東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第23号 2014年1月6日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●本館も耐震補強工事完了 ●点訳ボランティア養成講習会 ●本館改修にかかる経費 補正予算案を承認 ●点字出版所人事 ●63回ヘレン・ケラー記念音コン ●点字の日にボランティア懇親会 ●第21回ヘレンケラー・サリバン賞 ●初秋のサポートグッズフェア ●学院感謝DAYもフルサービス ●協会評議員 学院同窓会会長 愛宕洋志さん死去 ●社協助成金を受け 学院書庫内を改修 -------------------------------------------------- ●本館も耐震補強工事完了 騒音・安全に配慮、学院の夏休みに  耐震補強が急がれていた協会本館(ヘレン・ケラー学院校舎等)の工事が、夏休み終了直前の8月31日に無事完了した。前年度に新館(点字出版所と点字図書館が入居)の耐震補強工事が終わっており、今回の工事で協会の建物全体が耐震強化されたことになる。懸案だった事業の終了で、大きな地震が襲っても本館・新館とも簡単には倒れない構造となり、まずは一安心だ。  平成20年に建物耐震診断を実施した際に、耐震性能が基準以下であると指摘されていたが、資金のめどや施工時期の検討などから新館は24年度、本館は25年度に実施することを決めた。  今回の本館工事は安全性と短期工事を最優先にした。安全性はもちろん学生をはじめとする視覚障害者を考えてのことであり、短期工事は学院の授業を妨げないためである。このため新館工事を経験した施工業者と監理業者に本館工事も請け負ってもらうことを最優先に見積もり等を検討した結果、妥当と判断。2社と契約を交わした。  工事は学院の夏休みに入ってすぐ開始する予定だったが、学生の夏休み補講が避けられず、まず音の出ない工事を先行し、補講終了後から壁面破砕など大きな音を出すように工程表を作成した。しかし、隣接する点字図書館には直接騒音が届くため、職員やボランティアさんには相当我慢を強いることになった。また、本館ホールを使用する点訳ボランティア養成講習会や、音訳ボランティアのスタジオ使用はこの間取りやめざるを得なかった。  工事関係者はもとより協会に出入りする多くの方たちや近隣住民の方たちのご協力で、工事は工期内に終了し、2学期始業式の9月2日からは何事もなかったように授業が始まった。 ●点訳ボランティア養成講習会 18人が修了  6月から開いていた点字図書館の点訳ボランティア養成講習会は、10月8日に閉講し、18人の受講生全員が修了した。現在は個別指導を行っており、それぞれの力量を見てボランティアグループに分かれて活動を開始する。  ボランティア予備軍の中には早くも「点訳以外にもここの図書館は、いろんな活動できそうで、とても楽しみ」と張り切っている人も現れている。 ●本館改修にかかる経費 補正予算案を承認  平成25年度第3回理事会および第2回評議員会は12月13日開き、本部・学院、点字出版所の補正予算案等の議題を承認した。本部・学院の補正は本館耐震補強工事に関するもので、資金の移動等。点字出版所は職員退職・採用にかかる人件費の補正が主だった。   ●点字出版所人事 採用・9月1日=布施郁美(編集課) 退職・9月30日=林育子(編集課)、桑山裕司(録音課)▽12月31日=馬場敏(総務課・盲人用具センター) ●63回ヘレン・ケラー記念音コン  その他の楽器の部1位 18年ぶり箏曲 三浦さんに  第63回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(株式会社ナチュラリープラス特別協賛、トッパンホール会場協力、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団、点字毎日など後援)が11月16日、トッパンホール(東京都文京区)で開催され、器楽、声楽の2部門に、13都道府県21校の児童・生徒・学生ら65人が出場した。