東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第15号 2009年12月18日発行 発行人:藤元 節 編集人:石原 尚樹 発行:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会                      〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所・盲人用具センター・海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●今年のヘレンケラー・サリバン賞 ●新理事に宮澤氏 理事会・評議員会 ●第59回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ●平板点字印刷機 GPB3出荷前テストを実施 ●サポートグッズフェア2009秋 ●日本初 バリアフリーCD第1弾 売り上げ好調 ●総選挙を終えて思うこと ●ボランティア懇親会 盲ろう者友の会の山岸康子さん講演 ●ネパール視察から帰って ●同窓会長に愛宕氏を再選 -------------------------------------------------- ●今年のヘレンケラー・サリバン賞  「エーデル」開発 藤野稔寛氏に  09年度のヘレンケラー・サリバン賞は、図形点訳ソフト「エーデル」を独力で開発して、無償で提供することにより、図形的表現を割愛することなく、良質な点図として点字図書に掲載することを可能にした徳島県立城東高等学校教諭、藤野稔寛氏(57)に決定し、贈賞式が9月29日当協会で行われた=写真。  藤野氏が開発した「エーデル」により、簡単なパソコン操作で点図を容易に作成し、点字プリンタによる大量印刷を可能にした意義は極めて大きい。これにより、理数系図書の図やグラフだけでなく、絵本の点訳、一般学校に通う視覚障害児童・生徒用の点字教科書作成にも道を広げたからである。  エーデル開発への道は、同氏が1990年徳島県立盲学校に転勤したことから始まる。これを機に、「視覚障害教育に役立つように」と、同氏は教職のかたわら独学でプログラミングを学び、さまざまなソフトウエアを作り始めた。  当時は、パソコンによる点訳がようやく広まり始めた頃で、点図は、点字出版所などが作成した一部の点訳書にあるだけで、その多くは省略されていた。しかし、藤野教諭の受け持つ数学など理数系科目には図形やグラフは欠かせず、特にテスト問題を自作する時は苦労した。そこで、点字教科書と同等の図やグラフを作るためのソフトがないのなら自分で作ろうと、点図の描画機能と点字プリンタでの印刷機能を備えたプログラムの開発に乗り出し、試行錯誤の末、91年末頃、およそ3カ月をかけて完成。点図の絵が出ることから「エーデル」と名付けた。  エーデルは無償でダウンロードできるよう、インターネットに取って代わられる前に、当時大流行した「パソコン通信」で公開した。するとメールなどで、利用者から感謝の声とともに改良の要望も続々と寄せられた。それらを一つ一つ解決し、100回にも及ぶ改良を重ねた。そして、今や全国の点訳ボランティアを中心に、シェアは100%と言っても過言でないほど「エーデル」は普及し、国内ばかりか韓国でも活躍している。 ●新理事に宮澤氏 理事会・評議員会  平成21年度第2回の理事会並びに評議員会は12月9日開催され、新点字印刷システム導入のため6,066万円の補正予算を組むことを決定した。新システムは来年3月までにドイツから輸入して据え付け、経費は(財)JKA補助金2,000万円と自己資金でまかなう。  理事会は鈴木可人評議員の12月9日付退任を認め、後任に元国立福岡視力障害センター所長で、現在、(財)聴力障害者情報文化センター常務理事の宮澤豊宏氏を、評議員会は鈴木理事の同日付退任を認め、後任に宮澤氏を委嘱することをそれぞれ承認した。任期は平成22年6月11日まで。  さらに来秋、協会創立60周年記念チャリティーコンサートを実施すること、創刊40周年を迎える『点字ジャーナル』誌の誌面を新点字印刷システム始動に合わせて刷新することが承認された。 ●第59回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール  輝くヘレン・ケラー賞は合唱の大阪府立視覚支援学校  第28回JTシチズンシップ・イベント「第59回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」が11月23日、東京・港区のJTアートホール アフィニスで開かれ、器楽、声楽の2部門に児童、生徒、学生ら1都2府5県16校の45人が成果を競った。  もっとも感動を与えた演奏者に贈られるヘレン・ケラー賞は、重唱・合唱の部でオルバンの「ミサ」第6番を歌った大阪府立視覚支援学校の7人。同校は他にも入賞者を出し、指導の成果を審査員から激賞された。  特別演奏は、本コンクールで1位になった経験を持つ全盲のピアニスト木村りえ・りさ姉妹がベートーベンのピアノソナタや連弾によるハンガリー舞曲(ブラームス)を披露した。  審査はヴァイオリニストの和波孝A、鍵盤楽器演奏家の武久源造、合唱指揮者の淡野弓子、毎日新聞専門編集委員の梅津時比古の4氏があたった。  なお、今年度から「ピアノの部小学生」を低学年と高学年に分け、よりきめ細かな審査が出来るようになった。  入賞者は次の通り。(敬称略、数字は学年)  【ピアノの部・小学生低学年】  1位=該当者なし、2位=岩月かほり(愛知県立名古屋盲・小3)、3位=菅田利佳(和歌山県立和歌山盲・小3)、奨励賞=鈴木 理子(岐阜県立岐阜盲・小2)  【ピアノの部・小学生高学年】  1位=志岐竜哉(東京都立八王子盲・小6)、2位=吉岡千尋(京都府立盲舞鶴分校・小6)、奨励賞=小椋加那子(愛知県立名古屋盲・小6)  【ピアノの部・中学生】  1位=該当者なし、2位=該当者なし、3位=伊藤央(東京都立葛飾盲・中2)、奨励賞=鈴木萌依(静岡県立静岡視覚特別支援・中1)  【ピアノの部・高校生以上】  1位=盛岡陸(大阪府立視覚支援・高1)、2位=該当者なし、3位=小岩井亜樹(東京都立文京盲・高2)  【弦楽器の部・ヴァイオリン】  1〜3位=該当者なし、奨励賞=菅田利佳(和歌山県立和歌山盲・小3)  【その他の楽器の部・いずれもアルトサクソフォーン】  1、2位=該当者なし、3位=東直志(京都府立盲・専1)、奨励賞=矢野有樹(筑波大附属視覚特別支援・専2)  【独唱1部】  1位=該当者なし、2位=辻本実里(大阪府立視覚支援・小6)、  【独唱2部】  1位=後藤杏奈(大阪府立視覚支援・専1)、2位=渡邊順子(筑波大附属視覚特別支援・専2)、3位=油木愛美(筑波大附属視覚特別支援・高1)、奨励賞=進藤篤史(大阪府立視覚支援・専1)、東直志(京都府立盲・専1)  【重唱・合唱の部】  1位=大阪府立視覚支援(高1、専1・2)、2、3位=該当者なし、奨励賞=生島唯斗、伊藤央(東京都立葛飾盲・中2)、ヘレン・ケラー学院(専1・2)  【ヘレン・ケラー賞】  重唱・合唱の部=大阪府立視覚支援(高1、専1・2)  ※(写真)ヘレン・ケラー賞を受ける大阪府立視覚支援学校の7人 ●平板点字印刷機 GPB3出荷前テストを実施  〜高度の技術力・結果に満足〜  点字出版所の3人、独・チェコへ出張  ※(写真上)フントハウゼン技術部長らと出版所の3人  ※(写真下)ミロシュ氏とGPB3  11月29日から12月6日までの8日間、本年度(財)JKA補助金による機器の整備補助事業「平板点字印刷機 GPB3および自動製版機 PUMAZの整備」の出荷前テストを実施するため、佐々木晃印刷課主任、戸塚辰永編集課主任、兼松KGKの富本直樹氏(輸入代行兼通訳)とともにドイツ・マールブルクおよびチェコ・ツヴィコフへ出張した。成田空港からの直行便でフランクフルトへ、鉄道でブリスタ−ブレイルテック社(BB社:Blista-Brailletec gGmbH)のあるマールブルクへの15時間の長旅であった。  30日、BB社でPUMAZのテストを実施した。亜鉛板の厚さ、インターポイント・インターラインの違いによる点の出具合いの調節、打ち出し位置の調節などのテストを行い、日本の点字用紙(ドイツに比べ薄い)に適した点の調節が可能であることを確認。GPB3での印刷テストに使用する原版を作製した。  翌12月1日はチェコへ。BB社のフントハウゼン技術部長の運転で、アウトバーンを旧東ドイツの街ドレスデンをめざし、エルベ川を南下。ドイツ・チェコ国境を通過し、ツヴィコフの隣町ノヴィーボルのホテルへ入った。休憩をはさみながらの8時間の移動だった。  2、3日はGPB3のテスト。ホテルから10分程のツヴィコフにあるグラフストロイ社(GRAFOSTROJ a.s.)へ出向いた。同社は1884年創業の会社(織機工場)で、1946年から印刷機械製造を続けている。大規模な敷地に工場が何棟も建っていたが、現在はその一部で操業し、一部はガラス工場に貸しているという。旧東欧の匂いがまだ残っている街であり工場であった。  2台のGPB3のテストはすでに進められており、PUMAZ作製の原版で、あわせて4000枚近くが印刷されていた。引き続き、一昨日PUMAZで作製した原版、日本で作製したA4・B5の原版など計6種類のテストを実施した。実際の印刷物は、A3・A4・B4・B5の4種類。図版・片面の原版も鮮明に印刷された。驚いたのは、日本で作製していった原版1組で7000枚以上印刷しても、点の出が悪くならなかったことである(通常のローラー式印刷機では1000枚が限度)。1万枚以上も可能であると予想される。  翌日、再び車での移動後、フランクフルトで1泊し、6日成田空港へ無事帰国した。空と陸の長時間の移動は疲れ果てたが、テスト結果の満足感がそれを上回っていた。  2台のGPB3とPUMAZの日本への荷揚げは、船便で1月中旬〜下旬の予定だが、通関・搬送に1カ月くらい要するので、出版所への設置および技術指導は2月中旬〜下旬の予定だ。なお、技術指導にはBB社からフントハウゼン技術部長他1名、グラフストロイ社からミロシュ氏の計3名が来日する。 (点字出版所製版課長 藤森昭) ●サポートグッズフェア2009秋  地デジの準備は大丈夫? 説明会を開催  視覚障害者向けの機器や用具、便利グッズなどを集めた「サポートグッズフェア2009秋」は10月4日、協会ホールで開催した。開催日を従来の平日から日曜日に移し、より多くの方に来場してもらおうという計画は外れ、前回を下回る来場者数となってしまった。しかし、来場者から「時間を気にせず、ゆっくりと説明を聞くことができた」との声を多数聞くことができた。  今回は、(株)日本テレソフトと(株)エクシングが共同開発した「点字カラオケシステム」が初出展。このシステムは、カラオケ画面の歌詞を点字に自動翻訳し、曲の進行に合わせて点字ディスプレイで表示。実際に体験した来場者からは「これで毎回歌詞を憶えたり、歌詞集を持ち込まなくてもいい」と評判は上々だった。システム導入にはカラオケ店に点字ディスプレイ・パソコンなどの費用負担がかかるため、現在全国で数店舗にしか設置されていないが、高田馬場では「カラオケ館高田馬場2号店」に導入済みである。  今回は展示会にあわせて、特別セミナー「地デジの準備は大丈夫?−地上デジタル放送ガイド」を開催。11年7月にアナログから切り替わる地デジ放送について、総務省認定地デジ支援説明員である当協会点字出版所職員が分かりやすく説明した=写真。14人の参加者は熱心に聞き入り、デジタル放送移行への必要な情報をしっかりと集めていた。  〈その他の出展企業〉(株)アサクラメガネ、(株)アメディア、 (株)NTTドコモ、ケージーエス(株)、シナノケンシ(株)、(株)タイムズコーポレーション、(株)日本インシフィル、ユーディ・クリエイト(株)  〈特別参加団体〉(福)日本盲人会連合 ●日本初 バリアフリーCD第1弾 売り上げ好調  カタログも一新し好評配布中  視覚障害者のための様々な便利グッズや生活用具を販売している盲人用具センターは、ビクタークリエイティブメディア(株)と当協会が協力して作成した、日本初となる視覚障害者向けの点字・大活字解説書付きの「XRCDクラシック・シリーズ」と「ビクター落語シリーズ」=写真=を11月18日に発売した。発売の事前告知が功を奏したのか、予約の電話が殺到。12月1日現在、クラシック・シリーズ25タイトル、落語シリーズ80タイトル以上を販売し、発売日を半月過ぎても問い合わせが続いている。  また、11月に「盲人用具カタログ2009」を発行した。従来の墨字・点字・カセットテープ版に加え、今年度はデイジー版カタログも追加し、利用者からは好評だ。準備が整い次第、ホームページからはテキストファイル、点字データ、PDFファイルの3種類がダウンロード可能になる。商品は、拡大読書器やデイジー再生機器で使用するSDカードやUSBメモリなど記録メディアを中心に、前年度より13品を拡充した。さらに、今年度は初の試みとして、墨字版カタログの巻末に取引業者の広告のページを設けて企業広告を募集したところ、不況にもかかわらず5社の賛同があり掲載することが出来た。 ●総選挙を終えて思うこと   点字出版所総務課長 藤永 昇  8月30日、衆議院議員選挙投開票が行われた。全国23の点字出版関係施設が協同で「視覚障害者選挙情報支援プロジェクト」の下に小選挙区、比例区、最高裁判所裁判官国民審査の公報を点訳した「選挙のお知らせ」を合計11万部以上製作して発行した。一つの県を除いて3種類のうちいずれかの注文を受けた。当協会も事務局の一つとして全選挙管理委員会との交渉、諸々の事前打ち合わせ、見積もりなどを担当した。  各施設は平成19年参議院議員選挙での製作の経験はあるが、200以上の小選挙区、最高裁判所裁判官国民審査が加わったこの部数を短い選挙期間の中で製作するのは初めてであった。さらに追い打ちをかけるかのように、全小選挙区に立候補者を立てた団体や、突然、比例区に立候補した団体、既成政党の原稿入稿の遅れなどがあってスタート直前までスケジュールを修正しなければならなかった。当点字出版所は製作期間中は諸々トラブルは出たが、勤務のシフトや残業をして、割り当てられた部数を納期内に納めることができた。後に聞いたところでは主だった施設は、ほとんど午前9時から午後11時までの14時間以上の勤務で納期に間に合わせていたという。  今回は前回に比べて極端に部数が減った県があった。比例区や国民審査を100部前後や50部以下の部数しか申し込んでこない選挙管理委員会に対して「この部数では視覚障害者に全く行き渡らないですね。もっと多くの人に配ってもらえませんか」とお願いすると「予算がない」「名簿がない」との返事が大半だった。  国政選挙のたびに部数が少しずつ減っていく傾向ではあるが、これまで届いていた人に部数削減のために届かなくなったというのは絶対にあってはならないことである。また、「選挙のお知らせ」はポスターやポケットティッシュ、電車の中吊り広告と同じ選挙啓発物扱いであるが、受け取る者、利用する者にとっての重要性には雲泥の差がある。選挙公報に点字の規程がないので「選挙のお知らせ」はそれに代わる唯一の情報提供媒体である。選挙管理委員会に対して、誰のために製作を依頼して、何のために配布するのか、認識し直してもらう活動も重要である。  この間までマスコミを賑わしていた行政刷新会議の「事業仕分け」で来年夏の参議院議員選挙の選挙啓発費は大幅削減との評決が出された。あるいは選挙管理委員会では何とかしたくても、予算が回ってこない可能性もある。  選挙管理委員会や発送委託施設はその県の視覚障害者全ての名簿を持っているわけではない。知り合いの中で名簿から漏れて届かなかった人がいたら、次回のために地元や住んでいる都道府県の選挙管理委員会に送付希望を申し出てもらうように視覚障害有権者に勧める働きかけも必要だと思う。  来夏の参議院議員選挙に対しては、視覚障害有権者の情報保障のために早めに選挙管理員会や総務省に「視覚障害者選挙情報支援プロジェクト」として要望を上げる行動を起こさなければならない。「選挙のお知らせ」が一般の人には知られていない分、一番削減されやすいかもしれないからである。 ●ボランティア懇親会 盲ろう者友の会の山岸康子さん講演  点字図書館が主催する第35回ボランティア懇親会は10月28日、東京ヘレン・ケラー協会3階ホールで開かれた。今年の参加者は約50人。5年間活動奉仕をしてきた該当者2人に、藤元節理事長から感謝状が贈られた。  午後2時からは東京盲ろう者友の会理事長、山岸康子さんが「盲ろう者を理解してもらうために」の題で1時間に渡って講演、参加者は支援を確認した。  点字図書館に集まるボランティアは点訳、音訳、図書整理合わせて4月1日現在153人。点訳は4グループと個人、音訳、図書整理はそれぞれ個人単位で参加し、地道に視覚障害者支援のために活動している。 ●ネパール視察から帰って  実感する「収穫の秋」  10月21日から11月3日の日程で、ネパールに出張した。その詳細は『愛の光通信』1月号(http://www.thka.jp/kaigai/reports.html)をご覧いただくとして、ここでは同誌で触れなかった舞台裏を紹介する。  昨年は、各地で労働者や各党派による交通遮断(チャッカ・ジャム)が頻発したため、そもそもカトマンズ盆地から車で出立することさえできなかった。このため、空路インド国境沿いのバラ郡シムラ村に飛び、同郡カレーヤ町で調達したのは、インド製4WDと素人同然の運転手で、3回のパンクに見舞われながら悪路を踏破したのであった。それに比べれば、格段に治安が良くなり、ネパール盲人福祉協会(NAWB)のベテラン運転手によるトヨタハイエースの旅は、裸足になって川を渡ったり、バイクをヒッチハイクするようなこともなく、快適なものだった。  ところで、今回の出張で私が最も懸念していたのは、毎日新聞東京社会事業団の寄託による2005年度から5年計画の「ネパール視覚障害児奨学金事業」が09年度で終了するので、継続の要望が出るのではないかということであった。このため、滞在中NAWBの幹部と会うときは、いつも内心ドキドキしていた。しかし、この件については、「5年間のご支援に対して、深く感謝致します」との会長からの挨拶があっただけで、心配は杞憂に終わった。  実はこの5年計画がはじまる前に、本事業は継続できない事業だが、それでも受けるのか?と、はっきりNAWBに確認し、「それでもよい」との言質を取っていた。そして、毎年、「あと何年残っているが、継続はできない事業である」ということを、くどくどと述べてきたのであった。そしてこの「耳にたこ」作戦はどうやら成功したようであった。  また、来年度からは、「安達禮雄育英基金」、「正雄育英基金」、「順子女子育英基金」という三つのネパール視覚障害児奨学金事業がスタートするので、彼らが意外なほど恬淡としていたのは、そのお陰もあったに違いない。超低金利のデフレ日本とはまったく逆のインフレ王国ネパールでは、半永久的に奨学金を提供でき、その意味は非常に重い。  ところで、「奨学金」とはいっても、視覚障害児に直接お金を渡すわけではない。そんなことをしたら、取り上げられて親父の酒代に消えるのがオチだからである。奨学金はNAWBから直接、児童・生徒が学ぶ学校へ送金され、寄宿舎の毎日の食事や衣服として実物供与され、無料で勉強を続けられる仕組みである。  その結果、私たちが支援するバラ郡のドゥマルワナ校出身の視覚障害者からも、今春母校の教師が生まれた。私たちがまいた種は、着実に芽を出し、育ち始めているのである。(海外盲人交流事業事務局長 福山博) ●同窓会長に愛宕氏を再選  ヘレン・ケラー学院はヘレン・ケラー女史の誕生日に当たる6月27日、同学院の同窓会総会と懇親会を開いた。  同日午前11時から講堂で約50人が出席して総会を開き、平成20年度活動報告・同決算案と21年度事業計画・同予算案を満場一致で可決した。任期満了となる会長には愛宕洋志現会長が再選された。  懇親会は、サキソフォンカルテット「コロッサス」が7曲のアンサンブルを披露、軽快な演奏を楽しんだ。 ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp