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協会概要

ヘレンケラー・サリバン賞

 「ヘレンケラー・サリバン賞」は、視覚障害者の福祉・教育・文化・スポーツなど各分野において、視覚障害者を支援している「晴眼者」にお贈りする賞です。これは、「視覚障害者は、何らかの形で健常者からのサポートを受けて生活している。その支援に視覚障害者の立場から感謝の意を表したい」との趣旨で、当協会が1993年(平成5年)に創設しました。なお、同賞の名称は、ヘレン・ケラー女史と同女史を生涯支え続けたアン・サリバン女史の両氏の名に由来します。
 選考は、視覚障害者によって推薦された候補者の中から、当協会が委嘱する視覚障害者の選考委員によって、検討・決定しています。第1回の社会福祉法人全国盲ろう者協会理事長の小島純郎千葉大教授に始まり、毎年1回、選ばれた個人・団体の献身的な行為と精神に対し、感謝を込めてお贈りしています。

2016年度ヘレンケラー・サリバン賞はバリアフリー映画鑑賞推進団体「シティ・ライツ」代表の平塚千穂子氏に

 第24回(2016年度)「ヘレンケラー・サリバン賞」受賞者は、音声解説付映画の普及に尽力し、映画鑑賞をあきらめていた視覚障害者とその楽しみを分かち合うことで、生活の質と文化の向上に大きく貢献したバリアフリー映画鑑賞推進団体「シティ・ライツ」代表の平塚千穂子さんに決定しました。
 贈賞式は10月4日(火)に当協会で行われ、本賞(賞状)と副賞として、ヘレン・ケラー女史の直筆のサインを刻印したクリスタル・トロフィーが贈られます。

受賞理由

(写真)「シティライツ」のTシャツを着た平塚さん

「シティ・ライツ」代表の平塚千穂子さん

 平塚さんは、早稲田大学教育学部卒業後もアルバイトで働いていたカフェで店長として勤務した。その後別の店に移ったのは、そのカフェが骨をうずめたいと思うほど気に入ったためだったが、経営者との行き違いから退職。結婚にも失敗し、精神的不安定な状態が続いた。そんな行き場のない状況の中、彼女を救ったのは映画館だった。スクリーンを通して様々な人生を観るうちに気が紛れて、心が安らぎ、人生を前向きに捉え直すことができた。そして、人に映画を観せる仕事をしたいと思うようになった。ちょうどその頃、早稲田松竹という名画座に求人募集が出ていたので、アルバイトをはじめた。映画館で働くようになり、ますます映画に魅力を感じていった。
 そんな矢先に異業種交流会で、チャップリンのサイレント映画「街の灯」を、視覚障害者に向けて上映するバリアフリー上映会の企画に出合った。彼女は当事者の意見を聞く必要性を感じてトークパフォーマンスを行っている視覚障害者グループと連絡をとった。当初は映画を話題にすること自体気が引けたが、そんな気配は微塵もなく、自分が想像していた以上に、映画にふれたいと思いながら諦めている視覚障害者の現状を垣間見た。
 そこで、平塚さんは活弁付無声映画を参考に、10分間の「街の灯」の断片を音声ガイドにしては視覚障害者に聞いてもらうことにし、それを半年以上繰り返した。だが、そうしているうちに、大本の異業種交流会が空中分解して上映会は頓挫した。
 それでも、視覚障害者の映画を観たいという想いに応えたいと、彼女はそのとき上映していた映画の音声ガイドを一人で試行錯誤しながら作った。その後、映画の音声ガイドについて調べると2000年当時映画館としてサポートをしているところはなく、市民映画祭で年に1回上映があるかないかだった。映画祭で音声ガイドを担っている朗読ボランティアやテレビの副音声製作担当者に話を聞いてもどこも手探りで、一から研究しなければ良いものは作れないとわかり、音声ガイド研究会を立ち上げた。これが現在のバリアフリー映画鑑賞推進団体シティ・ライツの原点である。
 その後、仲間を集めてシティ・ライツを組織し、2008年からシティ・ライツ映画祭を開催するが、上映会をやるにしても、一介のボランティアグループと映画館主ではやれることが違う。自由にいろいろチャレンジするためにも、映画館を作ることはその時からの夢となった。
 だが、常設シアター開設までには問題が多く、内装工事や音響・映写など必要な設備を整えると最低1,000万円規模の資金が必要であった。家族にも心配されたが、最終的に、クラウドファンディングで募金目標額の1,500万円が集まり、本年9月1日、ユニバーサル・シアター「シネマ・チュプキ・タバタ」が東京・田端にオープンした。「チュプキ」とはアイヌ語で自然の光の意である。
 この映画館は視覚障害者のための音声ガイドはもちろん、聴覚障害者への字幕によるサポートや車いすユーザーにも対応するユニバーサル・デザインを掲げているので、実のところはまだ勉強不足なところもある。しかし、シティ・ライツを立ち上げたばかりの頃を思い起こせば、そうやって学びながら歩んできたのだから怖れることはないと、覚悟する気持ちが出た。
 固定席は15席、車椅子席を含めても17席という小シアターだが、音響設備は360度音に包み込まれるような感覚になるフォレストサウンドシステムを採用。音声ガイドも無線ではノイズが出るので、座席に直接イヤホンを挿して有線で聞くようにした。「一時は募金が集まらなかったらどうしようと怖くて仕方がなかったが、本当にたくさんの方にご支援いただき、今は夢を見ているみたいです」と平塚さんは喜ぶ。そして、障害など関係なく、同じ映画を観て感想をシェアし、心の会話ができる。気を遣うこともなく、ありのままそこにいるということが自然にできて、安心して過ごせるユニバーサル・シアターにしたいと、平塚さんは決意を新たにする。

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