今年はギター、クラリネット、フルート、ドラム、箏など様々な楽器に挑戦する出演者が多いなか、箏曲「千鳥の曲」を演奏した三浦紗耶さん(東京都立文京盲・高2)が、その他の楽器の部で見事1位を獲得した=写真上。箏による1位入賞は45回開催の澤村祐司さん以来18年ぶりだった。  特別演奏は、桐朋学園大4年に在学する宮川奈々、市橋杏子さんによるドビュッシーの「バイオリンソナタト短調」など2曲を披露し、会場を魅了した。  審査にあたった和波孝よし、武久源造、淡野弓子、梅津時比古の各先生は「今年は多方面にわたる演奏で、とても楽しかった。昨年から引き続き参加している方は、今年はさらに一段と良くなっていました。今後も皆さんの成長を楽しく見守っていきたいと思います」と出場者を称賛した。なお、最も感銘を与えた演奏に贈られるヘレン・ケラー賞は、昨年に続き該当なしに終わった。  入賞した方々(敬称略、数字は学年)  【ピアノ1部】1位=渡邊千優(筑波大付属視覚特別支援・小3)、2位=竹内大輝(筑波大付属視覚特別支援・小3)、3位=小原檀(東京都立葛飾盲・小1)、奨励賞=古田土明弥(筑波大付属視覚特別支援・小3)  【ピアノ2部】1位、2位=該当者なし、3位=松野鉄馬(福島県相馬市立中村第二・小5)、奨励賞=吉田智空(横浜市立盲特別支援・小6)  【ピアノ3部】1位=田中綾乃(石川県立盲・中1)、2位=鈴木元気(北海道函館盲・中2)、3位=武井勇樹(千葉県立千葉盲・中2)、奨励賞=岩月かほり(愛知県立名古屋盲・中1)、水野隆(筑波大付属視覚特別支援・中3)  【ピアノ4部】1位=齋藤玲奈(桐朋学園音楽学部・大1)、2位=該当者なし、3位=緑川秀太(福島県立盲・高2)、佐伯遥(大阪府立視覚支援・高3)  【弦楽器の部】該当者なし  【その他の楽器の部】1位=三浦紗耶(箏演奏 東京都立文京盲・高2)、2位=該当者なし、奨励賞=川添ミユ(フルート演奏 東京都立久我山青光学園・中1)  【創作・編曲の部】1位=鈴木元気(創作演奏 北海道函館盲・中2)、2位=佐藤翔(創作演奏 筑波大付属視覚特別支援・小5)、3位=該当者なし、奨励賞=川崎春香(創作演奏 新潟県立新潟盲・小6)  【独唱1部】該当者なし  【独唱2部】1位=辻本実里(大阪府立視覚支援・高1)、2位=宇木素裕(東京都立文京盲・高2)、3位=上村龍夏(大阪府立視覚支援・高2)、吉野優(東京都立文京盲・高2)  【重唱・合唱の部】1位=筑波大付属視覚特別支援小学部(小5)、2位=筑波大付属視覚特別支援中学部合唱・合奏部(中1・中2・中3)、3位=ヘレン・ケラー学院(専1・専2・専3)  (写真=ドラムを軽快にたたく佐藤翔君) ●点字の日にボランティア懇親会 「石川倉次伝」を楽しむ  第39回点字図書館ボランティア懇親会は点字の日の11月1日、協会ホールで開催した。  三浦拓也理事長の挨拶に続いて石原尚樹点字図書館長が、この1年の図書館を取り巻く情勢や、今年度の点字図書館の事業テーマ「行動する点字図書館へ」について説明し理解を求めた。例年、5年間ボランティア活動をしてくださる方に贈っている感謝状は、今年は該当者がいなかった。  特別講演は講談師の宝井駿之介さん。点字の日にふさわしい演し物として「日本点字の父・石川倉次伝」の一席を読んでもらった。1時間にわたる熱演に参加者たちはすっかり聞き惚れ、素晴らしい話芸を堪能した。 ●第21回ヘレンケラー・サリバン賞 日点委事務局長 當山啓氏  第21回(2013年度)「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞者は、1998年の発行以来版を重ねている『点字・点訳基本入門』の著者で、点字製版のオーソリティである日本点字委員会(日点委)事務局長の當山啓さん(66)に決定した。  當山さんは地元愛知県豊橋市にある県立高校のボランティアサークルで、点字カレンダーの印刷を手伝ったのが縁で点字を読めるようになり、大学に入学してから日本点字図書館(日点)の点訳通信講座を受講。大学3年になると、点訳奉仕者として点字書を日点に納めるまでになり、それが縁で同大卒業後日点に就職した。  1976年から日本点字委員会(日点委)の事務局員になり、1990年からは全盲の阿佐博会長・直居鐵事務局長の下で、運営実務を一手に引き受け、点字表記体系の整備に尽力。2002年からは名実共に事務局長として現在に至っている。  一方、全自動製版機「ブレイルシャトル」の開発にあたっては、使用者の立場から数々の注文をつけて製品化に道筋をつけ、京都からなかなか修理に来ない製造元に代わって、ボランティアとして都内にある点字出版所の「ブレイルシャトル」の修理を行った。  『点字ジャーナル』の元編集長で、日点委の前会長である阿佐博氏は「當山さんは点字製版士として日本で五指に入る人です。地元での点訳ボランティアの養成も昔から熱心にやっていました」とその点訳能力の高さと地域の点訳ボランティア養成などの活躍を高く評価している。  贈賞式は、10月2日に当協会で行われ、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。  (写真=三浦理事長から表彰を受ける當山啓さん(右)) ●初秋のサポートグッズフェア 猛暑一服 大盛況  視覚障害者向け機器・用具の展示会「サポートグッズフェア2013」とヘレン・ケラー学院の「学院感謝DAY あん摩マッサージ指圧30分無料体験会」が9月7日、同時に開催された。今年は学院校舎の耐震補強工事のため開催時期を8月平日から9月土曜日に変更したこと、連日の猛暑が一段落したこともあり、「サポートグッズフェア」の来場者は約140人を数え、会場の3階ホールは終始熱気に包まれた。出展企業・団体は14。説明員は休憩時間を取る暇もないほど押し寄せる来場者に「今年は凄すぎる」と圧倒されていた=写真。 ●学院感謝DAYもフルサービス  一方、あん摩マッサージ指圧30分無料体験会は、ヘレン・ケラー学院の3年生10人が、2人の専任講師の指導のもと施術。近隣の方やフェアの合間に来た来場者は、首や肩、腰のこりをほぐしてもらい学生たちの日頃の成果を体験した。こちらも順番待ちが出るほどの大盛況、終わってみれば76人もの“患者さん”を診た学生たちは「気持ちよくなっていただき、やり甲斐がありました」と心地よい疲労に浸っていた。 ●協会評議員 学院同窓会会長 愛宕洋志さん死去  平成18年6月12日から東京ヘレン・ケラー協会の評議員を務めてこられた愛宕洋志(おたぎ・ひろし)さんが12月16日、肺がんのため逝去されました。71歳。  愛宕さんは昭和61年にヘレン・ケラー学院あはき科を卒業され、平成17年6月26日から8年間、学院同窓会会長を務めてこられました。  謹んでご冥福をお祈りいたします。 ●社協助成金を受け 学院書庫内を改修  学院1階に設置されている書庫は、清掃道具や臨床実習で使用する毛布や手ぬぐいのほか、過去の試験問題やコピー用紙などの事務用品などが無造作に積み重なっている状態だった。また、庫内中央にあった家庭用茶箪笥を文具用品等の収納庫として流用していたため、非常に狭くて足場も悪く、学生1人で立ち入るには危険であった。  そこで、堅牢なスチール書架や収納キャビネットなどを新設することで収納レベルを上げ、学生が安全に立ち入ることができるよう、新宿区社会福祉協議会備品整備・施設整備(株)日本財託助成金事業の交付を受け10月25日に設置を完了した。  なお、内装修繕は、耐震補強工事と同時進行で実施。新設と併せて収納ケースに必要物品を納め、一目でわかるように工夫した。 ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp