ●平成26年度事業計画 ●賛助会員・一般寄付名簿 ●ヘレン・ケラー学院卒業式 ●ヘレン・ケラー学院入学式 ●国試すばらしい合格率 ●協会新理事に高橋秀治氏ら -------------------------------------------------- ●点字図書館創立40周年 多くの支えで今日が 「情報の谷間」にも支援の手  東京ヘレン・ケラー協会点字図書館は今年創立40周年を迎えました。  前身のヘレン・ケラー学院併設の図書室から、1974年に社会福祉法および身体障害者福祉法に基づく視覚障害者情報提供施設(点字図書館)の認可を受け、以来、点訳図書と音訳図書の製作・貸し出しを中心に活動してきました。その活動理念は「視覚に障害のある方々にも読書の喜びを存分に味わっていただきたい」という思いに尽きます。この理念を繋いでこれたのは、歴代館長や多くの職員、ボランティアの皆様が「視覚障害者のニーズに応えて、良質な本を提供したい」「点字図書館の仕事の手伝いを通して障害者と繋がりたい」と熱心に奉仕してくださったおかげです。これらの方々の献身的な支えがなければ、今日の点字図書館は存在しなかったことでしょう。  点訳・音訳図書の製作も時代の流れとともに大きく変わってきました。点訳作業は点字盤を使った手打ちの時代が長く続きましたが、情報技術(IT)の進展とともにパソコン入力にがらりと変わりました。音訳図書もカセットテープが主役の座から降りて、今ではデイジー図書(CD図書)が主流となり、再生プレーヤーも日々進化して使いやすくなっています。  また、インターネットによるデータ配信が飛躍的に読書環境を向上させ、サービスがスピードアップしたことも、特筆すべきことでしょう。視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」から、いつでもどこでも図書データをダウンロードして読書できることのすばらしさが、視覚障害者ばかりか視覚的な読書が難しい人たちにも迎えられ、私どもが提供する点訳・音訳データが利用されるようになりました。このような情報通信インフラの進歩で利便性が高まり、今後ますます読書環境は快適になって行くと思われます。  しかし、読書がもたらす知的な楽しみを味わえないどころか、点字図書館の存在も知らないまま情報の谷間に埋もれている視覚障害者もまだたくさんいることも十分承知しています。  当館は、それらの情報の谷間にいる人たちにも支援の手を差し伸べようと、「行動する点字図書館」というスローガンを掲げ、支援に取り組んでいます。歩行が上手にできない方への歩行訓練、読書機器や情報機器の操作が苦手な人への直接指導、日常生活で苦労している人への生活相談等々、これらの支援は読書に直接繋がるものではありませんが、すべてが必要な情報を取得するための基礎になるものと考え、時にはご自宅やご自宅周辺にまで出向いて相談や訓練をさせていただいています。  当館はたった7人の小さな所帯ですが、協会の精神的な支柱であるヘレン・ケラー女史の「あなたのランプの灯をもう少し高くかかげてください。見えない人々の行く手を照らすために」という言葉を実践し続けていくことに、いささかのためらいもないことを誓い、新たな一歩を踏み出していく決意を固めています。 (点字図書館長 石原尚樹) ●変圧器取り替え1日工事 新館地下 古い機材など一掃して整理  新館地下にあるキュービクル(高圧受電設備)内にある電灯用と動力用変圧器が大幅に法定耐用年数、実用耐用年数を超えており、同様に区分開閉器も古い仕様であるため、5月11日、変圧器の交換と区分開閉器UGS(地中線用負荷開閉器)を増設する工事行った。工事総額は226万円(消費税別)。  キュービクルの改修工事には新館地下に適当な作業空間が必要なため、場所を塞いでいる古い固型点字印刷用製版機3台、同校正機1台、足踏製版機1台、オープンテープデッキ1台、PC用プリンター、その他スチールキャビネットや製本機材など、6トントラック1台分を5月9日に専門業者に依頼して廃棄した。  工事はまず東京電力の作業員が給電を停止し、ヘレン・ケラー学院と新館は停電となった。そこで、施工業者がディーゼル発電機で新館地下をライトアップ=写真。