東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第11号 2007年12月18日発行 発行人:藤元 節 編集:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会                      〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所・盲人用具センター・海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●学院同窓会 ●ネット活路、右肩上がり 盲人用具センター ●点訳ボランティア養成講習会 ●点字選挙公報 参院選プロジェクトに初参加 ●BBメールが15号 順調に発行 ●ボランティア懇親会開く ●ヘレン・ケラー賞 筑波大附属視覚特別支援校トリオに ●07年度ヘレンケラー・サリバン賞 ●上海で点字印刷機を視察 ●サポートグッズフェア夏+マッサージ無料サービス 同時開催 ●順調に進む「毎日奨学金事業」を確認 -------------------------------------------------- ●学院同窓会  愛宕会長ら再任 フルート演奏も  2007年度のヘレン・ケラー学院同窓会総会が6月27日午前11時から、東京ヘレン・ケラー協会ホールで開かれた。当日はヘレン・ケラー女史の誕生日にあたり、学院は休日となるため毎年この日総会が開かれることが恒例になっている。  総会には約70人の同窓生が出席。18年度事業報告・決算、19年度事業計画・予算案が満場一致で承認された。2年に1度の役員改選期にあたる今回は、会長に愛宕宏さん、副会長に長谷川清さんと高山米子さんがいずれも再任され、今後2年間同窓会をリードしていくことになった。  午後からは懇親会。ギターとフルートによる特別演奏で幕を開いた会は、愛宕会長の司会で参加者の近況報告が続き、最後に学院歌と愛唱歌「幸福の青い鳥」の大合唱でお開きとなった。 ●ネット活路、右肩上がり  盲人用具センター カタログ一新し好評  視覚障害者のためのさまざまな便利グッズや生活用具を販売している盲人用具センターは、4月に要員を強化し、積極的な販売展開をしているが、10月には「盲人用具カタログ」をスマートで見やすくし、商品のラインナップも一新した。また例年の点字・墨字版に加え、今年はテープ版も作成して利用者から好評だ。当協会発行誌に「ご希望の方はご連絡を」とDMを入れたところ、すでに80人近くの方から問い合わせがあった。  商品の注文は圧倒的に電話が多いのだが、最近はホームページを見た方がメールで注文する回数が増えてきている。昨年のメール件数はゼロだったのに、今年は10月以降10件以上来ている。これは広報委員会に尽力いただいた結果の表れだろう(ちなみにホームページからは、テキストファイル、点字データ、PDFファイルの3種類がダウンロードできる)。  メール注文の内訳は、学校や役所などの公的機関と視覚障害者個人の割合が半々という具合だ。予想以上に売れているのが、「ファルフィット(耐刃手袋)」と「なくしもの発見器 千里眼」という商品である。ファルフィットは、カッターナイフなどの刃物を使うときや庭木の手入れなどの作業時に使用する。指先に特殊加工を施してあり、滑りにくく手を傷つけないため精密機器の細かい作業にも適している。また千里眼は、送信機と受信機が各1個ずつ付いていて、送信機のボタンを長押しすると受信機が電子音で応えるというもの。使用方法はさまざまで、靴を脱いだ時に受信機を靴の中に入れておいたり、車や会議など指定された席を離れる時に受信機を置いておき、戻る時に送信機のボタンを押すと音で場所を知らせてくれたりするので、捜し物や戻る場所が分かりやすくなるといった優れ物。  今後は、ホームページ上での情報提供をもっと充実させ、ネット通販も試みたい。来年度はデイジー版カタログ発行や、第2弾オリジナルグッズ発売なども予定しており、さらに視覚障害者に役立つ盲人用具センターにしようと張り切っている。  (盲人用具センター) ●点訳ボランティア養成講習会  13人が修了、仲間入り  5月8日にスタートした2007年度点訳ボランティア養成講習会が、9月4日に全16回の日程をすべて修了した。前年度に引き続いての点訳講習会だったが、今年は応募者が多く予定枠より1人増やして16人が受講、途中やむを得ない事情で断念した人もいたものの、結局13人が最後までやり遂げた。  