東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第10号 2007年6月15日発行 発行人:藤元 節 編集:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会                      〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所・盲人用具センター・海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●ガイヘル事業、人気の秘密… ●新入生7人迎える ●苦情解決実施要綱を定める ●事業報告・事業計画 ●出版所の経営改善に全力 ●PASMO 大ヒット ●窓 ●サポートグッズフェア春 ●初のロービジョンケア相談会開く ●図書館が関点協会長館に ●点字出版所 強い組織に衣替え ●ヘレン・ケラー学院 10人に卒業・修了証書 ●図書館書架を更新 ●久しぶりのベストセラー 平成大合併地図 ●新築の輝きを取り戻したバラCBRセンター ●さあ参院選だ! 総力をあげてがんばろう! -------------------------------------------------- ●ガイヘル事業、人気の秘密…   厳しさと丁寧な授業  当協会の視覚障害者ガイドヘルパー養成研修事業が3年目に入った。今年3月時点で修了生は約200人、盛況ぶりは他の事業体に比べても際だっている。なぜ本事業がこれほど評判がよく、人気が高いのか。この2年余を振り返る。  開講当時は手探りで受講生を募集する状態だった。しかし、決して手を抜くことなく、「きちんとした講義と実習こそが、継続への源泉」を当初からのモットーとしていた。このため講師陣を厳選し、必要なことをきちんと教えることのできる方に依頼。講師もそれに応えて、厳しいながらも丁寧な授業を進めてきた。実習には専門の技能訓練士を起用して、誘導に必要な動きやその意味を解説、安全なガイド法を体験させチェックするなど、きめ細かい現場実習を積んだ。  これが徐々に評判を呼んで現在に至ったと言っていいだろう。受講生の多くが友人などからの口コミで知ったと言い、紹介者を通して申し込む方が多くなっていった。遠くから新幹線で通学する人、ビジネスホテルを利用したり、都内の親戚に泊まりながら受講するなど熱心な人もいたが、これらの人たちは「ヘレン・ケラー協会ならきちんとした授業をやってくれると思い申し込んだ」と口をそろえる。  これまでの受講者は初心者と有資格者がほぼ半数ずつ。年齢も幅広く主婦や学生、あるいは仕事を持っている人なども。修了後はガイドヘルパーとして働くのはもちろん、ボランティア活動に携わったり、障害を持つ家族のために役立てるなど、さまざまだ。  このガイドヘルパー事業が他施設からも注目されているのは、たとえば都内の派遣事業所から特別研修を依頼されたことでも証明される。また、区役所の呼びかけで区民が受講料の補助を受けて参加した例もある。  土日を利用した4日間の研修は、フルに出席することが義務づけられ、遅刻も認めないなど、受講生にはある種の覚悟が必要だが、この厳しさこそが講座の信頼を高め、利用者の立場を十分に理解し、的確なガイドができるヘルパーへとつながっていると言っていいだろう。(ガイドヘルパー養成研修事業事務局)   (写真=訓練の様子) 現場では、厳しい指導の下、バスの乗降訓練が行われる。人気の秘密の一端だ ●新入生7人迎える  ヘレン・ケラー学院の平成19年度入学式・第1学期始業式は4月6日、3階ホールで行われた。5年課程5人、3年課程2人の新入生を迎え、学生総数は38人となった。  3年課程の内田公さんが新入生を代表して「ヘレン・ケラー学院の学生の名に恥じず責任ある行動ができるよう努めます」と誓いの言葉を述べた。藤元学院長は「本年度から、主体的に学業を修める者として前進してもらいたいという願いを込め、生徒から学生に呼称を変更した。単位認定のための成績基準も引き上げたので、頑張って欲しい」と挨拶した。 ●苦情解決実施要綱を定める   東京ヘレン・ケラー協会は社会福祉法第82条の規定により利用者等からの苦情に適切に対応する苦情解決実施要綱を定め、4月1日から実施した。   この要綱に基づき、当協会3施設に苦情解決責任者および苦情受付担当者を設けて苦情解決に努め、協会事業の質と信頼性を高める。 ●平成18年度事業報告と決算 〔ガイド・ヘルパー養成研修事業〕 3年目を迎え、東京都盲人福祉協会などの協力で7月、10月、11月、3月の4回(各土日の4日間)実施した。実技重視のカリキュラムと充実した講師陣への評価が高まり、自治体から受講生の委託を受けるなど、各回とも定員を上回る応募があり、計101人(初回から通算8回で199人)が視覚障害者ガイドヘルパーの資格を得た。 〔ヘレン・ケラー学院〕 新入生は5年課程7人、3年課程5人で生徒総数は43人(前年度48人)。病気などで5人が中途退学し、1人が家庭の事情で自主退学した。東京都内唯一の5年課程を持つ利点を生かして「質の高い三療師養成」を図るため、5年課程の入学定員を12人から15人に増やし、3年課程を15人から10人に減らす学則変更を実施した。19年2月の第15回国家試験では、あマ指師に現役8人(合格率80%)、は・き師に現役2人(同40%)が合格した。 〔点字図書館〕 東京都補助金の削減で財政的には厳しかったが、職員の経費節減努力で、何とかしのぐことができた。図書貸し出しでは音訳図書のテープ利用者からデイジー利用者の移行が顕著となった。3回目の夏休み1日施設公開を8月23日に、また「サポートグッズフェア」を前年度に続いて秋と春の2回実施したほか、新たな試みとして、「ロービジョンケア相談会」を3月7日に開催した。  過去52回実施してきた点字競技会は役割を終えたものと判断して、中止に踏み切った。 〔点字出版所〕 競争入札の激化で単価下落に拍車がかかる一方、固型点字印刷の受注が減少したため印刷収入は落ち込んだ。年度終盤に新規の民需の取り込みと大型の官公庁点字版作成業務の受注に成功し、赤字幅を大幅に縮小した。苦境を脱し、展望を開くため、19年度を初年度とし、3カ年にわたる経営改善中期計画を策定した。点字図書では、「平成大合併地図」全5巻を製作・販売して反響を呼んだ。カラオケ歌詞集の06年版も順調な売れ行きを見せた。日本郵政公社の年賀寄付金の配分により、カセットテープコピー用高速デュプリケータを更新した。 〔盲人用具センター〕 センバツ高校野球と同時期に新発売した「青い鳥ハンドタオル」が早実・斎藤佑樹投手の「ハンカチ王子」ブームに乗って、予期せぬヒット商品となった。前年度開発した「デジタル感光器」はユーザーに好感をもって迎えられ、徐々に売り上げを伸ばした。商品の品揃えを増やし、大活字社や日本点字図書館の販売代行も行った。 〔海外盲人交流事業〕 前年度に続き毎日新聞東京社会事業団の寄託によるネパール視覚障害児奨学金事業を、ネパール盲人福祉協会(NAWB)を通じてネパール各地の統合教育校7校(47人)で実施した。老朽化したバラCBRセンターの改修に3年計画で着手し、初年度は新築当時の外観を取り戻した。事業管理のため10月27日〜11月6日の間、福山博事務局長をネパールに派遣した。  平成18年度事業活動収支決算  (単位:円) 会計区分、収入額、支出額、繰越額の順 本部 3,797,154 3,199,985 597,169 点字図書館 41,120,813 40,291,891 828,922 点字出版所 166,509,059 200,560,153 △34,051,094 ガイドヘルパー養成事業 3,603,860 3,603,860 0 ヘレン・ケラー学院 49,103,216 53,648,175 △4,544,959 盲人用具センター 8,975,271 9,206,069 △ 230,798 海外盲人交流事業 2,627,845 2,631,755 △ 3,910 総合収支 275,737,218 313,141,888 △ 37,404,670 ●平成19年度事業計画と予算  ヘレン・ケラー学院については、中途視覚障害者が失明後、速やかに入学できるよう眼科病院とのネットワークづくりやPR活動の強化に努める。東京都内唯一の5年課程を持つ利点を生かして、他の追随を許さない高い学力と技術力を備えた学生を送り出すことができるようカリキュラムの充実を図る。  点字図書館は録音図書についてテープからデイジーへの移行促進を最重点に事業を進める。  経営改善中期計画初年度の点字出版所は、点字版選挙公報製作について、統一地方選と日本盲人福祉委員会の視覚障害者選挙情報支援プロジェクトに加わって初仕事となる参院選に全力を挙げて取り組み、財政基盤を固める。自治体広報受託等を着実に進めるほか、企画推進係を新設して民需開拓を積極的に行う。稼働40年目に入った固型点字印刷機に代わる機器導入のため調査チームを海外に派遣する。 好評のガイドヘルパー養成事業に続く新規事業展開のための調査を進める。57回を迎えるヘレン・ケラー記念音楽コンクールは審査員の入れ替えなどにより新たな発展を期す。  平成19年度収支予算  (単位:千円) 会計区分、予算額、前年度額、差引増減の順 本部 6,060 2,910 3,150 点字図書館 39,155 40,598 △1,443 点字出版所 223,285 194,530 28,755 ガイドヘルパー養成事業 3,400 2,960 440 ヘレン・ケラー学院 47,700 53,167 △5,467 盲人用具センター 8,800 8,000 800 海外盲人交流事業 3,645 2,620 1,025 ●出版所の経営改善に全力   今年度事業計画 学院の立て直しも急務  点字出版所の経営改善中期計画が4月にスタートしました。昨年7月、毎日新聞社から出向で、迫修一さんを所長に迎えて検討を重ね、3月の理事会・評議員会で決定した計画です。初年度に収支を均衡させ、3年後には黒字基調にすることを掲げています。  点字版選挙公報の製作、自治体広報の受託、教科書の製作そして民需の開拓を事業の柱とし、効率よく仕事ができる要員配置、固型点字印刷機に代わる機器の導入によって、はじめて計画は達成される、と書かれています。選挙公報については、4月の統一地方選で順調に滑り出し、次は日盲委のプロジェクトに加わって初めての参院選です。こちらは点字出版業界全体の将来と視覚障害者の選挙情報保障の両面から、何としても成功させなくてはなりません。協会の出版所の力量には自信を持っていい。昨年末に危惧された大赤字をひと踏ん張りで一気に圧縮したのですから。  もう一つは、ヘレン・ケラー学院の立て直し。過去3年連続で、学生数が5人減りました。中途視覚障害者は減っていません。ヘルスキーパーという新しい職種が脚光を浴び、視覚障害者の自立にとって、追い風が吹いています。学院の存在を十分に知ってもらえるようネットワークと支援システムづくりを急ぐことが第一と考えます。 「事業のすべては視覚障害者自立支援のため」。それを可能にする安心して働ける職場にするが私の責務です。ご支援・ご指導をお願いします。 (理事長・藤元 節) ●PASMO点字版 飛び込み売り込み大ヒット  今年の3月18日から発売された首都圏の鉄道・バスで利用できるICカード乗車券“PASMO”は、サービス開始23日目の4月9日には300万枚を突破。想定以上のペースで発売が進んだため、ご存じの通り4月12日から8月まで発売が制限されることになった。この関係者にとっては嬉しい悲鳴に、実は当協会も一枚噛んでいたのだ。  サービス開始まで、もはやあまり日がない1月下旬、業務課の大久保美智子さんが飛び込みで、都交通局に「点字版を作りませんか?」と、営業をかけたのだ。彼女の話によると「とても良い担当者と巡り会えたおかげで、とんとん拍子で話が進み、都営交通版として、800部の正式受注をいただきました。また、配布先の選定についても、都福祉保健局の協力を得ることができました」ということである。  「お役所仕事」といえば、従来「形式主義に流れ、不親切で非能率的な役所の仕事振りを非難していう語」に決まっていたが、都営交通や都福祉保健局の素早い対応は、なんと表現したらいいのだろうか?  顧みれば、私たちの仕事ぶりの方が、あるいは官僚的で、非能率的な面があるかも知れない。自省しつつ、素早く対応して嬉しい悲鳴をあげたいものである。 (点字出版所) ●窓  教科書は、それがたとえどのように素晴らしい内容であっても、4月からの授業に間に合わなければ、その評価は「0(ゼロ)」であると断言して差し支えないでしょう。  そのためには、まず、著者から前年の9月中に、原稿をもらわなければとても苦しい展開になります。  『生活と疾病TA―リハビリテーション医学(概論編)』(第2版)は、早々と原稿をもらうことができ、しかも、内容の約半分は「第1版」とほぼ同じでした。その点、もうひとつの教科書『地域理療と理療経営』(第2版)は全面改定であるばかりか、入稿がいつになるかさえ、9月末の段階ではわかりませんでした。  というのも、執筆者が2006年9月22日(金)〜9月25日(月)に、つくば国際会議場で開催された第8回世界盲人連合アジア太平洋地域協議会(WBUAP)のマッサージセミナーの実務に追われて、それどころではなかったのです。  このため、なんとか全8章のうち第1〜第3章までもらったのは、10月4日でした。その後、私は借金取りよろしく督促するのですが、もらえれば内容はどうでもいいというわけにはいかないところが原稿取りの難しさです。実際、第1〜第3章は全面書き直しになり、それに要した編集作業だけ、無駄骨になったのです。  結局、第8章の原稿がEメールで送られてきたのは12月22日で、添付されていなかった表と図は、12月27日の打ち合わせ時にもらうことになりました。それを大急ぎで編集したのですが、終わったのは大晦日の午後9時15分、その原稿を宅急便で著者に送り、1月4日までに校正して送り返してもらったのです。  理療科の教科書は拡大活字版作成に平行して、点字版、デイジー版を作るため、そちらからの催促もあり、私は著者との板挟みで悲惨と不幸を併せ持つ「ミゼラブル」な状態になったのでありました。 (点字出版所編集課長・福山 博) ●サポートグッズフェア春   はりやもぐさも展示  4回目となる東京ヘレン・ケラー協会の「サポートグッズフェア」が3月6日、協会3階ホールで開かれた。  平日の午後1時から同4時までの3時間という限られた時間だったが、約90人もの来場者で、とぎれる間もない盛況だった。今回は鍼灸用のはりやもぐさなどの製品が初めて登場し、医療関係者は「直接手にとって確認することができて、助かる」と好評だった。  また、ベトナムの視覚障害者にマッサージを教えている佐々木憲作さんがたまたま里帰り中で、各ブースを回って新しい情報を熱心に集めていた。(点字図書館) (写真=熱心に展示品の説明を聞く来場者) ●初のロービジョンケア相談会開く   点字図書館は弱視者の見えにくさを改善するために、3月7日、学院の教室を使ってロービジョンケア相談会を開いた。  相談会には朝倉メガネの全面的な協力があった。同社の3人が器具を持って待機、ヘレン・ケラー学院に入学を予定している7人を対象に、時間をかけてゆっくりと相談に応じ、それぞれの症状に応じたアドバイスをした。  今回が初めての試みだが、今後、中途視覚障害者をサポートする一環として、入学対象者から枠を広げ、多くの人が相談できるように継続して開催することにしている。(点字図書館) ●図書館が関点協会長館に  関東地区の17館が加盟する関東地区点字図書館協議会(関点協)の19年度総会・春期研修会が6月1日、日本点字図書館で開かれ、当協会点字図書館が19、20年度の会長館を務めることを決めた。会長館は慣行で2年ごとの持ち回りとなっており、17、18年度は北関東ブロックのとちぎ視聴覚障害者情報センターが担当、今年度から東京ブロックの選出となっていた。  新たに関点協会長となった石原尚樹館長は自動的に全国視覚障害者情報提供施設協議会の理事となる。関点協拡大事務局として川西幸治点字図書館職員が事務を取り扱う。 ●点字出版所 強い組織に衣替え   小委員会で熱い議論続く  点字出版所は、5月中旬に組織改正と人事異動を行いました。業務課に「企画推進係」を新設し、立花雄大主任の下に編集課から佐藤尊礼さん、製版課から馬場敏さんに加わってもらいました。  組織改正の目的は、点字出版所の存在を外部に強くアピールして新規事業を積極的に取り込み、点字出版の可能性を社会に訴えて受注の幅を広げること。「待てば海路の日和あり」のごとく公益事業の受け手として、お役所仕事が降って湧いて来た良き時代が去り、規制緩和の名で競争入札による安値攻勢の時代に入りました。これに耐える組織に変貌することが狙いです。  公共機関はもとより、民間企業でも点字出版物を製作し、そのことを世間に示すことで視覚障害者への情報が増え、一方で企業はバリアフリーへの理解を持っているという姿勢を示す利点を得ることに気付いてもらう。そのために個々の企業に、点字出版をどう具体的に行えば、どんなメリットが生まれるかを明示した企画を訴えようというわけです。  組織改正に先立って点字出版所では、昨年末に実施した職員アンケートと新規企画に沿って6小委員会を設定しました。全員がいずれかの小委員会に参加して、新規事業や職場環境についての議論を進めています。希望があれば、複数の委員会に出席可能としており、建設的な議論が報告されています。この3月には交通機関の共通カード・PASMOの導入に際して、女性職員が都交通局に使用説明書の点字版を提案したところ、先方から「思いが至らなかった、すぐにも着手してくれ」と発注を受けました。こうしたケースを自ら掘り起こし、点字出版所の力量を示し、併せて多彩な点字情報を出版することが点字出版所の役割にかなうことでもあるかな、と教えられた思いです。 (点字出版所長・迫 修一) ●ヘレン・ケラー学院 10人に卒業・修了証書  ヘレン・ケラー学院は3月15日、平成18年度卒業式・第3学期終業式を3階ホールで挙行した。  3年課程5人に卒業証書、5年課程の5人に修了証書が授与されたあと、我謝千穂さん、大橋伸明さん(1年)、植田員弘さん、坂田和民さん(2年)、寺下貴治さん(3年)の6人に優等賞、星野博子さん(3年)に努力賞、金子洋子さん(3年)に同窓会長賞が贈られた。  藤元学院長が「ヘルスキーパーなど職域拡大の波に乗るためには、国家資格を取ることが先決。チャレンジする意欲がある限り、最大限アシストするので、全力を尽くすように」と式辞を述べた。続いて、東京都の獅子野秀美在宅福祉課長ら来賓の祝辞、坂田学友会長の送辞、坂本裕二さん(3年)の答辞があり、「蛍の光」の合唱で式を閉じた。 (写真=学院長から卒業証書を手渡される卒業生) ●図書館書架を更新   メイスン財団が多額の助成         永年更新されていなかった点字図書館の書架がようやく新しくなり、手狭な館内もややスペースが広がった=写真。東京メソニック協会(メイスン財団)の高額な助成によるもので、図書館らしい体裁も整い、これまで以上に利用者への便宜が図れると、職員は張り切っている。  これまで図書館は増える一方の各種図書の置き場に四苦八苦していた。書庫の隙間スペースに山積みしたり、段ボールにいれて保存していたため、足の踏み場もない状態だった。さらに心配だったのは、設置が不安定で、大きな地震に見舞われたら、たちまち転倒事故が起きるおそれがあったこと。そのため堅牢な書架への更新は大きな課題だった。  この難問に朗報が飛び込んできたのは、2月初旬。メイスン財団から「助成の用意がある」と連絡があり、施設間で協議したところ、図書館の書架更新を申請することになった。3月12日、同財団から「全額助成」の決定。220万円近い助成金を得た。  工事業者と折衝した結果、施工日はゴールデンウイークの谷間の5月1、2日と決めた。しかし、その前に図書の引っ越し作業が苦労で、学院の実習室を借りて運び出し、出版所の人手を頼んで古い書架の解体、移送とてんてこ舞い。連休期間中は図書貸し出しを停止したものの、連休明けの再開に間に合うか綱渡りの作業が続き、ようやく図書を新しい書架に納めることができた。地震の不安からも解放された同館は、さらにスペースを確保するため早くも次のステップを検討している。 (写真=新しく設置された移動書架)   立川基金でプロジェクタ  点字図書館はプロジェクタ購入のため、立川福祉基金に助成を申請していたが、このほど、ほぼ申請通りの助成を得て、プロジェクタを購入した。  プロジェクタはパソコン画面を大きく投影して、多人数に一度に見せることができるほか、弱視者にも大画面は非常に有効だ。この購入で多くの場面で利用できることになり、有効活用が期待できる。 (点字図書館)    ●久しぶりのベストセラー 平成大合併地図  平成17年度をピークに市町村合併の嵐が、日本列島を吹き抜けた。  なにしろ平成11年3月末に3,232あった市町村が、平成18年3月末には1,821に減ってしまったのだ。市が670から777に増える一方で、町は1,994から846に、村は568から198に激減した。平成11年の「合併特例法」改正などにより、平成17年3月末までに都道府県知事に合併の申請をし、平成18年3月までに合併すると、合併特例債をはじめとする財政的な優遇措置が用意された結果だった。  そこで、東京ヘレン・ケラー協会では、これらの新しい市町村を全掲する地図を中心に、平成の大合併に関する資料と新旧市町村の索引を併載し、大きく様変わりした日本列島を触読できる地図を『平成大合併地図』(A4判)として平成19年2月1日に刊行した。  本書は、第1巻が「資料編」、第2〜4巻が「地図編」、第5巻が「索引編」の全5巻で構成されており、まず第1巻の「資料編」では、「平成の大合併」により新設された市町村について、各都道府県の合併日ごとに、新市町村名、合併形態、旧市町村名、人口・面積、名称の由来などを掲載した。「地図編」は3分冊で、第2巻は北海道・東北・関東地方、第3巻は北陸・中部・近畿地方、第4巻は中国・四国・九州・沖縄地方の市町村地図を収録した。  第5巻の「索引編」は50音順に、新市町村については地図編の掲載巻数とぺージ数を、旧市町村については新市町村名を掲載した。定価3万5,000円(自己負担額7,000円)と高価だが、5月末日現在で約70部の注文を受け、点字図書としては久しぶりのベストセラーになった。 (点字出版所) ●新築の輝きを取り戻したバラCBRセンター  平成14年(2002)6月末で完了した当協会のバラCBR事業は、現在NAWBバラ支部により、地域コミュニティの支援を受け眼科診療所を再開している。しかし、落成より15年余、雨期のバケツをひっくり返したような豪雨と40℃近い酷暑、それにマオイストにより隣接する町役場が爆破された時の巻き添え被害により、バラCBRセンターは満身創痍。NAWBバラ支部は建物の本格的な保守・修理にまでは手をつけられないでいた。そこで、当協会は2006年度から3年間で、改修工事を実施することにし、初年度総工費30万円で外壁等を改修した。そして、現在、写真のように少なくとも外観だけは見事に再生した。 (海外盲人交流事業事務局) (写真=外壁を修復してきれいになった建物の外観) ●さあ参院選だ! 総力をあげてがんばろう!  よもやの会期延長でもあれば別だが、すでに新聞報道等により周知の通り、参院選は7月5日公示、同22日投票で、まず間違いないだろう。熱い季節に候補者は汗だくで大変だが、点字出版所の職員も連日の残業と公休出勤で大わらわとなる。  点字選挙公報は、毎日新聞が昭和40年(1965)の参議院議員選挙において、『点字毎日』(号外)として発行したのがその嚆矢である。それを英国から導入して試運転中の固型点字印刷機で、昭和43年(1968)の参議院議員選挙において『点字毎日』(号外)として発行した。同年10月1日、点字出版局は、点字毎日から点字選挙公報、点字教科書、リーダーズダイジェスト(点字版)を引き継いで発足。その後、昭和45年(1970)には『点字ジャーナル』が発行されたため、昭和49年(1974)の参議院議員選挙からは『点字ジャーナル』(号外)として発行してきた。  今夏の参院選からは、比例区の全文点訳を実現するため、当協会も日本盲人福祉委員会視覚障害者選挙情報支援プロジェクトに参加し、40余年ぶりに『点字毎日』(号外)として、“点字選挙公報”を発行することになった。  今春の統一地方選では、選挙管理委員会が予想した以上の候補者が出馬し、現場は大混乱となり、編集課では終電に乗り遅れた人まで出てきた。参院選では、候補者の乱立にならないことを願うばかりだが、これだけは蓋を開けてみないとわからない。公示日に今から気をもむ今日この頃である。 (点字出版所編集課長・福山 博) “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。http://www.thka.jp