関東電気保安協会の担当者がキュービクル内に通電していないか安全点検を行った。  次いで作業員がキュービクルを空っぽの鉄の箱にするために、チェーンブロックで変圧器を慎重につり上げながら搬出。今度は逆の手順で新品の電灯用・動力用変圧器を地下室に搬入して、操作パネルとの結線作業を行い、キュービクル改修工事は完了した。一方、UGSの増設工事もこの間平行して行い、午後4時半に無事終了した。 ●点字出版所 修規改訂休日1日増やす 5月23日に開かれた平成26年度第1回評議員会および理事会で、点字出版所の就業規則と賃金規程の改訂が承認された。 当協会はヘレン・ケラー誕生日を記念して、従来からヘレン・ケラー学院と点字図書館は6月27日を休日にしている。しかし点字出版所はこの時期は繁忙期であるため、これまで休日にしてこなかった。そこで協会の一体化を推進する立場から、代わりに比較的手が空く1月4日に振り替えて休むように点字出版所の就業規則を変更した。ただし1月4日が土・日の場合は振替休日は行わない。 賃金規程の改訂は休日1日増に伴う所定労働時間の変更である。 ●出版所の将来を見据え 新規事業検討委を設置  46年間にわたって『点字ジャーナル』をはじめ数多くの出版物を印刷してきた固型点字印刷機が、3月31日『ライト&ライフ』4月15日号の印刷を最後に、その役割を終えた。  同印刷機は毎日新聞社早稲田別館の3階にあり、印刷機を撤去後、新館3階にあるローラー印刷機5台、製本機2台を早稲田別館の印刷室に移動すれば新館3階にちょっとしたスペースを確保できる。そのスペースを利用して、新たな事業が出来ないかを考えるため、今春、点字出版所の各課から1名ずつ担当者を出して、新規事業検討委員会を組織した。  就労継続支援B型事業所の運営などを念頭に描いているが、この事業がベストかどうかは今後よく検討する必要がある。そこで委員会では講師を招いての勉強会=写真=や施設見学などを計画、点字出版事業以外のあらたな事業の可能性を追求していくことにしている。 ●平成25年度事業報告 【ヘレン・ケラー学院】  新入生は高等課程(5年課程)1名、専門課程(3年課程)2名で、学生総数は29名であったが、2名が修了をもって自主退学した。卒業生・修了生は10名。2月に行われた第22回国家試験では、あマ指師には現役9名が受験し、6名合格。はり師、きゅう師には各3名が受験し、全員合格した。耐震補強工事は、昨年の点字図書館、点字出版所に続き学院でも夏休みを利用して実施した。今回の工事で協会としての耐震補強はすべて完了した。  あん摩無料体験会である「感謝デー」はサポートグッズフェアと同時に開催し、学院の3年生・4年生10名が近隣の住民やフェアの来場者など76人に施術した。 【点字図書館】   「行動する図書館」を掲げて訪問支援を実施。情報支援者が出向いて視覚障害者の要望に応じたサポートをしてきた。昨年度は22名の利用者の要請を受け、生活相談、読書機器操作指導・歩行訓練などにきめ細かく対応した。自館製作図書は、前年比で点字図書は3%増であったが、デイジー図書は7タイトルの増加にとどまった。難易度が高く製作が難しい医学書などの専門書に注力したためである。貸し出し数では点字図書が21%減、テープ図書は63%減少しているが、デイジー図書は5%増であった。中途視覚障害者への点字講習は43回行い延べ148名が参加した。初めての試みとして、点字講習受講者交流会を2月19日に実施した。受講者の当事者同士の会話を通して意思疎通を図るのが目的であったが、評判もよく継続していくことにしている。パソコン講習も延べ111名が受講した。図書館の利用者数は1786名で、昨年度より11名増であった。点訳ボランティア養成講習会を15回実施、18名が参加した。音訳ボランティア養成は開催を見送り、勉強会などを通して既存ボランティアのスキルアップを図った。好評の「サポートグッズフェア」も盲人用具センターと協力して開催した。 【点字出版所】  選挙の年であった。6月には東京都議会議員選挙、7月には参議院議員選挙、年が明けて平成26年2月には猪瀬直樹前知事の突然の辞職に伴う都知事選挙があった。これらの選挙の「点字選挙公報」の点字印刷を受託して、計画通り納品した。  7月の参議院議員銀選挙においては日盲委選挙プロジェクト点字版部会の中核施設として、点字選挙公報の比例区では東京、群馬、三重、滋賀、奈良の1都4県分を、選挙区では東京、群馬、三重、奈良の1都3県分を引き受け、計画通り納品した。選挙だけではなく、自治体の広報、点字教科書、レストランの点字メニュー、カラオケの点字歌集なども例年通り受注して遅滞なく納品した。また月刊誌『点字ジャーナル』を12回、隔週刊誌『ライト&ライフ』を24回、同テープ版を12回発行した。 ●平成26年度事業計画 【ヘレン・ケラー学院】  国家試験において、26年度も前年度以上の成績をあげるべく適切な指導と受験対策に教員、職員が協力して推し進める。新入生の減少が続いているが、「詰め込み式の教育ではなく、実技・理論を丁寧に時間をかけて学習することができる都内唯一の5年課程の学校」「中途視覚障害者にとって親切な学校」「通学に大変便利である」ことなどを宣伝して、きめ細かい募集活動をする。また、自立に向けた就職活動にも力を入れで推し進める。 【点字図書館】   40周年を迎える点字図書館は、多くのボランティアに支えられてここまで来た。しかし、視覚障害者情報提供施設として、さらなる前進をしなければならない。そのためにも「行動する図書館」を押し進め、情報と読書権という二つの保障を確保するために行動していく。当図書館の特色である東洋医学や三療の資料を充実させるとともに、「利用者が読みたい本を1冊でも多く」の考えを進める。点訳・音訳ボランティア養成は、本年度は行わず、スキルアップを図る。 【点字出版所】  視覚障害の児童・生徒は一昔前と比べて激減しており、点字教科書の部数減につながり、点字出版事業はどこも構造不況にあえいでいる。当出版所は経営を改善し再生を図る。職員の就労意識改革を進め、個々の生産性を高め、業務の効率化を進める。本年度は国政選挙が予定されておらず、来年3月からの統一地方選挙に向けて、業界全体で質的向上を図るための研修会を計画しており、当出版所は中核施設として積極的に参加する。 ●資金収支計算書(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_01.html ●事業活動収支計算書(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_02.html ●貸借対照表(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_03.html あ ●あたたかなご寄付ありがとうございました 平成25年度 東京ヘレン・ケラー協会賛助会員・一般寄付名簿 ★賛助会員(敬称略) 【本部扱い】 参天製薬(株) 【ヘレン・ケラー学院扱い】 新井定一、江津正一、川上喜美子、木村信一、帰山良子、酒井敬治、下坂清子、菅田亜季、菅聆子、鈴木力、鈴木房江、鈴木八重子、田中茂、中島憲一、中島政治、橋本三郎、三浦真人、矢作俊一 【点字図書館扱い】 青木素子、秋山由美子、天野ヒサ子、飯田新平、石原直美、磯崎治子、内田一夫、大葉利夫、岡澤芳行、小澤洋平、笠井実、片山恭子、川崎拓也、北岸保郎、小池輝勇、斉藤紀年夫、佐々木晴恵、志真和子、鈴木健夫、鈴木由紀、須藤憲一、中岡政子、橋本三郎、福島久仁子、本間みさ子、前田律子、松井忠夫、矢部萬寿子、山谷靖彦 ★一般寄付(敬称略) 【本部扱い】 稲山輝機、加藤直之、金谷紫之、杉田安男、根本博行、長谷川航、堀田雅美、森マキ、山口智永子、山田茂雄、朝日管財株式会社、毎日新聞東京社会事業団 【ヘレン・ケラー学院扱い】 阿部恵一、新井キヨ子、新井定一、新井康代、石井孝子、石川照子、石田元治、伊藤勇、稲見常夫・久美子、乾法行、植田員弘、牛窪多喜男、内納錦哉、海野タカ、大金三郎、大島千恵子、大森信行、小栗誠夫、愛宕洋志、小野塚耕吉、小幡亮、加瀬峯夫、金井定春、金子宏、神田敏男、木村修子、金原フミ子、倉岡順子、黒澤絵美、佐川日出機、作島哲夫、鹿濱秋信、須藤憲一、須藤美津子、平光子、玉住博、張耀華、提橋トク、根本陸朗、長谷川清、平原皓一郎、福井愛子、福島義範、星野博子、町田克夫、森脇キヨ、山崎登志夫、吉岡諒、鎧啓子、若鍋よし子、若目田正・チカ子、医療法人社団ケイ・クリニック滝沢光、毎日新聞東京社会事業団 【点字図書館扱い】 秋葉文次、池原朋惠、伊勢沢信吉、磯辺恵子、市角誠、岩野英夫、内田晴康、江良昭雄、大石文雄、大岩妙子、奥山紀助、菊地寛子、菊地真連、君成田和子、経塚良末、小池芳一、斉藤マサオ、酒井町子、佐子田信夫、塩田和夫、清水奈美江、志村冨雄、白川恵美子、白木幸一、関喜之助、高橋敏朗、田島静枝、谷合淑二朗、谷口旭、田村徳章、戸倉昇、南雲貞雄、新山忠義、西村秀夫、長谷川あけみ、畑千尋、畠山千代子、早野健二、原田秀夫、福島ふさ子、福田恒男、藤田ひろ子、藤根輝男、松浦節子、松田千富美、宮本牧子、村上工、室岡正司、目黒聰子、茂呂浩三、諸岡和彦、山内経、山口義雄、山崎洋子、山田剛、油布勝美、毎日新聞東京社会事業団 【点字出版所扱い】 井上修、榎本玲子、近藤糸子、佐久間秀雄、宮崎憲昭、エムコマース株式会社 【海外盲人交流事業事務局扱い】 青木貞子、芦田賀寿夫、在田一則、安藤生、石田隆雄、一幡良利、植竹清孝、上野伊律子、上村小夜子、遠藤利三、大島秀夫、大橋東洋彦、大橋由昌、岡本好司、小野塚耕吉、貝元利江、苅安達男、勝山良三、加藤和広、金田敏子、川島玉子、川尻哲夫、菊井維正、小泉周二、古賀副武、小島亮、後藤晴子、小長谷正夫、小林明子、小森愛子、近藤光枝、斎藤惇生、酒井久江、坂口廣光、坂齊勝男、佐々木信、佐藤達夫、志村洋、白井雅人、鈴木俊勝、鈴木洋子、染矢朝子、高橋恵子、高橋秀治、竹脇美帆子、田中徹二、田中正和、田村和凡、照井タカ子、当津順子、当山啓、長岡英司、中嶋千代志、野口三男、野津虎雄、野中省三、橋本時代、林紘子、原田美男、福山博、藤芳衛、本間昭雄、間下勉、増野幸子、松井繁、松浦健三、松下信雄、三宅正太郎、宮下浩子、森栄司、森山朝正、横大路俊久、渡辺勇喜三、有限会社大本印刷、岐阜盲学校高等部生徒会、小林動物病院、有限会社信和ハウス、ネパール料理エベレストキッチン、毎日新聞東京社会事業団 ●よく頑張りました ヘレン・ケラー学院卒業式  ヘレン・ケラー学院は3月14日、平成25年度卒業式・修了式・第3学期終業式を同学院講堂で行った。5年課程1人、3年課程2人の計3人に卒業証書を、5年課程あん摩マッサージ指圧科修了生7人に修了証書を授与し、続いて1年間の学業成績優秀者に贈る優等賞を6人に、努力賞を3人に授与した。  三浦拓也学院長は「人生の途中で厳しい試練にあったみなさんが無事卒業できたのは、努力と汗のたまものと多くの人の支えがあったからだ」と式辞を述べた。11年間講師を務め、同日退任した鶴田康生先生は「諸君は医療技術者であり、医療技術者は科学者である。そのことを忘れないでほしい」と学生へ最後の言葉を贈った。5年課程卒業の村山和恵さんが答辞を述べ「蛍の光」合唱のなか、たくさんの拍手に送られ式を閉じた。 ●新入生は4人  ヘレン・ケラー学院の平成26年度入学式・第1学期始業式は、4月7日、同学院講堂で行われた。高等課程3人、専門課程1人の4人を迎え、学生総数は28人になった。  新入生代表の浅利祐二さんが「不安ではありますが、大きな目標と無限の可能性を信じ、向かい風を追い風に変えていきます」と誓いの言葉を述べた。三浦拓也学院長は「困難はたくさんあるが、所期の目的のために大いにがんばってほしい」と激励した。 ●国試 すばらしい合格率  2月22、23の両日、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験が行われ、あマ指師を既卒者含め10人が受験、6人が合格。はり師、きゅう師は既卒者含め4人が受験、全員合格した。首都圏の盲学校12施設と全体成績を比較すると、昨年よりランクを落としたものの、は・き師は昨年に続いて現役合格率100%と見事な成績をおさめた。 ●協会新理事に高橋秀治氏ら  平成26年度第1回理事会が5月23日に開かれ、三浦拓也理事長の重任が承認された。また佐藤次朗、森野亮一両氏の理事退任の申し出を承認し、新理事に高橋秀治ロゴス点字図書館長、山口恒夫毎日新聞東京社会事業団常務理事を選出した。 ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp