東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第20号 2012年7月1日発行 発行人:三浦 拓也 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所、盲人用具センター、海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●震災対策委を組織 ●事業報告と計画 ●23年度決算書 ●23年度寄付者名簿 -------------------------------------------------- ●新館耐震工事が完了  強い揺れにも耐える強度に  東京ヘレン・ケラー協会点字図書館と点字出版所が入る建屋「新館」の耐震改修工事(東京都補助金事業)が5月31日、当初の計画通り終了した。  工事は、@各階東西南北にある8本の補強鉄骨を約2倍の太さに交換し、耐震強度を高めるA最も危険と指摘された外部階段を新館と鉄骨で繋ぎ、構造的に一つの建物とすることで階段の倒壊を防ぐ、という二つの目的があった。  施工業者は昨年12月中旬、入札で東京・港区に本社を置く池田建設株式会社に決定、着工は今年1月6日からとなった。工事は1階点字印刷室、2階点字図書館、3階点字印刷室、外部階段の順に行った。点字図書館、点字出版所とも業務を中断することが不可能な上、騒音・振動などで支障がないように工事をすることが契約時の条件だったため、1階は1月6日から3月18日、2階は3月4日から4月5日、3階は4月7日から5月18日、外部階段は5月8日から5月20日までと、階ごとに工期をずらして施工。業者はやりくりに苦慮したが、優秀な作業員が集結してくれたおかげで工事自体は5月20日で終了した。  5月22日には施工業者、工事監理業者、当協会の3者で内部検査を実施。また31日には東京都から検査員が書類検査と現場を確認、いずれも滞りなく終了した。改修後の耐震強度は基準値をクリアしており、地震の強い揺れがきても倒壊する危険が大幅に減ったことで、満足いく結果となった。ヘレン・ケラー学院が使う「本館」部分については、時期等を含め、改修工事計画を引き続き検討していく。            ※  工事期間中、協会職員、学院生、ボランティア、点字図書館利用者の皆様には、ご不便・ご迷惑をお掛けしましたが、ご理解とご協力をいただき順調に工事を進めていくことが出来ましたことを感謝いたします。  (写真=細い鉄骨だった支柱(上)が太い鉄骨に代わった<下>) ●学院入学式 今年は10人  ヘレン・ケラー学院は4月6日、同学院講堂で平成24年度入学式及び始業式を行った。今年度の入学者は高等課程8人、専門課程2人の計10人。新入生代表が「私たちはいま目標に向かってゆっくりと新しい道を歩き出しました。先生方、諸先輩は私たちの線路になって、私たちをしっかり導いてください。この学院に入れたのは家族、友人などのおかげであり、このご恩は立派な医療師になって、患者さんの心をもみほぐしてあげることだと思っています」と誓いの言葉を読み上げた。  三浦拓也学院長は「これから厳しい学生生活が待ち受けている。人生を切り開く強い意志をいつまでも持ち続け、なんとしても国家試験を突破してほしい」と激励した。 ●点字出版所 震災対策委員会を組織 「職員行動基準」を作成  昨年(2011)3月11日、未曾有の東日本大震災が起こった。甚大な被害を受けた東北4県とは比べようもないが、協会にも若干の被害が出たことは本紙2011年7月1日発行(通巻18号)でお知らせした通りである。  協会は大震災の後、広報委員会が発行するメールマガジン「BBメール“エクストラ”」2011年5月18日発行(通巻59号)で、3月11日当日、職員がどのような行動をとったかアンケート調査を行い、全員から回収した。すると、点字出版所の職員から「どう行動したらよいか分からなかった」とか、「指示がなかった」という声があがった。  点字出版所の職場は、協会の新館と毎日新聞社早稲田別館に分かれ、しかもそれぞれ1階と3階にも分かれており、大地震の被災下での一元的連絡の徹底は困難であると考えられる。そこで、アンケートに積極的に回答した職員を中心に、各課から委員を募り、震災対策委員会を組織して、来たるべき大地震への対策を考えるため平成23年度中に6回会議を開いた。  そして、「震災等における職員の行動基準」を作成すると共に、防災用具(懐中電灯、電池、ヘルメット、レジャーシート、リュックサック、ロープ、三角巾、包帯、ローソク、マッチ、ピンセット、カセットコンロ、同ボンベ等)の点検と、3月11日の泊まり込みの際に使用して、クリーニングした毛布13枚を含む備蓄用毛布29枚を長期備蓄に耐えるように再梱包し、別途購入した食料品と共に備蓄した。なお、点検の結果、懐中電灯は13本あったが、実際に点灯したのは3本だけで、残り10本は電池切れであった。今後は、このような宝の持ち腐れがないように、防災の日の9月1日前後に、対策委員会で点検することにした。  ところで、「行動基準」は目安であり、地震には実際に遭遇してみなければわからないこともあるので、臨機応変に各自の判断で行動しなければならないことも当然あるということを前提にした。東日本大震災で律儀に点呼を行ったために、逃げ遅れて津波に飲み込まれたという悲劇を教訓にしてのことである。  また、東日本大震災を受けた原発などの運転停止により発電量の総量が落ちていることから、昨夏は、国を挙げての節電の呼び掛けがあり、点字出版所ではこれに応えて、蛍光灯の間引き等による節電にも取り組んだ。その結果、点字出版所の毎日新聞社早稲田別館分だけだが平成22年度の68,082kWhに比べて、平成23年度の使用電力量は49,141kWhと72%と大幅な節電に成功した。また、点字出版所の平成22年度の電力料金(新館分も含む)は204万2,788円だったが、平成23年度は173万5,501円と、84.95%、30万7,287円も節約することができた。(点字出版所長・福山博) ●点字図書館も備蓄  点字図書館は、3・11の教訓から災害発生直後の職員の安全を確保するため、防災用品の購入と、緊急食料品の保管を進めている。「自力で身の危険から守る」ことを第一義としており、職員数分をまず調達した。  防災用品と緊急食料品の内容は、ヘルメット、充電バッテリー、ハンマー・バール類、各種乾電池、簡易レインコート、軍手、タオル、マスク、ランタン、LEDライト、ホイッスル、ラジオ、避難用バッグ、キャラメル、クッキー、ビスケット、飲料水、缶詰等である。  また、これらの用品を収納しておくため、協会中庭に物置を設置した。この物置には防災用品を中心に入れておくことにし、災害が発生したときにすぐに取り出せるように万全を期している。  (写真=業者の手で中庭に設置された物置) ●平成23年度事業報告 [視覚障害者ガイドヘルパー養成研修事業] 受講者の増加に伴い、23年度は主催研修など9回開催した。定員も28人から32人に増員するなど応募者の要望に応えた。23年度途中から、従来の「移動支援」より大幅に視覚情報的な支援や介護的援助が可能になった「同行援護」に研修内容を発展させ、更なる充実した研修を開催した。 [第61回へレン・ケラー記念音楽コンクール] 11月23日にJT共催、文科省、毎日新聞社などの後援で、東京・虎ノ門のJTアートホールで開催した。全国から16校56人の参加者を数え、その中に東日本大震災で被災した福島県相馬市から参加した小学校3年生の松野鉄馬君にひときわ大きな拍手が贈られた。 [ヘレン・ケラー学院] 11人(2年生に編入の1人を含む)の新入生が入学し、学生総数37人で新学期を迎えたが、就職などで5人が中途退学した。卒業生・修了生は13人。平成23年度第20回国家試験では、あん摩マッサージ指圧師に現役11人が受験し、9人が合格した。しかし、はり師・きゅう師は7人中2人の合格に止まった。施設の整備では、盲導犬を利用する学生が増え、衛生的に排泄物の処理をする場所が必要となり、協会の中庭に盲導犬用のトイレを新設したり、ガイドヘルパー研修において、雨天時のタクシー乗降訓練のためのひさしを延長するなど教育環境の整備に努めた。 [点字図書館] 23年度の自館製作図書は、難易度の高い医学書など専門書を中心にしたため、前年度より減少した。貸出数では、点字図書とテープ図書は減少したが、デイジー図書は相互貸借図書の利用が促進されことによって前年を上回った。  視覚障害者への点字指導は耐震工事で集中講座こそ中止になったが、通常講座は107回に及び107人が受講した。パソコン講習も132人が受講した。点字図書館の利用者は1,761人を数え、前年度より14人の増であった。設備・備品では小型デュプリケーター1台を購入し、職員用のパソコン2台更新した。 [点字出版所]  職員の協力と努力により赤字を大幅に圧縮することができたが、厳しい経営環境に立ち向かった1年だった。出版所の収入に大きなウエイトを占める点字印刷において、東京都など地方自治体からの定期広報点字版など受託印刷は16紙を受託・発行した。選挙公報では板橋区などの区長・区議選はじめ全国の統一地方選挙に関する「選挙のお知らせ」(点字版・テープ版)を受託・発行した。文科省からの受注である教科書「小学部算数」の後期分を納入した。  出版所の定期刊行物である「点字ジャーナル」が平成24年1月号で500号を迎え、歴代編集長による座談会を掲載した「500号記念別冊」を発行した。  録音は地方自治体の定期広報テープ版7紙を受託・発行して収入に寄与した。 ●平成24年度事業計画 [第62回へレン・ケラー記念音楽コンクール]  視覚障害の児童・生徒・学生を対象とする日本で唯一の音楽コンクールである「ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」をより一層充実したものにするため、新たに(株)ナチュラリープラスの特別協賛を得て、11月10日(土)に東京・飯田橋のトッパンホールで開催する。 [視覚障害者ガイドヘルパー養成研修事業]  昨年から始めた「同行援護」研修を6回開催。従来の「移動支援」の資格しか持っていない人のための[同行援護応用課程]研修も要望に応えて2回開催する。 [ヘレン・ケラー学院]  詰め込み教育ではなく、実技・理論をじっくり学習することができる唯一の5年課程の学校であることやJR高田馬場駅、地下鉄西早稲田駅などの交通の利便性を生かし、きめ細かい募集活動をする。また国家試験の合格率向上や卒業生の就職先の確保などにも力を入れる。 [点字図書館]  東洋医学や三療の資料をさらに充実させるとともに、視覚障害者への点字・パソコン講習会、視覚障害者への理解を深めるための出前点字講座なども引き続き開催し、視覚障害者への福祉に力を注ぐ。 [点字出版所] 職員個々の生産性を高め、業務の効率化に取り組み収益向上を図る。点字印刷は現在受注している文科省著作の「中学部歴史」の点字教科書や、日本理療科教員連盟と協力して盲学校教科書などを遅滞なく納品するとともに、地方自治体の「点字広報」などの印刷も受注を受けるべく努力する。  政治状況の不安定のなか年度内の解散総選挙も現実味を帯びてきたことを踏まえ、「選挙公報」のための準備は怠りなく進める。 ●資金収支計算書(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_01.html ●事業活動収支計算書(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_02.html ●貸借対照表(下記、ホームページをご覧ください)  http://www.thka.jp/about/accounts_03.html ●皆様ありがとうございました 平成23年度 東京ヘレン・ケラー協会賛助会員及び一般寄付者名簿 ◆賛助会員(敬称略)  【本部扱い】  加藤直之  【点字図書館扱い】  青木素子、秋山由美子、石原直美、磯崎治子、内田一夫、大岩妙子、金本ヒナ子、辛島寛、北川文恵、金倫子、小池輝勇、斉藤紀年夫、鈴木健夫、鈴木由紀、田島静枝、田代芙美、寺崎哲治、土居義則、橋本三郎、畑千尋、東濱啓、本間みさ子、増田美代志、目黒聰子、矢部万寿子、油布勝美、吉野静恵 ◆一般寄付◆(敬称略)  【本部扱い】  稲山輝機、小澤哲男、加藤直之、北村徹雄、岐阜県立岐阜盲学校高等部生徒会、真田勝美、杉田安男、須藤美津子、東京新宿北ライオンズクラブ(池原郁夫、遠藤庄一郎、久山淳、大山利雄、安川厚、鶴岡武、浜名賢一、梅沢忠男、中村進一、鈴木秀彦)、東京ヘレン・ケラー協会後援会、トミヨシレイジ、長谷川航、古畑俊子、堀田雅美、株式会社ファシリティ、毎日新聞社事業本部、毎日新聞社点字毎日編集部、毎日新聞東京社会事業団 【ヘレン・ケラー学院扱い】 愛宕洋志、恵愛治療按、ケイ・クリニック滝沢光、ヘレン・ケラー学院同窓会第34・35期、星野博子、松本利夫、村田みつぎ、山内ちあき、山崎登志夫、毎日新聞東京社会事業団  【点字図書館扱い】  青木弘、朝貝徹司、飯田昌吉、飯田新平、石川吉男、伊勢澤信吉、磯辺恵子、市角誠、猪股栄二、今里忠幸、岩品安柳、宇田川幸子、江良昭雄、大石文雄、大黒政男、奥山紀助、小澤洋平、片山恭子、金本ヒナ子、神谷純ェ、菊地寛子、経塚良未、工藤幸雄、古池竹之、小柳紀男、斉藤由紀子、酒井町子、佐子田信夫、佐々木晴恵、佐々木宗雅、清水奈美江、志村冨雄、白川恵美子、関喜之助、高田房子、田代芙美、田中秀臣、田中雄二、谷合淑二朗、谷口旭、田村徳章、塚原博二、富樫千恵子、戸沼京子、中井光雄、南雲貞雄、南雲輝子、畠山千代子、馬場のぶ子、原田秀夫、東山寛、平林寿美子、広田碩佑、福島ふさ子、福田恒男、藤田ひろ子、藤根輝男、松浦節子、松田邦子、松田千富美、丸山進弘、水野文夫、溝口和子、三橋竹志、宮本牧子、宮本美明、村上工、山内経、山崎洋子、山田剛、山谷靖彦、吉沢徳治、渡辺武松  【点字出版所扱い】  エムコマース株式会社、森秋子  【海外盲人交流事業事務局扱い】  青木貞子、在田一則、安藤生、飯田壮、石井芳重、石田隆雄、一幡良利、植竹清孝、上野伊律子、上村小夜子、遠藤利三、及川幸男、大島幸夫 、大西正広、大橋東洋彦、岡本好司、落合夕子、小野塚耕吉、貝元利江、勝山良三、加藤万利子、金田敏子、川島玉子、木塚泰弘、黒見恵美子、小泉周二、古賀副武、後藤晴子、小長谷正夫、小林明子、小森愛子、近藤光枝、斎藤惇生、酒井久江、坂入操、坂口廣光、佐々木憲作、佐々木玲子、佐藤達夫、佐橋忠明、柴田光俊、志村洋、菅原温子、鈴木俊勝、染矢朝子、高橋恵子、竹脇美帆子、田中徹二、田中正和、田伏淳一郎、照井タカ子、当山啓、戸塚辰永、鳥羽田節、中尾照美、中嶋千代志、中村保信、奈良泰夫、野津虎雄、橋本時代、林紘子、原田美男、福山博、藤元節、本間昭雄、間下勉、増野幸子、増田光子、松浦健三、松下信雄、宮下浩子、茂木幹央、森川精子、森山朝正、山岡三治、横大路俊久、吉田重子、渡辺直明、渡辺勇喜三、有限会社大本印刷 ・ 大本堅治、小林動物病院、 シャンバロー芸能事務所 ・ 白井雅人、学校法人聖明学園古和釜幼稚園、株式会社高垣商店、毎日新聞東京社会事業団 ●「ご近所の皆様、ご迷惑をおかけしました」  中庭に盲導犬用トイレ  ヘレン・ケラー学院では、盲導犬ユーザーの学生が登下校時に学院正面玄関脇の植え込みで排泄させていたが、近隣住民への配慮や衛生環境を改善するため、2月21日、協会中庭に盲導犬用トイレを新設した=写真。壁面にリードフックを取り付け、排泄物を水で流せるようシャワーを設置、床面には防水・防臭加工を施し、傾斜をつけて排水環境も整えるなど盲導犬を利用する学生の意見をいくつも取り入れた。学生は「来客された盲導犬ユーザーもきっと喜びます」と喜んでいた。 ●13人が卒業  平成23年度ヘレン・ケラー学院卒業式・修了式は3月15日、同学院講堂で行われた=写真。23年度の卒業生は3年課程5人と5年課程2人。これに5年課程あん摩マッサージ指圧科修了生6人が加わり、計13人に三浦拓也学院長から卒業証書、修了証書が授与された。1年間を通じた学業成績優秀者に贈る優等賞は12人、努力賞は2人が受賞した。卒業生代表は「楽しかった学院ともお別れしますが、学んだことを大いに発揮して、これからの新しい人生を築きます」と答辞を述べ、全員の拍手で卒業生を送り出した。 ●人事(4月1日・カッコ内は前職)  ▽点字図書館=川西幸治次長(点字図書館職員)  ▽点字出版所=山本令子製版課主任(編集課主任)、佐藤尊礼録音課員(製版課員)、車谷浩子編集課員(印刷課員) ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp