東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第13号 2008年12月17日発行 発行人:藤元 節 編集:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会                      〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所・盲人用具センター・海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●ソシエテジェネラル証券東京支店 協会を強力バックアップ ●学院同窓会 新線開通で久しぶりの出席も ●第58回音楽コンクール ヘレン・ケラー賞 ●今年のヘレンケラー・サリバン賞 ●叙情歌を楽しみ、口ずさむ ボランティア懇親会 ●「サポートグッズフェア2008」会場前から大盛況 ●「ネパールの視覚障害者のために」遺志生かし「安達禮雄育英基金」創設 ●『LIGHT OF LOVE (愛の光通信)』 2008年冬号を発行 ●新評議員に福山博氏 ●東京メトロ副都心線開通 協会までらくらく2分 -------------------------------------------------- ●ソシエテジェネラル証券東京支店 協会を強力バックアップ  3年間にわたり高額助成申し出  「社会的に弱い立場の方に教育を通じ貢献したい」と、ソシエテジェネラル証券会社東京支店が当協会の事業と設備強化を3年間支援することが決まり、初年度がスタートした。  7月1日付で交わした「協力に関する契約書」には本年度300万円の寄付と随時追加支援があり得ることのほか、職員による追加寄付の奨励も記されている。使途はヘレン・ケラー学院生の奨学金、教育機器の購入、ヘレン・ケラー記念音楽コンクールの3プロジェクトが対象。  フランス金融大手のソシエテジェネラルは世界82カ国で、毎年6月に「シチズンシップ・ウイーク」を設定し、社会貢献活動を積極展開している。契約に先立ち藤元理事長が同ウイーク中の6月14日に同支店の昼食会に招かれ、協会紹介DVDを上映しながら支援をお願いした。  9月末までに同支店分と職員分を合わせて336万5千円の寄付金が寄せられ、学院の後期授業に間に合うよう、拡大読書器3台、CD読書器、CDコピー機各1台と学院初の臨床実習用電動ベッドを配備した。さらに点字図書館の自動高速CDコピー機に続いて学院に人体模型3基、実技実習用電動ベッド1台を導入したほか教室のコンセント増設も果たし、安全対策も万全。「こんなに速く学習環境を整備してもらえるとは思わなかった。私たちも頑張らなくては……」と、学生たちは感謝している。  今回の音コンでは、「私たちに任せて」という同支店CSR担当の佐藤有子さんと広報部の加藤浩子さんの申し出を受けて、墨字と拡大文字のプログラム、ポスターの制作をお願いした。当日は同支店ハンス・ヴァンベーク社長も臨席され、支店職員ボランティア4人が昼食時の飲み物配布に大活躍した。同社長は「素晴らしいコンクールでした」と感激の面持ちだった。 ●学院同窓会 新線開通で久しぶりの出席も  ヘレン・ケラー学院はヘレン・ケラー女史の誕生日に当たる6月27日、同学院の同窓会総会と懇親会を開いた。同日午前11時から講堂で約50人のOB、OGが出席して総会を開き、平成19年度の事業報告・同決算案と20年度事業計画・同予算案を満場一致で可決した。  懇親会は、目が不自由ながら語り部として活躍している川島昭恵さんに童話を2作朗読してもらった。東京メトロ西早稲田駅の開設で23年ぶりに出席した女性は「新しい駅ができて本当に便利になった。来年も是非来ます」と喜んでいた。 ●第58回音楽コンクール ヘレン・ケラー賞  飯嶋さんにヘレン・ケラー賞  昨年はピアノで1位 ヴァイオリン部門で受賞  第26回JTシチズンシップ・イベント「第58回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」(東京ヘレン・ケラー協会主催、JT共催、ソシエテジェネラル協賛、文部科学省、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団、点字毎日など後援)が勤労感謝の日の11月23日、東京・港区のJTホールアフィニスで開かれ、器楽、声楽の2部門に児童、生徒、学生ら計48人が出場した。  もっとも感動を与えた演奏者に贈られるヘレン・ケラー賞は、熊本県立盲学校専攻科2年、飯嶋輪さんが受賞した。飯嶋さんはヴァイオリンでエドゥアール・ラロ作曲スペイン交響曲ニ短調作品21第1楽章をダイナミックに演奏し1位となった。飯嶋さんは昨年、ピアノ自由曲の部で1位を受賞しており、異なる楽器でV2を達成する快挙となった。  また、コンクールのあと視覚障害のフルーティスト、綱川泰典さんがA.F.ドップラー作曲子守歌作品15など5曲を特別演奏。同じく視覚障害のピアノニスト、長澤晴浩さんとともに鮮やかな音色を会場に響かせた。  審査はヴァイオリニストの和波孝A、弦楽器演奏家の武久源造、合唱指揮者の淡野弓子、毎日新聞専門編集委員の梅津時比古の4氏があたったが、コンクール終了後に会場で武久、和波、淡野先生が直接指導する機会を設けたため、多くの出場者が貴重なアドバイスを受けた。 ○ヘレン・ケラー記念音楽コンクール入賞者(敬称略、数字は学年) 【ピアノの部・小学生】 1位=阿部友亮(栃木県立盲・小5) 2位=該当者なし 3位=岩月かほり(愛知県立名古屋盲・小2)、鈴木萌依(静岡県立静岡視覚支援・小6) 奨励賞=高野翼(栃木県立盲・小4) 【ピアノの部・中学生】 1位=市川純也(奈良県天理市立西・中1) 2位=生島唯斗(東京都立葛飾盲・中1) 【ピアノの部・高校生以上】 1位=服部澄香(愛知県立名古屋盲・高2) 2位=藤本しのぶ(大阪府立視覚支援・専2) 3位=中西良輔(千葉県立千葉盲・高3) 【弦楽器の部=いずれもヴァイオリン】 1位=飯嶋輪(熊本県立盲・専2) 2位=横山響子(岐阜県立岐阜盲・高3) 【その他の楽器の部】 1〜3位=該当者なし 【独唱1部】 1位=該当者なし 2位=吉岡千尋(京都府立盲舞鶴分校・小5) 3位=米屋明歩(愛媛県立松山盲・小6)、生島唯斗(東京都立葛飾盲・中1) 【独唱2部】 1位=桝井彩加(大阪府立視覚支援・専2) 2位=濱田直哉(大阪府立視覚支援・高2) 3位=日下部亜美(大阪府立視覚支援・高3) 【合唱の部】 1位=大阪府立視覚支援・高2・3、専2 2、3位=該当者なし 奨励賞=ヘレン・ケラー学院 【ヘレン・ケラー賞】 弦楽器の部=飯嶋輪 (写真)舞台上でヴァイオリン演奏に入る直前、弓を構える飯嶋輪さん ●今年のヘレンケラー・サリバン賞  視覚障害ランナーと伴走 大島幸夫さんに  2008年度ヘレンケラー・サリバン賞は、視覚障害ランナー伴走の永年にわたる実践的リーダーであり、ニューヨークに本部を置く障害者のランニング・クラブ「アキレス・トラック・クラブ」の日本支部創設者として、またNPO法人東京夢舞いマラソン実行委員会の理事長として走り続ける大島幸夫さん(71)に決定した。  贈賞式は、10月1日、東京ヘレン・ケラー協会3階ホールで開かれ、藤元節理事長が「この賞を弾みに、障害者と健常者のバリアを取り除くためにさらなる尽力をお願いします」と挨拶。大島さんに表彰状を授与しした。  また選考委員長の田中徹二日本点字図書館理事長が、ヘレン・ケラー女史のサイン入りクリスタルトロフィーを贈呈。「本賞は本来の仕事以外に、ボランティアとして視覚障害者をサポートしてきた人に贈りたいと考えていた。その意味で大島さんはもっともふさわしい人だった。喜んで選ばせてもらった」と選考の経過を説明した。  受賞の挨拶に立った大島さんは「視覚障害者のみならず、さまざまな障害を持った方たちと接することで、視野が広がり新しい世界が見えてきました。記録ばかり目指していた頃と違って、障害者と走ることで、私の走りは進化したのです。この受賞を中間点としてさらにみなさんと走り続けていきたい」と述べた。  大島幸夫さん:1937年東京生まれ。早大卒。毎日新聞で社会部、サンデー毎日編集次長、運動部編集委員、学芸部編集委員、特集版編集部長、特別委員などを経てフ リージャーナリスト。沖縄、韓国、戦後民衆史、映画、海洋文化、ファッションなど広範なジャンルのノンフィクションを手がけてきた。 ●叙情歌を楽しみ、口ずさむ ボランティア懇親会  ミニコンサート開催  点字図書館主催の第34回ボランティア懇親会は10月28日、当協会3階ホールで開かれ、日頃点字図書館を支えている点訳・音訳・図書整理のボランティア約50人が参加した。  前半は、5年間ボランティア活動を続けてきた11人(当日出席5人)に藤元節ヘレン・ケラー協会理事長から感謝状が贈呈された。  恒例の特別イベントは歌手の大村みのりさんを迎えてのミニコンサート。大村さんは自然・環境、癒しをテーマに叙情歌を歌って国内外でコンサートを開いており、忙しい中、時間を割いて今回のコンサートを引き受けてくれた。  会場にはヘレン・ケラー学院の学生らも集まり、大村さんは軽快なトークと叙情歌17曲を披露、最後は全員で唱歌「ふるさと」を大合唱して1時間たっぷり楽しんだ。 (写真)ピアノを弾きながら叙情歌を披露する大村みのりさん ●「サポートグッズフェア2008」会場前から大盛況  女史の声に感激  視覚障害者向けの機器や用具、便利グッズなどを集めた当協会の展示会「サポートグッズフェア2008」は、8月20日、点字出版所のある毎日新聞社早稲田別館地下食堂を借りて開催。最終的な来場者数は、前年の80名を大きく上回る過去最高の123名となる盛況だった。  今年度は、相次いで発売された携帯型デイジープレーヤーと拡大読書器に的を絞って目玉展示にし、関係各社に出展を依頼した。また、新たな試みとして協会の事業内容などをPRするために、ヘレン・ケラー協会のブースを用具センターとは別に設けた。ポイントは「ヘレン・ケラー女史の生の声視聴」とし、女史が1955年に来日した際の貴重な肉声をテープで流しヘッドフォンで聴いてもらった。  前宣伝が効いて利用者側の期待も高かったのか、来場者は開場前から膨れあがり、急きょ開始時刻を繰り上げてのスタートとなった。「ヘレン・ケラー女史の声視聴コーナー」では、年配の方を中心に「実際に来日した時に、スピーチを聴いたことがあるんだよ」「50年以上も前だけど、声を聴いて当時の思い出が蘇った」などと感激に浸っていた人も見受けられた。他のブースも盛況で、新型製品に触れたくてしばらく待たされる人もおり、会場は終始熱気に満ちていた。  今年は主管をこれまでの点字図書館から盲人用具センターに移行して、従来の体制をガラリと変えての開催となった上、東京メトロ副都心線西早稲田駅開業で交通の便が格段に良くなったことや話題の商品を集めたことが集客に繋がったのだろう。来年度もさらに生活を楽しく便利にする商品や新商品を紹介していきたいと考えている。(盲人用具センター)  <出展企業>(株)アイネット▽(株)アメディア▽(有)エクストラ▽(株)NTTドコモ▽KGS(株)▽シナノケンシ(株)▽(株)タイムズコーポレーション▽(株)TNK▽(株)日本インシフィル  <特別参加団体>NPO法人シネマ・アクセス・パートナーズ/バリアフリー映画鑑賞推進団体シティライツ▽社会福祉法人日本点字図書館 ○学院では感謝の「無料体験マッサージ」  同日、ヘレン・ケラー学院では日頃の協力に感謝を込めて地域の方への30分間無料体験マッサージを開いた。マッサージにあたったのは学院の2、3年生。午前10時の開始前からすでにマッサージを希望する人が訪れ、早速心地よいあん摩マッサージを受けた。この日訪れた方は41人にも上り、学院生の腕の良さを改めて感じてくれたようだった。(ヘレン・ケラー学院)   ●「ネパールの視覚障害者のために」遺志生かし「安達禮雄育英基金」創設  2010年4月からスタート  当協会がネパールで実施する事業の熱心な後援者であった安達禮雄氏が、2007年秋に逝去され、遺族から同氏を記念した奨学金をネパールに創設したいとの申し出があった。そこで協会は寄せられた200万円を「安達禮雄育英基金」としてネパール側関係者と協議、2010年4月からスタートすることで合意した。  福山博海外盲人交流事業事務局長は、2008年8月ネパールを訪れ、この件についてネパール盲人福祉協会(NAWB)会長をはじめとする同協会幹部と協議した。  NAWBからは「ネパールには貧しさゆえに就学できない視覚障害児が大勢いる。大変ありがたい申し出であり深謝する。NAWBには同様の奨学金が3件、事業基金が4件あり、長年の運用実績を誇っており、問題点はない。具体的内容に関しては、後日文書で提示したい」と、申し出に対する心からの謝意と、この基金を確実にネパールの視覚障害児のために役立てることへの強い決意が表明された。  NAWBは、その後育英基金の内容を文書で提案してきたが、その骨子は以下のとおり。  ・奨学金の名称は「安達禮雄育英基金(Reo Adachi Scholarship Fund)」とする。  ・同基金を保証するため、安達家、NAWB、当協会の3者が「覚書」を交換する。  ・NAWBは200万円に相当するネパールルピー(以下、ルピーと略す)をカトマンズの信頼できる銀行に定期預金として預け、2010年の4月からその利息の中から奨学金を給付する。  ・NAWBは、定期預金から得られる銀行利息だけを使い、元金は定期預金の口座に常に保たれ、同基金は永続するものとする。  ・支給対象者は小学校から高校までに就学する視覚障害児童・生徒5名を予定しており、1人あたりの奨学金は年額1万5,000ルピーとする。  ・奨学生が高校教育を終了すると同基金は新しい視覚障害児に与えられるものとする。  ・NAWBは奨学金総額の5%を超えない金額を管理費として使用できる。  ・NAWBの年次総会において、同基金の事業報告と会計報告を行う。  ・NAWBは毎年12月末に、安達家と当協会に対して、奨学生の学業報告と会計報告を行う。  安達禮雄育英基金を保証するため、安達家、NAWB、当協会の代表が11月9日付で「覚書」を交換し、11月27日、「安達禮雄育英基金」を創設するため、安達家から預かっていた200万円をNAWBに送金した。  なお、同基金の設立を提案したNAWBからの英文の手紙と育英基金に関する英文の「覚書」と、その和訳は、当協会のホームページ上で公開している。 ●『LIGHT OF LOVE (愛の光通信)』 2008年冬号を発行  海外盲人交流事業事務局では、ネパールにおける事業を紹介したニュースレター『LIGHTOF LOVE(愛の光通信)』(墨字版と点字版)を年2回発行しているが、2008年12月冬号(通巻31号)をこのほどリリースした。  同誌は当協会のホームページでもPDF形式、TXT形式、BASE形式(点字版)で公開している。(http://www.thka.jp/kaigai/) ●新評議員に福山博氏 東京ヘレン・ケラー協会は12月12日、平成20年度第3回理事会を開き、川田孝子評議員の退任を承認、後任として福山博点字出版所編集課長に委嘱する案件を承認した。福山評議員の任期は平成22年6月11日まで。 ●東京メトロ副都心線開通 協会までらくらく2分  安全対策もしっかり・・・でも もうちょっとの配慮を                   従来、当協会は高田馬場駅から遠く、悪天候の日など来訪者にご足労をお掛けしてきた。しかし、6月14日に念願の東京メトロ「地下鉄副都心線」が開通したことにより、同線「西早稲田駅」2番出口より徒歩2分と極めて交通至便となった。しかも、西早稲田駅から池袋駅まで5分、渋谷駅までは11分。さらに、西早稲田駅から二つ先の新宿3丁目駅では東京メトロ丸ノ内線や都営新宿線への乗り換えが容易なため、地下鉄による都内各所への移動がとてもスムーズとなった。これまで「点字ジャーナル」の取材などで出かける際には、天気を気にすることもしばしばあったが、地下鉄副都心線の開通で、それも今や昔である。  わたしたち視覚障害者にとって副都心線は、なにより安全対策がしっかりしており、その点でも頼もしい限りである。とくに各駅のプラットホームにある、電車が停車すると自動的に開閉する「可動式ホーム柵」の存在は、安全対策としてはなにものにも代え難いものである。さらに、駅員も懇切丁寧で、わたしたちの誘導を快く引き受けてくれている。ただ一つ残念なことは、プラットホーム上にある斬新なデザインのベンチや椅子である。特別注文であろうが、透明であるため弱視者にとっては極めて分かりにくく、身体の一部がぶつかる危険性がとても高いのだ。おそらく東京メトロにとっては予想外の指摘だろうが、安全対策では画竜点睛を欠くといわざるをえない。  ところで、副都心線は埼玉県和光市の「和光市駅」から東京都渋谷区の「渋谷駅」を結んでおり、池袋、新宿、渋谷の3大繁華街に直結している。さらに、2012年には東急東横線との相互乗り入れも開始され、埼玉県南部と横浜が一つの線路で繋がる予定である。横浜在住のわたしにとってはなんとも心強い計画である。(「点字ジャーナル」編集部 戸塚辰永) ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp