東京ヘレン・ケラー協会会報 青い鳥 第9号 2006年12月8日発行 発行人:藤元 節 編集:広報委員会 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会                      〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-20 本部、ヘレン・ケラー学院 電話 03(3200)0525 FAX 03(3200)0608 点字図書館 電話 03(3200)0987 FAX 03(3200)0982 点字出版所・盲人用具センター・海外盲人事業交流事務局 〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4 電話 03(3200)1310 FAX 03(3200)2582 -------------------------------------------------- インデックス: ●協会3施設に歩行誘導マット ●秋 サポートグッズフェア開催 ●デュプリケータ更新 郵政公社が助成 ●学院にプリンター一式 共同募金会助成 ●第56回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール ●ヘレンケラー・サリバン賞 第14回受賞者 ●協会メールマガジン「BBメール」を創刊 ●備えあれば憂いなし 防災訓練に起震車 ●青い鳥ハンドタオルを新発売 ●窓 ●ボランティア懇親会 ●ヘレン・ケラー学院同窓会 ●猛暑の中 施設1日公開 ●「まだ旗は下ろせない」 ネパール奨学生事業を視察 -------------------------------------------------- ●協会3施設に歩行誘導マット 「歩導くん」寄贈受け 学院に「てくてくラジオ」も  島根県松江市のトーワ株式会社と(株)計画技術研究所から、「サポートグッズフェア」への出展が縁で、視覚障害者用の歩行支援製品が寄贈された。  トーワ株式会社から寄贈されたのは、歩行誘導ソフトマットの「歩導くん」。点字ブロックのように歩行を誘導するのだが、人工ゴム製の平面マットで、凹凸の代わりに足や白杖の感触で位置確認ができるようになっている。学院は1、2階トイレ前=写真=に、図書館はトイレ付近に、出版所は1階事務所に設置された。  また、計画技術研究所からは、微弱電波音声案内システムの「てくてくラジオ」寄贈の申し出があった。工事はこれからだが、発信器を学院のトイレ入り口に設置する。AMラジオで受信すれば、トイレの場所や使い方の案内を聞くことができるようになる。 ●秋 サポートグッズフェア開催  視覚障害者向けの最新器具や用具、生活用品を集めた「サポートグッズフェア2006秋」が10月14日、東京ヘレン・ケラー協会で開かれた。  3回目になるサポートグッズフェアだが、今回は要望に応えて土曜日開催としたため、仕事を持っている人や、休日にじっくり回ってみたいという人が訪れ、終日にぎわった。  午前10時の開場前から訪れた人をはじめ約100人が来場、中には高知県から駆けつけた人や外国人の姿も。それぞれのブースでは興味を持った展示品について熱心に話を聞いていた。  今回は3階の展示会場入り口と2階男女トイレ前通路に、トーワ株式会社(島根県)が開発した視覚障害者歩行誘導ソフトマット「歩導くん」が敷かれ、各ブースには(株)計画技術研究所(同)の音声案内システム「てくてくラジオ」が取り付けられた。この二つの装置のおかげで、視覚障害者は快適に会場を回ることができると好評だった。  【出展社】アイネット(株)、(株)浅倉メガネ、(有)アットイーズ、(株)アメディア、(株)NEC、(株)NTTドコモ、(株)計画技術研究所、KGS(株)、シナノケンシ(株)、東京ヘレン・ケラー協会盲人用具センター、トーワ(株)、日本福祉サービス(株)、(株)ラビット  【特別出展】NPO法人 世田谷区視力障害者福祉協会 ●デュプリケータ更新 郵政公社が助成  点字出版所は、長年使用してきたカセットテープのデュプリケータを、最新型の機械に入れ替えた。旧機種は、20年以上も使用していたものもあり老朽化していたことと、発売中止から10年以上経過し修理が不可能となっていたためである。  従来通りの作業を行うには、マスター機を含め4台が必要。高額なため日本郵政公社に助成金(年賀寄付配分金)を申し込んだところ総額157万円のうち150万円が交付され、6月に設置した。  これまでのものと比べ2倍の能力があるため、8台体制から4台体制になって作業スペースにゆとりもできた。  音響機器のデジタル化でカセットテープ需要が激減し、デュプリケータのメーカーも国内では今回購入したオタリ社だけとなっている。同社では輸出向けも行っているため、当分生産中止の予定はないといい、メンテナンスの心配からも解放された。 ●学院にプリンター一式 共同募金会助成  ヘレン・ケラー学院に点字用コンピューターと、点字と拡大墨字等を同じ面に印刷できるプリンター一式が入った。これにより、一つの原稿で学生の求めにかなう形の学習資料等を、手早く作成することができるようになった。さらに、各教室の照明器具を総取っ替え、コンセントも増設して拡大読書器、録音再生器を安全で、便利に使えるようになった。経費270万余円のうち200万円は東京都共同募金会の助成を受けた。これで教育環境の整備は大きく前進した。 ●第56回ヘレン・ケラー記念音楽コンクール 越崎沙絵さん(八王子盲6年)が2年連続1位(ピアノ・小学生の部)  第56回ヘレン・ケラー記念音楽コンクールは、昨年に続きJTとの共催の形を取り、「第19回JTシチズンシップ・イベント」の冠付きで、11月25日、東京都港区のJTアートホール「アフィニス」で開催され、1都1道1府11県から21校51人が参加した。 ピアノの部は19人、弦楽器の部はヴァイオリン、その他の楽器の部はフルート各1人、声楽部門は独唱8人、重唱2組、合唱2校が日頃の練習の成果を懸命に披露した。盛況が続くピアノの部は、今回から小学校の部と中・高・大学の部に分けて審査し、前者では東京都立八王子盲学校小学部6年の越崎沙絵さんが2年連続1位、後者では前年2位の新潟県立新潟盲学校中学部1年の近山朱里さんが1位に輝いた。「最も感銘を与えた演奏・歌唱」に贈られるヘレン・ケラー賞は、前年に続いて、該当者なしに終わった。 審査員は、このコンクール出身で、国際的ヴァイオリニストの和波孝よし氏と音楽評論家の岩井宏之、藤田由之両氏。入賞者は次の通り=敬称略。 【ピアノの部】 ◇小学校の部=1位・越崎沙絵(八王子盲・小6)、2位・志岐竜哉(同・小3)、3位・越智美月(道立札幌盲・小4)、奨励賞・鈴木萌依(静岡県藤枝市立藤枝小・4) ◇中・高・大学の部=1位・近山朱里(新潟盲・中1)、2位・勝島佑太(武蔵野音大・4)、3位・小島怜(筑波大附盲・専2) 【弦楽器の部】 1〜3位該当なし、奨励賞・株竹大智(埼玉県越谷市立鷺後小・4) 【その他の楽器の部】該当なし 【独唱1部】 1〜3位・該当なし、奨励賞・名波愛莉(静岡盲・小3) 【独唱2部】 1位・該当なし、2位・北原新之助(筑波大附盲・高2)同・堀内友貴(京都府立盲・高3)、3位・該当なし 【重唱・合唱の部】 1〜3位・該当なし、奨励賞・高山ちひろ(筑波大附盲・専1)上田喬子(同・同2)=重唱 (写真)藤元理事長から表彰を受ける越崎さん ●ヘレンケラー・サリバン賞 第14回受賞者 グレース・チャン行政総裁  2006年度(第14回)ヘレンケラー・サリバン賞受賞者は、アジア太平洋地域の失明防止と視覚障害者福祉に献身した香港盲人補導会(The Hong Kong Society for the Blind)グレース・チャン(Mrs. Grace Chan)行政総裁=写真=に決定した。  贈賞式は、9月22日につくば国際会議場で開催された第8回世界盲人連合アジア太平洋地域協議会(WBUAP)盲人マッサージセミナー開会式に続いて行われ、藤元節・当協会理事長から、本賞(賞状)と副賞としてヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られた。  グレース・チャンさんは1945年10月5日に激動の香港に生を受けた。生家が貧しかったため、幼い頃より放課後はアルバイトをして家計を助け、働きながら香港理工大学を卒業。社会の底辺で苦悩する人々や身体障害者を身近に見ていたので、迷わずソーシャルワーカーの道を歩みはじめた。  1987年より香港盲人補導会の最高経営責任者を務めながら、WBUAPの会長や同マッサージ委員長、国際的な失明防止協会の役員、香港政府の委員などを歴任してきた。  これまで中国の12の省に移動眼科治療センターを開設して、白内障の無償手術を行ってきた。また、中国の四つの省で統合教育のためのリソースセンターを開設して運営。このため、現在も中国各地の盲学校の顧問や名誉校長、障害者団体等の顧問や名誉会長、大学や研究所の客員教授、はては山東省の政治顧問など、極めて多種・多彩な役職に就任している。  それらの功績が認められ、これまでも広州市政府や中華人民共和国副首相などからも表彰され、1997年には香港政府から「ジャスティス・オブ・ザ・ピース(太平紳士)」という称号も贈られている。 ●協会メールマガジン「BBメール」を創刊  東京ヘレン・ケラー協会の公式協会報は本紙「青い鳥」だが、年に1回しか発行してこなかった(今年は2回発行)ため、タイムリーな情報が伝わりにくかった。そこで広報委員会では、協会内の新鮮な情報を職員に共有してもらう必要があるとして、9月から新たにBBメールを発行した。  BBメールは活字媒体を使わないメールマガジン形式の情報誌。メールアドレスを登録した職員に、月に1回程度届ける。風通しの良い組織になるように協会内各施設の出来事や話題、イベント情報を読みやすくソフトに伝えることに重点を置いた。  当面、協会でパソコンを使用していない職員にはプリントアウトして回覧しているが、協会ホームページからもパスワード入力でアクセスできるようにし、自宅でもパソコンで読めるようにしたり、協会からの情報提供を望んでいたボランティアや協会関係者にもパスワードを伝え、BBメールを読んでもらえるように改良していく予定だ。  今後は協会報「青い鳥」とメールマガジン「BBメール」、そしてホームページの3本建てでTHKA情報を発信していく。  ちなみにBBは青い鳥Blue Birdの頭文字から取った。   ●備えあれば憂いなし 防災訓練に起震車 震度7を体験  毎年9月の防災週間に実施している消火訓練に代えて、今年は当協会で初めて、起震車による地震体験訓練を実施した=写真。地震に対する防災意識が高まっていると思われたからだ。  この期間に起震車訓練を希望するところは多いので、春先から新宿区立防災センタ−に申し込んでおいた。  訓練は9月4日に同センタ−防災指導員の指示・指導の下に、学院の     正面玄関前で実施。4人が1組となり起震車に乗って訓練を受けるので、けが人が出ないよう視覚障害者には健常者が手引きをして、震度7まで体験してもらった。  訓練参加者約90人のうち60人が実際に起震車体験をした。これまで起震車に乗ったことのない人が予想以上に多く、特に学院生をはじめとする視覚障害者に好評だった。数年後に学院生が入れ替わった頃を見計らって、また実施したい。 ●青い鳥ハンドタオルを新発売  盲人用具センターは当協会のシンボルマーク「青い鳥」をプリントしたオリジナルハンドタオルを新発売した。ソフトな水色のタオル地の一角に、青い鳥が羽ばたいている図柄が入っており、書かれている文字はヘレン・ケラー女史のサインをアレンジしたもの。ポケットやバッグに入れやすいサイズで、価格は1枚 500円(送料・税込み)、3枚 1,200円(同)。サイズは 25a×25a、タオル地 綿100%。同センターでは順次オリジナル商品を開発・販売していく予定だ。 ●窓  冬到来を思わせる11月半ば過ぎ、北信州へ農作業の手伝いに出かけた。行き先は長野県中野市豊田地区。ここは信州リンゴの産地で、この時期は「サンふじ」の収穫真っ最中なのだ。  千曲川に沿って大きく広がるリンゴ畑は、真っ赤に育ったリンゴが枝も折れんばかりに鈴なりに実っている。このリンゴに雪が付着し氷結すると「凍み<シミ>」が入って売り物にならなくなってしまうため、農家は雪の降る前に収穫を急ぐ。これを「総採り<ソウドリ>」という。しかし多くの農家は後継者難で、人手が絶対的に不足している。そこで都会から援農部隊を募って、収穫を手伝ってもらうことになる。  この部隊の名前が「猫の手援農隊」。文字通り猫の手も借りたい時期に助っ人に出かけるのでこの名前が付いた。言ってみれば農業ボランティアである。昼飯だけは農家が出してくれるが、足代も民宿代も自弁の物好き人間の集まりだ。  私が援農隊に参加したのは6年前。1回目は新潟県南魚沼の八色スイカの収穫だった。その後リンゴ農家の応援に入り、今はもっぱらリンゴ援農がメーンになった。  訪れる農家は選べないが、通っているうちにあうんの呼吸で、同じ農家が割り当てられるようになった。私の通うYさん宅も今では家族同然の扱いをしてくれるので、居心地はすこぶるいい。  ひんやりとした空気が残る朝9時前から日が落ちかかる夕方5時まで、無心になってリンゴ畑で汗を流す。昼飯がうまい。民宿での夜の語らい、晩酌、疲れを癒す温泉。  年に数回のこんなボランティアもまた楽しい。 (点字図書館長 石原尚樹) ●ボランティア懇親会 30人に感謝状贈呈 藤原記者の講演に感銘  第32回東京ヘレン・ケラー協会点字図書館ボランティア懇親会を10月25日、協会3階ホールで開いた。  この懇親会は、当館で奉仕活動をしているボランティアの皆さんに感謝を込めて開いてきたが、今回の出席者は70人と盛況な懇親会となった。  奉仕活動を5年間務めてきた人が対象の感謝状贈呈該当者は30人。これも例年にない多さで、藤元節理事長がひとりひとりに直接手渡した。  記念講演は毎日新聞記者の藤原章生さんにお願いした。藤原さんは今年春まで、メキシコ特派員をしており、その前は5年間にわたってアフリカ特派員を経験している国際報道記者。そのアフリカ時代の取材を通じて「偏見を持たず等身大で見ることの大切さ」をスライドやCD音楽を使いながら、貴重な話をしてくれた。藤原さんは昨年書いた「絵はがきにされた少年」で開高健ノンフィクション賞を受賞しており、参加者は実体験に基づいた講演を興味深く聞くことができ、感銘を受けていた。 ●ヘレン・ケラー学院同窓会 「先輩の薫陶受けたい」在校生6人も参加  ヘレン・ケラー学院同窓会総会が6月27日午前11時から、同学院ホールで開かれた。この日はヘレン・ケラー女史の誕生日に当たり、毎年この時期に学院卒業生が一堂に会して、ヘレン・ケラー女史の精神を見つめ直し卒業以来の旧交を温めている。  今年は過去最大の62人のOB・OGが集まったうえ、在校生から「ぜひ諸先輩の薫陶を受けたい」と申し出があり6人が参加するなど、総数80人を超す盛大な総会になった。  17年度活動報告・決算報告と18年度活動計画・予算が承認されたあと、昼からは懇親会に。マンドリンとギターによる6人編成の特別演奏がホールに響き、参加者は美しい音色を堪能したあと、愛宕洋志同窓会長の軽妙な司会で、全員が近況報告をするなど和やかに終了した。 ●猛暑の中 施設1日公開    東京ヘレン・ケラー協会の「夏休み施設1日公開」が8月23日、3階ホールを中心に開かれ、70人近い人が猛暑の中を訪れた。  この日のホールは当協会の沿革やヘレン・ケラー女史の生涯を張り出したり、町や家庭で見つけた点字表記の製品の紹介やさまざまな便利グッズを展示した。また点字プリンター、点字タイプライター、点字器、音声パソコンなどの機器類を、ずらりと並べた。  点字の読み書きができる点字体験や録音スタジオを使った音訳体験などのコーナーを設けて参加型のスタイルをさらに充実させたため、子供たちがボランティアさんから熱心に点字を学んだり、中・高校生が秋の学園文化祭に向けて職員やボランティアさんに真剣に取材するなど、夏休みらしい光景があちこちで見られた。 ●「まだ旗は下ろせない」 ネパール奨学生事業を視察  10月末から9日間、海外盲人交流事業事務局長の福山博さんの出張に便乗して、ネパールを訪ねました。毎日新聞東京社会事業団の助成を受けて昨年始めた視覚障害児奨学金事業をはじめ、ネパール盲人福祉協会(NAWB)をパートナーとする事業の現場を見たかったのです。  カトマンズのNAWB本部でラジャン・バハドール・ラウト会長にご挨拶をすますと、日本製四輪駆動車の走るまま統合教育校5校などを回りました。5校のうち4校はインド国境に細くのびる亜熱帯のタライ平野に点在し、想像を絶する道路事情に悩まされながらも、実り多い旅となりました。 どの学校でも、教室の最前列で一心不乱に勉強する視覚障害児の姿を見、自助努力とパソコン教室に象徴される現代化への試みを目にしました。「ビスターリ、ビスターリ(ゆっくり、ゆっくり)」のお国柄ではありますが、NAWBが着実に仕事を進めているあかし。「まだ、旗は下ろせない」との思いを新たにしました。 (理事長 藤元 節) “視覚障害者と共に” 社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会 ホームページもご覧ください。http://www.thka.jp