半年近い講習ですっかりうち解けた講習生はすでに同期意識が芽生えたようだった。  修了者はさらにブラッシュアップするために、引き続いて点字図書館職員の個人指導を受けるが、実力がある程度ついたと判断した段階で、図書館のボランティアグループに加わり、点訳本の製作に取り組むことになる。  (点字図書館) ●点字選挙公報 参院選プロジェクトに初参加  課題、衆院選が正念場  点字出版所が視覚障害者選挙情報支援プロジェクトに参加して初の参院選に取り組んだ。同プロジェクトは4年前に立ち上がり、当協会は昨年参加を決めた。  かつて、点字出版所にとって、選挙はけた外れの利益をもたらす打ち出の小槌だった。固型印刷機2機をフル稼働させれば、どこも真似が出来ない大量印刷ができたから、衆参両院の選挙年には4〜5千万円の売り上げがあり、選挙が無い年に取り崩しても、残るほど潤った。  点字読者に、より多くの選挙情報を届けるという大義名分は理解しても、長年積み上げてきた既得権を手放し、他の施設に小分けするプロジェクト加入は、苦渋の選択であっただろうと想像するに難くない。  7月の参院選では、プロジェクト総体で8万部を印刷したが、そのうち2万部を点字出版所が請け負った。2番手の点字毎日ですyou ら9260部、あとの施設は数千部ずつと推して知るべし。協会のガリバーぶりが際立ている。  終わってみれば、もう少しやれたのでは、との声が出るのもうなずける。  日本点字図書館が原版を作り、大阪の点字毎日が校正するという仕組みも、あらかじめ日程が見えており、公示から投票まで17日ある参院選ゆえに、なんとかこなせたものの、噂されている衆院選を予想すると、いささか恐くなる。選挙期間は火曜日公示で翌々週の日曜日投票の12日しか無く、小選挙区は300を数え、比例区は11ブロック、しかも解散から40日で選挙となると容易ならざる事態が見えてくる。  慎重を期すのはもちろんだが受注数の見極めにも大胆さが必要かもしれない。同時に選挙頼みの経営体質を改めて、月々の安定的な収益を確保することが肝心と言える。  (点字出版所・迫 修一) ●BBメールが15号 順調に発行  協会情報のパイプ役  一昨年10月に創刊した協会のメールマガジン「BBメール」が、この12月発行で15号を数えた。毎月1回の発行だが、「ほぼ月刊メルマガ」と位置づけて、それほど厳密な発行計画を立ててきた訳ではない。それでも伝えたいことは必ずあるもので、これまで順調に出し続けることができた。  創刊号では発刊の主旨について「点字出版所は1968年に、毎日新聞社からの4人の出向者により泥縄式に設立されたという特殊な経緯もあり、……協会内部での意見や情報の交換、運営方針の徹底が必ずしも十分ではありませんでした。協会報『青い鳥』の発行やホームページの開設などを通して、徐々に協会は一体であるとの認識が出版所の職員にも芽生えるようになったのは、つい最近のことです。しかし、日常的に業務上の交流がない部門も多いので、いまでもまだ十分風通しが良いとはいえません。そこで広報委員会では、これらの現状をいくらかでも改善すべく、このたび、協会報『青い鳥』とは別に、メールマガジン『ブルーバード・メール』、略して『BBメール』を創刊することにしました」と書いた。  この趣旨は現在も継続している。そして確かに言えるのは、この1年3カ月で協会の風通しがとても良くなったことだろう。これは広報委員会の役割の一つでもある「内部情報の共有化」がBBメールを通じて進んできたことの証といえるのではないか。  ただ、掲載される情報は一部の職員の網にかかったものだけというのが弱点である。もっと多くの人からの投稿が載るようになると、さらに楽しく充実したメルマガになるだろう。メール愛読者からメール投稿者に。このヘンシンを期待している。  (広報委員会) ●ボランティア懇親会開く  点字図書館で奉仕活動をしているボランティアに感謝を捧げるボランティア懇親会は10月24日、協会3階ホールで開かれた。33回目の今回は出席者は約50人と盛況な懇親会となった。  奉仕活動を5年間務めてきた人が対象の感謝状贈呈該当者は13人。藤元節協会理事長から出席したひとりひとりに心をこめた感謝状が手渡された。  記念講演はノンフィクション作家の黒岩比佐子さんにお願いした。「明治の“食育”小説ー村井弦斎の『食道楽』」のタイトルで、今ブームの「食育」という言葉がすでに“忘れられた作家”村井弦斎によって語られていたことや、当時の大ベストセラー作家であった弦斎にまつわるエピソードなどを楽しく話してくれた。    ●ヘレン・ケラー賞 筑波大附属視覚特別支援校トリオに  第57回記念音楽コンクール  第22回JTシチズンシップ・イベント「第57回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール」(東京ヘレン・ケラー協会主催、JT共催、文部科学省、毎日新聞社、毎日新聞社会事業団、点字毎日など後援)が勤労感謝の日の11月23日、東京・港区のJTホールアフィニスで開かれ、器楽、声楽の2部門に児童、生徒、学生ら計38人が出場した。 今年から小学生低学年に課題曲の部を設けるなど新しい試みを取り入れ、また審査員の顔ぶれも変わって、熱気あふれる新鮮なコンクールとなった。  もっとも感動を与えた演奏者に贈られるヘレン・ケラー賞は、重唱で歌劇「魔笛」から「恋を知るものこそは」を歌った北原新之助さん、高山ちひろさん、それにピアノ伴奏の池田サラジェーンさんの筑波大学附属視覚特別支援学校トリオに贈られた=写真。  コンクールのあと三浦文彰さん(東京学芸大学附属世田谷中学3年)がプロコフィエフ作曲ヴァイオリンソナタ第2番を特別演奏。ピアノの田中麻紀さんと華麗なアンサンブルを会場に響かせた。  審査はヴァイオリニストの和波孝禧、鍵盤楽器演奏家の武久源造、合唱指揮者の淡野弓子、毎日新聞専門編集委員の梅津時比古の4氏があたり、コンクール終了後に和波、淡野両先生に直接話を聞く機会を設けたため、多くの出場者が貴重なアドバイスを受けた。  入賞者は次の通り。(敬称略、数字は学年) 【ピアノ課題曲の部】1位=水野隆(東京都足立区立五反野小3) 【ピアノ自由曲の部小学生】1位=志岐竜也(東京都立八王子盲・小4)▽2位=吉岡千尋(京都府立盲舞鶴分校・小4)▽3位=市川純也(奈良県天理市立前栽小6) 【ピアノ自由曲の部中学生以上】1位=飯島輪(熊本県立盲・専1)▽2位=横山隆臣(筑波大附視覚特別支援・高3)▽3位=中西良輔(千葉県立千葉盲・高2)▽奨励賞=國枝大祐(京都府立盲・専3) 【弦楽器の部】1、2位=該当者なし▽3位=横山響子(岐阜県立岐阜盲・高2) 【その他の楽器の部】1〜3位=該当者なし▽奨励賞=山崎咲江(筑波大附視覚特別支援・高3) 【独唱2部】1位=池田サラジェーン(筑波大附視覚特別支援・高2)▽2位=北原新之助(筑波大附視覚特別支援・高3)▽3位=桝井彩加(大阪府立盲・専1)▽奨励賞=大山卓三(東京都立文京盲・高3)、山本康平(大阪府立盲・専1) 【重唱・合唱の部】1位=北原新之助、高山ちひろ(筑波大附視覚特別支援・高3、専2)▽2、3位=該当者なし▽奨励賞=ヘレン・ケラー学院 【ヘレン・ケラー賞】重唱・合唱の部=北原新之助、高山ちひろ、池田サラジェーン ●07年度ヘレンケラー・サリバン賞  天津日本語学校の李勝彦校長に  2007年度のヘレンケラー・サリバン賞(第15回)は、中国天津市の天津市視覚障害者日本語訓練学校(天津日本語学校)の李勝彦校長(63)=写真=に決定した。贈賞式は「国際交流基金が12月に中国で実施する日本語能力試験を目指して、学生がラストスパートで頑張っている最中に校長が学校を留守にはできない」という李氏の意向を尊重し、年が明けて1月18日に当協会で行う。  アジア視覚障害者教育協会の青木陽子会長が、中国天津市に日本語学校を設立したのは1995年。以来10余年、現在までに77人(視覚障害48人、健常29 人)の日本語能力試験合格者を出し、9人が日本へ留学している。同校では、これまで視覚障害受講生75人、同通信生125人に加え、肢体不自由13人、健常162人と、計375人の学生を受け入れてきた。巣立った人々の日本語能力の高さはわが国でも定評のあるところだ。  このように全盲の青木氏はたぐいまれな行動力で日本語学校の発展に尽力してきたが、その青木氏を公私ともに献身的に支えてきたのが、「中国の両親」と彼女が慕ってやまない李勝彦・傳春霞夫妻だったのである。青木氏と李勝彦夫妻は、李氏のご子息である李爽氏が日本に留学し、青木さんに中国語を教えた縁で出会い、絆がはぐくまれて天津日本語学校へとつながっていった。  受賞について李氏は「本来なら創立者の陽子が校長になるべきところだが、『外国人は、法的責任を負う資格を持たない』という法律があり、こちらにまわってきただけです」と謙遜する。しかし、サリバン賞に関しては「なにより祖母と母の祖国である日本から認められたのが嬉しい」と、手放しで喜んでいた。 ●上海で点字印刷機を視察  迫出版所長ら、導入に備え研究  9月4日から7日にかけて、点字印刷機(GPB3)の視察のため、上海虹橋(こうきょう)空港近くの上海市盲童学校(上海低視力学校)を迫所長はじめ点字出版所職員5名が訪問した。  当協会の英国製固型点字高速印刷輪転機は、点字出版所(当時は点字出版局)が開設された1968年から稼働し続けており、今年で1号機が40年、2号機が35年になる。このため輪転機の老朽化と環境問題の面から代替機導入が検討され、今回の視察となった。  上海市盲童学校の点字出版所(盲文印刷所)には、ドイツ・ブレイルテック社製の自動点字印刷機GPB3が1台、同ハイデルベルガー3台(自動紙送り2台、手動紙送り1台)の計4台の点字印刷機があった。見学の主目的であったGPB3は、自動紙送り装置が故障し稼働していなかったが、印刷を行っていたハイデルベルガーのカット紙自動紙送りの印刷機がGPB3と同じ構造だったため、大いに参考になった。印刷用紙はA3の更紙(わら半紙)の厚めのもの、原板はA4のアルミ板を使用していた。固型印刷機に比べ、原版および紙の交換はきわめて容易であったことが印象に残った。  GPB3の印刷速度は1時間当たり1000〜2500枚。2500枚ならその能力は、当協会の固型印刷機と同等である。騒音は大幅に解消されているというが、サイズは長さ2050×幅1775×高さ1835mm、重さ3800kgと大型化している。  実際に印刷されたものは、鮮明で読みやすい点が出ていた。できれば持参した上質紙の点字用紙と亜鉛の原板で印刷を試してみたかったのだが、技術的に無理であった。  今後は初期設定、汎用性、メンテナンス、部品の確保などの問題点を一つ一つドイツのメーカーと交渉していく予定である。  (点字出版所製版課長・藤森 昭)    ●サポートグッズフェア夏+マッサージ無料サービス 同時開催  恒例となった「サポートグッズフェア2007夏」(点字図書館主催)とヘレン・ケラー学院の「1日感謝デー・30分無料体験マッサージ」が8月23日に同時に開かれた。  今回のサポートグッズフェアは、音声サービスやスポーツイベントに活躍する団体にも参加してもらい、バラエティあふれるフェアとなった。音声サービスではデイジー版週刊誌や書籍を作るテープ版読書会、新聞代読サービスのNTT東京福祉文化事業団ゆいの会、音声ガイド付き映画を製作するCAP/シティ・ライツが出展。またスポーツ団体はフリークライミングを楽しむモンキーマジックが活動を紹介した。  一方、ヘレン・ケラー学院主催の無料体験マッサージは、近隣の方への感謝を込めて、学院生がマッサージをサービスした。例年にない猛暑続きのせいで疲れ切った体をマッサージしてもらった人たちは大喜びだった。 ●順調に進む「毎日奨学金事業」を確認  ネパール訪問                     10月24日から11月6日の日程で、統合教育校の視察を中心とした事業管理のために、ネパールを訪問した。今回の眼目は、毎日奨学金事業の対象校である7校のうち、昨年行けなかった2校を含む4校の視察。途中、住民の示威行動による道路閉鎖に遭遇したが、幸運に恵まれ、それをすり抜けて目指す学校に行くことができた。  ネパールは、昨年国名をKingdom of Nepal(ネパール王国)からState of Nepal(ネパール国)に変更したので、今年度社会科の教科書が改訂された。しかし、新学期にやっと間に合うように墨字版が発行されたため、点字版はそれからの製作となり、今年度は授業に間に合わなかった。これが一因となり、大きくてかさばる点字教科書を嫌い、他の教科でも持参しない男子生徒が続出。それを目にしたので、ネパール盲人福祉協会(NAWB)に対応を勧告し、すべての統合教育校に手紙を出して、授業中は、視覚障害児にかならず点字教科書を使うよう徹底させることにした。  このような改善する点もみられたが、治安もよくなり、毎日奨学金事業はおおむね順調に進捗していた。  CBRセンター改修工事と、バラ郡ドゥマルワナ校の増築工事は、都合1カ月かかるダサインとティハールというお祭りが開けた12月に着工する計画。これらのお祭りは、日本でいえば盆と正月が一緒にきたような、ネパール人であれば誰もが浮かれる季節だったので、緊張感が欠けた態度がみられたのも、あるいはやむを得なかったのかも知れない。  (海外盲人交流事業事務局長・福山 博) ---------- “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。 http://www.thka.jp