東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第21号 2013年1月18日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●ネパール盲人福祉協会 ヘレン・ケラー協会に感謝額 ●「育児・介護休業規程」法改正に対応、新設 ●第6回塙保己一賞貢献賞を受賞 ●ヘレン・ケラーサリバン賞小笹会の伏島さんへ ●人事(12月1日採用) ●第62回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ●点字出版所 てんやわんや -------------------------------------------------- ●ネパール盲人福祉協会 ヘレン・ケラー協会に感謝額  昨年9月4日、ネパール国副大統領公邸において、ネパール盲人福祉協会(NAWB)創立25周年記念式典が、パラマーナンダ・ジャー副大統領臨席の下で開催され、当協会に「感謝額(Token of Appreciation)」が贈られた。本来なら、海外盲人交流事業事務局の福山博事務局長が出席するべきところだったが、衆議院解散・総選挙が噂されており、点字出版所長を兼任しているので身動きがとれなかった。そこで、現地ボランティアであるホーム・ナット・アルヤール氏(元NAWB事務局長)に代理出席してもらい感謝額を受け取った。  感謝額は、表彰委員会コーディネーターのカマル・ルパケティ(元NAWB会長)、25周年記念式典委員会委員長のマダン・ウパディア教授(元WHO南東アジア地域相談役、元NAWB会長)、NAWB会長クマール・タパ(国立トリブバン大学講師)、チーフ・ゲストであるネパール国副大統領パラマーナンダ・ジャー(元最高裁判所判事)の連名により、「25年間の福祉事業の記念に、ネパール盲人福祉協会に与えられた貴重な貢献と協力を認めて、東京ヘレン・ケラー協会(日本)に「感謝額」を捧げます。2012年9月4日」と英文で記してあった。  その感謝額を持って10月、NAWB相談役であるガジェンドラ・シュレスタ氏を代表とするカスタマンダップ・ロータリー・クラブ一行が来日した。一昨年の12月、同クラブは姉妹クラブである下館ロータリー・クラブと共同で500万円を集め、茨城こども病院に超音波診断装置を寄贈。その縁もあり、同病院や福島県の被災地視察の他、筑西市長、茨城県知事、麻生太郎元首相等を表敬訪問したのだ。  ガジェンドラ氏は、1978年にネパール青年会議所(JC)の会頭をしており、その時の日本JCの会頭が麻生太郎氏で、フィリピンから日本まで青年の船で一緒に航海し、以来、現在まで麻生氏と親交が続いている。  10月8日午前11時半、福山事務局長は中央区勝どきにあるオーナーズホテル東京BUCでガジェンドラ氏たちに会い、NAWBからの「感謝額」を受け取り、その後、銀座の日本料理店で、歓迎昼食会を開催した。 (写真=福山事務局長(中央)に渡された感謝額と来日した一行) ●「育児・介護休業規程」法改正に対応、新設  協会は従来運用していた育児休業規程と介護休業規程を廃止し、新たに「育児・介護休業等に関する規程」を設け、12月理事会で承認された。  今回の制定は平成22年6月の育児・介護休業法の改正を受けたもの。子育てや介護をしながら働き続けられるように、企業や事業所に制定が義務づけられていた。小さな事業体には平成24年6月末まで適用が猶予されていたため、理事会で「同年7月1日に遡って適用」することが認められた。 ●第6回塙保己一賞貢献賞を受賞  12月15日、埼玉県本庄市の児玉文化会館セルディで第6回塙保己一賞の表彰式が行われ、東京ヘレン・ケラー協会に「貢献賞」が上田清司埼玉県知事から贈られた。  聖明福祉協会本間昭雄理事長の推薦によるもので、「昭和25年にヘレン・ケラー学院を開設し、多くの鍼灸按摩マッサージ師を養成し、視覚障害者の社会参加及び自立に貢献している。昭和43年に点字出版所、昭和49年には点字図書館を開設し、視覚障害者に対する情報提供を通じて社会参加の拡大に貢献している。ヘレン・ケラー記念音楽コンクールからは、国際的に活躍する音楽家を輩出しており、視覚障害のある音楽家の登竜門として高く評価されている」という受賞理由だ。  塙保己一賞は、江戸時代の盲目の大学者・塙保己一を記念して、埼玉県が平成19年に制定した。  受賞の挨拶に立った三浦拓也理事長は、「へレン・ケラー女史が昭和12年に初めて来日した折、東京・渋谷にある塙保己一の学問を継ぐ研究所である温故学会を訪ね、塙保己一の像に触れ、『私は塙先生のことを知ったおかげで、障害を克服することが出来ました。心から尊敬する人です』と感謝のことばを述べたそうです。2人に接点があり、今回の受賞は天国のへレン・ケラー女史に喜んでいただけることだろうと思っています」と挨拶して、万雷の拍手を受けた。  (写真=上田知事から表彰状を受ける三浦理事長(右)) ●ヘレン・ケラーサリバン賞小笹会の伏島さんへ  東京ヘレン・ケラー協会は、第20回(2012年度)ヘレンケラー・サリバン賞の受賞者を「楽しく、わかりやすく」をモットーに、「小笹洲一」のヴォイスネームで、ユニークな朗読ボランティアを長年続けてこられた、兵庫県川西市の伏島洲一郎さん(80)=写真=に決定した。  本賞は、「視覚障害者は、何らかの形で晴眼者からのサポートを受けて生活しており、それに対して視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、1993年に創設。選考は、当協会が委嘱する視覚障害を持つ委員によって行われる。  受賞者の強い意向により、今年度は恒例の贈賞式は行わず、本賞(賞状)と副賞としてヘレンケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタルトロフィーをご自宅にお届けした。  ★受賞理由  商社マンだった伏島さんは、昭和51年(1976)、たまたま帰国中の大阪で見たテレビに、盲目の三療師が治療を施しながら、テープレコーダーで朗読テープを聴いている姿が映った。こんな世界もあったのかと彼の目は釘付けになった。大学時代に演劇をやっていたので、朗読のアクセントには自身があった。こうして、彼は商社に勤務しながら地域のボランティアに混じって朗読ボランティアを開始した。  伏島さんの功績として視覚障害者から特に評価が高いのは、月刊誌『選択』の音声版の許可を出版元から得て、昭和57年(1982)11月から長年、私財を投じてカセットテープ版やDAISY規格のCD版を30年になんなんとする期間製作し続けてきたことである。  政財界をはじめとする指導者層などを対象とした会員制の月刊総合雑誌『選択』の音声版は、難解なところには注釈を入れ、内容を良く咀嚼して朗読した。このため「わかりやすい」と愛読者から熱烈に歓迎された。  また、昭和60年(1985)には小笹会名義で「盲人用録音物等発受施設」を当時の郵政省に申請し指定を受けて、現在に至るまで継続していることも高く評価された。 ●人事(12月1日採用) 点字図書館=橋芳枝(情報支援員) ●第62回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ピアノ1部 クラスメートが1、2、3位  第62回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール(株式会社ナチュラリープラス特別協賛、文部科学省、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団、点字毎日など後援)が11月10日、トッパンホール(東京都文京区)で開かれ、ピアノの部、弦楽器の部、声楽の部と今年から創設された創作・編曲の部に、全国から児童・生徒・学生ら62人が出場した。  ピアノ1部(小学生低学年)は級友3人が1、2、3位に。ピアノ2部(小学生高学年)はレベルの高い競演となり、優劣がつけられないまま1位に2人が選ばれた。また、車椅子で参加した川崎春香さん(新潟県立新潟盲・小5)には審査員特別賞が贈られた。特別演奏は全盲のソプラノ歌手、澤田理絵さんが歌劇「椿姫」より「ああそは、彼の人か」など4曲を会場に響かせた。  今年は、昨年まで開催していたJTアートホールアフィニスからトッパンホールに変更しての開催となったが、多くの方々が来場し、審査に当たった和波孝A、武久源造、淡野弓子、梅津時比古の各先生は口々に「すばらしいホールですばらしい演奏を聴くことができた。レベルの高いコンクールだった」と賞賛した。また、今回から審査員講評コメントを希望する参加者に送付する制度を導入し、後日審査員から心のこもった講評を届けた。なお最も感銘を与えた演奏に贈られるヘレン・ケラー賞は6年振りに該当なしに終わった。◇入賞した方々(敬称略、数字は学年)  【ピアノ1部】1位=小林友香(筑波大附属視覚特別支援・小2)、2位=古田土明弥(筑波大附属視覚特別支援・小2)、3位=渡邊千優(筑波大附属視覚特別支援・小2)  【ピアノ2部】1位=菅田利佳(和歌山県立和歌山盲・小6)、佐藤翔(筑波大附属視覚特別支援・小4)、2位=該当者なし、3位=工藤星奈(秋田県能代市立二ツ井・小6)、奨励賞=鈴木理子(岐阜県立岐阜盲・小5)、吉田智空(横浜市立盲特別支援・小5)  【ピアノ3部】1位=該当者なし、2位=藤吉乙羽(愛知県立岡崎盲・中2)、渡邉麻菜美(岐阜県立岐阜盲・中3)  【ピアノ4部】1位=千頭和達(千葉県立千葉盲・高1)、2位、3位=該当者なし、奨励賞=佐伯遥(大阪府立視覚支援・高2)  【弦楽器の部】1位=池内風香(ヴァイオリン演奏 筑波大附属視覚特別支援・中1)、2位、3位=該当者なし、奨励賞=三浦紗耶(箏演奏 東京都立文京盲・高1)  【創作・編曲の部】奨励賞=渡邉麻菜美(創作演奏 岐阜県立岐阜盲・中3)  【独唱1部】1位=辻本実里(大阪府立視覚支援・中3)、2位=芳澤和子(長野県長野盲・小3)、3位=該当者なし、奨励賞=二宮慶太朗(愛媛県立松山盲・小5)、工藤星奈(秋田県能代市立二ツ井・小6)  【独唱2部】1位=沼本尚輝ルーカ(東京都立文京盲・高2)、2位=上村龍夏(大阪府立視覚支援・高1)、3位=服部澄香(京都府立盲・専3)、奨励賞=中畑友里(筑波大附属視覚特別支援・高2)  【重唱・合唱の部】1位=筑波大付属視覚特別支援中学部合唱部(中1)、2位=二宮慶太朗、米屋明歩(愛媛県立松山盲・小5・高1)、3位=筑波大附属視覚特別支援小学部4年、奨励賞=ヘレン・ケラー学院(専1・専2)  【審査員特別賞】川崎春香(新潟県立新潟盲・小5)  (写真=三浦理事長から表彰されるピアノ1部のクラスメート3人) ●点字出版所 てんやわんや  年末ダブル選挙 公報制作は冷や汗、脂汗  「本日をもって東京都知事を辞任し、新党を結成する」。10月25日、石原慎太郎東京都知事が都庁で緊急記者会見を行い唐突に辞任表明した。ここから総選挙へのドタバタが始まった。都知事選挙は、12月16日投開票で行われることが決まり、その後、めまぐるしく第三極の政党が離合集散を繰り返した。  11月14日、野田佳彦首相は国会で行われた党首討論で自由民主党安倍晋三総裁に対して「議員定数削減法案可決に協力することを確約するなら同月16日に衆議院解散を行う」と爆弾発言を行った。かくして衆議院議員選挙の投開票は、都知事選と同日に行われることになった。  全国の点字出版所を糾合した日盲委選挙プロジェクトは、昨春から着々と総選挙の準備を行い、今か今かと待ち続けていたのだが、予想もしない展開に大いに戸惑った。  都知事選挙の告示は11月29日で、総選挙の公示日は12月4日。この間の4日間で都知事選挙の点字公報を印刷して発送すればダブル選挙のくびきを逃れることができる。ところが選挙管理委員会が大混乱に陥ったため、そのしわ寄せが来て諸々の作業開始が遅れた。  また、衆議院議員選挙の公示ギリギリまで、激しく第三極が動いたため、既成政党も政見原稿の出稿を遅らせた。このため、公示前日に大量の政見原稿が政党ごとに都選管に持ち込まれるという、かつて無い異常事態が生じた。そこで入稿が遅れた影響をできるだけその後の作業に響かせないようにするため、編集・製版・録音課から5人の職員が1〜4日間泊まり込んで作業に当たった。  プロジェクト内でも混乱が起こった。比例代表ブロックの点字公報中にあった「議運」を「議員」とある施設が点訳してしまった。  当協会も比例代表ブロックの点字公報印刷の一部を請け負っており、この問題が発覚した時点で、すでに半分は印刷を終えていた。ただ、不幸中の幸いだったことはまだ製本していなかったことだ。そこで、間違えたページを含む1枚を「差し替え」て、半日の遅れで事態を収拾することができた。  これは一例であり、思わぬ手違いやケアレスミスの対応に汗を流す日々が続いた。しかし、印刷が軌道に乗ると、思いの外順調に推移し、総印刷部数が前回より2割ちょっと少なかったこともあって、点字公報等の作成作業は最終納期を待たずにあっけなく終了したのだった。  作業の遅れを必死に取り戻す努力をした点字出版所職員とヘレン・ケラー学院、点字図書館の応援があってこその年末作業だった。(写真=点字公報印刷に汗を流す点字出版所職員) ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp